ということで、PS版として、題名変更で「輝く季節へ」が発売されまして、も うだいぶたつけれど、最近なにやら、ゲームする時間がとれず、、。
変更点としては、まず、もともとのWin版では画面の下に文字枠があって、そ の上に文字が出ていたのが、今回は、画面全体に文字が出るようになったこと と、そして、声がついたこと。
もちろん、18禁なシーンの削除もあったわけですが、そっちのほうは、ONE の 大勢には影響なし、ってことだと思います。まだそこまでやりこんでないので わかりませんが。
さて、一番大きな変更は、画面全体に文字になって、リーフのビジュアルノベ ルなどと同様の形式になったわけで、この結果として、かなり大きな影響が出 たということです。もともと、下のほうにも書いた通り、このゲームのCGと いうか絵は、背景画と、ほとんど同じ顔をした登場人物の立ち絵が重ねられた もので、登場人物の絵は、本当に表情からなにから、同じなので、髪型、髪の 色などで人物を区別するとゆーよーな感じになっています。かなり記号的な絵 でして、それが構図をとって、全体の画面を構成しています。そもそも、文字 枠を下に出すことが前提として作られているので、そこに文字を重ねると、い ろいろ問題があって、結局、画面の効果がかなり下がったという気がする。
そもそも、ビジュアルノベル系のゲームっていうのは、リーフ系でも、背景が 暗く、そこに出てくる人物画も結構暗い配色だったりしたのが最初で、それは、 アリスソフトのアトラク=ナクアでもそうですし、さらにPSでこの系統を出し た「久遠の絆」でもそうです。チュンソフトの系統も基本的にそうです。が、 そこを明るい配色で作った最初の作品は、ToHeart だと思います。ただ、 ToHeart も意外と配色には拘っていて、案外コントラストのない画像を作って いて、その上に文字を乗せるようになっています。その意味で、リーフが WhiteAlbum を出したときには、文字枠つくって、その代わり、本格的に明る いコントラストの強いカラー画像を画面全体に作るようにしました。で、Win 版の ONE の場合もその路線で、文字を全体にかぶせるようにはなっていなかっ たわけです。
が、そこに文字をかぶせると、まず、コントラストが強く、配色も鮮やかなの で、文字が読みにくい。そこで、文字をかぶせるときにぐっと画面の明るさを 下げるわけですが、そのとたんに、彩色の鮮やかさが消えて、あんまり綺麗じゃ なくなる。さらに、構図の上でも、文字がかぶさると、女の子の表情がなくな る、などなど問題があって、これは、ううむ、たしかに、PSの解像度が低いこ とを考えると、文字枠方式では文字が入り切らないことは事実だから、しょう がないけれど、もうすこしなんとかならんかったかなーと思います。
声については、それぞれ有名実力派声優さんを出しているということで、基本 的にあんまり問題はないのですが、ただ、声優さんに対する演技指導がどうも ダメですね。
たとえば、横山智佐さんは、清純派から、きゃぴきゃぴアイドル、さらに嫉妬 深いような役から、かなり意地悪な役までいろいろ多彩な演技ができる方なん ですが、逆にそれがワザワイしているわけです。横山さん演じる留美は、可愛 い子ぶっているときと、本性を出すときがありますが、その落差が激し過ぎ。 通常の女の子はそこまで声色つかえません。で、しかも、その演技が序盤では 安定してなくて、本人がいろいろ試行錯誤している感じです。後半になると、 演技が安定していて、これぞ、横山さんの留美だろう、、って感じになります。
同じようなことは、飯塚雅弓さん演じる瑞佳でもある程度いえるわけです。な んつうか、演技指導がもうすこし最初からばっちり決まっていたら、もっと完 成度が高かっただろうと思います。
あと、その意味では、中川亜紀子さん演じる茜もそうでして、やっぱり最初が 安定しない。
他は、みさき先輩の声が予想と全然違うのがちょっと。もっとほわっとした声 だと思っていたので、結構違う気がします。繭の声は、もうこれはハマリです ね。完璧。
全体としては、不安定な部分を除くと、まあ、そんなに違和感のない音声になっ ているかなーと思います。だいたい声優さんが発表された段階で、概ね「これ はいけるぞ」と思ったのはその通りって感じがしました。
