<もう観とかなきゃ!>の巻

ゆーや(以下Y)「アキさんお代わりください。」

あき(以下A)「あいよっ!同じのでいいのかしらん。」

Y「はい、ワイルドターキー12年。本当に美味しいですよね、これ。」

A「そうでしょ。やっぱりロック。ちょっとずつ溶けてくる氷が程よい味にしてくれるでしょ。」

Y「そうですね、本当に。」

琢磨(以下T)「それじゃ俺もそのワイルドターキー12年っていうやつ飲んでみようかな?」

A「で、琢磨は、ロック、ストレート、水割り、ソーダ割り、何にしようか?」

T「そうだなぁ〜、俺は〜・・・、やっぱりロックで。この氷もいいしね。」

A「なにかこんな小さなバーで飲んでいる、というよりは、高級クラブで飲んでるっていう雰囲気でしょ。」

Y「目をつぶっているとね。」

A「失礼ねぇ〜!はははは・・・。」

T「所でアキちゃん、この前池袋で会ったけど、何処か行ってたの?」

A「え〜と、何時だっけ?」

T「ほら、今月初めの月曜日だってば。」

A「え〜?今月初めね。え〜と、あ〜、夜遅い時間でしょ。サンシャイン通りね。」

T「そうそう。」

A「あの日ね。あの日はね、夕方から夜にかけての用事が済んで、帰る時だったのよ。」

T「でも、相当遅かったよね。確か10時位じゃなかった?」

Y「またアキさん、何処かへお遊びかなんかじゃないんですくゎ〜?」

A「違います。そんな変な言い方止めてちょうだい。」

Y「それじゃ、どこに?」

A「いいじゃないのよ、何処だって。っていうか、あの時はね、映画を見た帰りだったのよ。」

Y「あんな遅い時間に?映画?」

A「そうなのよ。アッシも何時もは芝居とか観てる時間じゃない。でも、 その日は夜7時半まで野暮用があったんで芝居入れてなかったのね。で、帰ろうかなって思ってたら、 看板が目に入ったのよ。」

T「映画の?」

A「そうそう。で、観るつもりだったから、明日の時間でも確認しようかしらと思って看板みたら、 まだやっているのよ、その映画が。」

Y「そんな7時半過ぎに?池袋で?」

A「それがさ、アッシも初めて知ったんだけど、やっているのね、遅くまで。その日は、最終上映が8時40分。 前売り買ってないけど、まあいいか、って思ってチケット売り場に行ったら更に驚きよぉ〜。」

T「そんな時間なのに満席で入れなかったとか?」

Y「一瞬、売り場の人にこれ観るの?な〜んて顔されたとか?」

A「違うのよぉ、なんと!」

Y&T「なんと?」

A「なんと、¥1200です。って言うじゃない。えっ?って料金表見ちゃったわよ。そしたらさ、 ちゃんと¥1800って書いてある。どうして?って思ったんだけど、まあ、色気で安くしてくれる訳ないしね。 後で分かったんだけど、夜間割引みたいなのよ。」

T「へ〜。でもいいね、¥1200だったら。映画も高いからな。¥1800、所によっては¥2000っていうのもあるしね。 ¥2000だよ、¥2000。飯喰ったらいくらになっちゃうかと考えると、選んじゃうよね、映画も。」

Y「そうですよね、琢磨さん。オイラなんか、今の値段だとよっぽどじゃなきゃ映画行けませんよ。 ¥1200だったらね。ところで、アキさん、その映画って何だったんですか?」

A「あら、まだ言ってなかったかしらん。ほらほら、クドカンのぉ〜・・。」

Y「あ〜、何だっけ?」

A「あらら。ちょっとコケたわね。あれよ、あれ。<弥次さん喜多さん>。」

T「<真夜中の弥次さん喜多さん>だろ、それを言うのなら。」

A「そうそう、それよ。」

T「アキちゃん、大丈夫なの?まださ、2週間も経ってないんだよ。」

A「大丈夫よ。でもね、最近物忘れが激しくって。」

T「まあ、歳だからね、アキちゃんも。」

Y「まあまあ、そんなことより、どうだったんです?その<真夜中の弥次さん喜多さん>は。」

A「もう馬鹿馬鹿しくて、面白かったわよ。なんてったって、初めからジャブ中(毒)シーンだしね。」

Y「それじゃ、もう破天荒っていうか、メチャクチャっていうか。」

A「それが、そうなんだけど、違和感を感じないのよ。これって、喜多さんの夢の中の出来事だったんじゃないの? ってな感じよね。」

T「特にここは、ってのは?」

A「そうね、やっぱり荒川良々ね。今、怪優中の怪優じゃないかしらね。勿論、 弥次さん喜多さんを演るTOKIOの長瀬智也と中村七之助も良かったし、小池栄子、阿部サダヲ、竹内力、古田新太、 松尾スズキ、研ナオコ、中村勘九郎(現・勘三郎)、それに、原作者のしりあがり寿まで、 それぞれが面白く演出されているのよね。」

