<悩んじゃう!>の巻

あき(以下A)「いらっしゃ〜い!」

ヤッチャン(以下Y)「今晩は。」

A「ヤッチャン珍しいわね、こんな曜日に。」

Y「そうでしょ。たまたまなんですけど、今日は芝居の帰りなんですよ。」

A「あら、新宿で?」

Y「いえね、それが天王洲アイルだったんですよ。」

A「アートスフィアね。」

Y「そうなんです。で、りんかい線に乗って帰ろうとしたんですけど、埼京線直通だったものですから、新宿まで来ちゃって。」

A「なるほどね。で、何にしようか?ヤッチャン。」

Y「あっ、そうだ。オーダーしなきゃ。え〜と、今月のお勧めドリンクは、・・・アディントン?ですかぁ〜。」

A「そうよ、アディントン。チンザノの赤と白を混ぜて、ソーダ水で割ったものなの。それに、オレンジピールを振りかけるのよ。」

Y「へ〜、聞いた事ないですね。でも、試してみようかな?じゃあ、それ下さい。」

A「いよっ!・・・・はい、お待たせ。」

Y「へ〜。こんな味なんだ。スッキリして、とても飲み易いな、これ。」

A「そうでしょ。ところでさ、<ナイン>の方はどうだったの?」

Y「アキさん良く知ってますね、<ナイン>だったって。」

A「アッシも行ったからね。」

Y「そうなんですか。じゃあ、随分と早い時期に行ったんですね。」

A「そうね、開幕してからすぐかな。」

Y「でも、解りました?自分はあんまり理解できなかったんですけど。」

A「あっそう。まあ、アッシはブロードウェイでも観てきてるからね。さらに解ったって言うのかしらん。でも、難解よね、これは。」

Y「そうですよね、難解ですよ。何がなんだか解らないもん。話が進めば進むほど、えっ?あれは誰?どういう関係?どうしてこうなっちゃうの?って。最初から最後まで悩みっぱなしでしたよ。」

A「そうね、ちょっと難解かも。でもさ、デヴィット・ルヴォーの演出は素敵だったでしょ。」

Y「なんか幻想的すぎちゃって、自分は本当にチンプンカンプンだったんですよね。いったいどんな話だったんですか?」

A「えっ?観てて、本当に解らなかったのね。あのミュージカルってね、元はイタリア映画の巨匠、フェデリコ・フェリー二の映画、81/2なのよ。それは知ってる?」

Y「あ〜、そうなんですかぁ。それじゃ、解りにくいのも当たり前だな、自分には。その映画自体は観た事ないんですけどね。」

A「まあ、ちょっと解りにくいかもね。まあ、40男の苦悩がテーマかしらん。」

Y「40男の苦悩?ですか。」

A「そうよ、40男の苦悩。映画の世界で成功を収めた監督。だけど、このところ失敗が続いているわけよ。で、次の作品に復活をかけようとするんだけど、構想も何もできてやしないのね。でも、プロデューサーからは、しっかり投資してもらっている訳。そんなこんなで主人公の頭の中は記憶や想像、それに、現実逃避をしながら自分探しの旅を、彼自身の頭の中でしはじめて、最後にはそれが何だったか気が付くのよね。」

Y「へ〜。なんだか解りにくいですね。解ったようで、解らない。う〜む、複雑。で、色々女性が登場するじゃないですか。あの人達は一体誰なんですか?」

A「主人公グイードの奥さん、過去の女性、現在の浮気相手、彼の追っかけ、だた彼に映画に出てみないか、なんて、誘われちゃって惚れちゃった女、元レビューのスターでプロデューサー、グイードが9歳の時にちょっと大人の世界を垣間見せてあげた女、そして、母親。そのほか、彼にとっては宿命ともいえる存在の女性達。全部で16人ね。」

