課題文n-ro391 わたしは通りがかった人に,この道を行けば駅へ行けますかと尋ねました。

解説
通りがかった人に尋ねました: 「通りがかった人」は preterpasanto を使うのがよいでしょう。pasanto(通っている人,通行人)は話し手との距離に関係がないため,ずっと離れた人も含むのに対して,preterpasanto は「そばを通っている人」を指すからです。日本語では「通りかかる人」と言わずに「通りかかった人」と言いますが,その過去形の表現をそのまま preterpasinto とすると,「そばを通り過ぎていった人」を指すので,ここでは使えません。preterpasanto に冠詞は付けません。聞き手に「あの人のことだ」と分かる場合には la preterpasanto と言いますが,ここではそうではないからです。
「尋ねました」は demandis ですが,この語は demandi al iu ではなく demandi iun の形で使われるのが普通ですから,「通りがかった人に尋ねました」は demandis preterpasanton と言いましょう。

この道: ほとんどの訳文では c^i tiu vojo または c^i tiu strato が使われていましたが,この表現が使えるのは,「この道を行けば駅へ行けますか」と尋ねたのと同じ道での発話である場合に限ります。日本語の場合には,質問した場所以外でも課題文のように言うことができますが,エスペラントでは質問した道と違う場所での発言の場合には c^i tiu を使って言うことはできません。話された言葉をそのまま " " の中に入れて伝えるのを直接話法と言い,話された言葉の内容を自分の言葉になおして伝えるのを間接話法と言います。話法が変わると,時,所,人称が変わるので注意が必要です。

参考:
下の例文はどちらも(「きのうこのあたりで財布を落としました」とKarloはわたしに言いました)と言う内容を伝えています。

直接話法: Karlo diris al mi, "Mi perdis mian monujon c^irkau^ c^i tie hierau^"

間接話法: Karlo diris al mi ke li perdis sian monujon c^irkau^ tie la antau^an tagon.

駅へ行けます: n-ro389で解説してありますので,それをご参照ください。

訳例
Mi demandis preterpasanton, c^u tiu strato kondukas al la stacidomo.


課題文n-ro392 一週間前 Petroはわたしに「あしたぼくのところへ来ませんか」と言いました。

解説
一週間前: antau^ unu semajno または antau^ semajno と言えばよいのですが,これを文頭に置いたときにコンマで区切るのはよくありません。

Petroはわたしに「あしたぼくのところへ来ませんか」と言いました: Petro diris al mi, "C^u vi ne venos al mi morgau^?" と言うか,あるいは間接話法にして Petro proponis al mi ke mi venu al li la sekvantan tagon と言うことができます。C^u vi ne venos al mi morgau^? は C^u vi ne vizitos min morgau^? としても同じような意味を表すことができます。「ぼくのところへ」を直訳して al mia loko と言うのはよくありません。日本語で「ぼくへ(来ませんか)」と言うとおかしな言い方になるので,「ぼくのところへ(来ませんか)」と言いますが,エスペラントではこういう場合には al mia loko でなく al mi と言います。bonvole venu c^e mi の c^e mi は c^e min としましょう。間接話法で書くときは vi が mi に変わり,morgau^ が en la sekvanta(sekva) tago に変わることに注意してください。proponis min は proponis al mi に Petro diris min は Petro diris al mi とするほうがよいでしょう。c^u mi venu al sia domo の sia は lia に,c^u mi volas viziti sian hejmon の sian は lian にします。

訳例
Antau^ unu semajno Petro diris al mi, "C^u vi ne venos al mi morgau^?"
Antau^ semajno Petro proponis al mi, ke mi venu al li en la sekvanta tago.


課題文n-ro393 「いつ日本に来たのですか」とわたしは Karlo に言いました。

解説
「いつ日本に来たのですか」: "Kiam vi venis al Japanio?" と言えばよいのですが,venis は alvenis としてもよいでしょう。alveni は veni の強意形です。al Japanio は en Japanion としても,ここではほとんど同じです。強いて違いを言うとすれば,al Japanio は「日本へ着く」を表し,en Japanion は「日本へ入国する」と言う違いです。「日本へ入国する」と言う意味では対格を使わなければならないので,en Japanio は en Japanion としましょう。

