課題文n-ro231 マサオはテーブルの下から緑色の箱を取り出しました。

解説
テーブルの下から: el sub la tablo または de sub la tablo。el sub と de sub の区別はラテン語にはありますが,ラテン語から派生したイタリア語ではこの区別はなくなっていますし,英語などにもこの区別はありません。日本語でも el sub と de sub はどちらも「の下から」と訳されますが,el sub la tablo が「テーブルの下の空間の中から」を表すのに対して,de sub la tablo は「テーブルの下の或る場所から」を表すという違いがあるので,語感の鋭い人はこの区別にこだわるでしょう。また「英語の影響から」脱却するという場合などは,el sub la influo de la angla lingvo のように el を使っていうほうが自然ですし,「その木の下から」出発するなどのように或る地点を指していう場合には,de sub tiu arbo のように de を使っていうほうが自然です。
el も de も付けずに sub la tablo とすると,「テーブルの下の(箱)」を取り出した,という意味に取れなくもありませんが,「テーブルの下で(箱を取り出した)」という意味にも取れるので,「テーブルの下から」は el か de を付けていいましょう。

緑色の箱を: verdan keston または verdan skatolon。冠詞をつけるのはよくありません。聞き手の知っている箱の場合なら冠詞を付けますが,その場合の日本語は「箱はマサオがテーブルの下から取り出しました」のようにいいますね。kesto は普通は「四角い蓋付きのもの」を指し,skatolo は「四角だけでなく,円筒形なども含み,普通は蓋付きのもの」を指します。

取り出しました: elprenis を使っていうのがよいでしょう。eltiris も使えますが,この語は「引っ張り出した」という感じを与えます。

訳例
Masao elprenis verdan keston el sub la tablo.


課題文 n-ro232 兵士たちはA市の周りから撤退し始めました。

解説
兵士たちは: la soldatoj と冠詞を付けます。無冠詞だと「兵士たちの一部が」という意味に理解されます。

A市の周りから: de c^irkau^ la urbo A または el c^irkau^ la urbo A のようにいうのがよいでしょう。de も el も付けずに c^irkau^ だけでも通じますが,「周りで」という意味になるので,「周りから」を表すときは de か el を付けていいましょう。「周り」は名詞の c^irkau^o を使っていうこともできますが,その場合は冠詞を付けて la c^irkau^o de la urbo A としましょう。de c^irkau^ la urbon A の urbon は urbo とします。そこへの移動を示す動作を表す場合には c^irkau^ -n の形を取りますが,ここではそうではありません。次の例文を見てください
比較:
Anna metis skarpon c^irkau^ la kolon.(Annaは首にスカーフを巻きつけました)
Anna portis skarpon c^irkau^ la kolo.(Annaは首にスカーフを巻いていました)
Anna demetis skarpon de c^irkau^ la kolo.(Annaは首からスカーフを取り外しました)

「A市」は Urbo A, A-urbo の形でも通じますが,la urbo A の形をお勧めします。A urbo はよくありません。名詞をいくつも並べていうことができるのは,日本語,中国語,英語くらいで,エスペラントではこの形は文法違反になります。

撤退し始めました: komencis retirig^i(sin retiri), komencis evakuig^i または ekretirig^is, sin ekretiris, ekevakuig^is。sin retiri や sin ekretiris は語順を変えて retiri sin, ekretiris sin としても同じです。evakui も使えますが,そのときは evakui la c^irkau^on の形をとります。evakui はヨーロッパのエスペランチストには初心者でもすぐ理解されますが,forlasi la c^irkau^on のほうが,誰にも理解される易しい表現といえるでしょう。「撤退を始めた」という意味で retirig^on を使っていうこともできますが,そのときは retirig^on の前に sian を付けて, komencis sian retirig^on としましょう。
komencig^is は「始まる」という自動詞ですから,komencig^is sin retiri のようにはいうことはできません。

訳例
La soldatoj komencis retirig^i de c^irkau^ la urbo A.


