<どっちが先?>の巻

スターちゃん(以下S)「でね、最近は眠くて眠くて仕方ないんですけど、アキちゃんはどう?」

あき(以下A)「そうね、アッシも昔に比べたら眠くて眠くて仕方ない時が結構多くなってきたかもしれないわ。 これも、歳かしらん。」

S「そうですよ、お互いにね。」

A「眠いといえば、この前観た芝居が<眠り>を題材にしてたっけ。」

S「眠りをねぇ。で、どんな芝居だったんですかね。」

A「ほら、アッシが良く観に行っている南河内万歳一座の芝居で、<お馬鹿屋敷>っていうんだけどね。 眠れない男と眠らない女が中心になって進んで行く話なのよ。」

S「へ〜。でも、アキちゃん好きだね、その劇団。」

A「そうね。ず〜〜っと前からみているわね。初期の頃は面白い出し物が多かったけど、 最近は良かったり、つまらなかったりでね。」

S「で、今回の、その<お馬鹿屋敷>は?」

A「う〜む、難しいわぁ〜。中間ってな所かしらね。」

S「で?」

A「どんなに眠ろうとしても眠れない、 煎餅布団を友としている男と眠ってしまう事に恐怖を覚えている羽毛布団を友としている女。 その二人があても無く旅立って行き着いた場所が<大和屋別館>という旅館なんだけど、 そこは一泊¥800という、とてつもなく安い旅館だったのよ。」

S「え〜〜〜!¥800ですか?そりゃ安過ぎますね。」

A「それもそのはず、突然の大雪で本館は一杯。残されているのは、 ある事件以来開かずの間になっていた布団部屋だけだったのね。」

S「ミステリーじゃないですか。ある事件が気になりますね。」

A「大した事件じゃないのよ。座敷わらしが出るってだけなのね。」

S「はあ、あの座敷わらしですね。その家の運を左右するっていう。」

A「そうそう。で、何という筋もなく、ドタバタして進むんだけど、眠れない男も、 眠らない女もいつの間にかそこで眠ってしまうのね。回りは座敷わらしを見た見ないで大騒ぎ。 次第に閉じ込められる恐怖感が増してきて出口を探して右往左往。そしてまた、最初のシーンに戻って幕なのよ。」

S「な〜んか、全く分かりませんね。」

A「そうでしょ。アッシも分からなかったわ。でも、笑った、笑った。まあ、 お馬鹿になっちゃった、ってとこね。」

太郎(以下T)「こんばんはぁ〜。」

A「あら、太郎ちゃん、いらっしゃ〜い。はい、おしぼり。」

T「有難うございます。」

A「何にする?きょうは。」

T「え〜とですね、今日はぁ〜、黒ビールでお願いします。」

A「あいよっ!・・・・・はい、お待たせ。」

T「今日、行ってきました、<ダ・ヴィンチ・コード>に。」

S「話題だもんねぇ〜。私も行きたいんですけど、時間があんまり無くて。」

T「しかし、黒ビールは美味しいですね、本当に。好きだなぁ〜、この味。」

S「で、太郎君さぁ、<ダ・ヴィンチ・コード>の話だけど、・・・。」

T「ダ・ヴィンチ・コードですね。やっぱりアキさんが言ったように本を読んでから行けば良かったって思って。」

A「でしょ。アッシも見たけど、アッシの場合は、何となく本を読んでからの方がいいかな、 って思ったから先に本を読んで行ったのよね。」

T「ですよね。さっぱり分かりませんでした。勉強不足だなぁ〜。」

S「そうですか。やっぱりねぇ。私も本を読んでからがいいか、映画が先か迷っていたんですけどね。 やっぱり本を先に読んでから行くとしよう。」

T「でも、今回ほど本を先に読んで行った方がいいと思った事無かったんですよ。 出てくる言葉が本当に分からなくて。」

A「まあ、あれは、本を読んで行かなくても、キリスト教をちょっと分かっていると面白く見る事が出来ると思うんだけどね。」

S「それはありますね、きっと。アキちゃんは確か大学時代にキリスト教をちょっとかじっていましたよね。」

A「まあ、本当に古い話よね。まあ、 アッシが行っていたのはパリのちょっと南側にあるシャルトルっていう所だったのよね。 そこの大聖堂、ノートル・ダムの研究をちょっとしてただけなんだけど、 あの大聖堂が世界文化遺産に登録される5年ほど前だったから1975年の事ね。」

T「もう30年以上前だぁ〜。ノートル・ダムって、あのセムシ男で有名な所ですよね。」

S「でも、あれはパリにあるんだよね、確か。」

A「そうよ。あの有名なノートル・ダムは、パリのシテ島にある <カテドラル・ノートル・ダム・ド・パリ>って言うのが正式な名称なのよ。 アッシが行ってたシャルトルのノートル・ダムはゴシック建築としてとても有名で、 特にゴシック彫刻に関してはとても重要な物なのよね。それに、絶対に見とかなきゃ損するのが、 確か176あるステンドグラスの窓だわね。本当に素晴らしいのよ。」