わたしは Karlo に言いました: mi diris al Karlo と言います。"Kiam vi venis al Japanio?"の前に置くときはコンマで区切りましょう。" "を使わない形(間接話法)で書くときは,diris al が demandi と変わるのが普通です。demandi は他動詞として demandi iun の形で使われるのが普通ですが,demandis Karlon とすると固有名詞の形が変わるので,それを避けるために demandis Karlo-n としたり,demandis al Karlo と書くこともできます。ただし外国人は Karlo が Karlon に変わることが気にならないようで,特にスラブ系の言語では固有名詞の語尾変化は当たり前なのです。もうずいぶん前のことになりますが,わたしのことがチェコの新聞に載ったときは「サカタダシの」(エスペラントなら de Saka Tadasi)が Sakova Tadasiho となっていました。

訳例
Mi diris al Karlo, "Kiam vi venis al Japanio?"
Mi demandis Karlon, kiam li venis al Japanio.


課題文n-ro394 マサオは「この件について,わたしは第三者として意見を述べたいと思います」と発言しました。

解説
この件について: pri c^i tiu afero, koncerne c^i tiun aferon, rilate c^i tiun aferon などのように言うことができます。afero(n) は problemo(n) も使えますし,koncerne, rilate には koncerne al, rilate al と言う形もあります。al の後では -n が付かないことに注意してください。

第三者として: kiel tria persono, kiel krompersono, kiel tria partio と言えばよいでしょう。いずれも無冠詞で使います。序数詞(unua, dua, tria など)はたいてい冠詞を付けて使われるので,この場合も冠詞を付けたくなりますが,「第三者」と言うのは特定の人を指すのではなく,何人もいるのですから無冠詞で使います。無冠詞の tria persono は unu el la triaj personoj を表します。『エスペラント日本語辞典』では,見出し語 partio のところには 冠詞付きの la tria partio, 見出し語 tria のところには無冠詞の tria partio が載っていると言う不整合が見られますが,上に述べたような理由で冠詞付きの表現は使われないのが普通です。tria partio の partio は「個人または組織」を指す語で,ここでは「個人」を指しているのですから,unu el tria partio は unu el la triaj partioj としなければなりません。

意見を述べたいと思います: 「意見を」は opinion ですが,ここでは mian opinion とします。mian を付けなかったり,mian の代わりに冠詞を付けるのはよくありません。体の一部や身に着けている衣服などについて言うときは,例えば Mi tenas katidon en miaj brakoj(わたしは子猫を両腕に抱いています) の en miaj brakoj を en la brakoj と言うことはできますが,この課題文の場合 mian の代わりに la を使うことはできません。
「(意見を)述べたいと思います」は volas diri, volas eldiri, volas esprimi などのように言えばばよいでしょう。volas は deziras と言い換えることもできますし,volus, dezirus のように -us を使って言うと,「と思うのですが」と言う丁寧で控えめな表現になります。volas opinii はよくありません。opinii は「意見を述べる」と言う意味ではなく,「意見を持っている」と言う意味です。

発言しました: 直接話法で" "の前または後ろに置くときはや,間接話法で ke の前に置くときは diris を使って言うのがよいでしょう。どちらの場合も parolis を使うのはよくありません。ロシア語などでは diri と paroli を区別しないので,その影響でザメンホフの用例にもこの混同が見られますが,今ではこの混同はよくないとされています。

訳例
Masao diris, "Mi volus esprimi mian opinion pri c^i tiu afero kiel tria persono."


課題文n-ro395 アキオとハルオは当事者ですが,あなたたちは第三者です。

解説
アキオとハルオは当事者です: Akio kaj Haruo estas la koncernatoj と言います。無冠詞の koncernatoj を使った訳が応募の大部分を占めましたが,この語には冠詞を付けて言いましょう。koncernato はいつも冠詞を付けて使われるとおぼえておいてよいでしょう。例えば,聞き手が知っている知っている訴訟事件について言うときは la koncernatoj de la afero(例の訴訟事件の当事者) と冠詞付きの afero を使って言いますし,聞き手の知らない訴訟事件の当事者について言うときは,la koncernatoj de afero(ある訴訟事件の当事者) と無冠詞の afero を使いますが,どちらの場合も koncernato には冠詞が付きます。ここでは聞き手は何の当事者であるか分かるはずですから, la koncernatoj de la afero の de la afero が略されていると考えてよいでしょう。
koncernantoj は誤りです。koncerni は Tio ne koncernas min(そのことはわたしに関係ありません)と言うように使われる語で Mi ne koncernas tion のようには使われないので,「当事者」は koncernanto ではなく,koncernato(=koncernata persono)と言わなければなりません。koncernuloj も誤りです。-ul- には -at- が持っている受身の意味がないからです。

