課題文n-ro471 わたしが自分の祖父について知っていることは,それだけです。

解説
わたしが知っていることは,それだけです: Tio estas c^io, kion mi scias というのがよいでしょう。Tio estas c^io (kion ...) は,いわば決まり文句で,よく使われる表現ですから,おぼえておきましょう。今回の課題文に寄せられた訳文の型はいくつもあって,それぞれ工夫の跡が見えますが,外国人には分かりにくい表現がありました。そのいくつかをあるアカデミー会員に見せたところ,次のようなコメントを寄せてくれました。(文を短くするために「自分の祖父について」を「彼について」に変えてあります。)

Estas nur tio, kion mi scias pri li. 意味は読み取れるが,文としては奇妙。Nur tion mi scias pri li とすれば分かる。

Nur tio estas mia scio pri li. すこし考えてみてようやく意味は取れたが,たいへん奇妙な文。

Tio kion mi scias pri li, estas nur tiom. まったく意味不明の文。Nur tiom mi scias pri li とすれば意味の通じる文になる。

なお,上の訳文では scias を使いましたが,これは情報,知識を持っているという意味の語ですから,自分が見聞きしたことを指す場合には konas を使っていいます。

自分の祖父について: en rilato al mia avo という言い方もありますが,pri mia avo というのが,いちばん簡潔な表現です。文章を書いていてすぐ近くに pri が使われているので,同じ語を使うことを避けたいというような場合は別ですが,そうでなければ pri を使うのがよいでしょう。

訳例
Tio estas c^io, kion mi scias pri mia avo.


課題文n-ro472 マサオがきのうあなたに話したことは,それだけでしたか。

解説
マサオがきのうあなたに話したこと(のすべて): (c^io), kion Masao diris al vi hierau^ のようにいうのがよいでしょう。hierau^ の位置は Masao の直前,または diris の直後に置くこともできます。「話した」に parolis を使うのは,ここでは誤りです。paroli は paroli pri の形で使われ,paroli ion のようにいうことはできませんから,c^io, kion Masao parolis は誤りになります。『日本語エスペラント辞典』で「いう」を引くと diri と載っていますし,「話す」を引くと paroli が載っているので,「いう=diri」, 「話す=paroli」と覚えてしまうと,エスペラントで話したり書いたりするときに,誤った表現を使うことになります。もともと日本語とエスペラントでは単語の意味や用法が対応しないことが多いので,エスペラントの単語の意味は『エスペラント日本語辞典』やエス・エス辞典などで,確かめて正しく使うように心がけましょう。ネット上には Reta Vortaro というたいへんよいエス・エス辞典があって無料で利用できます。『作文のためのエスペラント類義語集』も語義の正確な理解に役立つと思います。

それだけ(それがすべて)でしたか: C^u tio estas c^io といえばよいでしょう。日本語に引かれて estis を使った訳がありました。「マサオが話した」のはきのうのことですから,過去形の diris を使っていいますが,「相手が話したことが,マサオの話のすべてなのか」と確かめているのは現在の行為ですから,estas を使います。

訳例
C^u tio estas c^io, kion Masao diris al vi hierau^?


課題文n-ro473 常任委員会は毎週土曜日に開かれます。

解説
常任委員会: 日本語の「常任委員会」には,「常任委員で構成される組織」という意味と「常任委員が参加して開かれる会議」という意味とがあります。この課題文では後者の意味ですから,kunsido de la konstanta komitato といわなければなりませんが,la konstanta komitato を主語にした訳が,応募訳の半数近くありました。kunsido de la konstanta komitato を使った訳でも,kunsido に冠詞を付けて la kunsido de la konstanta komitato とした訳が大部分でしたが,この「常任委員会」は毎週土曜日に開かれる会議のうちで特定された会議を指しているのではないので,無冠詞にしなければなりません。konstanta komitato には冠詞を付けます。いま話題にしている組織の常任委員会とか,あるいは聞き手が知っている,またはかかわっている常任委員会であることが明らかであるからです。

毎週土曜日に: en c^iu sabato または c^iusabate といいます。c^iun sabaton ということもできますが,c^iu sabato は誤りです。

開かれます: kunsido de la konstanta komitato を主語にして okazas を使うか,kunsido を目的語にして,oni okazigas kunsidon de la konstanta komitato といえばよいでしょう。oni は ni とすることもできます。「開かれる」に malfermig^i を使うのは,ここではよくありません。日本語の「開かれる」には,「行われる」という意味と「開始される」という意味とがありますが,会議などについて使われる malfermig^i は komencig^i と同じ意味ですから,二日以上にわたって行われる会議の開始についていうとき以外では,malfermig^i を使うことはできません。ただし,例えば「会議は9時に開かれます」のように開会時刻をいうときは,La kunsido malfermig^as je la nau^a. と malfermig^i を使っていいます。この課題文のように,現在を中心として繰り返されている行為についていうときは, -as を使っていいます。

訳例
Kunsido de la konstanta komitato okazas c^iusabate.