T「へ〜。映画に出てましたか?」

A「ダ・ヴィンチ・コードには出てなかったわね。パリとロンドン、スコットランドが舞台だからね。」

T「やっぱりアキさんは分かるんですよね、出てきた場所とか、キリスト教のタブーとか。」

A「まあ、全く知らない人からすれば、少しは分かる方かもね。」

S「だけど、色々問題になっているよね、この映画は。」

T「何故なんですか?そんなに問題視するのって。」

A「それはね、もし、この映画が言っている事が正しいという事になると、 キリスト教自体が崩れ去っちゃうからなのよ。」

S「本当ですよね。色々出てるじゃないですか、関係本が。それなんかを立ち読みしただけなんですけど、 キリスト教が覆えっちゃいますよ、あれじゃあ。」

T「でも不思議じゃありませんか?本はもう3年位前に出ているのに、 この映画が公開になるかならないかっていう時に凄い騒ぎになるなんて。」

S「本当ですよね。何故本が発売になった時に問題にならなかったんでしょうね。」

A「問題にはなったんでしょうけど、不思議よね。映画の方が影響強いからかしらね。まあ、 特にカソリック関係の人たちは穏やかではいられないわよね。 この小説や映画だけじゃなくて他にも色々な発見が相次いじゃってるでしょ。」

T「色々な発見って何ですか?」

S「君、本当に知らないんだね。それじゃ、あの映画は辛いかもしれませんよ。何しろ、 本が長いじゃないですか。それを2時間ちょっとの映画にするんですからね。予備知識は必要ですよ。」

T「すいません。勉強しときます。で、その色々な発見って?」

A「そうね、まあ、どこから話せばいいのかな?1945年にエジプトで <ナグ・ハマディ文書>っていうパピルスに書かれた文書が発見されたんだけど、 これが1970年代に解読されると、そこには、マグダラのマリアはキリストの伴侶である、 っていう記述があったのね。これはキリストを神であると、もう1700年近く前に決めたカソリックにとっては困る事なのね。 キリストは神だって決めたんだから。神に伴侶がいては困るわけよ。その後も1947年に<死海文書>が発見され、 1970年代には<ユダの福音書>を含むパピルス文書がエジプトで発見されて、 つい先ごろ<ユダの福音書>が復元されて英語訳が出版されたからもう大変よ。そこに、この<ダ・ヴィンチ・コード>でしょ。」

S「確かに、色々な予備知識があって見ると面白くなりそうですね。」

T「って言うか、予備知識があった方が理解しやすいですよ、きっと。そう思いました。少し勉強してまた見に行きます。」

S「ところで、その映画自体はどうだったんですか?」

T「そうだ、映画自体ですよね。僕は、良く分からないまま終わってしまったんですけど、 アキさんはどう思われましたか?」

A「やっぱりね、この映画には予備知識が必要だって思ったわね。本を読んでもらえれば分かると思うけど、 映画は本に出てくる細かい内容をはしょってるのよ。だから、いきなりどうかなっちゃう場面が沢山あって。 見ている人は、何故こうなっちゃうの?って見終わっても疑問を残したまま映画館を出る事になっちゃうんじゃないかしら。」

S「フラストレーションが溜まりますね、それでは。」

A「そうそう、だから、やっぱり本を読んでから行くのがベストだと思うわよ。」

T「僕は分からなかったんですけど、旅してるみたいで楽しめた事は楽しめました。 パリやロンドンに行ってみたくなりましたしね。特に、ティーピングが住んでたあの屋敷、え〜と、 シャトー・ヴィレットでしたっけ?そこに行ってみたいと思いました。」

A「あ〜、あそこね。多分今でもあると思うわよ、本物が。」

T「見る事できますかね。」

A「う〜む、どうだろう。あそこって個人の持ち物なのよ、確か。まあ、とっても有名だから見学出来るかもね。」

S「トム・ハンクスの髪は変じゃなかったですか?」

A「あれね。ポスターは変な髪型よね。でも、映画の中でみるとそうでもなかったわよ。」

T「僕も気になりませんでしたけど。趣味じゃなかったんですけど、 ティーピングを演じてたイアン・マッケランが格好いいなって。

A「あら、そうなんだ。アッシ、太郎ちゃんは、ジャン・レノなのかな?って思ってたんだけどね。」

S「確か、ポール・ベタニーも出ているんですよね。<マスター・アンド・コマンダー>の彼は綺麗でしたよ。 今度はどんな役なんですか?」

A「シラスっていう修道僧の役ね。結構不気味よ。」

T「僕にとっては暗号だらけのこの映画でしたけど、例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチにしても、 シオン修道会にしても、オプス・デイやテンプル騎士団。み〜んな謎だらけなんですけど、 ちょっと勉強してもう一度トライしますね、この映画に。」

S「アキちゃん、タンカレーをトニックで。」

A「あいよっ!」

T「それじゃ、僕はもう一杯黒ビールお願いします。」

A「あいよっ!」

S「私も早速家に帰って読み始めないとね。」

T「僕も勉強します。」

S「じゃあ、太郎君にその黒ビール、私から差し上げて下さい。」

T「えっ?!!!いいんですか?」

S「私、勉強する人、大好きなんです。どうぞ、どうぞ。・・・それじゃ、嫉妬するといけないから、 アキちゃんも何かどうぞ。」

A「はい、遠慮なく頂きます。」

S「それじゃ、乾杯でもしましょうか。太郎君の勉強の成果があれわれますように。乾杯!」

一同「かんぱ〜い!」

おわり


*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居などは、
1)南河内万歳一座 <お馬鹿屋敷> 公演終了
2)ダ・ヴィンチ・コード    上映中
以上です。どうぞ、足をお運び下さい。
2006.6.10


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