どってことないです。普通の日常ですね。ちょっとしたいき違いでモメたり、 うっかり約束をすっぽかして、慌てたり、そういうちょっとしたことをテレビ 放送の枠で20分くらい描くわけです。
まあ、考えてみると、いわゆるサザエさんでして、あれも面白いキャラクター が、毎日どってことない日常を送っているのを、どってことなく描いていたと 思います。それを高校にもちこんだとすると、そういえば、気まぐれオレンジ ロードなんてのもありましたっけ?
そういえば、こういう日常型のアニメって、最近少なくなっているのかもしれ ません。
さて、で、出てくるキャラクターは、しょーじきなところ、特別な人は出てき ません。ToHeart のゲーム本編では、いろいろ特別な人が出てくるけれど、今 回芹香お嬢様が登場したけれど、ゲーム本編ほどオカルト色は強くなくて、だっ て、幽霊部員とかも出てこなかったし。
作りはとっても丁寧で、動きや演出もなかなか良いと思います。表情から、雰 囲気、なにもかも、ものすごく「思い入れ」があるような感じ。
さーて、問題は、ゲーム版で入れ込んだ人以外に、この「丁寧だがとことんジ ミ路線」というのがどれくらい受け入れられるか、ですね。まあ、プレイした 人は全国数十万人いるから、そういう人は苦労してもみんな見るとおもうんだ けれど、それ以外の人にとって、ToHeart はなんだろう?ってことになりそう な気がする。でも、日常のどってことないことを、ジミに、かつ丁寧に描くア ニメが存在するのは、それはそれで、良いことではないかと思います。
このストーリー一番高校生活でありそうな感じ。幼馴染みに近い存在の志保と 主人公との関係は、結局、あのような形になるのかなと思いました。一度は、 先輩に憧れたけれど、やっぱり、心を許せるのは、主人公。そして、口喧嘩ばっ かりしていても、主人公とは最後に本当に仲良くなれてしまうあたり。それで も、あかりのことを心配して、身を引く志保は、最後まで、主人公の親友のま まなのかもしれない。なんか、すがすがしいです。それに、Hシーンでの、主 人公の態度が、他のにくらべて、一番みずみずしいというか、いい感じ。これ が、高校生のあり方って感じがしました。ほかのは、どうもイカンですね。オ ヤジH、、なんだもの。
で、あかりストーリーとのからみ、やっぱり志保のエンディングもまた、あか りとのエンディングと対立しているわけじゃないんですね。体を重ねあったあ とでも、やっぱり友達であることを互いに選んだ二人。そういうものなんじゃ ないかな。このストーリーも日常の積み重ねで友達が友情を確かめ合う。しか も、男と女としての友情をういういしく確かめ合うということで、やっぱり秀 作ですね。
人から、「あの人は彼女ですか」と聞かれて、「そうかもしれない」とおもっ たり、そういうところから、だんだんと、気持ちが変わっていく。プレイヤー が、「あかり攻略!あかり攻略!あかり攻略!あかり攻略!あかり攻略!」と 思ってみても、ぜんぜんそうはならない。「あかり攻略にはこのイベントを押 えて」とかじゃなくて、あるがままのながれにそって、ストーリーは進んでい く。やっぱりこのゲームは、プレイヤーが主人公となって進めるものではなく て、小説なんですね。主人公とプレイヤーの気持ちが自然なところで一致して いくようなそんなストーリーになると、あかりが微笑むんですよね。
結局は、フラグ立てに過ぎないといえばそうですけれど、それをこれほど素晴 らしい演出でやってくれる。それがエンターテイメントとしての、ゲームのあ り方ではないでしょうか。ううむ、まさに、「痕」における五次元小説という ものを、そのまま、パワーアップして、もってきたようなそんなゲームでした。 やっぱりすごいですね。こういう恋愛小説って、あるのかな。ゲームとしての、 プレイヤーと主人公との心理のずれなどを考慮した形でプレイできるのは、やっ ぱりゲームだからかもしれません。小説では、プレイヤーがどう思っても、た だストーリーはながれていきます。主人公とプレイヤーが同化できようができ まいが、読み進めれば結末は決まっている。でも、ゲームだからこそできる広 がり。それも、ただの広がりではなくて、たくみな心理をついた、演出された、 しかし自然な広がり。これが、ゲームとしてのToHeart のすごさかもしれませ ん。
