課題文n-ro361 そのバス事故は,運転手が運転中に一瞬まどろんだことが原因でした。

解説
そのバス事故は〜が原因でした: この箇所は「そのバス事故の原因は〜でした」と言う形にすることができます。その場合は La kau^zo de la au^tobusa akcidento estis 〜 で始まる文になります。kau^zo は de la au^tobusa akcidento で限定されているので冠詞を付けます。la au^tobusa akcidento は la busa akcidento または 「バス事故」を1語にして la busakcidento, au^tobusakcidento と言うこともできます。「〜がそのバス事故を引き起こした」と言う構文の La au^tobusan akcidenton kau^zis 〜 または 〜 donis kau^zon al la au^tobusa akcidento などのような表現もありますし,受け身の形にして La au^tobusa akcidento estis kau^zita de 〜 と言うこともできます。donis kau^zon の kau^zon には冠詞を付けません。La au^tobusa akcidento okazis pro tio, ke 〜 も使えます。

運転手が運転中に一瞬まどろんだこと: 上に挙げた「〜」に入れるには momenta dormeto de la s^oforo dum la veturigado(運転中の運転手の一瞬のまどろみ)と言う名詞形で表すのがよいでしょう。ただし pro tio, ke を使ったときは,名詞形ではなく la s^oforo momente dormetis dum la veturigado のように,主語+動詞の形で言わなければなりません。
「一瞬まどろんだ」は dormetis por momento ではなく,dormetis dum momento としましょう。これは dormeti が線動詞であるからです。点動詞とともに使うときは por になります。下に参考として,ザメンホフ訳の Marta から pensi(線動詞)とenpensig^i(点動詞)の用例を挙げておきます。

参考:
Dum momento s^i denove pensis...(彼女はふたたびちょっと考えました)
s^i por kelke da minutoj enpensig^is...(彼女はしばらく考えこみました)

線動詞,点動詞の区別は『エスペラント日本語辞典』を見れば分かりますが,dum か por か迷うときは momenton という対格形を使えばよいでしょう。この momenton は副詞の働きをします。-n を付けない momento だけを使うのはあやまりです。
s^oforo や veturigado には冠詞を付けます。いずれも「そのバスの」と言うことを表すためです。dormetis en la momento de la veturigo は dormetis momenton dum la veturigo としましょう。「運転中に」が欠落している訳がありました。

訳例
La au^tobusa akcidento estis kau^zita de momenta dormeto de la s^oforo dum la veturigado.


課題文n-ro362 衝突の瞬間,わたしはバスの座席から投げ出されました。

解説
衝突の瞬間: en la momento de la kolizio または en la momento de la kunfrapig^o のように言うのがよいでしょう。寄せられた訳の中には je la momento de ..., c^e la momento de がありましたが,用例を調べてみたところ en la momento de ... が30例見つかったのに対して,momento の前に je や c^e を使った例は1例もありませんでしたから,en la momento de ... は定着した表現になっていると言ってよいでしょう。ただし c^e la kolizio(衝突のときに)と言う表現は使えます。momente は en unu momento(一瞬のうちに)と言う意味ですから,la kolizio momente ... は「衝突の瞬間(に)」を表していません。

わたしはバスの座席から投げ出されました: mi estis j^etita de sur mia seg^o de la au^tobuso のように言うことができます。de sur mia seg^o の de sur は el も使えます。de sur を使うか el を使うかは,座席の形によります。肘掛のない通勤用の電車の座席なら de sur を使いますが,肘掛のある場合は el を使うほうが自然です。つまり「の上から」か「の中から」かという違いです。「座席」には sidejo, sidloko も使えますが,ここでは mia を付けましょう。何も付けない seg^o や la seg^o はよくありません。
「投げ出されました」は estis j^etita, estis elj^etita, j^etig^is, elj^etig^is などを使って言うことができます。forj^eti には「(不要なものを)投げ捨てる」と言う意味があるので,estis forj^etita はここではよくありません。-at は「〜される」という動作が未完の状態であることを示すので,estis elj^etata は estis elj^etita としなければなりません。

訳例
En la momento de la kolizio mi estis j^etita el mia seg^o de la au^tobuso.


