<あと一週間>の巻

勝ちゃん(以下K)「いや〜、やっぱりちょっと前に亡くなった人をモデルにするって、難しいですよね。」

茂ちゃん(以下S)「勝ちゃんは実際に見てるからじゃないの?」

あき(以下A)「アッシなんかもず〜っと知ってるじゃない。だから、やっぱり比べちゃうのよね、本人とさ。」

S「でも、あの通りなのかな、ミヤコ蝶々って。」

A「そうね、ほとんど事実に基づいていると思うけど。」

S「俺からしてみたら、結構面白かったんだけどな。」

K「まあ、最後近くのオチは、え〜!そうだったんだぁ〜、ってな事だったけどねぇ。」

A「そうね、まあ、あそこはまあまあだったけど、全体を観ると、もっと「シャベリ」 で笑わせてほしかったのよね、アッシは。」

S「結構面白かったじゃん。やっぱり本物を知っていると、面白さも変わってくるのかなぁ?」

A「アッシはね、今回の三谷幸喜の<ナニワ バタフライ>、はっきり言って、戸田恵子は頑張ってたと思うのよ。 けどさ、笑わせる所がね、小道具とか、照明とかでしょ。確かに、演出がいい、と言われればそうなんだけど。 さっきも言った様に、もっと、「シャベリ」で笑わせてもらいたかったのよね、」

S「でもね、例えばさ、実際には舞台の上には居ない相手と話している時なんて、相手の話を繰り返さないじゃん。 一人舞台だから、当然一人で話しているわけだけど、結構、相手が喋ったであろう事を繰り返して舞台にいる役者が喋る事が多いじゃん。 でもさ、今回の舞台は、それが無かったんだよね。だから、俺としては、結構マルだったんだけどな。」

K「僕はね、もっと面白く出来たんじゃないかと思うわけですよ。勿論、三谷さんの今回の台詞の作り方は、 意外な作り方だとは思うんですよ。だから、茂ちゃんの言ってる事もよ〜く解るんですけど、 アキちゃんが言っている事もよ〜く解るんですよ。」

A「あれよね、あれ。最初から、モデルがミヤコ蝶々だって分かっていなければ、もっと面白く観る事が出来たと思うのよ。 本物が重なってきちゃうのよね、戸田恵子と。」

S「そんなに凄かったのかな?本人は。」

A「ま〜、面白かったわよ。笑わせる、というだけじゃなくて、ウイットがあったわね。それに、言い回し。違うのよ、 戸田の演じているミヤコ蝶々とは。」

K「それを一緒にしてしまうと戸田さんも苦しい所だったとは思いますよ。でも、やっぱり甦っちゃうんですよね、 僕の世代から上は。」

A「そうよね、挑戦した戸田恵子はえらい!と言いたいわよ、本当に。でもね、やっぱりアッシにはねぇ〜。 本当の蝶々さんだったら、こんな言い回しをしたんじゃないか、とか、こんな事を喋る時は、 もっと回りくどく言ったんじゃないの?とかね。」

S「全然ないんだよね、彼女の記憶。結構最近まで生きていたというのにさ。」

K「それは仕方ないですよ。後半は、舞台の仕事がほとんどだったからね。僕らは、TVでいやって言うほど見てたですけどね。」

A「アッシも良く見たわ。<夫婦善哉>。南都雄二とのコンビが絶妙だったもの。 京うた子と鳳啓介がやってた別局の<おもろい夫婦>も良かったけど、アッシは<夫婦善哉>派だったわね。」

K「でも、ミヤコ蝶々にしても、京うた子にしても、どちらも離婚してからも、コンビは続けていたんですからね。 恐れ入りますよ。僕だったら別れた人と仲良く仕事なんか出来ないな、きっと。」