課題文n-ro233 その島の住民たちは,自分たちの祖先は海の向こうからやってきたと信じています。

解説
その島の住民は: la log^antoj de la insulo。la log^antoj の冠詞は必ず付けなければならないという訳ではありません。la log^antoj de la insulo は「その島の住民はみんな」を表し,無冠詞の log^antoj de la insulo は「その島の住民は(全員ではないが)」あるいは「その島の住民の何人かは」を表します。ただし,la log^antoj de ... のように冠詞を付けても,「ひとりの例外もなく」というような科学的厳密さを表すのではなく,言語の持つ曖昧さを含んでいるのは,例えば「布を1メートル買いました」というときの1メートルが,厳密には「約1メートル」というべきなのと同じです。「その島の住民の何人かは」の「何人かは」の部分を強調したいときは kelkaj el la log^antoj de la insulo といえばよいでしょう。この表現の log^antoj は冠詞を付けます。
「その島の」は en la insulo でなく,de la insulo とするのが普通です。

と信じています: kredas(,) ke を使っていうのがよいでしょう。kredas と ke の間のコンマは付けなくてもかまいませんが,この ke は英語の接続詞 that と違って省略できません。kredi は「証拠を求めないで,真実だと思う」という意味を表します。

自分たちの祖先は: iliaj prapatroj。siaj はここでは誤りです。ke の後は「主語+動詞」の構文を取るのが普通ですが,sia, siaj は主語に付くことができないので,ke siaj prapatroj venis ... ということはできません。「祖先」は prauloj を使っていうこともできます。prapatro, praulo はどちらも複数形で使いましょう。

海の向こうからやってきた: venis de trans la maro。「やってきた」は alvenis を使ってもよいのですが,devenis はよくありません。deveni は「やってくる」という動作動詞として使うのではなく,由来や出自を表す状態動詞として使うのが普通ですから,devenis de trans la maro というのは不自然な感じを伴います。de trans la maro は el trans la maro としても,ここではほとんど同じです。maro には冠詞を付けて la maro としましょう。

訳例
La log^antoj de la insulo kredas, ke iliaj prapatroj venis el trans la maro.


課題文n-ro234 わたしたちは有刺鉄線の下をくぐって,その敷地の中に入りました。

解説
有刺鉄線の下をくぐって: tra sub la pikdratoj とするのが,いちばん簡潔ないい方です。pikdratoj は dornodratoj としても同じですが,冠詞を付けて複数形にします。単数形だと1本の有刺鉄線を表しますが,普通は何本も張り巡らされていますね。pikdrata barilo は単数形で使えます。冠詞を付けるのは,その敷地の周りに張り巡らされている有刺鉄線を指すためです。無冠詞だとその敷地に関係の無いどこかの有刺鉄線のことになってしまいます。trapasis sub la pikdratoj kaj とか trapasinte sub la pikdratoj としてもよいのですが,最初に挙げたように前置詞だけの表現のほうが簡潔です。これは 課題文n-ro228の解説の中で述べたことですが,「この岡に登ると」や「植物園に行けば」を「登る」,「行く」という動詞を使わずに sur c^i tiu monteto, en botanikaj g^ardenoj という前置詞と名詞だけでいうほうが簡潔ですっきりした表現になるのと同じです。(来週の課題文n-ro235の「そばに居た息子」も「居た」という動詞を使わずに書いてみてください。)
rampinte sub la pikdratoj は腹ばいになってくぐり抜けた場合の表現としては使えます。trairante sub la dornodraton は trairinte sub la dornodratoj としましょう。la malsupro de la pikdrato の la malsupro de は la malsupra parto de(の下部)という意味で「の下」という意味ではないので,trairinte la malsupron de は「の下部を突き抜けて」という意味を表します。trans sub の trans は「上を越えて」という意味を暗示するので,sub と組み合わせて使われることはありません。

その敷地の中に入りました: eniris en la terenon というのがよいでしょう。eniris la terenon としても同じですが,en を付けたときも tereno でなく,terenon とすることに注意してください。-n を付けずに en la tereno とすると,「敷地の中に」という移動の行為を表さずに,「敷地の中で」という意味になります。「敷地」は tereno(特定の用途に当てられた土地)を使っていうのが,ここではいちばんぴったりです。

訳例
Ni eniris en la terenon tra sub la pikdratoj.


