<値段相応ね!>の巻

あき(以下A)「いらっしゃ〜い!」

豊(以下Y)「こんばんは。いや〜〜、涼し〜い!」

A「はい、おしぼり。熱いわよ。」

Y「ホントだ。熱〜い。でも気持ちいいですよね。」

マチャミ(以下M)「そうでしょ。暑い時には熱いおしぼりが一番よ。」

Y「流石、マチャミさん。年の功ですね。」

M「うるさいよぉ〜。早く注文しなさい!」

Y「あっそうだ。 え〜と、今日はジンロックで。」

A「あいよっ!で、タンカレイとボンベイ、どっちにしようか?」

Y「それじゃ、ボンベイでお願いします。」

A「はいよっ。・・・お待ち。」

Y「いや〜、いつ見てもいいですよね、この丸氷。アキさん、自分で削っているんですか?」

A「そうよ、な〜〜んちゃって。自分でやってたら何時間掛かるか分かりゃしないじゃないの。」

M「そうよぉ。アキちゃんがやるわけないじゃないよ。それに、そんなに丸く出来ないでしょ、人がやったら。」

Y「それもそうですよね。でも、いいな〜。」

A「これね、結構簡単に作れる方法もあるのよ。」

Y「どんなんですぅ〜。教えてもらいたいわぁ〜。」

M「そうなの?それだったらアタシも知りたいわねえ。アキちゃん、アタシにも出来るかしら?」

A「大丈夫よ、マチャミでも。家にさ、ピューラーある?」

M「何よ、ピューラーって。」

Y「やだな〜、マチャミさん、あれですってば、あれ。ほら、皮剥きの道具ですよ。 ほらほら、あそこにあるじゃないですか。」

M「あ〜、あれね。アキちゃん、すぐに見せてくれればいいのにぃ〜、ねえ、意地悪なんだからさぁ〜。」

A「何言ってんのよ。そんな時間ないでしょ。分からなかったら後で見せようって思ってたのに。」

Y「そうですよね、アキさん。で、そのピューラーをどう使うんですか?」

A「家の近くにコンビ二とかスーパーとかはあるわよね。」

M「確かあったと思うけど。」

A「まあ、そこで大きめのブロックアイスを買ってくるのよ。それで、 そのブロックアイスの角をこのピューラーで削っていくのね。」

M「どうすればいいの?」

A「そうね、ちょっとやってみましょうか。ほら、この大きめの氷。まあ、 これは角氷を割った物だから実際にはこれほど大きくはないんだけど、 ほら、こういった角をピューラーでこうやって。」

Y「へ〜〜〜。上手くいくもんやねぇ〜。」

M「ちょっとやらせてよ。・・・どれどれ。あら、難しいっわね、ちょっと。それに冷たいし。」

A「まあ、マチャミみたいな人は、最初から丸くなってる氷を買う事をお勧めするわね。 ちょっと貸してみて。・・・・ほら、ね。こうなってくのよ。」

Y「上手ですね、やっぱり。」

A「まあ、この丸氷のように、本当に満丸にはならないけど、 ちょっとお洒落な気分でグラスを傾けたい時にはいいでしょ。」

Y「今度試してみよ〜っと。」

M「アタシはやっぱり買って来た方が無難みたいね。」

A「ははは・・・・。本当よ。マチャミは買って来た方がいいと思うけど。」

M「はいはい分かりました。所で、豊ちゃん、そのパンフレットは何なの?」

Y「これですか?これ、今さっき映画を観て来たんですよ。そのパンフレットなんですけど。」

M「ちょっと見せてもらっていいかしら?・・・あら、これね、今話題の。」

A「何々?あ〜、この映画ね。みんながいしだあゆみの顔が凄〜い、って言ってたのよね。」

M「これ、何て読むのかしら?ねえ、ねえ。」

A「<姑獲鳥の夏>、これでね、<うぶめのなつ>って読むのよ。難しいわよね、漢字。」

Y「アキさんはもう観ました?」

A「あんまりみんなが凄い、凄いって言うからね、とりあえず行ったわよ。」

Y「凄かったですよね〜。」

A「それが、アッシにはイマイチだたのよ。まあ、原作を読んでないから、 最後が<それだったんだ>じゃなくて、<それだったの?>って感じだったのよ。 豊は結構イケテタんだ。」

