<やっぱり好きなの!>の巻

あき(以下A)「いらっしゃ〜い!」

イートン(以下I)「今晩はぁ〜。」

A「あら、イートン、こんな日曜に珍しいわね。おしぼりどうぞ。」

I「有難うございます。日曜日、そうですね、久しぶりですよ。丁度この近くで芝居があったものですから。」

A「で、今日は何にしようか?」

I「え〜と、ですね。今日は、これかな?やっぱり。ワイルドターキーの12年。これを、ロックで。」

A「あいよっ!・・・お待たせ!」

I「う〜む、やっぱり美味しいですね、これ。」

さっち(以下S)「でも、強くありませんか?僕なんて強すぎて。チビチビ飲まないと飲めないですね。」

A「あら、さっち、チビチビでいいのよ。そんなゴクゴク飲まれちゃったら、後が怖いしね。」

I「それもそうだぁ〜。ははは・・・。」

S「それじゃ、僕はお代わりで、ワイルドターキー12年頂いてみようかな?」

A「あいよっ!ちゃんとチェーサー出すから、ゆっくりチビチビね。・・・・はい、お待ち!」

S「う〜む、凄くコクが有りますよね、これ。」

A「ところで、イートンは何観て来たの?」

I「ほら、絶対王様ですよ。アキさんは行かれました?」

A「当然!よね。さっちも行ったのよね、確か。」

S「はい、行きましたよ、昨日ですけど。」

I「で、みんなはどうだったぁ?」

S「僕は、実は初めてだったんですけど、あんまり意味は分からなかったんですけど、面白かったですよ。」

I「で、アキさんは?」

A「そうね、アッシは、何時も思うんだけど、面白いのは役者さん達の与えられているキャラクターで、話としては、主宰者の笹木君も言っているように、<だから何?>っていう感じかしらね。」

I「そうですか。確かに役者達の個性で面白く見せている所はあるかもしれませんね。」

S「あの人、メチャクチャ面白かったですよね、誰でしたっけ?あの人。」

A「誰でしたっけ?って言われてもね。どんなキャラ?」

S「あのぉ〜。顔が大きくてぇ〜・・・。」

I「それなら入山君だね、きっと。」

A「うん、間違いないわね。」

I「あいつは何時も面白いよね。今度も笑わせてくれたし。」

A「そうね、何時も変な役。でもさ、それが固定しちゃってるでしょ。っま、こっちも期待しちゃっている所も無きにしも非らずだけどね。」

I「そこがやっぱりキャラクターで作られちゃっているって言う事に繋がるかもしれないですね。」

A「そうね、そうかも。でもさ、それが上手くはまった時は凄い物を感じるわよね。たとえば、その入山君だってそうだけど、個性のある台詞を言っていても、凄くはまる時と、そうでもない時があるし、今回の<やわらかい脚立>では、有川君なんかが、アッシの中では、正にそれだったのよね。」

S「アキさんの一押しは有川さんだったんですね。」

A「何時もじゃなくて、今回はね。もしかしたら初めて彼にそう思ったかも知れないわね。」

I「でも、そうかも知れませんね。結構ファンの人はいるみたいですけど、俺なんかも彼にはなかなかピンと来ない事が多かったんですけどね。今回は結構す〜っと入って行けましたしね。」