その他、変更点としては、細かくなるけれど、追加CGがありますね。留美と 最初にぶつかるところとか。ところが、こういうの、文字だけで表現されてい て構わないのです。ONE のときには、効果音がないこともしばらく気がつかな いほど、画像とテキストがマッチしていて、ぶつかったところの絵がないのに、 非常に理解できる映像でした。たとえば、最初の留美とのぶつかるシーンは、 瑞佳とのシーンの延長で、いきなり、そういっちゃあなんだけれど、酷いデッ サンの、すごい形相の留美が登場するから、インパクトがあるのであって、あ そこにぶつかるシーンや、効果音が入ると、インパクトが逆に減るわけですね。
その意味では、無用なCGの追加だったと思うわけです。ONE は絵が語ること、 テキストが語ること、それをうまく調和させていて、そこに音楽だけがかぶさっ て、完成度が高かったわけで、そこに、無用なCGと無用な効果音が入ると、 かえって雰囲気壊れる気がします。
まあ、そういうわけで、移植としては、普通の移植ですし、あんまり考えてい ない気がしますが、まあ、許せる範囲かなーとは思います。Win版の ONE をプ レイするのをはばかる人や、PSをメインでゲームしている人には、お勧め。も ちろん、声が入った効果は結構あると思うので、それはそれで良いと思います。 以下は、PS版発売前に書いた部分です。
というわけで、すごいゲームには、できるだけ詳しい評価ページを用意しない と、、ということもあって、ページ立ち上げます。まだ、完全に終ったわけで はないけれど、すごいゲームは、やっぱりすごい。そのすごさをいろいろな視 点で、分析して行こうと思います。
主人公には、幼馴染みの女友達「瑞佳」がいて、朝起きるのが弱い主人公のた めに毎朝起こしにきて、いろいろと世話を焼きます。11月最後の日に、二人で 走って学校に行く途中、突然ぶつかったしまった女の子、実は主人公の高校に 転校してきた「留美」でした。12月の冷たい雨の降る日に、朝早く起きた主人 公が、通学途中の空き地で出合ったのは、普段口もきいたことのないクラスメー トの「茜」。そうじ当番をさぼって、屋上に上がった主人公と出合ったのは、 盲目の「みさき」先輩。みさき先輩と学食で昼食を食べているときに、ラーメ ンをひっくりかえして、その汁を主人公にざぶっとかぶせたのは、口のきけな い後輩の「澪」でした。瑞佳と二人で普段通らない裏山を抜けて学校に行こう としたときに、死んだペットのお墓を掘っていたのは、ちょっと知恵遅れの少 女「繭」でした。
主人公は、このころから、夜になると、夢をみて、そして現実になにか違和感 を感じるようになっていました。「永遠」という名の別世界へいこうとしてい る。それは、幼いころにした約束。
主人公が出合った少女たちとの強い絆を持つことができれば、主人公は、「永 遠」という別世界へいっても、やがて現実に戻ってくることができる。しかし、 そうでなければ、主人公は、約束を果たすために、永遠へと旅立つ。
ゲームは、主人公の回りの魅力的な女の子たちと主人公が絆を作ることができ るか、というものです。
そして、もう一つ、このゲームでは、身体障害者に関することを積極的にテー マに盛り込んでいます。ヒロイン6人のうち、3人までが、なんらかの身体的、 精神的な障害をもつ女の子です。盲目のみさき先輩。言葉の喋れない澪、そし て、育った境遇と多少の知恵遅れから社会生活がマトモにできない繭。このよ うなものを、単なるキャラクター設定上のものとすることなく、それぞれの女 の子の生きていく上での障害であることをちゃんと描き、かつそれぞれの女の 子がそれを克服しようとしていることを明確に描いています。そこに主人公が 登場することで、彼女たちが、ちゃんと生きていくことができるようになる。 主人公も、それぞれ障害をもつ女の子たちのことをしっかり考えて、対応する ことで、初めて、絆が生まれるのだというシナリオになっているのです。
まあ、ある意味で、恋愛アドベンチャーゲームにおける、テーマ性の追求とい う点では、一番ツボを押えたテーマを持ってきて、それを真面目に描いたこと が、多くのプレイした人の感動と涙に繋がったといえるのではないかと思いま す。
女の子たちとの絆があまりできなかったときは、ゲームは、11月30日という日 付から、二学期の終りの12月末までで基本的に終り、エピローグ的に三学期の 始めのエピソードが盛り込まれて、終ります。