課題文n-ro235 彼らはわたしのそばに居たわたしの息子を連れ去りました。

解説
わたしのそばに居た息子を: mian filon(,) kiu estis apud mi のようにいうことができますが,もっと簡潔に mian filon de apud mi(わたしのそばから,わたしの息子を)という形でいうこともできます。mian filon apud mi は「わたしのそばのわたしの息子を」という意味に取れますが,forpreni や forkonduki のような動詞のあとにつけると,apud がその動詞を修飾しているように取れるので,「わたしのそばでわたしの息子を(連れ去りました)」というように,「そばで」という位置を変えない表現と,「連れ去る」という位置を変える表現が衝突して,不自然な感じを与えます。forpreni, forkonduki, fortiri などの動詞は,「〜から」を表す de と共に使うのが自然なので,ここでは de apud(〜のそばから)を使っていうのがよいでしょう。

連れ去りました: forkaptis, forkondukis, forprenis, fortiris などを使うのがよいでしょう。forlogis は「誘惑して連れ去った」というような意味ですから,例えば,小さい子供に「お菓子を買ってあげるよ」などと話し掛けて連れ去った場合には使える表現ですが,父親のそばでは,そのようなことができないと考えるのが普通ですから,ここでは不適当です。なお,forkapti には perforte(むりやりに)という意味を含んでいますが,forkonduki, forpreni, fortiri には,そういう意味はないので,父親や子供の意志に反して連れ去ったということを明示したいときは,perforte を付けるのがよいでしょう。

訳例
Ili perforte forkondukis mian filon de apud mi.
Ili forkaptis mian filon, kiu estis apud mi.


課題文n-ro236 Helenaは隔壁のうしろから緑星旗を取り出しました。


解説
隔壁のうしろから: el malantau^ la septo。el は de を使うこともできますが,elpreni といっしょに使うときは el を使うのが普通です。malantau^ の代わりに post を使っても同じです。「隔壁」には vando も使えますが,muro, intermuro は mureto, intermureto とするのがよいでしょう。el trans は la vojag^anto venis el trans la montoj(その旅行者は山を越えてやって来ました)のように使うのはよいのですが,ここでは不適当です。
septo, vando には「Helena がいた部屋の」という意味を表すために冠詞を付けます。無冠詞にすると「どこかの部屋の隔壁」という意味になってしまいます。

緑星旗を: verdan standardon とするのがよいでしょう。「緑星旗」という日本語から verdstelan を使いたくなりますが,verdan を使っていうのが普通です。「旗」には flago という語もありますが,運動のシンボルとしての「旗」には standardo を使いましょう。「旗」は standardo, flago のどちらを使ってもよいという訳ではなく,「態度をはっきり示す」という意味の alte teni sian standardon の standardon を flagon に置き換えることはできませんし,En la klasifikado de varvagonoj verda flago signalas permeson de plua irado.(貨車の入れ替え作業では,緑の旗は「進め」の合図です)というときの flago を standardo に変えることはできません。

verdan standardon は,ここでは無冠詞で使います。「緑星旗はエスペラント運動のシンボルです」という文では La verda standardo estas la simbolo de la Esperanta movado のように冠詞を付けていいますが,この la verda standardo は「緑星旗というものは」というような意味です。ここでは「エスペラント運動のシンボルとしての緑星旗(を取り出した)」というような改まった言い方ではないので,冠詞を付けると聞き手の知っている「例の緑星旗」というような意味に取れます。その旗のことを初めて聞く聞き手は戸惑うことになりますね。

訳例
Helena elprenis verdan standardon el malantau^ la septo.


課題文n-ro237 木々の間を涼しい風が吹き抜けていました。

解説
木々の間を: tra inter la arboj のようにいうのがよいでしょう。この「木々の間を」は「木々の間を通り抜けて」という意味ですが,el inter la arboj とすると,「木々の間で発生した風が,そこから」という意味になるので,不自然です。tra la arboj は「木と木のあいだを通り抜けて」という意味ではなくて,「木の中を貫通して」という意味なります。tra la arbareto(木立の中を通り抜けて)は使える表現ですが,inter la arbareto のようにはいいません。inter の後は複数形が置かれます。arboj には冠詞を付けるのがよいでしょう。無冠詞にすると,話し手がいた場所と無関係な所にある木々のことになります。この課題文の表現は,その前に行われた会話との関係もなく唐突に話される内容ではありません。この話の前には,例えば「きのう○○高原に行きましてね」というような話があったはずで,「木々」は,そこに立っていた「木々」を指していることは明らかですね。

