<笑いで暑さを吹き飛ばそう!>の巻

トシオさん(以下T)「こんばんは。あら、いたのね。」

あき(以下A)「いらっしゃい、トシオさん。いたのね、はないんじゃないの。はい、オシボリ。」

T「はい、ありがとう!で、何時帰ってきたの?」

A「昨日です。もう足がパンパンで。」

マー君(以下M)「トレッキングしてきたみたいですよ、カナダで。」

T「あ〜〜ら、カナダに行ってらっしゃったのねぇ。なに、ライオンキング観てきたんだ。」

M「違いますよ、トシオさんたら。トレッキングですよ、トレッキング。」

T「何よ、それ。トレッキングっていうお芝居なの?」

A「違うわよ、トシオさん。トレッキングってね、まあ、簡単に言っちゃったら歩く事かな。」

T「歩く?歩いて何したの?」

A「だから、歩いて歩いて歩き回ったのよ。」

M「まあ、歩いて旅行するみたいな意味ですよね。」

A「そうそう。随分歩き回っちゃったから足が痛くて。」

T「あらあら、それはそれはご苦労さまでございました。ビールちょうだい。」

A「あいよっ!・・・はい、お待たせしました。」

T「う〜〜う、おいしい。やっぱり夏はビールに限るわよねぇ。アキちゃんも飲む?」

A「はい、いただきます。」

M「あれ〜、トシオさん、このパンフ、新橋演舞場のじゃないんですか?」

T「そうよ、今日行ってまいりましたのよ。マー君もいったのかしらん。」

M「いえね、丁度今、アキさんとその話しようとしてた所だったんで。 ちょっと観てみたいなって思っていたんですよ。」

T「ま〜〜〜、生き写しね、生き写し。僕なんかもう、涙流して笑ってたわよ。 アキちゃんは行ったの?そうか、行ってないわよねぇ、昨日帰って来たばっかりだったら。」

M「それがトシオさん、昨日行ったらしいんですよ。」

T「いぇ〜〜〜、昨日?」

A「そうなのよ、昨日成田に着いたその足で。ギリギリセーフ、ってな感じだったけどね。 息急き切ってね。まあ、息も落ち着かないまま、アッシも笑い転げちゃって。」

M「益々観たいですよ。で、どんな話なんです?」

T「まあ、今年は3本やったのよね。その3本の並べ方がまた上手い。ねぇ、アキちゃん、そう思うでしょ。」

A「そうね、あの並べ方は上手いわね。」

M「どんな風なんですか?それより、演目は何だったんですか?」

T「あら、マー君、演目聞いて分かるのかしらん。」

A「ちょっと、意地悪は駄目よぉ〜、もういい年なんだからさ。」

T「うるせぃ!でも、そうね、もういい年だからねぇ。演目はね、<二階の奥さん>、<大阪ぎらい物語>、 <はなのお六>の3本だったのよ。」

M「で、どこがどう上手かったんです?」

A「今回の劇場は、新橋演舞場でしょ。ああいった劇場はさ、団体客が多いのよね。っていう事は、 どこかの会社なんかに招待されているってわけよ。」

M「なるほど。」

T「だとすると、当然お食事が付くわよね。」

A「でもさ、ちゃんとした食事では予算が掛かり過ぎるじゃない。そこで、・・」

T「幕の内弁当が出てくるわけよ。」

M「へ〜〜〜、幕の内弁当ってそこからだったんだ。」

T「何いっとんとぅ!幕の内ってのはね、相撲から来ているのよ。」

M「あ〜、じゃ、全然関係ないんですね。」

A「そうじゃないのよね。ほら、幕の内弁当、思い出してみて。あのご飯てさ、俵型してるじゃない。 あれって土俵の俵なのよね。ね、これで分かったかしら?」

M「何とな・・・く・・・。」

T「まあ、いいわ。話を元に戻すとさ、ね、最初の芝居に、そのいただいた幕の内弁当を開いちゃうわけでしょ、 招待客はさ。ねえ、受付で最初にもらっちゃうんだから。」

A「だからね、一番最初にやる芝居って、お客様はほとんどが幕の内弁当食べてんのよ。まあ、今がそうだ、 って言うんじゃないんだけどね。」

M「で、どうなるんですか?だから、どうでもいい芝居をかけている訳じゃないですよね。」

T「当たり前田のクラッカーじゃございませんわよ。」

A「トシオさん、古過ぎます。アッシしか分かりません、そんなギャグ。」

T「あら、それは失礼。」

A「で、また話を戻すとね、みんながお弁当食べているから、基本的には下を向いているのよ、お客様は。」

T「ね、だから、その下を向いているお客の頭を上に向かせるようにしなきゃいけない訳。で、役者は努力するでしょ、 そうさせようと思ってね。」

A「大体、新人の役者にやらせる事が多かったみたいよね、昔は。そうやって、役や自分の技術を磨いていくわけね。」

M「へ〜〜〜〜!30ヘエくらい。で、最初の芝居はどんな話なんです?」

T「まあ、歳の離れている奥さんをもらっちゃった主人が、息子夫婦や兄弟に言いそびれちゃった事から起こるドタバタ喜劇なのよ。」

M「まるでアキさんのところみたいですね。」

A「えっ?どういう事かしら?」

M「歳の離れている奥さんっていうから。」

A「あら、そうかしら?まあ、20も違えばね。でもね、この話は40歳もちがうのよ、40歳も。」

M「えっ!そんなに違うんですか?それは言えませんよね、孫みたいだもの。」

T「想像しても笑えてくるじゃない、ねぇ。」

M「なんか、本当に面白そうですね。二つ目の芝居は?」

A「これはね、<大阪ぎらい物語>っていう、大阪の昆布問屋の老舗が舞台なのよね。」

T「まあぁ、大阪の根性物とはちょっと違うけど、涙涙のお芝居ねぇ。」

A「大体、そんな大阪の老舗にはしっかり者の女主人(ご寮さん)がいて、店を切盛しているんだけど、 この話もそうなのよ。で、少し頼りない兄とどこかしら抜けている妹がいるのよね。」

