<平和に乾杯!>の巻

ヒッキー(以下H)「ちょっとぉ〜、聞いてよ、聞いてぇ〜!」

あき(以下A)「いやだ、ヒッキーたら、いきなり入ってきて早々。はい、おしぼり。」

H「有難うね。え〜と、エビスの黒お願いします。」

A「あいよっ!・・・・はい、お待たせ。で、どうしたのよ?」

H「それがさ、さっきフォーラム行ってきたんですよ。」

サッチー(以下S)「あら?ヒッキーも行ってきたんだぁ。あたしもさっき行ってきたのよ、 ってアキちゃんに報告に来た所なのよ。」

H「でさぁ、どうでした?<グランド・ホテル>。」

S「あたしはねぇ、良かったけどね。」

H「え〜???そうでしたか?」

S「って言う事はさ、ヒッキーはあんまり良くなかった訳?」

H「だぁってぇ、ひどくありませんでしたぁ?」

S「そうかしら?あたしは結構良かったんだけどね、さっきも言ったけど。舞台も豪華だったし、 オーケストラも良かったと思うんだけどね。」

H「アキさんは観に行ってないんですか?」

A「行ったわよ、大好きなミュージカルだもの。」

H「で、どうだったんです?」

S「そうね、まだあたしもアキちゃんに聞いてなかったわ。」

A「まあ、アッシはね、ヒッキーが言うほどひどいとは思わなかったけど、う〜む、ちょっとね、 ってな感じかな?」

S「じゃあ、あんまり良くなかったんだ、アキちゃんは。」

A「オリジナル観てるでしょ。まあ、比べたらいけないんだけど、ちょっとまとめ過ぎたかな?って。 舞台は大きいんだけど、出来は小さくなった印象だったわね。」

H「そうですよね。それに配役が・・・。」

S「良くなかった?みんな結構歌えてたしさ。ミュージカルだから歌える人が多くなきゃ駄目じゃない。 でも、この<グランド・ホテル>は皆歌える方だと思うけどねぇ。」

H「そうですかぁ?僕はやっぱり歌もイマイチだったんですよね。」

S「アキちゃんはどう?」

A「え〜とね、実はさ、<グランド・ホテル>を観に行く前日にね、DVDで<スウィニー・トッド> を観ちゃったからね。」

H「えっ!!!DVD出てるんですか?」

A「あれよ、5年位前にサンフランシスコでやったコンサート形式のやつよ。」

H「あれですよね、パティー・ルポンが出たやつ。」

A「それに、ジョージ・ハーンね。」

S「パティー・ルポンってあれだよね、ミュージカルの<サンセット大通り>の人だよね。 ロンドンで観たわ。ごめんなさ〜い。」

A「そうそう。ブロードウェイはグレン・クローズね。今度ミュージカル版の映画も作られるみたいよ。」

S「あ、そうなんだぁ。それも観たいわよねぇ。」

A「ちょっと話が逸れちゃったわね。でね、そのDVD観ちゃったもんだから、・・・。」

H「<グランド・ホテル>はみんな下手だったんですね。」

A「いやいや、そうじゃないけど、聴き劣りするっていうのかな。だってねぇ、 <スウィニー・トッド>って難しいじゃない、ソンドハイムの作品だからさ。 でもパティー・ルポンにジョージ・ハーンでしょ。もう完璧なのよ。」

H「そうでしょ、それは。確かCD出てましたよね。アキちゃん紹介してなかったでしたっけ?」

A「したかも。結構前よね。で、日本でDVDが発売になったのって去年だからね。映像になった訳じゃない、 もう感激がまた違うのよ。」

S「そんなに良いの?それ。」

H「もう怖い話なんですよ、人を殺しては人肉パイを作っちゃう床屋とパイ屋の話。」

S「え〜?それさあ、映画かなんかにならなかった?え〜と、 フリント街がどうしたこうしたっていう題名だったと思うんだけど。」

A「なったわね、そう言えば。そんな昔じゃないわよ、確か。ここ10年前後の話よね。で、 話をまた戻すとね、で素晴らしい物を観ちゃった次の日に行っちゃったじゃない。」