課題文n-ro363 スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ(Sri-J^ajavardanepurakoto)と言う都市は,どこの国にあるのですか。

解説
スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ(Sri-J^ajavardanepurakoto)と言う都市: la urbo Sri-J^ajavardanepurakoto または la urbo nomata Sri-J^ajavardanepurakoto や la urbo, kies nomo estas Sri-J^ajavardanepurakoto のように言えばよいでしょう。nomata urbo de Sri-J^ajavardanepurakoto のようには言いません。la urbo nomita の nomita は nomata としましょう。nomi には「を〜と言う名前で呼んでいる」という意味の線動詞としての働きと,「を〜と名づける」と言う意味の点動詞としての働きがありますが,ここでは線動詞の受身形「〜と呼ばれている」と言う意味ですから nomata を使います。

参考:
La infano estis nomita Marko.(その子は Markoと名づけられました)
La infano estas nomata Marko.(その子は Markoと呼ばれています)

どこの国にあるのですか: En kiu lando estas でよいのですが,estas は trovig^as, sin trovas, ekzistas, situas としても意味はほとんど同じです。「国」は lando や s^tato を使って言うことができます。En kiu lando trovig^as, la urbo ... のようにコンマを付けるのはよくありません。En kiu lando は文頭に置き,c^u は付けません。

Sri-J^ajavardanepurakoto はスリランカの首都です。長い名前なので現地では「コッテ」と呼んでいるそうです。今回はじめて参加されたPhullapadmaさんによると,この名前は「聖なる,勝利の増大の,城砦の中の町」と言う意味です。(「お便りコーナー2007-03-21」をご覧ください。) 

訳例
En kiu lando estas la urbo Sri-J^ajavardanepurakoto?


課題文n-ro364 わたしは世界でいちばん短い名前の市に住んでいます。

解説
世界でいちばん短い名前の市: la urbo(,) kies nomo estas la plej mallonga en la mondo または la urbo(,) kiu havas la plej mallongan nomon en la mondo と言います。urbo は kies nomo または kiu havas 以下で限定されているので,冠詞を付けます。形容詞の最上級を表す plej の前には冠詞を付けます。ただし,下に挙げた例文のように,ほかの物と比べるのではなく,同一物の中で比べる場合には冠詞を付けません。

参考:
C^i tiu lago estas la plej profunda en la mondo.(この湖は世界でいちばん深い)
C^i tiu lago estas plej profunda c^i tie.(この湖はここがいちばん深い)

わたしは住んでいます: mi log^as でよく,応募訳もすべてこの表現でした。

訳例
Mi log^as en la urbo(,) kies nomo estas la plej mallonga en la mondo.
Mi log^as en la urbo(,) kiu havas la plej mallongan nomon en la mondo.


課題文n-ro365 Manjaは,目鼻立ちが姪(めい)に似ているとよく言われます。

解説
目鼻立ち: 「目鼻立ち」は 正確に言えば,la tuto de la vizag^aj trajtoj ですが,ここでは la trajtoj de Manja または構文によっては s^iaj trajtoj と言えばよいでしょう。trajto は複数形で使われるのが普通です。fizionomio と言う語も使えますが,この語は単数形で使われます。

姪(めい)に似ている: trajtoj を主語にして言う場合は similas al tiuj de s^ia nevino または estas similaj al tiuj de s^ia nevino と言います。la trajtoj de Manja を使った文で al tiuj de sia nevino と言うと,sia が Manja ではなく trajtoj を再示するので,この表現は誤りです。trajtoj を主語にして similas al s^ia nevino と言うのも誤りです。日本語では「姪に似ている」と言いますが,「Manja の目鼻立ち」が似ている対象は「Manja の姪」ではなく,「Manja の姪の目鼻立ち」であるからです。
別の例を挙げて説明してみましょう。日本語で「この花の色はあそこにある花より明るい」と言うのを聞いても不自然な表現とは感じられませんが,これを La koloro de c^i tiu floro estas pli hela ol la floro tie と言うと,「花の色」と「花」とを比べることになるため,この文は成立しません。これは「この花の色」と「あそこにある花の色」とを比べて言っているのですから,la koloro de c^i tiu floro と la koloro de la floro tie を使って言えばよいのですが,la koloro の反復を避けるために tiu を使って La koloro de c^i tiu floro estas pli hela ol tiu de la floro tie と言うのが普通です。この tiu のところに tio や ili を使うのは誤りです。s^ia nevino を la nevino とするのはよくありません。

Manjaはよく言われます: この課題文が言っているのは,Manja がいろんな人たちから言われるということなのですが,寄せられた訳のほとんどは Oni ofte diras ke と言う形でした。これは Manja に対してではなく,人々の間でよく言われているという表現です。ここでは Oni ofte diras al Manja ke または Manja ofte au^das ke と言うのがよいでしょう。Manja estas ofte dirita ke のように言うことはできません。Manja estas ofte komentita ke もよくありません。komenti は diri au^ skribi sian opinion pri tio, kion iu diris, skribis au^ faris(ある人が言ったり書いたりおこなったことについて自分の意見を言ったり書いたりする)という意味です。
「よく」は c^iam ではなく ofte を使って言うのがよいでしょう。過去のことではなく今でも言われることを述べているのですから au^dis ではなく au^das を使います。

訳例
Oni ofte diras al Manja ke la trajtoj de s^i similas al tiuj de s^ia nevino.


