Cosmopolitan
国際中文版2001年1月号

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【 A Man of Iron Tnderness 任賢齊 弾唱鉄漢柔情】
 
  

 

心地よさ。まさにこの感覚なのだ。かに座の彼は、情熱的で温かく
思いやりがあって、寛大である。
しかし、一線を越えて、あなたが彼を欺いてしまったとしたら、
彼も黙ってはいない。
   
  ほぼ3年前のこと、任賢齊にインタビューする機会があった。
彼は、とても優雅で礼儀正しく、謙虚な大変印象深い人だった。
その後、三年余りたち、任賢齊の人気は当時の何倍にもなっている。

  ブレイク後の彼は多かれ少なかれ変わってしまったであろうと
ばかり思っていたが、目の前の任賢齊は昔と変わらず謙虚だった。
仕事を順調に進めるために全力を注ぐという、彼の仕事に対する
態度は、この数年来全く変わることがないようだ。
 
  この10年来、芸能界の様々な出来事を見尽くしてきた彼は
冷静にこう言った。謙虚にしてはじめて前に進むことができ、
相手に余裕を持たせることでやっと広く良い縁を結べると。
これは正に彼の芸能界で生き残る道に他ならない。
     
大スターは基本的な礼儀を守るもの
   
   小齊は今年35歳。年齢的に若いとは言えない。幸いなことに
彼は若々しい心を持ちつづけているので、芸能界の中でも順調に
良い縁を得ることができた。
 
「僕の長所は人を嫌ったり傷つけたり不快にさせないという所でしょう」

  実際、彼と接触したことのある人は、彼を賞賛してやまないばかりか、
とりわけ、その礼儀正しさや、気遣いについては、しばしば話題にのぼる。
一方で、彼の声が子供のような響きを帯びるとき、小齊の親和力は
余す所なく発揮されるのだ。

  温和な処世術のようではあるが、その背後には固い信念がある。

「人生には堅持するということが絶対に必要だと思います。
僕は礼節や誠意のような基本的な身を持する重要な条件を堅持して
います。そうでなければ人は尊厳や品格を失ってしまいますから。
また、相手に対しても僕を尊重してくれることを求めますね。
もしも相手に真心や誠意がなく、僕を脅したり、騙すようなことが
あったとしたら、僕も黙ってはいませんよ!」

このとき任賢齊の温和な眼差しは突然鋭くなった。自らの処世術に
ついて悠然と語り、炯炯と目を輝かせている彼の人を見抜く力は
一流である。

「僕は人の目つきで、嘘を見抜くことができますよ。目はあらゆる
ことを映し出しますからね。人を欺くことはできません。」
 
とりわけ、コンサートを開くことについて、彼を騙そうとしても
それは口で言うほど簡単なことではない。第一に、任賢齊は
コンサートに関しての専門的な知識が豊富であること。第二に
企画について精通し、どういう効果をあげられるかについても
よく分かっている。勿論、会場の企画から照明効果に至るまで
任賢齊は知り尽くしているのだ。
「そう簡単には騙されませんよ。」と彼は言う。
 
誠意のない行いも、彼が嫌う事である。

「よい結果を得るために、全力を傾注して準備するわけですが、
もしも心血を注いだ事を、誰かにいいかげんにあしらわれて
しまったら、やはり辛くて腹が立って仕方がありません。」

自分がして欲しくないことは、人にもしないということだ。

任賢齊は親切で思いやりがある。

「人を手厚く扱うことで、自分が得られるものは大きいですよ。
僕は高給で優秀な人材を雇うことを絶対条件にしています。
誠意ある待遇を受けていると感じれば、人は応えてくれます。
ですから、結果的に収穫が最も多いのはやはり自分なのです。」

任賢齊は歌手であると同時に、レストランの経営者でもある。
彼はこの「己を厳しく律し、人に対しては寛大に」
という経営哲学で深い信望を得ていることからも、彼の
”堅持することの必要性”は明らかに証明されている。
   
パフォーマンスの綜合成績は誰にも負けない

  デビューしてから10年。芸能界での経験と鍛練は、物事を
更に理解する得難いチャンスでもあった。

「芸能界の変化はとても大きくて、大ヒットを飛ばすことと、
跡形もなく消えていくことはどちらもあっという間のことです。
変化が大きいとは言っても、チャンスというものは永遠に存在します。
ある人たちは少しラッキーで、デビューと同時に人気が出ますが
またある人たちは時間がかかる。自分をいかにして掌握し
マネジメントするかによって得難いチャンスをものにすることが
できるのです。」

