<コミュニケーションって大事だね>の巻

ファンファン(以下F)「本当に面白かったんですよ、蘭子さん。」

蘭子(以下R)「あら、そうなんだぁ〜。アタシもね、昔は良く観に行ったわよ、状況劇場のころは。ねえ、あきちゃん、 良く行ったわよねぇ。」

あき(以下A)「そうね、良く行ったわね。蘭子、あの頃小林薫の大ファンでさ、登場するや否や、かおるぅ〜〜〜!って、 大声あげてたっけ。」

R「あら、やだ、そんな事言わなくたっていいのよぉ〜。でもさぁ、春にやった公演が大評判だったじゃない。アタシ、 ちょっと観てみたくなってる事はなってるのよぉ。で、ファンファンさぁ、どう面白かったのぉ?」

F「どうって、ああいう芝居自体が初めてだったから・・・・。う〜む、何て言ったらいいんでしょうか、あのスピードの早さ、 テントっていう特別な空間、う〜む、それに、あっと言う間に時空を飛び越えて進む話。う〜む、それから・・・・。」

R「まあ、それはさぁ、昔もそうだったのよねぇ、あきちゃん。」

A「そうね、そのエネルギーは今でも変わらないわよね。ただね、アッシさ、一時期、やっぱり唐さんは終わっちゃったかな? って思った事もあるのよ。」

R「そうでしょぉ。アタシもそう思ちゃってさぁ、李礼仙が辞めちゃってから一、二度観ただけでさぁ、行かなくなっちゃったわねぇ。 役者もイマイチ魅力に乏しくなっちゃったしぃ。」

A「そうね。まあ、久保井研や稲荷卓央なんかも出てきたけど、イマイチ大きくなってないし、女優が何しろいないもの。 やっぱり李の抜けた穴は大きかったわよ。」

R「そうね。でさぁ、ファンファンさぁ、今度の芝居はどう言う内容なのかしらぁ〜?」

F「内容ですか?え〜と、オルゴールの話なんです。何年か前にオルゴール職人の兄谷(あにたに) が梶川からから依頼を受けたオルゴール。でも、ピエロの顔が気に入らないって、お金だけ払って受け取りを拒否してしまう梶川。 でも、またその梶川から<ちょうちょ>という戦後国産第一号のオルゴールを作ってくれという依頼がきて、・・・。」

R「そこから始まる唐ワールドねぇ。ちょっと導入部分を聞いただけでも面白そうだわぁ。ね、ファンファン、 それから先は言っちゃダメ。解るでしょうぉ〜。言っちゃダメよぉ〜。で、アキちゃんは行ったのかしらぁ〜ん?」

A「行ったわよ、昨日。で、面白かったわよ。それ以上は言わないけど、蘭子、観に行きたいでしょ。だから言わないわね。 でもさ、これだけは言っちゃうと、丸山厚人っていう役者がいるんだけど、唐組にスター誕生って感じよ。 背が高いからすぐ判るわよ。」

F「そうそう、僕も一言だけいいですか?」

R「何よぉ〜。」

F「もうひとつ感じた事があったんですよ。それは、観客とのコミュニケーションが上手く取れてるって事なんですけどぉ・・・。」

R「当たり前よぉ。それは前から。あの空間だものねぇ、取れてなかったら詰まらない芝居になっちゃうじゃないよぉ〜ん。」

F「そう・・・ですよね、はい。」

R「あら、そうよ、そうそう。今ので思い出したわよぉ〜ん。コミュニケーションよ、コミュニケーション。」

トンちゃん(以下T)「そうそう。お代わり下さい。」

R「あら、トンちゃん、解ってるのかしらぁん、コミュニケーション。」

T「そうそう。」

R「そうよぉん、この前、青山劇場で<ビッグ・リヴァー>を観てきたのよぉん。そこで思ったのよ、大切だなって。」

F「何がですか?」

R「だから、コミュニケーションよぉん。ねえ、トンちゃん。」

T「そうそう。」

A「はいトンちゃんお待ちどうさま。」

R「あれ、ほらぁ〜ん、聾唖の人と健常者とが一緒にステージに立つじゃな〜い。 ちゃんとコミュニケーションが取れてないと大変なステージになっちゃうわよねぇ〜ん。ねえ、 アキちゃんもそう思うでしょ〜ん。」

A「まあね、そうね。あのミュージカル、初演から20年近く経ってるじゃない。で、去年、 デフ・ウエスト・シアターによってブロードウェイで再演されたんだけど、蘭子が言うよに、 デフの人と一緒に作られたミュージカルなのよ。だから、初演とは、音楽や内容は丸っきり同じなんだけど、 丸っきり違う舞台になっているのよね。」

T「そうそう。」

F「で、アキさんはどんな風に観たんですか?」

A「アッシはね、難しいな、って思ったわよ。なんでって、デフの役者が台詞を喋って歌を歌う役をする訳じゃない。」

F「そうですよね。そうすると、そこに工夫があるわけですよね。」

R「そうよぉ〜ん。そこに工夫があるのよぉ〜ん。ますねぇ、デフの役者には、もう一人、台詞と歌を担当する役者がいるのよねぇ〜、 その人が、そうそう影武者っていうのかしらぁ〜?二人で一人を演ずるって訳よね〜ん。手話をしながら。」

T「そうそう。」

F「それは凄いですね。」

A「でもね、アッシは、とても素晴らしいとは思ったけど、一幕目は、戸惑ったわね、正直言って。だってね、 蘭子も観てたから解るだろうけど、誰が誰なの?って感じよ。判からないのよ、どっちが誰で、あの人は何?みたいな。 まあ、でも、二幕目は慣れたから分かるようになったけどね。」