課題文n-ro366 この国の気候は,日本より温暖です。

解説
この国の気候: la klimato de c^i tiu lando と言います。「気候」に vetero や temperaturo を使うのはよくありません。「気候」は天候や気温と大いに関係はありますが,「天気」や「気温」がある時点での様相を表すのに対して「気候」は長期間の平均的な様相を表すと言う違いがあります。従って hodiau^a vetero(きょうの天気) や nuna temperaturo(現在の気温)と言うことはできても hodiau^a klimato や nuna klimato と言うことはできません。c^i tiu は tiu c^i としても同じですが,c^i tiu のほうが多用されるのはエスペラントのアクセントと関係があります。c^i tiu は母音が三個ですが,エスペラントのアクセントはうしろから2番目の音節にあるので,弱強弱のリズムで発音されます。これはほかの三音節の語(monato, sabato, vetero など)と同じですが,tiu c^i は強弱弱のリズムになります。tiu c^i だけが単独で使われることはあまりないので,これだけを取り上げて tiu c^i が非エスペラント的なリズムと言うことはできませんが,c^i tiu が好まれる理由はお分かりいただけるでしょう。klimato は de c^i tiu lando で限定されているので,冠詞を付けます。

日本より: ここでは「日本の気候より」と考えて,ol tiu de Japanio としましょう。この tiu は la klimato の代わりに使われています。ol tio de Japanio や ol g^i de Japanio は誤りです。ol Japanio とすると,「この国の気候」と「日本」とを比べる形になって論理的におかしな文になってしまします。

(より)温暖です: estas pli milda と言うのがよいでしょう。varma を使った訳が多く寄せられましたが,pli varma は「(日本より)暑い」という感じに近くなります。milda klimato は「酷暑もなく,酷寒もない気候」を言いますが,pli varma klimato は日本より気温の高い地域,例えば赤道直下の国の気候についても使うことができる表現です。milda の代わりに modera を使うこともできます。

訳例
La klimato de c^i tiu lando estas pli milda ol tiu de Japanio.


課題文n-ro367 キリンの頚(くび)は馬の頚よりずっと長い。

解説
キリンの頚は: la kolo de g^irafo と言います。g^irafoは無冠詞でよいのですが,koloには冠詞が必要です。g^irafo に冠詞を付けると「キリンと言うもの」と言う改まった表現になります。無冠詞の g^irafo は「どのキリンも」と言う感じの表現になりますが,de g^irafo によって限定される kolo には冠詞が必要です。kolo はどのキリンでもひとつしかないからです。 ある物やある動物,ある人にとって,ひとつ(一人)しかない(いない)ものや人を表すときには冠詞を付けます。

参考:
amiko de Masao(マサオの友だち)=unu el la amikoj de Masao(マサオの友だちのうちの一人)
la patrino de Masao(マサオの母親)
la bus^o de homo(人間の口)
mano de homo(人間の手)
la dekstra mano de homo(人間の右手)

馬の頚: la kolo de c^evalo ですが,ここでは la kolo の反復を避けるために tiu de c^evalo と言います。

よりずっと長い: 比較級を強めて「ずっと〜」と言うときは,pli の前に multe を置くので,ここでは multe pli longa ol と言います。pli multe longa ol, pli tre longa ol, pli longega ol, tre pli longa ol, ege pli longa ol はいずれも誤りです。

訳例
La kolo de g^irafo estas multe pli longa ol tiu de c^evalo.


課題文n-ro368 カモメの翼はハトの翼よりずっと長い。

解説
カモメの翼は: la flugiloj de mevo と言うのが普通ですが,単数形の la flugilo を使った訳がいくつかありました。日本語の名詞は単数も複数も同じ形で表しますが,「カモメの翼は長い」と言うときは両翼のことを指すのが普通で,エスペラントでは La flugiloj de mevo estas longaj と言います。ふたつ以上あるものを単数で言うと,その中のひとつを指します。例えば La formo de c^i tiu folio similas al tiu de mano de homo(この葉の形は人間の手の形に似ています)の mano de homo は,人間の手のことですが,右手あるいは左手のどちらかを指します。la manoj de homo とすれば人間の両手を指します。brako, la brakoj や piedo, la piedoj などについても同じことが言えます。
「翼」を表す alo と言う語もありますが,一般に使われているのは flugilo です。

ハトの翼: la flugiloj de kolombo ですが,la flugiloj の繰り返しを避けて tiuj de kolombo と言うのがよいでしょう。

よりずっと長い: multe pli longaj ol と言います。主語に la flugiloj を使いながら,longa とした訳がいくつかあったのは,主語と離れているので,ついうっかり -j を付けるのを忘れたのでしょうが,形容詞の「数」は必ず主語の「数」と一致させなければならないので注意しましょう。

訳例
La flugiloj de mevo estas multe pli longaj ol tiuj de kolombo.