しかし、女の子との絆がある程度できていると、それぞれの女の子ごとのシナ リオに入り、そこからは、選択肢の選択による分岐型のシナリオになります。 そして、その分岐の行き先によって、グッドエンドとバッドエンドが待ってい ます。
バッドエンドの場合は、主人公は別世界へと旅立ち、戻ってきません。グッド エンドの場合は、一度別世界へと旅立ちますが、絆のあった女の子の立場で語 られるエピローグで、もう一度現実の世界へと戻ってきます。
また、各女の子のシナリオに入ったあとで、主人公の生い立ちが語られ、それ によって、主人公が、なぜ別世界へむけて旅だっていくのかが語られます。
さて、このゲームシステムですが、エンジンが良いのか、シナリオの構成がよ いのか、とにかく、シナリオの間の矛盾が全くといって良いほど見当たりませ ん。この完成度は、リーフの To Heart を遥かに凌ぐものです。さらに、イベ ントによるフラグの関係もよくできていて、イベントが起こるたびに感情の変 化していくところが非常に巧妙にできているという感じですね。
文章量はさておいて、イベントの量、イベントの繋がり、女の子と女の子のカッ プリングによるいろいろな演出、などなどからして、相当複雑なシナリオをほ ぼ完全に統合しているところで、このゲームは実に秀逸。これほどの完全性を 見せているゲームは他に、ほとんどありません。それでいて、分岐は非常に複 雑だし、イベント間の相互関係も複雑です。これは、そうとう素晴らしいこと だといえます。この完全性があるから、ゲームをしていても、違和感が全く感 じられず、どんどんのめり込む原因にもなるんだろうと思います。
ところが、ところが、そういう「下手」な絵でありながら、ゲームを進める上 での重要な機能はしっかり果たしているのが、この ONE のグラフィックでは ないかと思います。
「下手」というとけなしているみたいなんで、とりあえず、抽象的とでもいい ましょうか、、。基本的に、顔そのものはあんまり女の子ごとにちゃんとかき 分けられているわけではなくて、キャラクターの違いは、髪の色や髪型などの 違いで表現されています。キャラクターはそれぞれかなり違う性格設定である ことから、プレインな顔はみな同じような感じですが、笑顔、怒った顔、哀し い顔、などなどの表情は、それぞれみんな違う。でまあ、簡単にいうと、ゲー ムを進めていく上で、背景画(結構丁寧に描かれている)の上に立ちポーズの 女の子が出てくると、一応、その文章表現以上のことを示してくれるし、瞬間 で状況が分かるわけですね。画面を見れば、「あ、教室で留美が怒っていて、 瑞佳が呆れている」というのは瞬間で分かる。
表情の変化はかなり微妙なものもあって、感情表現の乏しい茜については、本 当に1ドットくらいしか違わないような微妙な違いもあったりして、それも慣 れてくると、その表情の意味しているところが分かるんですね。
まあ、なんというか、抽象的なもので、情報を圧縮して伝える。あるいは視覚 効果で、瞬時にゲームの中の世界の状況を伝えるという意味で、この一見「下 手くそ」な絵が機能しているわけです。
18禁ゲーというのは、いわば、オカズゲーという部分がこれまであったし、 そのために、オカズとしてのHシーングラフィックを宝探しとしてプレイヤー に探させるのが目的な部分があったから、Hシーンはエロく、かなり超写実的 な感じで、徹底的に表現する、、みたいなものがあって、そんなことが一般の 立ち絵のイベントシーンでも、かなり体などが写実的なものが多かったわけで すね。ナイスバディな女性が結構怪しいかっこで登場して、ソソるとか。
ところが、この ONE ですと、そういう要素は排除されているというか、狙っ たのか、絵があんまりうまくないからこうなったのか知りませんが、むしろ、 キューンとさせる、切ないシナリオを、効果的に抽象的に見せる、演出するた めの絵というのが基本で、視覚に訴えて、エロいものを表現しようという方向 ではないです。その意味で、グラフィックは、いわば、ゲームの中の状況やキャ ラクターの感情などを記号として伝えるような、まあ、象形文字みたいな感じ なんですね。象形文字というか形声文字というか、漢字にはヘンとツクリがあっ て、その両方で一つの概念を伝えるわけですが、ONE においては、背景とキャ ラの立ち絵があって、それらが複合して、ゲームの中の状態を表現しているわ けです。で、その機能のためには、十分な表現力をもっているのであって、物 理的、光学的な意味での写実性はさっぱりと抜いたという感じです。