Y「そうですよぉ〜。カッチョ良かったじゃないですかぁ〜。」

M「豊ちゃんがカッチョいい、何か変な言い方だけど、まあいいわね、で、 そのカッチョいいっていうのはどの辺りだったのかしらねえ?」

Y「映像とかですよぉ。」

A「なるほどね。アッシもさ、監督が実相寺昭雄でしょ、 だからやっぱりウルトラマンを思い出しちゃって期待はしてたのよね。」

M「で、どうだったわけ?」

A「やっぱりウルトラマンだったのよね。」

Y「それってどういう意味なんです?」

A「まあ、簡単に言っちゃうとチープなのよね。ウルトラマンの時とあんまり変わってないのよ。 もしかしたらワザトかもしれないけど。」

Y「でもあの作品を映像にするって、読んだ時には考えられませんでしたけどね。」

A「確かに原作を読んでいる人にはそうかもしれないけどさ、映画が初めてだとね〜。 もっと刺激的な映像を期待しちゃってたからね。それに、話が話じゃない。昭和20年代後半でしょ。 それも東京の産科医院が舞台だし。想像妊娠であそこまでね〜・・・。」

M「ねえ、アキちゃん、昔さあ、覚えてるかしら?ほら、カトリーヌ・ドゥヌーヴと マルチェロ・マストロヤンニの映画でさあ、ほら、何て言う映画だっけ?あったじゃないのよぉ、 想像妊娠のぉ〜。」

A「あった、あったわね。え〜と、あれは、あっ、そうだ、思い出した。<モンパリ>でしょ。 ミレイユ・マチュウが主題歌を歌ってたやつね。」

M「あら、そうねえ〜。ミレイユ・マチュウねえ、そうだったわねえ。主題歌、歌ってたわねえ。 で、面白かった映画だったわよねえ。」

A「あれは面白かったわよ。コメディーだから当然と言えば当然なんだけど。そうそう、 あのシーン思い出したわ。マルチェロ・マストロヤンニが想像妊娠でお腹がすごく膨れてくるんだけど、 手術台にのって検査を受けている時に電話が鳴ってさ、そのお腹から受話器をとりだしたりね。 ははは・・・。あれは、本当に面白かったわね、馬鹿馬鹿しくて。この<姑獲鳥の夏> もコメディーにしちゃえば面白かったかもね。」

Y「何言ってるんですかね、アキさんは。あれは京極夏彦のミステリーなんですよ。 コメディーなんかになる訳ないじゃないですかぁ。」

A「まあ、そりゃそうなんだけど、そのミステリーっていう所に実相寺監督がこだわり過ぎて、 どこか怖い物に仕上げようとしちゃったんじゃないかな、って思うのね。」

M「ミステリーだから怖くていいんじゃないの、ねえ。」

A「そうじゃなくてさ。もっと担担と物語を進めても良かったんじゃないかな、ってね。 担担が怖いって事もあるじゃない。ヒッチコックなんて、担担と進めていって最後に爆発って良くあったでしょ。 それに、みんなが言っているほど、いしだあゆみの顔が怖くはなかったし。 アッシには化粧がちょっと変じゃない?位にしか思えなかったしね。あれで¥1800は高いわね。」