涼しい風が: malvarmeta vento。秋風などに malvarma も使えるので,ここでも malvarma vento ということもできます。fres^a は「さわやかな,すがすがしい」という感じで,「涼しい」という語感とは少し違います。「風」は冠詞を付けて la vento というのが普通ですが,形容詞が付くと malvarma vento のように無冠詞にするのが一般的です。これは la maro(海), la luno(月)などについてもいえることで,ある様相の海,月をいうときは furioza maro(荒れている海), plena luno(満月)のように無冠詞になります。vento は単数形で使いましょう。

吹き抜けていました: blovis または trablovis を使っていえばよいでしょう。blovadis, trablovadis も使えます。estis trablovanta は正確な表現ですが,普通は複合時制を避けて trablovis といいます。

訳例
Malvarmeta vento blovis tra inter la arboj.


課題文n-ro238 その男はわたしの質問に答えることができず,わたしの前から逃げて行きました。

解説
その男はわたしの質問に答えることができず: la viro ne povis respondi mian demandon kaj。respondi mian demandon は respondi al mia demando とすることもできますが,respondi por mia demando や respondi pri mia demando はよくありません。respondi por や respondi pri は「について責任を持つ」という意味で使われます。la viro は tiu viro ということもできます。
ne povinte mian demandon, la viro ... は重い感じがするので,会話ではあまり使われないでしょう。「答えることができずに」を「答えることができなかったので」という意味に取って,c^ar la viro ne povis respondi mian demandon とすることもできます。
この課題文は最初に挙げたように kaj でつなぐのが,もっとも簡単な表現ですが,文章を書いていて kaj でつなぐ文がいくつも続くのが気になったときは,上に挙げたようなほかの表現を使えばよいでしょう。
なお,同じ主語の文で kaj を使ってつなぐときは,kaj の前にコンマをつけないのが普通です。

わたしの前から逃げて行きました: forkuris de antau^ mi というのがよいでしょう。de mi でもここではほぼ同じ意味に使えますが,de antau^ mi のほうが「の前から」を正確に表します。ekde mi は誤りです。de antau^ は de antau^ mia naskig^o(わたしの生まれる前から)や de antau^ mi(わたしの前から)のように,時間,空間の両方に使えますが,ekde は時間についてだけ使われる語で,空間について使うことはできません。de mia antau^ のようにいうことはできません。antau^ は前置詞ですから mia で修飾することはできません。

訳例
La viro ne povis respondi mian demandon kaj forkuris de antau^ mi.


課題文n-ro239 わたしがあなたのところに行かなかったのは,雨が降っていたからではなく,頭が痛かったからです。

解説
わたしがあなたのところに行かなかったのは: 直訳すると la kau^zo, kial mi ne venis al vi(わたしがあなたのところに行かなかった理由は)となりますが,「わたしは〜の故に(または〜であったので)あなたのところに行かなかった」という形(mi ne venis al vi pro 〜, または mi ne venis al vi, c^ar 〜)でいうこともできます。kau^zo は kialo としても同じですが,la kialo, ke ... の ke は誤りです。la kialo, kial ... は理論的には正しいのですが,同じ語根の重複を避けて la kau^zo, kial ... の形を使うのが普通です。
相手のところへ行くのは veni を使っていうので,「わたしがあなたのところに行かなかった」は,ここでは mi ne iris al vi ではなく mi ne venis al vi といいます。venis vin は venis al vi としましょう。iri の場合は iri Parizon(パリに行く)のように対格(-n)を使っていうこともできますが,veni の場合は veni c^i tien(ここに来る)のような副詞の対格を使う表現はあっても,veni Parizon のようにはいわないのが普通です。iri の場合も 名詞の対格を目的語にするのは,「の中へ行く」という意味を表す場合に限られるので,iri vin のような表現は使われません。
iri と veni の用法について,少し詳しく説明しておきますと,例えば,演劇やコンサートなどに「行く」という場合,その関係者(主催者,出演者など)や,それを見に行く人,聞きに行く人に対しては veni を使っていいます。

