冒頭陳述の要旨 公明党前足立区議のあっせん収賄裁判 検察の冒頭陳述(要旨) 東京・足立区の保養所委託業務の選定をめぐるあっせん収賄罪などで起訴された公明党の忍足(おしたり)和雄被告の初公判(八日、東京地裁)で、検察側がおこなった冒頭陳述の要旨を紹介します。 ◇ (贈賄側かっぽう料理店「勇駒」役員の)川島章男は、足立区議会(公明党)議員西口喜代志が足立区議会で湯河原区民保養所の経営を批判していることを聞き知り、平成14年12月ころないし同15年1月ころ、西口にたいして湯河原区民保養所の情報を教えてほしい旨頼んだところ、西口から「勇駒ならあだち荘ができるんじゃないのか。やってみたらどうだ」などと言われ、意欲を示すように至った。 西口は足立区議会議員選挙への立候補を断念したが、同期の(公明党)区議会議員であった忍足に勇駒が湯河原区民保養所総合運営委託契約の受託事業者として選定されるよう便宜を依頼し、忍足もこれを承諾した。 忍足は平成15年3月22日、西口に伴われて勇駒で飲食した。川島は飲食費を自ら負担するとともに、忍足に「お願いします」などと懇請し、忍足もこれを了解して「分かりました」と返答した。 川島は、足立区議会副議長となった忍足を同年6月23日、足立区議会副議長室に訪ね、「勇駒が取れましたら、それ相応のお礼をさせていただきます」などと言って、同区議会議員、同区議会副議長等としての影響力を行使して同業務の受託業者選定手続きに関与する足立区地域振興部職員らに働きかけ、同業務の受託に関し事前に情報の漏示を受けるなどの有利な取り計らいをしてもらえるようあっせんしてほしい旨申し向けて請託するとともに、その報酬として金品の提供を申し出て、忍足もこれを承諾した。 忍足は、かねて足立区地域振興部が計画していた北千住区民事務所および北千住サービスセンターの統廃合に、同一会派の外の議員とともに反対していた。平成15年6月下旬ころ副議長室で同区地域振興部長から、同案件の説明を受けた際、部長が湯河原区民保養所に関する事務を所掌していることから、「もう反対しない。振興部の案が通るように俺(おれ)が党内をまとめてやる。その代わりにあだち荘の運営委託は、勇駒がやりたいと言っているので、勇駒に取らせてやってくれ」などといい、統廃合案件に関して自己が有する職務上の権限に基づく影響力を行使して、勇駒を受託業者として選定させるべく職務上不正な行為を含む有利な取り計らいをするようあっせんし、部長もこれを承諾した。 川島らは、忍足に対し、契約の適正価格を不正に教示してもらえるよう地域振興部長らにあっせんしてほしいと考え、平成15年10月30日ころ、長女が上記副議長室に忍足を訪ね、「見積金額を出すことができません。後は見積金額とその内訳を出せば、提案書は完成します」などと述べて地域振興部長らに同契約の適正価格を漏示させるようあっせんすることを請託し、忍足は、これを了承した。 忍足は、同日ころ、地域振興部長を副議長室に呼び、部長に「実は、契約金額の件なんですが、よろしく頼みますよ」などと同契約の適正価格を教示するよう依頼してあっせんし、部長から適正価格の漏示を受けた上、勇駒に赴き、川島の長男および長女に適正価格が記載されたメモ書きを交付し「この金額の範囲内で決めるように。内訳は適当でいいから」などと教示した。 区地域振興部長は区内業者に30点の加点を行う受託業者選定基準と区内業者に50点の加点を行う選定基準とを用意していたところ、平成15年11月中旬ころ勇駒をはじめとする各社から提出された運営提案書をもとに採点を行った結果、前者の基準では勇駒は第1位とならなかったため、区内業者につき50点の加点を行う基準を使用して勇駒を第一次審査では第1位とした。 さらに第二次審査ではプレゼンテーションを行ったが、第一次選考の結果を重視すべきと意見を述べた。結果として有限会社勇駒と湯河原区民保養所の運営受託業者となった。 ◇ 忍足は、平成15年11月下旬ないし同年12月中旬ころ、川島に対して、地域振興部長に対するあっせんの結果、勇駒が湯河原区民保養所総合運営委託業務を受託できたことの報酬として三百万円の供与を打診した。 忍足は平成16年5月以降、少なくとも2回にわたり、川島らに上記賄賂たる報酬の支払いを求めていた。川島は、同年7月ころ、湯河原区民保養所総合運営委託契約に基づく入金を受けたことから、同月29日、現金百万円を、同年8月31日、現金二百万円を、いずれも勇駒店内において、忍足に手交して供与した。 忍足は、供与を受けた現金三百万円のうち一部を自己名義の預金口座に預け入れて保管するなどしたが、飲食費等に費消した。 |