課題文n-ro474 来月の委員会は,隔週に開きます。

解説
来月の委員会は:「来月は委員会を(隔週に開きます)」という構文にすれは, En la venonta monato を文頭に置くか,または文末に置きますが,「来月開かれる委員会は」という意味に取って komitata kunsido または kunsido de la komitato の直後に置くこともできます。どちらの形を取っても実用上の差異はほとんどありません。来月隔週に開かれる会議のうちの特定の会議を指しているのではないので,kunsido は無冠詞単数を使います。「来月」という名詞に当たるエスペラントは la venonta monato ですが,ヨーロッパでは la sekvanta(sekva) monato との混同が見られます。日本語では「来月」(今月の次の月)と「翌月」(その月の次の月)とは区別して使われるので,例えば,「わたしは来月海外旅行に出かけました」という文はおかしな文ですが,エスペラントでは Mi ekvojag^is eksterlanden en la venonta monato のような文に出会うことがあります。ただ,大部分の使用例は en la venonta monato は -os の動詞とともに使われ,en la sekvanta monato は -is の動詞とともに使われているので,エスペラント文を書くときはこの二つの表現を区別して使うことをお勧めします。en la venonta monato は,la venontan monaton, venontamonate としても意味は同じです。venonta monate と2語に書くのは誤りです。

隔週に: c^iun duan semajnon, en c^iu dua semajno, dusemajne などを使っていえばよいでしょう。

開きます: 「委員会」を主語にすれば okazos を使いますし,「委員会」を目的語にすれば okazigos を使います。どちらの場合も,-as でなく -os を使うことに注意してください。現在を中心にして繰り返されている行為を表すときは -as を使っていいますが,この課題文のように未来を表す表現がある場合には,-os を使わなければなりません。

訳例
En la venonta monato ni okazigos kunsidon de la komitato c^iun duan semajnon.


課題文n-ro475 マサオは2000年に結婚し,翌年には Tanjo が生まれました。

解説
マサオは2000年に結婚し: Masao edzig^is en la jaro 2000, kaj といいます。日本語では,「男女が結婚する」場合も,「男性が結婚する」場合も「女性が結婚する」場合も区別しないで,「結婚する」といいますが,エスペラントでは「男女が結婚する」場合は geedzig^i, 「男性が結婚する」場合は edzig^i, 「女性が結婚する」場合は edzinig^i と区別していいます。ここでは男性の結婚についていうのですから,edzig^i を使います。kaj 以下では主語が変わるので上に書いたように, kaj の前にコンマを付けることをお勧めします。
「2000年に」は en la jaro 2000 といいます。2000 は du mil と読みます。en la jaro 2000-a は誤りではありませんが,普通は序数詞(unua, dua, tria,...)ではなく基数詞(unu, du, tri,...)が使われます。これは la pag^o 2 や la artikolo 9 についても同じことがいえます。du mil jaro や 2000jare は誤りです。2,000 のようにコンマを入れるのはよくありません。年号にはコンマを入れません。コンマは 0,2 のように小数点を表すのに使われます。日本ではアメリカ式にピリオドを使って 0.2 のように書きますが,この表記は国際的には少数派です。大きな数字を三桁ごとに区切るとき,国際的に一般化している表記は 1.234.560(百二十三万四千五百六十)のようにピリオドを使いますが,日本式やアメリカ式との混同を避けるためには,コンマもピリオドも使わずに,1 234 560 のように空白をあける表記が使われます。

翌年には: en la sekvanta jaro というのがよいでしょう。sekvanta には「その翌年」という意味を表す冠詞を付けます。

Tanjo が生まれました: Tanjo naskig^is でよいのですが,Tanjo に力点を置くために,訳例に挙げたような語順が好まれます。マサオに生まれたことを明示するためと,文体としてもスマートにするために al li naskig^is Tanjo のように al li を入れていうこともできますが,マサオに生まれたことは文脈から分かるので,この al li は必要不可欠なものではありません。

訳例
Masao edzig^is en la jaro 2000, kaj en la sekvanta jaro naskig^is Tanjo.