S「そうですか。僕はこの芝居観て、少し多重人格に興味が沸いて来たんですけど。」

A「あら、それは素敵な事じゃない。お芝居観て興味が沸いて来る物があるなんてさ。とっても素敵だと思うわよ。」

I「まあ、行き過ぎないようにしないと、その内に自分も多重人格になっちゃったりしてね。」

S「怖い事言わないでくださいよ、イートンさんたら。」

I「ははは・・・。本当だってば。ははは・・・・・。ところで、アキさんは、この他に何か観たんですか?芝居。」

A「うん、観てるわよ。」

S「何かいいのありました?」

A「そうね。一つの劇団の上演した中で、今までで最高!っていうのにブチ当たったわよ。」

I「あれですよね、きっと。どこでしたっけ?ほら、昔、新宿梁山泊に居たあの人が主宰している、え〜〜と、どこでしたっけ?」

A「流石ね、イートン。<劇団桟敷童子>よ。東君の主宰している所よね。」

I「あっ、そうそう。<劇団桟敷童子>だった。今回、そんなに良かったんだ。」

S「初めて聞きました、その劇団。有名なんですか?」

A「まだまだ有名じゃないけど、アッシみたいに60年代70年代から芝居を観ている人達には結構知られているかもね。」

S「古いって事なんですかね。」

A「何言ってるのよ。古いんじゃなくて、ちゃんとメッセージが有るって事。まあ、さっちみたいな若い子にはイマイチ解らないかもしれないけど。」

S「難しいんですね。解らなくても楽しい方がいいですよ、自分としては。」

I「勿論、それも有りだけど。俺もどちらかというと、面白いだけじゃイマイチなんですよ。だから、まだ観た事ないんだけど、俺には合うかもしれないな、多分。」

A「多分イートンは好きだと思うわよ。特に今回の番外公演2本立ては、本公演以上に感動しちゃったもの。」

S「へ〜〜〜。どんな話なんですか?」

A「さっちはピーター・オトゥールっていう俳優は知ってる?」

S「聞いた事ありますね。何に出てた人でしたっけ?」

I「ピーター・オトゥールといえば、<アラビアのロレンス>だよね。格好いいよね、あの時の彼は。」

A「そうそう。で、彼が出演した映画で<マーフィーの戦い>って言うのがあるんだけど、おそらく知らないわよね。」

I「それは知らないな。有名じゃないですよね、その映画。」

A「そうね、まあ、有名じゃないと言えば有名じゃないし、有名だと言えば有名かしらん。」

S「それじゃ、どっちだか分かりませんよ。」

A「まあ、ピーター・オトゥールの出演作品の中では、大ズッコケだった映画なんだけど、未だに熱狂的なファンがいるのよ。一種カルト的な人気を持っている映画なのよね。この<マーフィーの戦い>をモチーフに、<まーちゃんの戦い>と<さらば、ぶらーむす・・・もう一人のまーちゃん>の二本を新作として上演したのよね。」

S「で、まず<マーフィーの戦い>ってどんな映画なのか教えてもらえますか?」

A「第二次世界対戦末期の話なんだけど、ナチスの潜水艦に攻撃された連合軍の中でただ一人生き残ったマーフィーが、たった一人で復讐い挑んで行く、その執念と狂気の話なのよね。」

I「あ〜、なんか聞いた事ありますね、その映画。それじゃ、その芝居は、執念と狂気の話なんですね。」

A「そうなのよ。」

S「聞かせてくださいよ。」

A「まず<まーちゃんの戦い>の方ね。これはね、シャドーボクシングを続けている女と、そこに来てコーチみたいな男の話なのよ。」

S「全く分かりませんね、僕には。」

I「まだ話にもなってないよ、さっち。」

S「あっ!そうでしたね。で、・・・。」

A「つまり、殴る女と殴られる男の話ね。その訳十はというと、その数年前に二人は結婚していて、子供もいたんだけど、ある日、みんなで一緒に海に遊びに行った時に悲劇が起こるのね。」

I「その子供が死んじゃうんですかね。」

A「そうそう。で、その時から二人は殴る女と殴られる男になっちゃうのよ。」

I「何となく読めてきましたよ。」

A「そうでしょうね。イートンだったらもうその先はある程度は想像できるでしょうけどね。たった25分間の上演だったんだけど、企画を出した女役の外山博美も良かったんだけど、殴られる男役の原口健太郎がとっても良かったのね。」