Y「それじゃ、アキさんは最近値段が納得っていうもの、何か見ました?」

A「そうね、この前<プッチーニ・ガラ>に行ってきたのよ。それは、 まあ値段に相応しいコンサートだったんじゃないかしらん。」

Y「何ですか?その<プッチーニ・ガラ>って。」

M「いや〜ねえ〜、豊ちゃんたらプッチーニも知らないのかしら〜。」

Y「プッチーニなら知ってますよぉ。あれですよね、<蝶々夫人>を作った人ですよね。」

M「知ってるじゃないのぉ。」

Y「あ〜、良かったぁ〜。プッチーニの事なんやぁ〜、プッチーニ・ガラって。」

M「何馬鹿な事言ってるのよぉ、ガラよ、ガラ。」

Y「えっ?ガラ、ガラ、ガラ、鳥ガラ?」

A「ははは・・・・。鳥ガラはいいわね。」

Y「何なんですか?ガラって。」

A「ガラってね、まあ、祭りかな?訳せばね。だからプッチーニ祭りよ。」

Y「あ〜、お祭りえすか。な〜んだ。知ってましたよぉ〜。」

A「ははは・・・。」

M「どこでやったのかしらぁ?」

A「サントリーホールなのよ。ソプラノがディミートリゥ、テノールがラ・スコーラ、 バリトンがヴィヴィアーニ。けっこういいキャストでしょ。」

M「指揮とオケは?」

A「指揮がルイゾッティ、オケは、東京交響楽団。で、少しを除けば満足できるコンサートだったわね。」

Y「蝶々夫人もやったんですか?」

A「それなのよ、ちょっと不満が残るのは。」

M「どうかしたの?」

A「最初の予定では、<修道女アンジェリカ>の中から<母もなく>っていうアリアだったのね。 それが当日急に<蝶々夫人>の<ある晴れた日に>に変更になっちゃって。アッシ、 プッチーニの中で<修道女アンジェリカ>が一番好きだったのにぃ〜。」

M「それは残念だったわねえ。で、内容的にはどうだったのかしら?」

A「さっきも言ったけど、まあまあ満足よ。 ディーミートリゥはちょっと自分流に歌い過ぎてる所はあってもまあまあだったし、 ラ・スコーラは流石にポスト3大テノールの一人だけあって良かったし。ただ、 アッシが思うに、やっぱりまだ声に艶が足りないのよね、彼って。勿論、そこらのテノールよりは良いけど、 パヴァロッティなんかに比べるとまだまだ、ってな感じよ。で、一番良かったのがバリトンのヴィヴィアーニ。 この人、今はまだ注目を集め始めただけだけど、その内にきっとバリトンではトップクラスになる人だと思うわね。 本当に素晴らしかったわよ。」

M「じゃあ、アキちゃんは、価格以上のものが堪能できたって事だわねえ。」

Y「でも、マチャミさん、さっきアキさんは値段に相応しいって言ってませんでしたっけ?」

M「あら、そうだったかしらん。それじゃ、その以上にならなかったのは何だったのよぉ。」

A「それはね、アンコールの演目。アンコールがさ、<西部の娘>の2曲と<ジャンニスキッキ>からでしょ。 ちょっとね。もう少し盛り上げてくれる曲を持ってきてほしかったのよ、アッシはね。」

M「まあそこがアキちゃんにとっては価格以上の感動にならなかった訳なのね。」

A「そういう事かしらん。」

Y「じゃあそろそろ帰ります。明日も早いから。」

M「じゃあ、アタシも帰ろうかしら、電車も無くなりそうだし。」

A「あら二人とも帰っちゃうのね。え〜と、豊が¥1300で、マチャミが¥2100ね。」

Y「御ちそう様で〜す。」

M「値段に相応しいお話だったわねえ。ごちそう様。」

A「や〜だ、マチャミったら、イヤミだわ。倍付けにしちゃうわよ。」

一同「あっはははは・・・・・。」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したものは、
1)<姑獲鳥の夏>   上映中
2)<プッチーニ・ガラ>  上演終了
   関連公演のオペラ<蝶々夫人>は8/7、10の二日間東京文化会館で公演。
   また、関連ではありませんが、<プッチーニ・オペラコンサート>が9/5にマルティヌッチ、
   ポンスらの出演で、これも東京文化会館にて行われます。
以上です。どうぞ足をお運び下さい。


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