Y「相当な女たらしですね、グイードは。でも、今聞いて、ちょっとだけ理解してきました。いろいろな女性を通して自分を探していたんですね。なるほど。」

A「ヤッチャンは全体を通して、解る解らないなくて、ただ単に印象としてはどうだったのかな?」

Y「そうですね、まあ、あっと言う間に終わっちゃった、てな感じだったかな。何しろ、本当に何が何だか解らないまま終わっちゃったんですよね。で、アキさんはどうだったんですか?さっき演出が素敵だっていってましたけど、役者とかは?」

A「そうね、まあ、比べちゃいけないんだけどね、まず、グイードを演った福井貴一。彼は結構頑張っていたけど、存在感がイマイチだったわね。もうちょっと熟年の役者を使っても良いかなって思ったけど、歌が重要だから、仕方ないかな?っていう気もするけど。何しろ、<ミス・サイゴン>にいい役者が持ってかれてるからね。」

Y「そう言えばそうかも。今ミュージカル色々やってますからね。人材を確保するっていうのも大変ですよね。」

A「そうよ。」

Y「で、あとの出演者についてはどうですか?自分は大浦みずきが良かったなって思ったんですけど。」

A「まあ、無難にやってたけど、アッシにはちょっと物足りなかったわね。まあ、ブロードウェイでは、チタ・リヴェラやアーサー・キットが演じた役でしょ。比べちゃ可愛そうなんだけどね。迫力っていうのかな、もう一寸ほしかったわね。ママ役の花山佳子が良くやってたと思うし、カーラ役の池田有希子、クラウディアの純名りさも良かったと思うし、ちょっとドギツイかなとも思うけど、サラギーナ役の田中利花も頑張っていたわね。ただ、今回の配役で一番失敗だったなと思ったのは、グイードの妻役、ルイーザを演じた高橋桂。オペラ歌手とは思えないほど歌のテクニックがイマイチだったわね。まあ、調子が悪かったのかもしれないけど、裏声に変わるときのひどさは、聞いていてムカムカする程だったわよ。でも、全体としては、弱いけど、無難な所かしらね。」

Y「来年、再演するらしいから、もう一度行って今度は悩まないようにしなくちゃ。他に最近良かった芝居なんかありますか?」

A「実はね、アッシ<ナイン>を観た同じ日の夜に劇団桟敷童子の<しゃんしゃん影法師>って言うのを観てきたのよね。この劇団は、元新宿梁山泊にいた東憲司が主催している劇団なんだけど、民話や言い伝えに基づいて本が書かれているのね。今回の<しゃんしゃん影法師>は、今まで観た桟敷童子の芝居の中でも良く出来てたと思うわよ。」

Y「そうですか。前に一度聞いた事がありますね、その劇団。夏にアキさん行かれてましたよね。ちょっと気にはなってたんですけど、どうもアングラ系っていうか、小劇団が苦手なもんで、行こうかどうしようか、悩んでいる内に何時も終わっちゃうんですよ。」

A「あら、残念だわ。今回も今日が楽日だったのよ。」

Y「その芝居Nおテーマは何だったんですか?」

A「今回は「神隠し」がテーマ。柳田国男の遠野物語りがモチーフになっているのかな?」

Y「へ〜。残念でした。次回は悩まないで、発売と同時にチケットとりますよ。」

A「善は急げ!っていう諺もある事だし。」

Y「それじゃ、そろそろ行きますね。明日も仕事だから。」

A「あいよっ!ありがとね。ヤッチャンは、千二百円ですね。」

Y「はい、これで。」

A「あら〜〜〜!新札ね。こんななんだ。おもちゃみたい。これで暫くは新しいお札と旧札とに悩まされそうだわ。・・・はい、八百円のお返しです。ありがとうございました。」

Y「それじゃ、おやすみなさい。ごちそうさまでした。」

A「おやすみ!ありがとう!」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居は
1)<ナイン〜ザ・ミュージカル>
      10月14日まで   アートスフィア
2)劇団桟敷童子<しゃんしゃん影法師>
      公演終了・次回公演2005年7月予定

以上です。どうぞ、足をお運び下さい。


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