<出っぱなしの男>の巻

マツ(以下M)「こんばんは。やっと暖かくなりましたね。」

あき(以下A)「あら、久し振りね。元気そうじゃない。いらっしゃい。はい、おしぼり。」

コバちゃん(以下K)「本当に久し振りだよね。俺なんか、そうだな、1年ぶりくらいかなぁ〜。」

M「そんなになりますか?僕は最近会っていると思ったんだけどなぁ〜。会いませんでしたっけ?道路で。」

K「え〜?あ〜〜〜!会った、会った。渋谷だよね。道玄坂だよね。」

M「そうですよぉ〜。丁度ヤマハに楽譜買いに行く時だったんですよ。」

A「マツは何にしようか?」

M「あっ、ごめんなさい。え〜と、僕は、久し振りにタンカレーのテンをロックでお願いします。」

A「あいよっ!」

K「でもさ、今日は何処かへ行ってきたの?コンサートかなんか?」

M「いえ、違いますよ。ミュージカル観てきたんです。」

A「はい、お待たせ。で、何よ、ミュージカルって。」

M「<バット・ボーイ>っていうミュージカルなんですけどね。アキさん知ってます?」

A「ああ、行ったんだ、<バット・ボーイ>。」

K「何なに?悪ガキのはなし。アキちゃん好きだからね、悪ガキ。」

M「違いますよ、コバさん。バットですって、バット。バッドじゃないんですよ。こうもりです、こうもり。」

K「なに、こうもりがミュージカルになっちゃうんだ。なんかキモくな〜い?」

A「アッシね、ほら、ニューヨークで起こったテロあったでしょ、911ね、その2ヶ月後に行ってオフで観て来たのよね。 で、うちのホームページにもレビュー書いたんだけどさ、とっても面白かったのよ。」

K「で、行ったんだ、今度も。」

M「行ったんですか?」

A「初日にね。」

M「どうでした?僕は結構面白かったんですけどねぇ。」

A「そうね、まあまあかな?よく演ってたと思うけど。驚きもあったしね。」

K「何に?」

A「森山未来って、歌も結構歌えるじゃん、みたいな。」

M「そうでしたよね。上手いんでビックリしちゃいましたよ。でも、話がちょっと解りにくかったんですよね、僕だと。」

K「そんなに複雑なんだ。」

A「そんなでもないんだけど、初めて観るとちょっと解りずらいかもね。」

K「どんなストーリーなの、こうもり男の話って?」

M「いやだな、コバさん、こうもり男じゃなくて、こうもり少年ですよ、バットボーイですから。」

K「あっ、そうか。でその少年の話って。」

M「洞窟探検で見つかったバットボーイが獣医家族の中で知識や教養を段々身に付けていくんですけど、 ちょっとした噂から誤解を呼んで、、さらに嫉妬と策略が絡み合って・・・。」

A「最後にはビックリする家族の秘密と不幸な結末が・・・ってな話よ。」

K「へ〜。」

M「でも、音楽も良かったし、舞台装置なんかも工夫してあって解りにくかったけど、良かったですよ、本当に。 アキさん、そうでしたよね。」

A「そうね、だからまあまあかな?まずさ、オフ・ブロードウェイの雰囲気が今ひとつだったわね。 何時も言っている事だけどさ、日本ではすごく難しいんだけど、劇場が広すぎちゃってね。 これはもうどうしようもない事だから目をつぶるとしてね、でも、オフの雰囲気だけは出してほしかったのよね。 舞台装置にしても立派過ぎちゃって。」

M「あれで立派なんですか?」

A「まあ、立派とは言えないけど、オフでは、そんなに予算が掛けられないから、本当にチープというか、 簡素なのよね。それに、演技ももっとチープに。」

K「えっ?もっとチープにって?」

A「う〜む、これはね、誤解があるといけないんだけど、下手に、って言うんじゃなくて、なんて言ったらいいんだろうなぁ〜、 う〜む、難しいわね。」

M「なんか、ちょっと解ったような気がしますけど。あれですよね、大袈裟じゃないけど、それっぽいっていうか・・・。」

A「そんな所かな。でも、訴えている物は明確にしてるっていうか。」

K「イマイチ解らないけど、全体としてはまあまあだったんだ。」

A「そうね。まず歌ね。ほとんどの役者さんがちゃんと歌えたっていう事が大きいわね。 大体歌える人が少なくてもミュージカルやっちゃってたでしょ、日本は。でも、最近、 本当に歌が上手い人が増えて、漸く聞くことの出来るミュージカルが多くなったのは嬉しい事だわよね。」