このような抽象絵画が、今後のゲームの方向なのかどうなのか、まだなんとも いえませんが、いわゆる大資本投入型のゲームが、グラフィックや音響などで、 非常に膨大な投資をして、フルアニメ化したり、フル3DCGアニメ化したり しているのとは、正反対で、ひたすら抽象化することで、より人間にダイレク トに表現を伝える方向を目指した、あるいは、結果として、そういうものになっ たという点で、評価できるのではないでしょうか。
なんつうか、実写映画とか、実写ドラマっていうのは、映像音響全てでかちっ と人間に情報をつっこむわけで、実写映画をみていて、ヒロインの顔が気に入 らんとかいっても、女優とっかえろ!ってことになって、視聴者としては不可 能なんだけれど、小説の場合は、表現されている中で、「髪の長い女」とか、 ある程度制約はあるけれど、その制約の範囲で、自由な想像ができて、その想 像があるから、自分なりの観賞があり得るわけです。小説読みながら、ヒロイ ンの顔をそれこそ自分の好きな女性の顔を思い浮かべる自由度もある。小説は、 いわば、読み手の想像力をもって、補完されて完成させられる文芸なのです。
で、まあ、この手のゲームも基本的にシナリオやストーリー、人間の心理描写 をしながら、さらにプレイヤーに状況ごとの行動を選択させたりするわけで、 小説と同じく、プレイヤーのプレイによって、補完され、完成させられる文芸 といって良い。その意味で、絵が抽象的で、記号化されていて、機能的である ということは、、、(これは下手といっているのと同値かもしれないが)、、 つまり、それだけ、プレイヤーが自分の想像力を働かせて、補完できるように なっているわけで、まあ、はっきしいって、瑞佳の場合、その表情くらい読み とれれば、その顔は、自分の好きな女の子の顔を思い浮かべつつプレイしても 良いわけですね。だから、その分だけ、観賞の広がりをもつ、あるいは、世界 を完成させるためのプレイヤーの参加する余地が増えることで、より一層、い れこむことがあるんじゃあないかと、、、ってヘリクツかも。
早い話が、こんだけ、人を泣かせるゲームなら、絵が下手でもええやんか、と いうことを、理屈っぽく分析して書くと、以上のような結論になると、まあそ ういうことです。
まあ、リーフ系にくらべちゃうと、結構プレインな感じにはなっているわけで、 その意味では、可もなく不可もなくなレベルですが、各シーンとは非常にマッ チしているし、これまた、機能としては十分果たしていると思うのでした。
ところで、このゲームは、音響がないんです。あ、効果音という意味ね。これ は、やっていてしばらくして気がついたんですけれどね。無い!無い!ないけ ど、イイ。これまた、グラフィックのところと共通するけれど、効果音がない から、効果音がどんなものか、それを想像することができるだけ、プレイヤー の想像力が使える範囲が広がるということかもしれませんです。
ある日、主人公は、クラスの男子たちの遊びにつきあって、誰か女の子に愛の 告白をしなければならなくなり、とっさに瑞佳に告白をすると、そのまま受け 入れられてしまいます。
しかし、その時から、主人公は、瑞佳を本当に愛しているのか、と疑いはじめ、 それでも主人公につきまとう瑞佳をうっとうしく思うようになります。そして、 瑞佳をいじめて、デートをすっぽかし、ということを繰り返しているうちに、 突然、自分は瑞佳が好きだということに気がつきます。
やがて、主人公の周囲の世界は、崩壊しはじめ、だれもが主人公のことを忘れ るようになります。そして、瑞佳も主人公を忘れたような態度をとりはじめます。
しかし、彼女は周りの人が全て、主人公を忘れてしまったあとも、しっかりと おぼえていた。やがて、主人公が別世界へと旅だったあとも、主人公が最後に プレゼントしてくれた、兎のヌイグルミを大事にもっていて、主人公のことを 忘れまいとします。そして、しばらくして、主人公は永遠という別世界から戻っ てきたのでした。
男子によるクラスの女の子の人気投票が行なわれると知った彼女は、主人公に 協力をもとめ、授業中の英語の訳読や、漢字の試験のときに、カンニングして 優等生らしさを見せて、人気を二分していた、瑞佳に僅差で勝ち、クラスの一 番人気になったのでした。その時から、毎日、彼女は他の女の子たちのイジメ に会うようになり、それをまた主人公や瑞佳に協力をもとめて、解決。このこ ろから、主人公と留美は仲良くなり、やがてクリスマスイブの夜、主人公は彼 女を誘います。喜んでついていった先は、ただのラーメン屋。彼女は、本当は 大事な夜に、ダンスホールで好きな人とダンスをしたかった。
