「残像」

夜の舗道に
桜の花が
ひらひらと降り積もり

散り残りの花を
通り過ぎるヘッドライトが
光の波に変え、
舞い上がる花びらが
取り残された静寂の中
静かに踊り終える。

そして
降り積んだ花びらの上に
重ねるように

雲間よりこぼれる
月の光が
さらさらと降り積もり

来るべき不安の中
この春の未練を
凍らせようとするように、
終わってしまった
ほんの一週の宴の
名残の飾り付けのように。

夜の舗道に
桜の花が
ひらひらと降り積もり

雲間よりこぼれる
月の光が
さらさらと降り積もり

私の心に
薄紅のしじまが
しんしんと降り積もり

目次へ