あなたたちは第三者です: vi estas triaj personoj, vi estas krompersonoj, vi estas triaj partioj のように言えばよいでしょう。この vi は複数の vi ですから,vi estas unu el la triaj partioj と言うことはできません。

訳例
Akio kaj Haruo estas la koncernatoj, sed vi estas triaj personoj.


課題文n-ro396 当事者が誰と誰であるのか,あなたは知っていますか。

解説
あなたは知っていますか: C^u vi scias と言います。ここでは後に kiuj estas と続くのですが,koni を使って言うことはできません。koni は koni ion または koni iun の形で使われるだけで,koni ke や koni c^u ..., koni kiu(j) ... の形で使われることはありません。。

当事者が誰と誰であるのか: kiuj estas la koncernatoj と言うのが普通です。「誰と誰」と言う日本語を直訳して kiu kaj kiu とすると,外国人には奇異に思われるでしょう。日本語を話題にしているときに,「日本語では誰と誰(kiu kaj kiu)と言う言い方をすることがあります」と言うような場合にはよいのですが,普通の会話で使うのは避けましょう。koncernatoj には冠詞を付けます。koncernantoj は誤りです。いずれも前回の解説の中で説明してありますので,読み返してみてください。
この文は C^u vi scias kiujn koncernas la afero?のように言うこともできます。

訳例
C^u vi scias, kiuj estas la koncernatoj?


課題文n-ro397 わたしは,その会合に誰と誰が出席していたのか,おぼえていません。

解説
わたしはおぼえていません: mi ne memoras と言います。

その会合に誰と誰が出席していたのか: kiuj c^eestis en la kunveno と言えばよいのですが,en la kunveno は la kunvenon とすることもできます。「会合」には kunsido も使えますが,kongreso は不適当でしょう。kongreso には「大会」と言う訳語を当てるのが普通で,kunveno, kunsido よりずっと大きな規模の集まりを指して使われ,ある種の荘厳な雰囲気を感じさせる語です。
「出席していた」の語感は partoprenis より c^eesti に近いと言えるでしょう。c^eestis en la kunvenon と言う表現は誤りです。

この課題文は,上のふたつの文をつなげばよいのですが,この文のように疑問文をつなぐ場合には ke を使いません。memori や scii などの動詞に普通の文をつなぐときは ke を入れることが必要ですから,このつなぎ方の違いをしっかりおぼえて,mi ne memoras ke kiuj ... のような誤りを犯さないようにしてください。『エスペラント日本語辞典』には動詞がどのような要素とともに使われるかが示されているので,memori のところには memori<ion, ke>と出ていますが,mi ne memoras のような否定文の場合には ke を入れずに c^u や ki-vorto(kia, kie, kio, kiel など ki-の付いている語)が続くので,memori<ion, ke/c^u/ki->のように表示するほうが学習者に親切と言えるでしょう。

訳例
Mi ne memoras, kiuj c^eestis en la kunveno.


課題文n-ro398 わたしは,ハルオがエスペランチストかどうか知りません。

解説
わたしは知りません: Mi ne scias と言います。

ハルオがエスペランチストかどうか: c^u Haruo estas esperantisto と言えばよいでしょう。au^ ne を付けても誤りではありませんが,付けなくてもかまいません。日本語では「エスペランチストか知りません」と言うよりも「エスペランチストかどうか知りません」と言うほうが多いと思いますが,エスペラントでは au^ ne を付けないほうが多いようです。
この文は Mi ne scias と C^u Haruo esas esperantisto? と言うふたつの文をつないでひとつにした文ですが,前回述べたように疑問文をつなぐときには ke を入れないでつないで,疑問符(?)を終止符(.)に変えます。
「エスペランチスト」は Esperantisto よりも esperantisto と書くほうが,いまでは普通になっています。

訳例
Mi ne scias(,) c^u Haruo estas esperantisto.


