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<長年待てば>の巻
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あき(以下A)「いらっしゃ〜い!」 岡ピー(以下O)「今晩は。やっと涼しくなりましたね。」 A「本当ね。はい、おしぼり。」 トンちゃん(以下T)「暑さ寒さも彼岸まで、って言うでしょ。うまく言ったもんだわね、昔の人は。」 O「トンちゃん流石。これって年の功?ははは・・・・。」 T「相変わらずイヤミな子ね、好きだわ。ははは・・・。」 A「岡ピーは何にしよう?」 O「そうですね、今日はマティーニなんかを。」 T「あら、オ・シャ・レ!」 A「あいよっ!で、辛めがいい?それとも少し軽い方がいいかしら?」 O「ちょっと辛めでお願いします。」 A「あいよっ!」 T「あら、アキちゃんの所って、こんなのも出来ちゃうのね。オ・シャ・レ。ははは・・・。」 A「はい、お待ちどうさま。」 O「う〜む、美味しいですぅ〜。」 T「ところでさ、岡ピー、美術館かなんか行ってきたの?誰?この絵。」 O「やだな、トンちゃん。これ美術館のパンフレットじゃありませんよ。芝居のパンフですよ。」 T「えっ?あら、本当だ。シアター・コクーンって書いてあるわね。でも、紛らわしくない?このパンフレット。 ねえ、アキちゃん、そう思わない?」 A「なによ、岡ピー、<天保十二年のシェクスピア>に行ってきたの?」 O「そうなんですよ。面白かったですね。アキさんはもう行ってきたんですか?」 A「初日にね。面白かったわね。4時間も長く感じなかったし。」 T「4時間もあるのぉ〜?でもみんな面白いって言ってるわよね。蜷川でしょ、演出。 井上ひさしの相当古い作品よね、これって。」 A「そうね。初演は5時間を越えたらしいわよ。確か30年位前じゃなかったかしらん。」 O「そうですね。1974年作品ってなってますよ。」 T「そうよねぇ〜、確か。西武劇場でやってたもの。僕は観てないんだけどね。」 O「西武劇場って何処ですか?聞いた事ないですけど、埼玉かなんか?」 A「あっそうか。岡ピーの歳じゃ知らないかもね。今のパルコ劇場よ。」 O「へ〜〜。パルコ劇場って、西武劇場って言ってたんですね。オイラの生まれる前かな?」 T「岡ピーって幾つだっけ?そんな前じゃなかったと思うけど。」 A「そうね、岡ピー、今年で28歳でしょ。生まれた頃はまだ西武劇場だったわよ、きっと。 アッシも忘れちゃったわね、何時だったか。」 T「僕も忘れちゃったわね。」 A「アッシがお店を開店した年だったような気がするんだけど。」 T「何時だっけ?開店したの。」 A「1984年。確かね、この年の何月かに西武劇場からパルコ劇場に変わったと思うのよね。」 O「どっちにしてもオイラが小学生に入るか入らないかってとこですね。」 T「そうよね、それじゃ覚えてないわよね、岡ピーは。」 A「そうよ、アッシらだってうろ覚えなんだから。」 T「でもさ、凄いキャストよね、これ。み〜んな主役って感じじゃないの。ぼくも観たいけどね、 チケット無いでしょ、もう。」 A「ちょっと難しいかもね。でもさ、コクーンだから当日券が出ると思うのよね。アッシが行った時は立見も満杯状況だったけど。 岡ピーの時はどうだった?」 O「いや、もうイッパイなんてもんじゃなかったですよ。劇場がギュウギュウでしたよ。」 T「やっぱりね。で、どうなの?天保十二年とシェクスピアと関係があるんでしょ、やっぱり。」 A「まあ関係が有るっちゃあるけど。シェクスピアの作品と天保十二年の人侠の世界を融合させたって言えばいいのかな?」 O「シェクスピアの全作品が折り込まれているって言うんですけどね。オイラにはさっぱりで。まあ、 勿論、<マクベス>や<ロミオとジュリエット>なんかは何処のシーンだか分かりましたけどね。 後は皆目見当も付きませんでしたよ。」 A「アッシもそうね。