しかしながら、任賢齊にとって最も印象深い出来事は現在の
人気歌手となった情況ではなく、兵役前に出演したドラマ
「意難忘」の頃が終生忘れられないと言う。

「当時、僕は25歳でした。自分の知り合いの中で、自力で
100万元を稼ぎ出したのは、僕が初めてだったんです。」

テレビドラマへの出演の反響で知名度が上がり、任賢齊は
立て続けにテレビ番組の司会者、CM撮影等の機会を得た。

「僕はとても誇りに思いました。」

任賢齊はこれらのギャラで新車を購入し、レストランに投資したものの、
入隊の前夜には無一文となっていたことにやっと気がついた。

「借金を返して車も売り払って、僕は百万長者から、貧乏な若造の身分に
逆戻りでした。」
 
貧乏生活の日々は辛く、現実は実に残酷だった。
除隊後、所属のレコード会社は倒産。任賢齊は気持を切り替えて
新たに出発するしかなかった。
 
その後の芸能活動については、ご存知の通り。番組の司会、
ドラマ出演、アルバムの制作、コンサート、任賢齊のマルチな
活動とどこまでも耐え抜く精神は、「亜洲鉄人」の称号に
的確に符合している。

「それぞれの成績は、必ずしもトップではないのですが、総合すると
しばしば最高点になるんですよ。」

これは彼が出演するテレビドラマや、アルバム発売の頻度や、
コンサートの回数などの彼の成績を見ると、彼の忍耐力は
芸能界の中でも、確かに珍しい部類に属する。
 
「どの業種でも同じだと思いますよ。全ては自分の努力と気力次第
なんです。チャンスは向こうからやってこないですが、能力がある
ならば、機会を掴めば、成功は期待できるんです。」

ここ数年来、任賢齊は新しい試みを続けている。例えば異なる役柄を
演じることや、新しいスポーツに挑戦し、コンサートツアーも
行う等..令狐冲を演じるならば、たちまち令狐冲がブラウン管で活躍し、
馬鹿は馬鹿のように演じ、悪人を演じるならば、人に恨まれるほどに
悪を演じる。実際、彼は特別な訓練を受けたわけではない。

「秘訣は、心を込めるということしかありません。」
 
自分に責任を負う男

たとえ表情が厳しい時も、面白おかしくおどけている時も
任賢齊は正統派の印象を与える。

男の名の男。こんな風に彼を形容できるであろう。
この称号に、任賢齊はかすかな微笑みをもって応えた。
しかし彼はあるアメリカの偉人の名言を引用し彼自身を
マネジメントする際の考え方を示した。

「20歳以前の人生は神の恩寵を享受すること。
これは外見や体格、運も含みます。20歳以降は
自分自身の要求に応える。40歳以降は男は自分の顔に
責任を持て...。
僕の長所は真面目なことです。僕は白髪頭になって
孫と会ったときに、たとえ凋落して貧乏をしていた
としても、彼に何も成果を見せることができないのは
嫌ですね。」
 
彼は魅力についてこう語った。

「僕は物事に打込んでいる男性がもっとも魅力的だと思います。
スタイルのよい体、鍛え上げられた筋肉というのは、
全体の魅力にプラス要素を与えるものです。」

35歳の彼は、既に外見を重視するといった浅薄な年齢を
越えていると言う。成熟した男性がもっとも重視すべきは、
「実行できるかどうか」と「責任を持てるかどうか」という問題である。

また、美についての解釈も、彼は異なる見方を持っている。

「僕は誠実な女性が最も美しいといつも信じています。
美貌はいつかはなくなるものです。その時残されている
ものは、個人の教養や智恵なんです。これは女性としての
生命を延ばす重要な部分ですよ。女性の内面は非常に重要です。」

   たとえ、毎日仕事に縛られていても、任賢齊は好きな
スポーツで遊ぶことを忘れない。彼はスポーツは体を
鍛えることと忍耐力を養うのに最適な方法と思っている。
とりわけ、サーフィンは彼にとって重要なスポーツである。

「サーフィンは禅の修業のようだと思います。風や波が
静かなときは大海の中で魂の安らぎを感じますね。
一旦波が起きた時は、精神を集中して波のリズムを掴むと
海を駆け回る快感を楽しむことができるんです。」
 
彼は振り返って、真顔で言った。これは人生の競争の
ようではありませんか?確かにこれは任賢齊が選択した
人生である。真面目にして慎み深く、シンプルで肩に力が
はいらない..。言葉を選び、興に乗ってさまざまに語る
うちに、インタビューの終了時間となった。
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