S「二人を繋げていた何かがその後無くなってしまうっていう話とか。」

A「あら、さっち、なかなかいい所突いているわよ。」

I「その繋げてた物って?」

A「それはね、飛行機のモデル。木型のね。」

S「あ〜、作りましたよ、僕も。小学校の時だったかなぁ〜。」

I「最後はその飛行機が飛んで行くんじゃないかな?」

A「流石!イートン。まあ、飛んで行くんじゃないんだけど、プロペラが回り出すのよね。」

I「う〜む、好きですよ、この話。」

S「もうひとつの話はどんなんです?」

A「<さらば、ぶら〜むす・・・もう一人のまーちゃん>ね。こっちはね、母親が死ぬ前に手紙の束を自分に渡した事から起こる姉と弟の物語りなのね。」

I「手紙の束ね。」

S「どんな束だったんですかね、それは。」

A「それはね、母親が<ぶらーむす>っていう人と文通していた25年間の手紙の束だったのよ。」

I「そこに書かれてあった何かがその姉弟を翻弄するっていう事なんですかね。」

A「まあ、そんな所よ。」

S「全く分からないなぁ〜。もっと詳しく教えて下さいよ。」

I「でもさ、もしかしたら観に行くかもしれないから、その辺りで止めておいてほしいかな?っていう気持ちもあるんだけど。」

A「残念ね。もう終わっちゃったのよ。」

I「それじゃ、聞きましょうか、その続き。」

A「その内容はね、まず、<ぶら〜むす>っていう人が、その姉弟の父親だったって事が分かるのね、25年前に飛行機を飛ばそうっていう夢を叶える為に家族を捨てた。」

S「ドラマみたいですね、何か。」

A「そこには、姉弟のほかに、もう一人の姉が居るという事実が書かれてあったのよ。」

I「当然、その姉弟は、その手紙に書いてあった事実を探しに行くんだよね、父親の所に。」

A「そうなのよ。で、言ってみると、父親は既に死んでいるんだけど、そこには父親の夢だった飛行機<ぶらーむす>を飛ばす為に集まっている集団がいるのね。」

S「その集団って、もしかしたらカルト的な集団だったりして。」

A「そうじゃないんだけど、心に問題を抱えている人たちの集団なのね。でも、みんながひとつの目標に向かって動いているわけよ。」

I「それが飛行機<ぶらーむす>を飛ばす事なんだ。ね。」

A「そうそう。でも、目に見えない妨害者がいて、その飛行機が飛ぶのを阻止しようとしている訳ね。」

I「分かった!その妨害者っていうのが、まだ会った事の無いもう一人の姉なんだよ、きっと。」

A「もうイヤになっちゃうわね、そう次から次へ当てられちゃうと。で、そのもう一人の姉は、自分たちの幸せを壊した父親の夢である飛行機を飛ばさない為に、一見、その飛ばす為の指揮をとっている様にみせて、またもう一人の姉とともに共同戦線を張る訳ね。」

I「それからまた次の展開があるんだよね、きっと。」

S「凄い!ですよね、イートンさん。脚本書けますよ、そんなだったら。」

A「何言ってるのよ、さっち。イートンは脚本書いた事あるのよ、ず〜っと前だけど。」

S「あ〜、それでですね。鋭過ぎすと思いましたよ。へ〜。どうりでね。」

A「で、所が、弟がまだ見た事の無い父親の夢を実現しようと躍起になりはじめるのね。」

I「そこには危険な落とし穴が・・・、って言う事でしょ。」

A「ちょっと違うんだけど、まあ、その弟っていうのは、とかく問題を起こしていた子で、警察が探し当ててやってくるのよ。」

S「それで捕まっちゃうんですか?」

A「う〜ん、違うの。まだ飛行機の操縦なんてした事が無いその弟が、捕まる前にと思って飛ばしてしまうのね。」

S「二人の姉達は気が気ではないですよね、そうしたら。」

A「そうそう。で、ひたすら飛ぶ事を祈るのよ。でも、飛んだ!っと思ってからほんの一時、悲惨な状況を目の当たりにするのね。」

I「後はエピローグですね。弟と母親と父親の思い出が語られる、ですよね。」

A「残念でした。残された二人の姉は、各々が進みたい方向に進んで行くのよ。その二人の姉の文通も始まって、お互いを励まし会って生きて行く。まあ、エピローグはそんな所かな。そうそう、言い忘れたけど、その二人の姉の間には秘密があったのも付け加えとくわね。まあ、これは説明すると長くなるから止めとくけど。」

I「そのふたつの芝居には、台詞の中で、執念と狂気を現しているものは有ったんですかね。」

A「そうね、二つの芝居に共通して出てくる台詞、それは、<飛べ!この野郎、飛べ!>と、<闘牛だ、オ〜レ!>の二つかな?」

I「あ〜、何となく分かります。自分達の心の中に向かって叫んでいる言葉なんですよね、きっと。」

A「アッシもそう思ったの。二本で1時間20分ほどの芝居だったけど、凄く感激したし、やっぱりアッシって、こういう芝居が好きなんだな、って改めて思ったわね。」

I「俺も多分好きだと思いますね、このテの芝居は。観て見たかったな。次、あったら教えて下さいよ。」

A「勿論よ。イートンには一度観てほしいと思っていた劇団だからね。」

I「それじゃ、ワイルドターキー12年、お代わりもらっちゃいます。」

S「僕もお代わりお願いします。」

A「あら、さっち、大丈夫なの?」

S「え〜。多分、僕って、結構好きかもしれませんよ、このワイルドターキー12年は。」

A「それじゃ、来月も引き続きお勧めドリンクにしちゃおうかしらん。」

I「賛成!賛成!」

S「僕も賛成ですね。」

A「やっぱり皆、好きな物は好きなのね。」

一同「ははははは・・・・・。」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居は、
1)絶対王様<やわらかい脚立> 公演終了
    次回公演: 9/15〜21  シアターグリーン
2)桟敷童子<まーちゃんの戦い・さらば、ぶら〜むす>   公演終了
    次回公演:7/9〜18  下北沢ザ・スズナリ
以上です。次回公演には是非足をお運び下さいね。


Back Number!