やがて、瑞佳に代わって毎朝起こしに来るようになった留美だけど、遅刻せず に学校にいくことがなかなかできない。やがて、主人公の周りの世界は崩壊を 始め、だれもが主人公のことを忘れていく。そして、主人公は、留美にダンス 衣装を贈り物として送って、ダンスホールを予約して、留美と約束をしたまま、 別世界へ旅立つ。
彼女は、毎日、季節が変わっても、主人公を待ち続け、そして一年後、別世界 から戻ってきた主人公は、留美との約束を果たしたのでした。
だんだんと仲良くなったころ、主人公は、茜が幼馴染みで好きだった人を待ち 続けていることを知ります。やがて、茜を訪ねてきた別の高校の詩子と知り合 うのですが、その詩子は、茜とは幼馴染みであるにも関わらず、茜が待ち続け ている人のことを全く知らなかった。
やがて、クリスマスの日には、詩子と澪と茜は主人公の家にきて、ビールを飲 んだりケーキを作ったりして、パーティをします。
ある日、突然降り出した雨。授業が始まっても、学校に来ない茜を心配した主 人公は、空き地にいくと、傘もささずにズブヌレになった茜を発見します。そ して、主人公に倒れ込む茜。そのとき、主人公は、茜に「お前は、そいつにふ られたんだ」といいます。そして、その幼馴染みを待つことに対して、ふっき れた茜と主人公はやがて、愛し合うようになるのでした。
主人公の周りの世界は、崩壊しはじめ、だれもが主人公を忘れるようになりま す。幼馴染みだった瑞佳も主人公のことを忘れ、一緒に住んでいた叔母さんも 主人公を忘れ、家に住むことも許されず、主人公は、野宿して過ごすようにな る。そして、主人公の誕生日、茜はそれでも主人公を忘れていなかった。そし て、誕生日プレゼントをもって、雨の中、空き地に来ます。そして、主人公に プレゼントを渡したとき、主人公は別の世界へと旅立つ。それは、以前好きだっ た幼馴染みのときと同じだった。その幼馴染みも主人公と同じように永遠の世 界へと旅だったまま戻ってこなかったのです。
空き地は、家がたつことになり、空き地で待つこともできなくなった茜は、一 年後、再び戻ってきた主人公との再会を果たすのでした。
やがて、主人公は、彼女が光を失ったのは、小学校6年のときで、そして彼女 が学校のすぐそばに住んでいて、小さいころから、学校の中を遊び場にしてい て、そこにいれば、目が見えなくても、過去の記憶をたよりに、自由に動き回 れるということを知ります。だから、学校と自宅以外は、彼女にとっては、知 らない世界。
やがて、主人公の周りの世界は崩壊しはじめ、みさきの卒業式のころには、主 人公はみさき以外のだれからも忘れ去られていました。
卒業式のあと、主人公とともに、初めて外の世界へと羽ばたくみさき。初めて のデート。盲目の彼女が、ベンチで待つ主人公のもとへアイスクリームを買っ てきたとき、主人公は別世界へと旅立つのでした。
そして、一年後の卒業式の日、みさきは、消えてしまった主人公の卒業式に出 席しようと学校にきて、そして、屋上にいくと、そこで別世界から戻った主人 公との再会を果たすのでした。
スケッチブックに言葉を書いて、人とおしゃべりする澪。主人公はドジで失敗 ばかりしている澪がだんだんと妹のように思えてくる。やがて、主人公は、彼 女が大切にしている古いスケッチブックを知り、そのスケッチブックに見おぼ えがあることに気がつきます。
演劇部で、「いろいろ伝えたいことがある」という澪に対して、主人公も演劇 部に入り、彼女の演技指導をするようになります。
やがて、主人公の周りの世界が崩壊をはじめ、だれもが主人公のことを知らな い人のように扱うようになり、澪もまた、主人公のことを忘れたような態度を とりはじめます。そのとき、主人公は、澪が、子供のころ一度会ったことのあ る少女だということに気がつくのでした。澪が大切にしていた古いスケッチブッ クは、子供のころ、澪に貸したままになっていたものだったことを思いだし、 主人公は澪がいないときに、スケッチブックに言葉を書き残す。