マルチのエンディングは、SFとして、そして、哲学的意味での、深さがあって、 すごいと思いましたけれど、あかりとのエンディングは、まさに恋愛小説の王 道。それを、見事に見せてくれました。屋上の夕日は、リーフの18番ですね。
さ〜て、CG100%いきましたけれど、セカンドHはちょっちHでしたね。あかり ちゃんて、、。「下級生」なんかだと、奈々なんか、いきなり豹変するんです けれど、あかりちゃんもじつは、、。いや、そんなことは、、。
最後の再会のシーンは、あの、ファイブスター物語での、カイエンとアウク ソーの再会のような、、
白炎赤塵、白青王者、神像銀身、吾主來乎、
とまあ、最初のエンディングを向かえて思ったわけですが、もちろん、あかり とのエンディングを見た今でも、マルチシナリオはやっぱり素晴らしいストー リーだと思います。そして、今、マルチのシナリオは決して、あかりとのストー リーとそれほど対立するものでもないんじゃないかとも思えました。SFとして の、ToHeartの素晴らしいストーリーがこのマルチのシナリオだったと思いま す。やっぱり、今世紀最大にして最高の「学園ラブコメSF」じゃないかと思い ます。えっと、最後に、「長瀬」が登場しましたが、これ、やっぱり「雫」 「痕」以来の伝統の人。ある意味では、「雫」「痕」を正当に継承しているス トーリーではないかと思います。
で、あかりとのエンディングを見た今、委員長とのエンディングを振り替える と、これまた、主人公の気持ちとプレイヤーとの気持ちの素直な一致が重要な ストーリーだったと思います。まあ、私にとってはこのストーリーもそうとう 難しかったんですけれどね。感動するストーリーでした。
ところで、CDROMを覗くと、「ToHeartが三万部売れたらマルチは人間になれる のかな」というのがありましたが、よくよく考えると、琴音ちゃんとの屋上で の、主人公の体を張ったプレイって、Key The Metal Idol の1シーンを思い 出させますね。あれも、Key の「思い」が、ああさせた。琴音ちゃんの思い。 やっぱり光輝くピンク色の想いなのかなぁ。
でもって、今回本気で、攻略したんですが、やっぱりセカンドエッチに至らず、、。 CGも94%で止まってしまいました。まあ、これは、まあ、いいかあということ で、、。
このストーリーは、やっぱり格闘オタクの心をくすぐるストーリーなんですね。 ちょっと、感動が弱い。
ところで、芹香先輩のCGは、その、「心霊写真」になっていますね。どうやら、 リーフスタッフが心霊写真として写っているようです。凝ってますね。
で、この人の妹って、葵ちゃんストーリーに「高笑いで、登場」のお嬢様「綾 香」様なんですね。で、顔が似ているのは、いいとして、どーして、こんなに 違うんでしょうか。「綾香様」は、きっと、親が忙しいので、格闘家に育てら れたのかもしれない。。あと、セバスチャン長瀬ですけれど、このストーリー も、やっぱり「雫」「痕」以来の正当な後継となるストーリーなんですかね。
これほどお約束を外しているのは、やっぱり意図的というべきでしょうね。ギャ ルゲーの王道としての、「ときメモ」があって、数多くの「ときメモもどき」 が出る中、18禁ゲーという立場でのアンチテーゼを持ってきた、そんな気が するんです。
「ときメモ」では、主人公には、憧れの幼馴染みで、しかも学校のアイドル的 存在の優等生の詩織がいて、そして、必死の攻略で、ようやく一緒に帰るよう にまでなる、そして、詩織の顔が赤くなる、というあたりで、まさに、最初か ら主人公と、詩織攻略を目指すプレイヤーとの一心同体という状況で、ゲーム が進むわけです。そして、誕生日プレゼント、バレンタインデー、ホワイトデー とイベントがあって、休日には、デートを誘う。