課題文n-ro476 4月1日以降に入会した会員の数を教えてください。

解説
4月1日以降に入会した会員の数を: 「4月1日以降に」というのは,4月1日も含んでいるのですが,post la unua de la lasta aprilo というと,4月1日を含まない表現になりますから,en kaj post la unua de la lasta aprilo というのがよいでしょう。post を使うと4月1日を含まないことに気づかれた方は幾人かおられましたが,en kaj post を使った訳はなく,寄せられた訳はいずれも不適切な表現でした。月の名前には冠詞を付けません。
「入会した会員の数を」は,la nombron de la membroj, kiuj anig^is というのがよいでしょう。alig^i は「加わる,参加する」という意味で,anig^i より広い意味の語ですが,anig^i という意味で使われることもあるので,ここで使うことができます。nombrojn とした訳が見られましたが,ある時点での「会員の数」はいくつもあるのではなく,ひとつですから単数を使います。numero は「数」ではなく「番号」ですから,ここでは不適当です。nombron と membroj には冠詞を付けます。

教えてください: Bonvolu sciigi al mi または Bonvolu sciigi min といいます。相手によっては Bonvolu を付けずに Sciigu といってもよいでしょう。sciigi の代わりに「情報を伝える」という意味の informi を使っていうこともできます。Sciigu min la nombron のようにいうことはできません。これは doni などでも同じで doni iun ion ではなく,doni al iu ion のようにいわなけれなりません。instruu を使うのは,ここでは誤りです。この「教える」は「知識・学問・技能などを相手に身につけさせるよう導く」という意味ではなく,「 知っていることを相手に告げ知らせる」という意味ですから,instrui を使っていうことはできません。

訳例
Bonvolu sciigi al mi la nombron de la membroj, kiuj anig^is en kaj post la unua de aprilo.


課題文n-ro477 わたしたちの会(societo)の会員数は,先月の10日以降,増え続けています。

解説
わたしたちの会の会員数は: la nombro de la membroj de nia societo というのがよいでしょう。la nombro de nia societo という訳が3例ありましたが,これは意味不明の表現です。la nombro de に続く名詞は複数形に限られます。例えば,la nombro de niaj societoj であれば「わたしたちの会の数」という意味になって,わたしたちの会がいくつもある場合には使える表現になりますが,この課題文の意味とはまったく違う内容を述べることになります。
「わたしたちの会の会員」を niaj societaj membroj というのはよくありません。「会員数」を membra nombro というのもよくありません。ここでは「わたしたちの会の会員」の全員を指しているので,membroj には冠詞を付けます。

先月の10日以降: ekde la deka de la lasta monato といいます。deka は 10a または 10-a と書くこともできます。la deka は la deka tago の tago を省略したものです。これは時刻を表す la deka horo(10時)の horo が省略されるのと似ています。la deka が「10日」を表すのか「10時」を表すのかは,文脈や前置詞によって分かりますが,誤解される恐れがある場合には tago, horo を付けていいます。
「以降」は ekde で表します。post や en kaj post を使うのは,ここではよくありません。前回の課題文にあった「以降に」は en kaj post を使いましたが,「以降に」と「以降」とは同じでないことに注意してください。「以降に」は「それ以後のある時点において」という意味ですが,「以降」は「それ以来ずっと」という意味を表します。従って,「以降」は「から」に置き換えることができますが,「以降に」は「から」に置き換えることができません。ekde la deka de la lasta monato は,「先月の10日」を含んでいる表現です。

比較:
Masao dormadas ekde la dekunua en la lasta nokto.(マサオは昨夜の11時以降眠っています。[昨夜の11時からずっと眠っています])
Masao enlitig^is post la dekunua en la lasta nokto.(マサオは昨夜の11時以降に就寝しました。[昨夜の11時までは起きていたことを述べているだけだ,就寝した時刻については言及していません])

増え続けています: (la nombro を主語にして) dau^re kreskas または dau^re pligrandig^as のようにいうのがよいでしょう。la nombro を主語にして multig^as を使うのはよくありません。エスペラントでは nombro は multig^i するのではなく,grandig^i するといいます。

比較:
La nombro de la membroj de nia rondo pligrandig^is.(わたしたちのサークルの会員数が増えました。)
La membroj de nia rondo multig^is.(わたしたちのサークルの会員が増えました。)

訳例
La nombro de la membroj de nia societo dau^re kreskas ekde la deka de la lasta monato.


課題文n-ro478 先月以降,この村では交通事故は起きていません。

解説
先月以降: ekde la lasta monato といいます。「先月以降」というのは先月を含んでいるので,de post や depost を使うのはよくありません。de post, depost は「の後ずっと」という意味で,ここでこれらの表現を使うと「先月の後,つまり今月の初めからずっと」という意味になります。En la lasta kaj c^i tiu monatoj は不正確な表現です。ekde には「から」という意味と,「から今まで」という意味とがありますから,ekde la lasta monato は「先月の初めから現在(発話の時点)まで」という意味を表しますが,En la lasta kaj c^i tiu monatoj は「現在(発話の時点)まで」を表していません。