勿論、岡ピーより、少しは多く分かったと思うんだけど、でも、 どの戯曲が何処にどうやって挿入されていたかは、もう何回か観ないと分からないわね、きっと。何しろ、 シェクスピアって、全部で37作品在る訳でしょ。その中でって言われてもね。」 T「で、アキちゃんはどのくらい分かったのかしらん。」 A「そうね、アッシが分かったのって言えば、芝居の筋に沿って言うと、最初が<リア王>でしょ、 で、<リチャード三世>、<マクベス>、<ハムレット>、<尺には尺を>、<お気に召すまま>、 <ロミオとジュリエット>、<冬物語り>、<間違いの喜劇>、<夏の夜の夢>、<ヘンリー六世>、 <じゃじゃ馬ならし>、<オセロ>、<十二夜>、<ジュリアス・シーザー>、<テンペスト>、それに、 <ヴェローナの・・・>何だっけ?」 O「すご〜い!そんなに出てくるなんて。」 T「まあ、知ってる作品挙げただけでも結構出てきたわね。あの〜、あれでしょ、 <ヴェローナの二紳士>よね、さっきのは。」 A「そうそう。流石ね、トンちゃん。やっぱり歳の功ね。」 T「28ですぅ〜〜〜。」 A & O「はははは・・・・・。」 A「 じゃあ、アッシらまだ生まれてないわねぇ、岡ピー。」 O「ちょっと待って下さいよ。トンちゃんよりアキさんの方が年上でしたよね、確か。」 T「あら、そうよ、ねぇ〜。と〜んでもないわ、このオ・ン・ナったら。ははは・・・・・。でもさ、 本当にこの役者陣、素敵だわね。な〜んか、喧嘩しそうじゃない、このメンバーだったら。アタシが上よ!な〜んてさ。」 O「凄かったですね。観ていてもハラハラ、ドキドキ。火花が散ってるっていう感じでしたよ。」 T「そうでしょ。だってさ、高橋恵子に夏木マリでしょ。それに白石加代子。 名前を見ただけでも想像出来ちゃうじゃない、ねえ。」 O「高橋恵子と夏木マリは結構な時間一緒のシーンが多いからなおさらです。」 A「そうね。それも姉妹なのに互いに争ってるしね。あの化粧。夏木マリのあの化粧の凄いことったら。」 O「凄かったですよね。鬼婆ってこんな感じなんだ、って。でも、白石加代子の老婆の方も凄かったですけどね。」 T「恐そうじゃないの、それ。」 A「場をさらっちゃってたもんね。アッシさ、昔、彼女が早稲田小劇場にいた頃を思い出しちゃったわよ。 <トロイアの女>とか<バッコスの信女>とかで、あんな白塗りの顔をして全く動かなくて、 何だか分からない呪文をウ〜ウ〜言っていた光景をね。」 O「何だか話を聞いているだけでも恐いですね。」 T「篠原涼子が霞んじゃうわね、これじゃ。」 O「でも頑張ってましたよね。」 A「そうね。まあ、このキャストの中にいるだけでも相当のプレッシャーが有るはずだから、 頑張ってた方じゃないかな。」 T「で、こうやって女優陣が凄いと男優陣は大変だったんじゃないかしらん。どうだったの?男たちは。」 A「良かったわよ。やっぱり唐沢君は舞台が本当にあってて素敵だったし、藤原君は舞台上で遊んでて、 大物になるな、っていう感じがしたし、吉田鋼太郎、壌晴彦、西岡徳馬、沢竜二も流石の貫禄で舞台を引き締めてたし、 高橋洋も蜷川芝居には無くてはならない役者になったな、って思わせたし、 ストーリーテイラー役の木場勝巳は最初から最後までその存在感が圧倒的だったしね。」 O「オイラ、その木場勝巳さんて全く知らなかったんですけど、有名な役者なんですか?」 A「そうか。テレビとかに出ないからね。アッシが最初に彼を観たのは、アッシが高校生の頃だったわよ、 確か。蜷川をはじめ、石橋蓮司、蟹江敬三という草々たるメンバーが居た櫻社っていう劇団が有ったんだけど、 その頃ね。初めて彼の存在を知ったのは、唐十郎が書いた<盲導犬>をやった時だったかな? 石橋や蟹江なんかと違った、新劇っぽい、だけど、しっかりした役者が出てきたな、って思ったのを覚えているわね。」 T「あら、この人、そんなに古い人だったんだ。僕は最近ね、知ったの。もう10年以上前だったかな。tptでさ、 <テレーズ・ラカン>やったの覚えてる?」 