S「だから、あんまり上手く聞えなかったて事ねぇ。」

A「と言うか、岡幸二郎君なんかは上手かったけどね、アッシさ、オリジナルをブロードウェイで観ちゃってるじゃない。 勿論、さっきも言ったけど、比べちゃいけないと思いながら、やっぱり比べちゃうのよね。」

H「でも、良かったですもん、ブロードウェイ版は。」

S「あら、ヒッキーも行ったのね。いや〜ん、あたしも観たかったわ〜ん。」

A「で、アッシ、今回の日本版<グランド・ホテル>は、 改めてオリジナルの舞台の素晴らしさを認識させてくれた舞台になっちゃったわね、と思ったのよ。まあ、 正直いって、ドクター役の藤木孝はただ気持ち悪いだけだったし、タイピスト役の元宝塚の紫吹淳は歌が下手だし、 グルーシンスカヤの前田美波里は喋り方がカマトト風だったし、その付人ラファエラ役の諏訪マリーは、 今までにないくらい合わない役に思えたし、オットー役の小堺一機は風邪ひいてたのか声が出なかったしね。まあ、 男爵役の岡君と、ホテルマン役のパク・トンハくらいかな?まあまあだな、って思ったのは。でも、 言うほど悪くはなかったんだけどね。」

H「僕はそれよりも演出がイマイチ気に入らなかったんですよね。 ブロードウェイのシンプルさが無くなって舞台美術が豪華になった分期待したんだけど、いざ蓋を開けてみたら、 ・・・ってな感じですよね。」

A「そうね、アッシもこのミュージカルは回転ドアだけで十分な気がしたわね。回転ドアが全てだもん、 このミュージカル。」

H「ドアだっていらないかもしれないですよ。」

S「あらぁ〜、ドアがなかったらやっぱり変よねぇ。やっぱりさあ、ドアは必要よ、絶対。」

A「まあ、それは演出家の問題だと思うけどね。まあ、アッシはドアはあった方がいいと思うけど。それから、 病気で開演前に降板しちゃったけど、あの藤木孝の演ったドクターの役を発表時とは違うけど岡田真澄で観てみたかったわね。」

S「あ〜、ドンファンね。いいわね。」

H「確かにいいかもしれませんよ。雰囲気出てますよ。」

S「でさあ、アキちゃん最近他に何かない?いいお芝居。」

A「今週初めに行ってきたんだけど、<サムワン>っていうストレートプレイなんだけど、結構良かったわよ。」

H「<サムワン>?どっかで聞いた事ありますね、その名前。」

A「元のタイトルは、<SOMEONE WHO'LL WATCH OVER ME>っていうんだけどね。」

S「あれじゃない?ほら、ジャズの曲よね。」

H「あれは、SOMEONE TO WATCH OVER ME ですよ。あっそうか。あれだぁ!もう十年以上前ですよね、 その芝居ブロードウェイでやってませんでした?」

A「やってたみたいよ。確か1993年のトニー賞にノミネートされてたと思うけど。」

H「観なかったんですけど、行った時に丁度やっていたと思うんですよね。」

A「あら、そうなんだ。アッシは観てないのよ、ブロードウェイでは。」

S「で、どんな話なの?」

A「まさに、さっきサッチーが言ってた曲で始まるんだけどね。実話を基にして書かれた拉致された男達の話よ。」

S「あら、北朝鮮の拉致事件みたいね。」

A「場所はレバノンなのよ。」

H「レバノンでそんな話があったんですね。全く知りませんでしたけど、もうず〜っと前の話なんでしょ?」

A「う〜ん。そうじゃなくて、20年位前から数年間に渡って起きていた事なのよ。」

S「あ〜ら、そんなの全く知らなかったわねぇ。怖いね。でも、何か原因があったんでしょ?」

A「まあね。イスラエルとレバノン軍がシーア派の兵士を逮捕した事への復讐だったみたいなのよ、 シーア派の過激派がね。」

H「本当に繰り返しますよね、争い事って。」

S「で、その拉致された男の話って?」

A「そうそう、そうだったわね。3人の拉致された男の話。最初はアメリカ人の医者アダムとアイルランド人ジャーナリスト、 エドワードの二人が牢獄に入っているのね。アダムは体をせっせと鍛え、 エドワードは中立国のアイルランド人が何故拉致されたのかと憤っている。でも、その二人には長い獄中生活の中で、 お互いを見守っている気持ちが生まれているのよ。」