K「でもさ、その誰だっけ?・・・え〜と、森山未来か。彼って結構歌えたんだよね。それじゃ、 次回何か出たら観に行ってみようかな。」

M「そうですね。歌えてましたし、踊れてましたよ。」

K「でさ、あきちゃん、最近は何か面白い舞台とか映画とかあった?」

A「そうね、まあ、訳分かんなくて面白かったのが、大竹しのぶと松尾スズキのふたり芝居<蛇よ!>かしらね。」

M「そんなに面白かったんですか?」

A「なんか、ストーリーはちゃんとあるんだけど、訳分かんなくて。でも、ず〜っと笑ってたけど。」

K「どんなやつなの?そのふたり芝居って。」

A「まあ、コントかな?4つのコントの間、間に映画<出しっぱなしの女>が挿入されている舞台なのよ。」

M「話聞かせてください。」

A「さっきも言ったけど、4つのコントがあるんだけどさ、その前に、 舞台は映画館のスクリーンみたいだって事を言っとかなきゃいけないわね。」

K「映画館のスクリーンの中で芝居が進行していくって事なんだよね。」

A「まあ、そんな感じなんだけどね、コントとコントの間に映画が流れるって言ったでしょ、 それでそうなっているんだとは思うんだけど。」

M「って言う事は、直接芝居には関係が無いって事ですか?」

A「どうなのかしらん。松尾スズキに聞いてみなきゃ分からないわね。」

K「で、その4つのコントって、どんなやつだったの?」

A「まず、<初めてのSM>、で次が・・」

M「え〜〜〜っ!大竹しのぶが松尾スズキとSMですかぁ〜?」

K「まあ、聞きなよ、次を。」

A「で、次が<突起物の女>、<これからの人>、で、最後が<刺したね>の4つなのよ。」

M「で、その間に映画が入るんですね。」

A「そうなの。」

K「で、色々あるだろうけど、アキちゃんが面白かったのは、その中ではどれだったのかな?」

A「そうね、アッシが強いて選ぶとすれば、最初と最後かな。」

M「って言う事は、やっぱりSMですね。」

K「何、なに?マツ君はSMに興味があるんじゃないの、本当は。」

M「そんな事は無いんですけど、・・・。」

A「まあ、あったって、それは人それぞれだからね。」

M「でも、ちょっと聞きたいですね、そのSMの話。」

A「まあ、SMって言っても舞台上で、大竹しのぶと松尾がSMするって訳じゃないんだけどね。 まあ、話すと、会社の金を横領した男が、最後に残った金で田舎のホテルでSMプレイをしようとして、 そこに<女王様>を呼ぶのよね。」

K「で、その女王様っつうのが大竹しのぶなんだ。」

A「そうなの。でもね、田舎じゃない。そのホテルが沼の近くにあって、その女王様がゴム長靴で現れるのよ。」

K「呼んだほうはコケちゃうよね、それじゃ。はははは、なんか可笑しい。」

A「でしょ。で、何だかんだあるんだけど、とってもナンセンスな雰囲気が多くてね、本当に可笑しかったのよね。」

M「例えば、どんな所がナンセンスだったんですか?」

A「だって、SMの女王様でしょ。最初が泥まみれの長靴、着替えてきたらパーティーどれす。それも、 これから結婚式があるからついでに着て来たっていうじゃない。ナンセンスそのものよ。余興の練習だっていって、 歌を歌い、タップまで踏んじゃってさ。おまけに、本当はその女の娘が来る筈だったって言うのも分かっちゃって。」

K「おもしろ〜い。あとのは、どうなの?」

A「二番目の<突起物の女>は、診療内科に通う女と先生の話。そして、三つ目の<これからの人>は、田舎の中で、 垢抜けている男の子とその子が憧れている男の子との話。で、最後が、男に裏切られた女が、 全く関係のない男を刺しちゃった話なのよ。」

M「で、アキさんは、最後の刺しちゃった話が面白かったんですよね。」

A「そうそう。だって、哀れだし、分からないけど、やたらと可笑しいのよ。松尾スズキが凄くてさ。 オーバーな演技じゃないだけに、その哀れさが良く出ててね。アッシが今まで観てきた松尾スズキの中でも突出して哀しくて、 面白かったわ。」

K「観たいよねぇ〜。面白そうじゃん。で、映画の方、何でしたっけ?あっ、そうそう、<出しっぱなしの女>でしたよね、 確か。そっちは?」

A「これはさ、水道を出しっぱなしにする女と、それを止めようとする水道局員の話なのよ。」

M「こっちは面白かったんですか?」

A「まあまあだったけど、やっぱりあの芝居を観ちゃうとね、イマイチに思えちゃうのよね。」

K「そうなんだ。でも観てみたいよね。まだチケットあるかな?」

A「ちょっと難しいと思うけど、当日券が若干出るみたいだから、それを狙うしかないかもね。ただし立見になると思うけど。」

K「でもいい。行きたくなっちゃった。」

M「ところでアキさん、さっきからず〜〜っと気になってたんですけど、僕が来てからあのグラス置きっぱなしなんですけど、 誰か居るんですか?」

A「ああ、あれね。あれ、トンちゃんなのよ。コバちゃんが来る前に居たんだけど、 酔いを醒まして来るって出て行ったまんま帰って来ないのよね。」

K「あ〜、それで。俺もさ、気になってたんだけど。トンちゃんなんだ。前もあったよね、 出たまんま帰って来なかった事。」

M「そうなんですか。」

A「まあ、心配はいらないと思うけどね。来なかったら明日連絡入るから、きっと。」

K「トンちゃんたら、<出っぱなしの男>なんじゃないの?はははは・・・。」

一同「本当だ!はははは・・・・・。」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居は、
1)<バット・ボーイ>    公演終了
2)<蛇よ!>   上演中〜3/21まで
                 青山スパイラルホール
どうぞ足をお運び下さい。


Back Number!