A「あ〜、デヴィッド・ルヴォーの演出ででしょ。」 T「そうそう。その時かな?初めて観たのって。結構な歳よね、彼。」 A「そうね、アッシより少し上じゃないかしらん。」 O「みんな古いんですね。」 A「あら、だから良いもの沢山観たり、聴いたりしているのよ。岡ピー達お時代の子は、情報が有り過ぎちゃって、 逆に大変なのよね。選ばないといけないから。」 T「そうね、それは有るわよね。どうでも良いものも沢山あるからね。すぐタレントになれちゃう時代だしね。 TVや映画の物まねが多いしね、芝居にしても。僕やアキちゃんは物足りないのよね、今の芝居。だから、 蜷川なんかをやっぱり観たくなっちゃうのよね。ねえ、アキちゃん。」 A「そうね。なんで舞台で演るの?ってのが確かに多いわね。まあ、流れって言えばそうなんだろうけど、 アッシもイマイチに感じる事が多いわね、今の人が作る芝居には。勿論、えっ! って驚くような芝居を作る若い人たちもいるけどね。」 T「そういえば、市村正親が一人芝居やってるんだって?」 A「そうそう。昨日観てきたのよ。」 T「なんか、アズナブールの歌で構成されているんだってね。どうだったの?」 O「アズナブールって、ここで良く聴くあの音楽ですか?いいですよね、好きだな、あれ。」 A「アズナブールの音楽とともに語られていく<ペールギュュント>のお話なんだけどね。」 T「でもさ、アズナブールとペールギュントじゃ、なんか合わない様な気がするんだけどね、僕には。」 O「ペールギュントって、グリークのですよね。」 A「それは、作曲ね。<ペールギュント組曲>。これも使っていたけど、物語りはイプセンよ。」 O「イプセンだったんだ。<人形の家>を書いた人ですよね。」 A「そうそう。彼の書いた物語をアズナブールの曲を中心にグリークの曲も挟みながら展開していくのよ。」 T「でさあ、さっきも言ったけど、ペールギュントとアズナブールって合うの?」 A「アッシもね、最初はえっ?って思ったんだけど、意外に合うのよ、これが。」 T「へ〜〜。」 O「オイラは詩の内容が分からないから何とも言えませんけどね。時代も違うし、本当に合うんですか?」 A「本当よね。だからアッシも最初は合わないと思ったのよ。でもさ、考えてみたら、アズナブールの歌って、 色々なのがあるじゃない。恋愛に関する事は勿論だけど、少年時代の憧れ、お母さんが死んだ時を歌った物、 裏の世界を生きている人々の話などなど。本当に幾つもの世界を描いているでしょ。 ペールギュントも放浪の旅の果てに戻ってくる話じゃない。だから、意外にアズナブールが合っちゃうのよね。」 T「あら、そうなの。じゃあ、行ってみようかなぁ〜。市村正親って独特の雰囲気があるでしょ。僕さ、 ちょっと苦手なんだけど、何故かいつも興味を引かれるのよね。」 A「それだったら行かなきゃね。それに救われるわよ、ペールギュントを観たら。」 O「えっ?どういう事ですか?救われるって。」 A「ほら、岡ピーも分かるでしょ、<天保十二年のシェクスピア>は最後にみんな死んじゃうでしょ。 でもさ、ペールギュントは救われるのよ。長年待っていた恋人によってね。」 T「あら、とってもキリスト教的な感じがするわね。」 A「まあ、そうなんじゃないの。でもさ、いいでしょ。長年待っていた恋人に救われるのよ。」 O「いいですよねぇ〜〜〜。オイラも欲しいな、そんな恋人。」 T「何言ってるのよ、まだ若いのに、ね〜。僕なんか、待ちくたびれちゃったわよ、長過ぎて。」 A「ちょっとトンちゃん、その前に、長年待ってくれる恋人探さなきゃダメなんじゃないの?」 T「あら、そうでした。失礼ね!!!」 一同「ははは・・・・・・。」 おわり *登場人物は全て仮名です。 *今回紹介したお芝居は、 1)天保十二年のシェクスピア 10/22 まで シアター・コクーン 2)市村正親ひとり芝居<ペールギュントの旅> 23日で公演終了芸術の秋です。みなさんも何か見つけて、どうぞ足をお運び下さいね。 |