課題文n-ro369 カンガルーの後脚は前脚よりずっと長い。

解説
カンガルーの後脚: la postaj kruroj de kanguruo でよいのですが,postaj は la malantau^aj としても同じです。「脚」は piedoj でなく kruroj を使いましょう。piedo は「足首から下」を指しますが,kruro は漠然と「脚全体」を指すことができます。日常会話のレベルでは piedo は「足」,kruro は「脚」と覚えておいてよいでしょう。gambo を kruro と同じ意味に使う人もいますが,PV や PIV では gambo を「人間の脚」に限定していますし,その影響を受けている民族語の辞書,例えば Esperanto-C^ina Vortaro(1987, 北京) でも「(人の)下肢」と言う訳語を与えているので,gambo を人間以外の脚に使うと奇異に感じる人がいるでしょう。

前脚: la antau^aj kruroj と言いますが,ここでは文の主語が kruroj ですから,同じ語の反復を避けるため kruroj を省略して la antau^aj と言うのが普通です。無冠詞の antau^aj はよくありません。tiuj de la antau^aj や antau^aj tiuj, antau^aj tio de tiu は誤りです。la antau^aj de tiu の tiu は 文の主部の中の kanguruo を指すので誤りではありませんが,de tiu は ties にして ties antau^aj とするほうがよいでしょう。ただし,la postaj kruroj de kanguruo が文頭にあるこの文で la antau^aj と言えば「カンガルーの前脚」を指しているのは明らかなので,ties を使って言う必要はありません。ties は g^ia, lia, s^ia などと比べると,使われるのはあまり多くはありませんが,次のような場合には lia などと区別して使われます。下の例文で ties を liaj とすると,主語 Li の眼鏡が壊れたと言う意味になります。

参考:
Li kunbatig^is kun preterpasanto, kaj ties okulvitroj rompig^is.
彼は通行人とぶつかり,その人(=通行人)の眼鏡が壊れた。(『エスペラント日本語辞典』(JEI, 2006)から引用)

よりずっと長い: multe pli longaj と言います。

訳例
La postaj kruroj de kanguruo estas multe pli longaj ol la antau^aj.


課題文n-ro370 この国の湖の数は日本の二倍近く多い。

解説
この国の湖の数: la nombro de la lagoj en c^i tiu lando と言います。「湖」はここでは,この国の中にある「すべての湖」のことですから,冠詞付き複数形の la lagoj を使います。無冠詞の lagoj en c^i tiu lando は「この国の中の(いくつかの)湖」を指します。nombro は冠詞付きの単数を使います。「この国の湖の数」と言うのはひとつで,限定されているからです。

日本の: 「日本の湖の数」は la nombro de la lagoj en Japanio ですが,同じ語の反復を避けて tiu en Japanio と言います。この tiu は la nombro de la lagoj のことです。tiuj とした訳がいくつかありましたが,ここで比べているのは lagoj ではなく la nombro (de la lagoj)ですから,単数形の tiu を使います。

二倍近く多い: preskau^ duoble pli granda ol と言います。日本語では「より」が入っていませんが,エスペラントでは ol を入れて言います。数について「近く」と言うときは preskau^ を使って言うのがよいでしょう。「〜近く」と言うのは「〜よりも少ない,もう少しで〜になる」ことを表します。例えば,「95人集まった」ことを「100人近く集まった」と言えますし,エスペラントでは kolektig^is preskau^ cent homoj と言えますが,これを kolektig^is proksimume cent homoj や kolektig^is c^irkau^ cent homoj と言うと「100人くらい(前後)集まった」を表すので,100人を超えた場合も含みます。日本語では「数が多い」と言いますが,エスペラントでは la nombro estas granda と言います。multaj と言う訳もいくつか寄せられました。multa はよくありませんが,この文の主語は nombro ですから,修飾語句をそぎ落として la nombro estas multaj としてみると,形容詞に -j が付いているのがおかしいこともすぐ分かりますね。なお,民族語の影響で「多数の」を表す multnombra と言う語もありますが,grand(a)nombra を使うほうがよいでしょう。(ただし,この課題文では使いません。)

訳例
La nombro de la lagoj en c^i tiu lando estas preskau^ duoble pli granda ol tiu en Japanio.