比較:
● Al la koncerto vi ne venos, c^u ne? コンサートへは行かないのですね。(質問者は行くつもり)
● Al la koncerto vi ne iros, c^u ne? コンサートへは行かないのですね。(質問者も行かないつもり)

なお,日本語の「誤解の原因は意志の疎通が不十分であったためです」を la kau^zo を主語にしていうとき,La kau^zo de la miskompreno estis pro nia nesufic^a komunikado のように pro を使いがちですが,これは誤りで正しくは La kau^zo de la miskompreno estis nia nesufic^a komunikado のようにいいます。

雨が降っていたからではなく: ne pro la pluvado sed または ne c^ar pluvis sed のようにいえばよいでしょう。la pluvado は la pluvo としてもよいのですが, 話し手が出かけるつもりであった時の降雨を指しているのですから,冠詞を付けます。pro tio, ne ke pluvis は ne pro tio, ke pluvis としましょう。ne pro la pluvo dau^ris のように,主語+動詞の直前に pro を付けることはできません。pro は前置詞ですから,名詞や代名詞に付けて使われます。

頭が痛かったからです: pro mia kapdoloro または c^ar la kapo doloris min のようにいえばよいでしょう。kapdoloro には mia を付けることが必要です。「頭が痛かった」は la kapo doloris al mi, mi havis kapdoloron のようにいうこともできます。

訳例
Mi ne venis al vi ne pro la pluvado sed pro mia kapdoloro.
Mi ne venis al vi, ne c^ar pluvis, sed c^ar la kapo doloris min .


課題文n-ro240 この棚は釘ではなくネジで壁に固定されています。

解説
この棚: c^i tiu breto または tiu c^i breto や la breto,状況によっては tiu bretoも使えます。日本語では1メートルも離れている物でも,それを指差して「この」ということができますが,エスペラントではそのような場合には tiu を使っていうのが普通です。エスペラントで c^i tiu を使うのは,話し手のすぐ側にあるものや,話し手が手にしている物のことをいう場合に限るのがよいでしょう。

釘ではなく: ne per najloj sed といいます。単数形にすると,1本の釘を指すことになりますが,棚を壁に固定するというときは複数の釘またはネジで固定するというイメージを持つのが普通ですから,無冠詞の複数形を使いましょう。
「で,を使って」という「道具,手段,材料」は per で表します。英語では with を使いますが,エスペラントで kun を使うのは誤りです。pro も使えません。pro は原因,動機を示す前置詞です。de を使うのも誤りです。de は行為者を表します。「行為者」はいつも人間を指すとは限りません。英語の a mountaintop covered with snow(雪に覆われた山頂)は,エスペラントでは montosupro kovrita de neg^oといいますが,これを montosupro kovrita per neg^o とすると,山頂を雪で覆うという行為をした何か(行為者)が存在することになります。下に挙げる例文は,Petroがボールペンで描いた絵について,能動態と受動態でいうときの表現です。

能動態: Petro desegnis la bildon per globkrajono.
受動態: La bildo estis desegnita de Petro per globkrajono.

ネジで: per s^rau^oj。複数形のするのは,najloj の場合と同じ理由です。najloj に per を付けたように,s^rau^boj にも per を付けることが必要です。

壁に固定されています: estas fiksita al la muro。al la muro は sur la muro の形も見られます。estis fiksita とすると,「固定された」という過去の行為を示すことになります。「固定されている」という現在の状態を表すには estas fiksita とします。estas fiksata という形にすると,「固定されつつある」(英語の is being fixed)という意味に取られるおそれがあります。Akademio de Esperanto(エスペラント学士院)に従って -ata ではなく -ita の形を使うのがよいでしょう。fiksi は「を固定する」という他動詞ですから,c^i tiu breto fiksas ... というのは誤りです。聞き手の前にある壁を指して話しているのですから,muro には冠詞を付けます。

訳例
C^i tiu breto estas fiksita al la muro ne per najloj sed per s^rau^boj.