ゲームとして、「典型的な恋愛をゲームにする」とすると、「ときメモ」のや りかたは、まさに王道です。主人公には、神のような存在として、好雄がいて、 女の子の主人公への思いを教えてくれる。だから、それを信じて、世話しい爆 弾消しをやっていれば、なんとかなる、そういうゲーム。
あかりは、優等生でもないし、特別に可愛いと思う子でもない。最初から毎日 一緒に学校にいくような目立たない地味な子で、ってあたりで、すでに「とき メモ」を真向から否定している姿勢が顕著です。「でも友達とかに見られて、 噂されたりすると嫌だし」とは絶対にいわないのがあかりちゃんなんですよ。
その気になれば、主人公の思い通りになるかもしれない、「マナイタの鯉」の ような存在かもしれない。主人公が下心で、あかりに「脱げ」といえば、脱ぐ のかもしれない。で、他の女の子を追いかけ回そうとする主人公に対して、バ クダンが爆発するはずもない。そして、日常はたらたらと、毎日の行動がたら たらと進む。あかりを攻略するときに、それを妨げているのは、ゲームの難し さや、それを遮ろうとする、他の女の子からの干渉ではなく、主人公自身の心 の問題なんですよね。そのことが、つまり、神としてのプレイヤーがどうする こともできない、そういうゲームです。
本当の生活、それは高校生でも、大人になっても、何がおこるか、その時には わからない。あとから思えば、あのときのあの行動が、今こうなっているんだ な、とかそういうふうに気がつくものです。毎日が、意味もわからず、ただ、 つらつらと続いている。その意味というものが、あるとき発火して、イベント が起こる。
こういうことをゲームにするなら、マルチシナリオのリーフビジュアルノベル 形式にするよりは、「ときメモ」型のパラメータ形式の育成ゲームにしたほう がやりやすいはずです。それをあえて、小説に拘り、パラメータ育成ではない、 アドベンチャーゲームにしたところ、これも拘りであり、そして、それをちゃ んと成功させたところは、やっぱりリーフの人たちの才能を感じさせます。ま あ、その結果として、パラメータ系の育成に近い複雑なフラグ立てができてし まって、これまでの、「雫」「痕」とはちょっとちがった、普通のギャルゲー に近付いた感じはしますけれどね。
あ、そういえば、あかりって、実は、詩織と似ているんですよね。髪の毛が赤 いし、目も赤いし、リボンだけれど、ヘアバンドの詩織と似てなくもない。そ ういう意味でも、リーフは、結構「ときメモ」を意識して、作っている気はし ますね。
そして、もう一つ、ToHeart は、リーフのこれまでのビジュアルノベルに対す るアンチテーゼでもあったわけです。非日常的イベントに巻き込まれる主人公 が、わけもわからず、なにかをしようとする、それが、「雫」や「痕」でした。 そして、これは、サスペンス系の多くの18禁ゲーが扱ってきたものでもあり ました。
でも、ToHeart は、普通の日常を描いています。もちろん、琴音ちゃんの話、 マルチの話、そして、ハンティングに狂うレミィの話など、結構「あっち系」 の話もありますけれど、それ以外は、普通のこと。普通のことを、感動的に描 く、それができたのも素晴らしいことだと思います。
また、日常という意味では、上にも書いた通り、このゲームは、プレイヤーが 攻略しようとしたときに、それに反するようになっているようです。日常は、 偶然のイベントの積み重なりです。放課後どこを歩くか、それの微妙な組み合 わせで、あるときとつぜん、特定の女の子のストーリーに入っていく。偶然を かなり意識した作品だとも思えます。でもって、特定の女の子のストーリーも、 一度で終るわけではないです。マルチの場合は、ストーリーに入ってしまえば そのままですけれど、あかりや委員長なんかの場合は、それぞれストーリーの 前半と後半があります。後半に入らないようにすることもできる。 そうとう構成を練ったんでしょうね。やっぱりすごいということです。PS版が 出るとかいう噂もありますけれど、18禁ゲーという枠から脱皮した、本当の 日常を描いた、恋愛小説としての、ToHeart に期待したいところです。