S「何か、ちょっとエロっぽいじゃない。」

H「でもですね、獄中ですから。エロっていうより、本当の友情みたいな物なんじゃないんですか?」

S「でも、二人だけなのよ、二人だけ。あたしだったらもう直ぐにでもパックンチョだわよ。ははは・・・。 冗談だけどね。」

A「まあ、そこへ三人目が入ってくるわけ。」

S「ますますエロっぽいわぁ〜。」

H「もうサッチーさんたら。」

S「ははは・・・・。ごめん、ごめん。」

A「で、彼はイギリス人で古代英語の教師をしていたんだけど職を失って英語の教師としてレバノンに着いたばかりだったのね。」

H「へ〜。じゃあ、その状況を知らないで来てしまったんですね。」

A「ある程度は聞いていたらしいけどね。でも、そんなに危機感はなかったんじゃない?」

S「でもさ、真面目な話、アイルランドとイギリスでしょ。結構危ないわよね。」

H「なんですか?危ないって。」

S「あらぁ〜、有名じゃないのよ、アイルランド紛争って。ねえ、アキちゃん。」

A「そうね。今サッチーが言ったけど、アイルランド問題って12世紀に遡って始まってるのよね。」

S「へ〜、そんな前からなんだ。あたしはさぁ、あたしが中学生頃?なんかテロがあってから、 つい最近までテロがあったって記憶にあるけどね。ほら、IRAっていうの聞いた事あるでしょ、ヒッキーも。」

H「アイ・アール・エイですか?どこかで聞いた事ありそうな。」

S「もっと新聞読みなさ〜い!ねえ、アキちゃん。」

A「そうそう。最近は新聞読んでいる若い人が少ないみたいだけど、やっぱり読まなきゃ。で、 IRAなんだけど、アイルランド共和国軍の事よ。1900年代初頭に登場したカソリック系の非合法組織ね。 イギリスとの間で紛争を繰り返していて、和平の調停が成功したかにみえるとまたテロが起こるみたいなのをくりかえしているのよね。 今は、その分派がテロ活動を続けているみたいなんだけど。」

H「へ〜。怖いよね。だからですね、その芝居の中でイギリス人が投獄されてから危ないって言ったのは。」

S「そうよぉ〜、解ったぁ〜!」

A「そうなのね。当然波が立つわけなんだけど、そんな中でアメリカ人のアダムの精神的不安定さがどんどん増してくるのね。 勿論、他の二人も不安はあるわけよ。で、それを解消しようと架空のパーティーを開いたり、 架空の手紙を書いているように読んだりするわけね。で、アメリカ人がいなくなって、二人が残されちゃうんだけど、 その時にはイギリス人のマイケルは耐える事が身に付き始めているのね。 そして中立国アイルランド人のエドワードが釈放される日が来るの。」

S「な〜んか、とっても感動的じゃな〜い。観たくなったわぁ〜、その芝居。何処でやってるのかしら?」

A「ざ〜んねん。ついこの前終わっちゃったのよ。」

H「そうなんですか?それは残念です。ちょっと観に行こうかな、って思い始めたのに。」

S「ほ〜んとよぉ〜。でもさ、世界中どこでもあるのよね、戦争って。」

H「そうですよね。」

A「だから、アッシら、本当に幸せな国に住んでいるのよ。感謝しなきゃね。」

S「本当よね。平和な国に乾杯よぉ!アキちゃんお代わりちょうだ〜い。」

H「僕も同じ物お願いします。」

A「あいよっ!・・・あら、友子(以下T)いらっしゃい!」

T「ねえねえ、アキちゃん、ホリエモン捕まっちゃんだってぇ〜!」

一同「え〜〜〜!!!」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居は、
1) <グランド・ホテル〜ザ・ミュージカル>
          公演終了
2) <サムワン>   公演終了
3) DVDの<スウィニー・トッド>
    デジタルサイト(株)から発売中
    商品No.IEJE-0004
以上です。素敵なものに出会えた時の感動は何事にも変えられない物。どうぞ皆さんも劇場に足をお運び下さいね。


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