この村では: en c^i tiu vilag^o または en tiu c^i vilag^o といいます。

交通事故は起きていません: neniu trafika akcidento okazis というのがよいでしょう。neniam okazis trafika akcidento や ne okazis trafika akcidento のようにいうこともできます。okazas を使った訳が約半数を占めましたが,これは誤りです。ここでは過去形を使っていわなければなりません。なぜなら,ここで話題にしているのは「先月の初めから現在(発話の時点)まで」という過去のことだからです。日本語の「(先月以降)起きていません」は「(先月以降, 発話の時点まで)起きなかった」という過去のことを述べているのです。このことは日本語で話しているときには意識されませんし,それで何の不都合も生じませんが,ほかの言語に移すときは気をつけないと,奇妙な表現になります。

訳例
Neniu trafika akcidento okazis ekde la lasta monato en c^i tiu vilag^o.


課題文n-ro479 Karlo からは去年の11月以降,何の便りもありません。

解説
去年の11月以降: ekde la lasta novembro というのが簡潔な表現です。la lasta は「この前の」という意味ですから,今(8月)に使えば,日本語の「去年の11月」と同じ意味になります。(lasta がいつも「去年の」という意味を表すのではなく,例えば,今 la lasta majo といえば「この前の5月,つまり今年の5月」を指すことに注意してください。) 「去年の」を表す語を使って ekde la lastjara novembro または ekde la novembro de la lasta jaro ということもできます。月の名前には普通は冠詞を付けませんが,形容詞(ここでは lasta, lastjara)や形容詞句(ここでは de la lasta jaro)を伴うときは上に挙げたように冠詞を付けましょう。これは季節名についても同じことがいえます。例えば en somero, en la lasta somero などのようにいいます。

Karlo からは何の便りもありません: mi au^dis nenion de Karlo という簡潔な表現があります。日本語には「はがき一枚寄こさない」という表現があって,これには「もちろん手紙も寄こさない」という含意がありますが,エスペラントの Karlo skribis neniun leteron al mi には jam ne parolante pri kartoj(もちろんはがきも寄こさない)という含意はないので,「手紙もはがきもメールも電話もまったく何の便りもない」というのには,au^di nenion を使うのがぴったりの表現です。

Ekde la lastjara novembro, Karlo sendis ... のコンマは削除しましょう。日本語の読点に引かれてコンマを使うのはよくありません。

訳例
Mi au^dis nenion de Karlo ekde la lasta novembro.


課題文n-ro480 あなたが送ってくださった本は,まだ届きません。

解説
あなたが送ってくださった本は: la libro sendita de vi または la libro, kiun vi sendis al mi のようにいうのがよいでしょう。構文によっては, la libron senditan de vi や la libron, kiun vi sendis al mi のように対格にしなければなりません。「送ってくださった」は「あなたが送った(送ってくれた)」の丁寧な表現ですから,エスペラントではとくに表す必要はありませんが,afablis sendi, bonvolis sendi などのようにいうこともできます。

まだ届きません: 「本」を主語にした構文では,ankorau^ ne alvenis al mi,「本」を目的語にした構文では Mi ankorau^ ne ricevis というのがよいでしょう。alvenas, ricevas とした訳がありましたが,ここで -as を使うのは誤りです。「届きません」という日本語からは現在形の動詞を使いたくなりますが,なぜ -is になるのか納得できない方は次のように考えてみてください。
「まだ届きません」の反対は「すでに届きました」で,エスペラントでは jam alvenis といいます,さて,ここで中学校の英語の問題の中に「次の文を否定文になおしなさい」というのがあったことを思い出していただきたいのですが,そのとき現在形の文は現在形の否定文に,過去形の文は過去形の否定文に書き換えましたね。これはエスペラントでも同じで,過去形の jam alvenis の反対は,やはり過去形の ankorau^ ne alvenis となるのです。これで「まだ受け取りません」が「もう受け取りました」(jam ricevis) の反対だから ankorau^ ne ricevis(まだ受け取っていません) となることもお分かりでしょう。「まだ〜しない」は ankorau^ ne という形で使うことをお勧めします。ne jam よりも ankorau^ ne のほうが一般的です。
ankorau^ ne atingis min のように atingi を使った訳が,かなりありましたが,atingi には pene(努力して,苦労して)という語感を伴うので,この課題文では中立的な alveni を使っていうほうがよいでしょう。『日エス』の「届く」の項にある Via letero atingis min は誤りではありませんが,一般的ではないといえるでしょう。
「本」を主語にした構文で La libro, kiun vi sendis al mi を使うと,La libro, kiun vi sendis al mi, ankorau^ ne alvenis al mi のように al mi が重複するので,訳例の最初に挙げたようにいうと,すっきりした文になります。

訳例
La libro sendita de vi ankorau^ ne alvenis al mi.
Mi ankorau^ ne ricevis la libron, kiun vi sendis al mi.