R「あ〜、そうね、そう言われてみれば、そうだったかもしれないわねぇ〜。」

A「特に、二人一緒の衣装で出てくると、どっちがどっち?本当は二人だったの?な〜んて思っちゃう人もいるんじゃないかって。 とても素晴らしい試みだし、こういう公演をどんどん増やしていってほしいけど、 観客がどの程度理解出来るかが今後のカギになってくるんじゃないかと思うわよね。」

T「そうそう。お代わり下さい。」

A「あいよっ!」

F「でも、手話が解っていたら理解できるんだから、手話も勉強しないといけませんよね。」

A「それがそうでもないのよ。・・・・はい、トンちゃんお待たせ。」

F「えっ?そうでもないって、どう言うことですか?」

R「やだ、アンタ、手話って世界共通じゃないのよぉ〜。知らなかったのぉ〜。」

T「そうそう。」

F「え〜っ!そうなんですか?ぜんぜん知りませんでしたよ。そうなんだぁ〜。でも、 全世界共通の手話が出来たらどんなに便利でしょうね。」

A「そうね。アッシもさ、以前そう思った事があるんだけど、手話って、その地域の伝統や習慣から出来ているらしいから、 世界共通の手話を作るのは難しいらしいのよね。日本でも何通りかの手話があるらしいし。」

F「それは大変ですね。」

T「そうそう。」

R「でも、本当よね。世界共通の手話ができたら、全世界の人とコミュニケーションとる事が、今よりも数段と簡単になるしねぇ〜。 どうして誰も考えないのかしらぁ。」

A「だからさ、その地域に根付いている物から来ているからじゃない?でもね、アッシ観ていて気付いた事があったのよ。 世界共通の手話って可能なんじゃないかな?ってね。」

F「それはどう言う事なんですか?」

A「似てる物がいくつかあったのよ、観てて。」

R「似てる物ぉ〜?」

A「そうよ、似てたのよ、いくつかの手話は、日本の手話と。だから、うまく編纂する人がいれば、 世界共通の手話も夢ではなくなるかもしれないわよね。」

F「コミュニケーションていう事でいったら、アキさんがここの所色々なヴァージョンを観ている<赤鬼>もそうですよね。」

T「そうそう。」

A「そうよね。まったく知らない世界からきた<赤鬼>とのコミュニケーションが上手く取れなかった事から来る悲劇だからね。」

R「アキちゃん、日本ヴァージョン、もう行ったのかしらぁ〜?」

A「うん、行ったわよ。」

F「日本ヴァージョンはどうだったんですかね。」

R「そりゃ日本語だもんねぇ〜、今までのよりは解ったわよねぇ〜。」

A「そうね。まあ、日本語だから。特に前のがタイ語だったでしょ。でもね、アッシには、 タイヴァージョンの方が良かったと思えたのよね。」

F「アキさん、タイヴァージョン絶賛でしたもんね。日本ヴァージョンの役者がイマイチだったとかですかね?」

A「そうじゃないのよ。野田秀樹は他ので赤鬼を演ってる時よりも、やっぱり、 あの一寸頭の足りないトンビを演じている方が生き生きしてたし、小西真奈美も美しかったし、大倉孝二も、 コイツ悪だなって思わせる芝居してたし。でも、何かが足りないのよね。タイヴァージョンの時のような感動が沸いてこないのね。 初演の時は、すごく感動しちゃったんだけど、勿論、感動はしたんだけど、何かが・・・・。」

T「そうそう。」

A「ね、トンちゃん、そうだったわよね。」

T「そうそう。・・・お代わり下さい。」

R「日本語だから観客とのコミュニケーションはバッチリとれているだろうけどねぇ〜。」

F「コミュニケーションって難しいですよね。結局、一方通行じゃダメなわけですから。」

A「はい、トンちゃん、お待ち。・・・観客とのコミュニケーションがとれてなかった訳じゃないと思うのよね。 でも、何かが・・・。」

R「まあ、何でもいいんだけどさぁ〜、トンちゃん、さっきから何下向いてやってんのよぉ〜ん。」

T「えっ?コミュニケーションですよ。」

F「何とですか?」

T「誰かと。」

A「誰かって、誰?」

T「知らない人ですね。さっきから、もう三人もダメだったんですよ。コミュニケーションとるって難しいなぁ〜。」

R「アンタ!!!それって、携帯の出会い系サイト見てるって事なのぉ〜?」

T「そうなんです。やってる途中で飲みに来ちゃったものですから。」

R「アンタぁ〜、ここは酒場よぉ〜。携帯ばかりいじってるんじゃないわよ!!!。」

A「まあいいじゃないのよ。飲んでくれてるんだしさ。」

R「そうねぇ〜。これで飲んでなかったらアタシ、怒り心頭でキレてたかもよぉ〜。」

T「あと一寸ですからね、辛抱して下さ〜いね。」

F「コミュニケーションって、難しいですね。」

A「でも、大切よ。」

R「本当ねぇ。さ、アタシもお代わり。」

A「あいよ!」

おわり


*登場人物は全て仮名です。

*今回初回したお芝居は、
1)唐組<眠りオルゴール>
   10/22〜24、29〜31。
   雑司ヶ谷・鬼子母神
2)<ビッグ・リヴァー>
   10/24まで   青山劇場
3)<赤鬼〜日本ヴァージョン>
   10/20まで   シアター・コクーン

以上です。どうぞ、足をお運び下さい。


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