演劇部の公演で、澪は、すばらしい演技をします。そして、澪は、だれもが主 人公のことを忘れたあとでも、忘れてはいなかった。二人は結ばれ、そして、 主人公は別世界へと旅だっていくのでした。
やがて、またしばらくして、澪がラーメンをひっくりかえしたとき、その汁を あびたのは、別世界からもどってきた主人公でした。そして再会するのでした。
主人公と瑞佳は、主人公たちの学校に遊びにくる彼女に、留美から借りた制服 を着せて、クラスにもぐり込ませ、それから毎日を一緒に学校で過ごすように なります。主人公は、彼女の自立と学校生活になれさせるため、できるだけな んでも自分でできるようにします。そして、彼女は、精神的に成長していくの でした。
一度は学校に来ないことになった彼女。本来行くべき学校に復学することになっ た繭でしたが、やっぱり繭は高校に来てしまう。そして、もうしばらく面倒を みることになったのです。主人公は、彼女を愛しく思うようになり、デートを して、やがて彼女と結ばれる。
そんなときに、主人公の周り世界は崩壊を始め、主人公は家にもすめず、野宿 するようになる。そして、やがて、別世界へ旅立つ日、雨の中、再び裏山で繭 に会います。繭だけは、主人公を忘れていなかった。そして、その日、迷子に なった仔犬をみつけた繭は、主人公が見守る中、必死でその飼い主をさがしま す。昔だったら、ただ泣くだけだった繭は確実に成長していて、そして、仔犬 を探しに来た、小学生に仔犬を返し、お姉さんのような態度で、小学生を慰め るのでした。そして、主人公と繭は、繭が大好きだったハンバーガー屋にいき、 繭が一生懸命ハンバーガーを買っているときに、別世界へ旅立つ。
繭は、主人公がいなくなったとき、久しぶりに泣く。でも、そのあともう泣か ずに、中学へ通い始めるのでした。そこで、いじめられつつも、必死に堪えて 学校へ通い続け、そして友達もできるようになりました。そしてその友達に、 「自分には彼氏がいて、彼氏のおかげで、がんばれた」という話をするのです。 友達もその彼氏に会いたいというようになりました。やがて、彼女が中学を卒 業した日、別世界から戻ってきた主人公と再会し、すっかり成長した姿を見せ るのでした。
瑞佳シナリオには、かなり忠実なデキということで、最後まで一気に読みました。 もちろん、留美シナリオや、繭シナリオの発展がないのは、しょうがないわけで、 小説としてのまとめ方はすごいうまいなーと思います。
小説を書かれた方の解釈なのか、向こうの世界での出来事をある程度細かく記 述しているのが一つの特徴で、どうして、主人公が向こうの世界から戻って来 られたのか、というあたりを描いているのが面白いです。「えいえんはあるよ」 といったのは、瑞佳であることは、ゲームをやっていても分かる。で、その幼 い瑞佳と、こっちの世界で、ウサギのぬいぐるみを見ながら主人公をひたすら 待っている高校生の瑞佳との対比などが描かれているわけで、このあたりがゲー ム版とは違うってことです。この記述そのものは、ゲームをやっていて、最後 までクリアでなかった部分が結構ちゃんと描かれたという意味ではグッド。逆 に、謎を残したまま終るゲームのほうの雰囲気を明確化したことが良いか悪い か、というのはちょっと疑問がないわけではないですね。
まあ、このゲーム全般としてみれば、身体障害者の問題を結構正面から扱って いて、しかも、非常に考えさせられる内容だったわけで、その部分、繭の話を 除いて、ほとんど触れていない、小説版は、ちょっと物足りない気がします。 ただ、瑞佳以外のヒロインについても、書くかもしれないということなので、 ちょっと期待しようかと思います。
さて、小説のほうは、二つ目がでまして、こんどは、茜が主人公の話。こっち は前作以上に非常によくできていると思います。とにかく、茜が以前に思って いた人のこと、どうして、その人が別の世界にいってしまったのか、そして、 主人公との関係、などなど、ものすごく細かく書かれていて、非常になんつう か、細かい描写がよくて、そして、茜の雰囲気もとっても良く伝わってくる。
なかなか破壊力のある小説で、これを読んで、茜ファンになる人も多いかも、っ ていうくらい、すっごくうまい記述ですので、ONE のファンは絶対に読みましょ う。あ、こっちには、ゲーム本編の茜シナリオと同じく、澪ちゃんも登場。
さて、最後らしいのが、三作目の小説で、いよいよこれは、みさき先輩が主人 公の話みたいで、これもおおいに期待したいと思います。