課題文n-ro399 きのうの委員会に出席した委員は何人だったか教えていただけませんか。

解説
きのうの委員会: la hierau^a komitata kunsido または la hierau^a kunsido de la komitato のように言います。komitata kunsido は komitat-kunsido と1語にすることもできます。kunsido の変わりに kunveno を使うのはよくありません。kunsido は「協議や討議をしたり,あるいは何かを決定するための,役員や委員の集まり」のことで,日本語の「会議」がこれに当たりますが,kunveno は何かをするための不特定の人たちの集まり」のことで,日本語の「会合」や「集会」がこれに当たります。注意しなければならないのは,日本語の「委員会」は「委員で構成される組織」と言う意味と「委員が集まって行われる会議」と言う意味とがあることです。komitato は「委員で構成されている組織」と言う意味ですから,「きのうの委員会」と言うときは上に挙げたように kunsido を入れた表現を使わなければなりません。

に出席した委員は何人だったか: 「何人の委員が出席したのか」と言う表現の kiom da komitatanoj c^eestis en を使って言えばよいでしょう。en la hierau^a komitata kunsido のところは en を入れないで la hierau^an komitatan kunsidon とすることもできます。kiom da personoj と言うのはよくありません。委員会には委員だけでなく,記録をとるためなどに事務局の人が出席するのが普通ですから,出席した委員の数を尋ねるときは personoj でなく komitatanoj を使って尋ねなければなりません。

教えていただけませんか: C^u vi bonvolus sciigi al mi と言うのがよいのですが,informi を使って言うこともできます。「教えてください」と言う意味の Bonvolu sciigi al mi を使ってもよいでしょう。instrui を使うのは誤りです。instrui は知識や技術を教えるときには使えますが,情報を教えるときには instrui ではなく,sciigi や informi を使って言います。

この課題文の場合,下に挙げた訳例のように,「きのうの委員会」を単に la hierau^a kunsido と言ってもよいでしょう。また,la hierau^a komitata kunsido や la hierau^a kunsido de la komitato, la hierau^a komitat-kunsido を使って言うときは,komitatanoj を使わないで kiom da membroj c^eestis ... のように言うこともできます。

訳例
C^u vi bonvolus sciigi al mi, kiom da komitatanoj c^eestis en la hierau^a kunsido?


課題文n-ro400 委員会はいま始まったところです。

解説
委員会: la komitata kunsido, la komitat-kunsido, la kunsido de la komitato のように言います。komitato を使うのはよくありません。komitato がなぜ不適当であるのかについては,前回の解説をお読みください。

いま始まったところです: j^us komencig^is, j^us malfermig^is, estis j^us malfermita などのように言えばよいでしょう。この「いま」は「今と見なせるほど近い過去」を指している語ですから,nun ではなく j^us を使って言います。j^us antau^ momento のようには言いません。j^us は antau^ tre mallonga tempo と言う意味で,日本語の「たった今,今さっき」に当たる表現で,過去形とともに使われます。j^us は副詞ですが,ほかの副詞と違って修飾できるのは,Mi j^us alvenis(わたしはいま着いたところです)とか j^us bakita pano(焼きたてのパン)などのように,過去形の動詞や動詞の完了分詞形容詞だけで,例えば j^us hierau^ のように使うことはできません。
ところで,j^us の j^u を日本語の「ジュース」の「ジュ」と同じように発音していませんか。現代の日本語では「ジ」と「ヂ」の区別がなくなって,すべて「ジ」になっているため,日本人には j^a, j^u, j^o の発音が g^a, g^u, g^o になってしまう人が多いようです。エスペラントには g^us と言う語はありませんから,j^us を g^us と発音しても別の意味に取られることはありませんが,aj^o, ag^o のように j^ と g^ の区別が必要な語もあります。g^ は破擦音(破裂してすぐ摩擦音に変わる音),j^ は摩擦音です。伊集院と言う苗字がありますが,この「イジュウイン」の「ジュウ」は j^u の長音で,「ジュース」の「ジュー」は g^u の長音です。R と L の区別も意識して発音の練習を続けると,やがて無意識に区別して決して間違えることがないようになりますが,g^, j^ の区別についても同じことが言えますから,ちょっとした時間を見つけて毎日練習してみませんか。

訳例
La komitata kunsido j^us komencig^is.