S「俺なんか、顔も見ない、というより無視しちゃうかも。」

A「アッシはその点は大丈夫よ。まあ、自分から別れを切り出した事ないからね。今でも、み〜んな、仲良しよ。」

K「相手を好きでいられる、っていいな〜。」

A「好きでいられる、と言うより、理解出来る、って言った方が正解かな。アッシだって、全く辛くなかったわけじゃないから。 蝶々さんだって同じだったと思うわよ。」

S「まあ、そうだよね。別れて辛くない人間なんていないよ、きっと。」

K「よく、清清した、って言っている人いますけど、本心は、やっぱり辛いんじゃないのかなぁ〜。」

S「ところでさ、アキさん、先週とか、やたらと芝居観てなかったっけ?」

A「行ったわよ、たくさん。新宿梁山泊に朗読劇にレニングラードバレエに、南河内万歳一座、それからt.p.tに、・・・。」

S「年末の追い込みって感じだよね。」

K「僕は、その朗読劇ってちょっと興味が引かれるんですけどね。」

A「あ〜あ、高嶋政伸が地味だけどず〜っと続けているあれね。」

S「高嶋、弟のほうだっけ?」

A「そうよ、弟の方。」

K「その朗読劇って、朗読するだけ、ですよね。」

A「そうね、基本的には。ただし、音楽は生演奏。チェロ3台とドラム。なかなか興味をそそる演奏だったわね。」

S「で、話は?」

A「今回の舞台は、映画<羅生門>の原作である、芥川龍之介の<藪の中>と、映画<地獄の黙示緑> の原作にもなっている<闇の中>なのよ。」

K「それを、一部、二部で単々と朗読しているんですね。」

A「それがちょっと違うのよね。今回の舞台は、その二つの物語りを同時進行という形で進めていくのよ。」

S「同時進行?それじゃ、話が混がらがっちゃわない?」

A「それが、うまく絡ませて進行するのよ。」

K「へ〜。面白そうですね。役者、というか、朗読している人達はどうだったんですか?」

A「そうね、流石はプロ。朗読自体は動いていない、というより、ラジオで良くやってるじゃない、朗読劇。 あんな感じかしらん。<闇の中>で、マーロウを演った高嶋政伸は、TVで見る彼とは一つも二つも違った面を見せてて、 とても良かったし、<藪の中>で、多襄丸を演った若手、藤田剛士には、すごく将来性を感じたわね。ただ、<藪の中>で、 真砂を演った愛染恭子は、少しいただけなかったわね。まあ、映画の京マチ子があまりにも素晴らし過ぎちゃったからかもしれないけど、 もっと真砂の<情念>を表現してもらいたかったわね。」

K「う〜む、興味ありますね。何処でやってるんですか?」

A「もう終わっちゃったんだけど、北千住に新しくできた、シアター千住(thatre1010)って所。」

S「北千住かぁ〜、ちょっと遠いなぁ〜。」

A「本当、遠かったわね、はははは・・・。」

S「あとさ、あれ、あれ、何だっけ?アキさんが良く観に行っている、河内・・・。」

A「あ〜、南河内万歳一座ね。」

S「そうそう、それ。何時も行ってるよね、南河内万歳一座に。で、今回は面白かったの?」

A「今回は、良かったわね。時々変な本書くのよ、内藤君て。でも、今回は、大阪に新しく出来る芝居小屋、 <ウルトラマーケット>での、開場記念プレ公演の出し物だけあって、力入ってたわね。」

S「で、どんな話?」

A「いつもの様に、いつもの場所で乗った筈の電車が、ある一人の<この電車でいいんだっけ?> という問いかけから始まるドタバタなんだけどね。」

K「いつもと同じ行動をしているから、何も疑わずに過ごしている我々への警告っていうやつですかね?」

A「まあ、警告って言うほどそんなに大げさじゃないんだけど、その乗客の中にいる一人の記憶を無くした男。 その男の記憶を辿ってく物語り。」

S「ハチヤメチャ?」

A「まあ、いつもの事なんだけど、今の社会を、一寸だけえぐってる、とでも言うのかな?まあ、面白くて、 ドタバタ活劇の南河内万歳一座復活!ってな感じよ。」

K「面白そうだけど、どうもドタバタねぇ。」

S「でも観てみたい、その劇団。今度連れてって下さいよ、アキさん。」

A「いいわよ、でもさ、次回の公演は、来年の半ば過ぎよ、きっと。でも、その前に大阪で、<ウルトラマーケット> が正式オープンする時に公演する筈だから、その時に行ってもいいわね。大阪も楽しんでこれるしね。」

K「それ、いいなぁ〜。僕も乗っちゃおおかな?」

S「いいよね、みんなで行かない?大阪。」

A「でも、ホテルは別よ、ね。」

S「勿論じゃな〜い!行こう行こう!」

K「しかし、年末だっていうのに、来年の話で盛り上がってるなんてね。僕らもお気楽ですよね。」

S「そうだった。今年もあと一週間を切ったんだよね。いろいろやらなきゃいけない事沢山あるのにな。 こんな所で油売ってちゃ駄目だよね。早く帰らなきゃ。」

A「茂ちゃん、こんな所で悪かったわね。」

S「あっ!しまった。ウソです、うそ。こんな所ではありません、はい。」

K「はははは・・・。まあ、いいじゃないですか、こんな所で。僕達は、ここへ来て、お酒を飲んで、会話で盛り上がって。 なんて、幸せなんでしょうねぇ〜。世界には・・・・。」

A「ちょっと、ヤバ系よ。茂ちゃん、早く帰った方が、止まりそうもないわよ。」

S「そうですね、じゃあ、チェックで。」

A「あいよっ!え〜と、茂ちゃんは、丁度2000円です。有難うございました。」

S「はい、ご馳走さまでした。あっ、そうだ。もう今年は来る事出来ないかもしれないんで、良いお年を、ですぅ。」

K「それじゃ、僕も退散しようとしますかね。誰も聞いてくれそうもないし。」

A「何言ってるのよ。・・・・はい、それじゃ、カッちゃんは、2100円です。」

S「はやっ!」

A「じゃあ、カッちゃんも良いお年を、かしらん。」

K「いえ、僕はまだ来ます。あと一週間ですからね。今年の反省を込めて、もっとお話しなきゃいけない事もあるし。」

A「それじゃ、またね。ありがとう!」

S「それじゃ、おやすみなさ〜い。」

K「じゃあ、また。おやすみなさい。」

A「おやすみぃ〜!ありがとね。・・・・・でも、あと一週間かぁ〜。やる事沢山あり過ぎて。あ〜あ、どうしましょ。 やるっきゃないか。」

友(以下T)「今晩は〜!」

A「あら、友ちゃん、いらっしゃ〜い!今日は何にようか?」

T「それじゃ、今月のお勧めドリンク、ブルドック・ハイボール、お願いします。」

A「あいよっ!」

おわり


*今回紹介したお芝居は、
1)<ナニワバタフライ>     PARCO劇場
        1/26まで上演中 2月大阪公演あり
2)朗読劇 <藪の中><闇の中> 公演終了
3)南河内万歳一座 <みんなの歌2>
      公演終了

以上です。今年も一年、お購読有難うございました。来年もまた楽しみにしていて下さいね。 時間がある方は、劇場に足をお運び下さい。


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