Y「本当に面白そうですよね。観に行っちゃおうかなぁ〜。」

T「まあ、今までで<弥次さん喜多さん>物で面白くなかったのは無いくらいだからね。きっと今回のも面白いんだろうな。」

A「そう言えば、アッシ、昔ね、美空ひばりと江梨チエミの弥次・喜多珍道中みたいな映画を観た事あるわよ。 ミュージカルっぽくって楽しかったのを今でも覚えているわ。」

T「エノケンもやってるし、伴淳と高田浩吉、勝新と雷蔵っていうのもあったよね。」

A「あら、琢磨ったら日本映画オタクだったりして。」

T「まあ、好きだけど、オタクではないですよ。」

Y「今、言った人、美空ひばりくらいしか知らないなぁ〜。」

A「あらら。まあ、仕方ないわね、ゆーやの年齢じゃ。でもね、本当に面白いわよ。絶対観ても損はない、かな?」

T「映画もいいけどさ、芝居は無いの?何か良いやつ。」

A「そうね、やっぱり美輪さんでしょ。オハコの<黒トカゲ>。 三島由紀夫の台詞の美しさに美輪さんの美的感覚がマッチした、やっぱり見逃せない舞台だと思うわよ。」

Y「一度観てみたかったんですよね、その舞台は。」

T「まあ、俺もす〜っと前に観たきりだから、今回は行きたいと思っているんだけどね、席があるかどうか。」

A「そうよね、何時もこの舞台は満席だからね。この前行って来たんだけど、補助椅子が出てたから、 当日券も発売するんじゃないかしらん。」

T「で、今回のデキはどうなのかな?」

A「そうね、二年前とはキャストも少しだけ違うんだけど、ほとんど同じ。ただ、 今回はちょっとコミカルな所も入っているのよね。アッシは余計だな、って思ったけど。」

Y「その余計だなって思ったのはどんな所なんですか?」

A「例えばね、台詞で<青い亀>とか、<黄色い鰐>とか出てくるんだけど、そこで笑うのは仕方ないと思うのよ。 脚本がそうなっているからね。でもさ、黒トカゲが明智を表現する時に明智がとる仕草は頂けなかったわよ。」

Y「どんな仕草だったんですぅ〜?」

A「それは、観てからのお楽しみね。」

T「その他には?」

A「そうね、やっぱり一番気になったのが、雨宮を演った木村彰吾の演技よね。」

Y「すごく上手かったんですか?」

T「ははは・・・。ゆーや君ね、全くその逆だよ。ね、アキちゃん。」

A「そうなのよね。何年経っても上手くならない、典型的な例よ、彼は。折角スラリとした背丈と整った、 どこか昭和を感じさせる顔を持っているのに、動くと全てが台無しになっちゃうのよ。」

Y「そんなにヒドイんですか?」

A「初舞台を踏んでる人が、手に力が入っているみたいなのよ、何時も。」

T「じゃあ、本当に全く変わってないんだね。俺がさ去年だったっけ、え〜とほら、デュマのあれ、 ・・・あれ、なんだっけ?」

A「<椿姫>でしょ。」

T「そうそう、椿姫。あの時アルマンを演ったんだけど、酷くて酷くてね。途中で帰りたくなったの思い出しちゃったよ。 で、今度も酷いんじゃねえ、ちょっと行くのを躊躇っちゃうよね。」

A「でもね、やっぱりあの舞台は観ておくべきよ。美輪さんの中でも最高の演技を見せてくれる舞台ですからね。」

Y「そんなにいいんですねぇ〜。で、アキさんがお勧めする<黒トカゲ>の名場面って教えてもらってもいいですかね。 行く時に参考になりますから。」

A「名場面ね。そうね、あの舞台は3幕構成なんだけど、一幕では最後の最後、 黒トカゲが緑川夫人から「男」に変装して出て行くところ。4〜50年前のキザな感じがたまらなくいいのよ。 二幕では、何といって持も最後のシーン。黒トカゲと明智がお互いに放つ台詞。<そして、最後に勝つのはこっちさ!>っていう、 あの台詞を言う二人がとっても格好いいのよ。それから、三幕目はね、ちょっと幾つかあるんだけど、まずは東京タワーのシーンね。 緑川夫人から掃除のおばちゃんに早替わりする所。それと、明智を水葬にした後、海に向かってバラを一輪投げ入れる所。 もう涙無しでは観る事が出来ないわよ。そして、本当に最後のシーン。黒トカゲが死んで、 皆が喜んでいる時に明智が<本当の宝石はもう死んでしまったからです。>という台詞。ここで幕なんだけど、 気が付くと涙が頬を伝わっているのよね。」

T「よっぽど好きなんだね、あきちゃんはこの舞台が。語り始めたら止まらないんだからさ。」

A「そうね。昔から観ている舞台だけど、何時も感動するからね、この舞台には。アッシにとっては、 美輪さんの舞台の中では常にナンバーワンなのよ。」

Y「他にあげるとしたらどんな舞台があるんですか?アキさんの美輪さん舞台ベストスリーを上げて下さいよ。」

A「そうね、この舞台でしょ、それから<毛皮のマリー>に<青森県のせむし男>かしらねぇ〜。」

Y「それじゃ次にその芝居をやる時には、絶対に観に行かなきゃ。」

T「まあ、そうだよね。美輪さんも段々観る機会が少なくなって来るだろうね、これからは。観る事の出来る時に観ておかないと。 もう観とかなきゃね、っていう事かな?それに、アキちゃんの店も来る事が出来る時に来ておかないとね。」

A「ちょっと、それどういう意味よぉ〜!」

一同「ははははは・・・・・。」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介した映画・お芝居は、
1)<真夜中の弥次さん喜多さん>
     全国で上映中
2)<黒トカゲ>  5/8までル・テアトル銀座
     ほか6/18まで全国巡演
以上です。どうぞ、足をお運び下さい。


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