T「昔は妹の役を、まあそのときは弟の役だったんだけど、それを藤山寛美が演って、 今は娘の直美が演っているっていうのも涙物だわよねぇ。」

A「でもさ、寛美が以前に演ったって分からないほど、直美自身の役になっているわよね。 それは凄い事だとおもうのよね。勿論、寛美に瓜二つの顔や仕草、それに間の取り方、そういう物もあるけど、 もう直美として確立されたと思うのよ。妹でおかしくも何ともないからね。」

T「そうねぇ、そう言われてみればそうねぇ、確かに。」

M「それで、話の筋は?」

A「あら、ごめんなさい。そのあまりにもしっかりし過ぎているご寮さんを、店の主人としてではなく、 母親として見ている娘とご寮さんのバトルとでもいうのかしらね、トシオさん、そうよね。」

T「う〜ん、そうねぇ、バトルね、バトルだわねぇ、あれは。」

A「で、本当の親子の絆を取り戻すって話なのよ。まあ、見方を変えれば、ダダッ子の我ままを親が仕方なく聞いた、 って事にもなるけど、その娘の台詞一つ一つに、ドキッとさせられる物があるのね。もう40年も前に書かれた芝居だけど、 今の世の中にも、何か忘れているんじゃないの?って問い掛けられているみたいで、結構くるのよ。」

M「へ〜。これも観たいですね。で、3本目はどんな芝居なんですか?」

T「まあ、これは本当に笑い転げる芝居よねぇ、アキちゃん。」

A「そうそう。アッシ、3本の中では一番好きな芝居なのよね。<はなのお六>。 田舎から江戸に出て来て一旗あげようとしている娘の話。」

T「これはさ、アキちゃん、話自体というよりも、直美ちゃんと小島慶四郎を観ているだけで笑っちゃうわよねぇ。」

A「そうね、それに、小島秀哉とのやり取りもおかしいし。まあ、アドリブなんだろうけどね。 昔、まだ寛美が演っている時だったんだけど、この松竹新喜劇公演で<リクエスト狂言>っていう催しがあったのよ。」

T「あったわねぇ、もう何十年前よ、それってさ。」

M「何ですか?<リクエスト狂言>って。」

A「あのね、2〜30の芝居のタイトルが立て看板に書いてあるのね。入り口の所なんだけど、 それをお客様が開演前に見ておくのね。それで、席につくと、新喜劇の座員が尋ねてくるわけね。」

M「まさか、その中で一番リクエストの多い作品を上演した訳じゃないですよね。」

T「そうなの、その通りなのよ。」

A「寛美さんが司会で、座員がお客様一人一人に聞いて回るのよ。それで、 リクエストの多かった順番に2〜3本演じるのよね。」

M「ものすごい作業じゃないですか?それって。覚えられるのかな?そんなにいっぱいの台詞。」

A「だから本当に大変だったと思うのよ。でもね、必ずといって良いほど、その投票で上位に入っていたのが、 この<はなのお六>。やっぱりお客さんは笑いたかったのね。笑う為に劇場に足を運んでたんだな、って。」

M「で、どう言う話なんですか?」

T「話は単純なのよねぇ、アキちゃん。その田舎から出て来た娘が、匂いを嗅ぎ分ける事に特別な才能を持っているのよねぇ、 アキちゃん。」

A「その才能を活かして、ある藩が無くしてしまった将軍家から預かっている旗を探して、めでたし、めでたし、 という風になるだけなんだけどね。」

M「それが、そんなに面白、可笑しく演じられるんですね。」

A「そうじゃないんだけど、ちゃんと演じているんだけどね、今回は直美ちゃんだけども、 彼女と他の役者さんとの間にある空気が笑いを誘うのよね。」

T「まあ、一度観に行ってごらんあそばせよ。本当に面白いから。」

A「本当よね、。アッシ、殿様役の小島慶四郎が出てくるだけで笑いが止まらなくなっちゃうのよね。 本当に良く似合うんだもの。思い出しただけでも笑っちゃうわよ。」

M「そうですか。益々観たくなっちゃいますね。やっぱりこの暑さは笑いで吹き飛ばさなきゃだめですかね。」

T「そうよ、笑いで吹き飛ばさなきゃ。ねぇ、アキちゃん。」

A「そうそう。笑いが一番よ。」

一同「あっはははは・・・・・。」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居は
1)<七夕名作喜劇まつり>     7/24まで
                       新橋演舞場

以上です。どうぞ足をお運びになって、暑さを忘れて笑いましょう!きっと暑さも吹き飛ぶと思いますよ。


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