<財布の中身と相談ネ!>の巻

あき(以下A)「え〜と、今日はこれでスタートしよっと。」(とテープをセットする)

ゴン太(以下G)「こんばんは。やっと明けましたね、梅雨。でも、なんだか肌寒い日が続いてますよね。」

A「ほんとうね。はい、オシボリ。」

G「う〜む、ホッとしますね。あっ、今日は音楽も最初からムーディーな。何かあったんですか?」

竹ちゃん(以下T)「無事帰ってきたのねっ!」

A「あら、竹ちゃん、いらっしゃ〜い。無事に帰ってきましたわよ。はい、オシボリ。」

T「はい、有難う。アンタ心配してたのよ。大阪に行く前パーティーラッシュだったじゃない。少しは新幹線で寝たのかしら?」

G「大阪に行ってたんですか。でも、日曜日居たから一泊ぅ〜?!」

A「そうなのよ。ちょっと疲れちゃったけど、昔のお客様がお店をオープンしたからさ。 月曜日の予定が随分先まで埋まっているから昨日しかなかったのよ。ところで、二人ともご注文は?」

T「あら、そうだったわね。アタシはビール。黒有ったっけ?」

A「あるわよ。」

T「じゃあ、黒で。」

G「俺は〜、今月のお勧めって何?」

A「今月はね<ブルー・ラグーン>。ヴォッカをベースにした夏らしいドリンクよ。」

G「松田聖子の歌ですよね。<ブルー・ラグーン>。<青いサンゴ礁>でしょ。じゃあ、それ。」

A「そうね。まあ、随分昔の歌よね。・・・・まずは黒ビールね。はい、竹ちゃん。」

T「はい、有難う。う〜む、美味しいわね、やっぱりヱビスね。」

A「は〜い、ゴン太、お待たせ〜。」

G「うひゃ〜。随分青〜い!綺麗だよね、これ。う〜む、スッキリしてて今日の音楽みたいに大人の味ってとこかな。」

T「何いってるのよ、まだまだお子ちゃまのくせに。」

G「そりゃ竹さんからしてみればね。」

T「まあ、口の減らない子ね。ははは・・・・。所で、どうだったのよ、大阪。お目当ての子はいたのかしら?」

A「それがね、週末しか入ってないんだって。」

T「そりゃ残念だったわね。」

G「それが本当の目的だったんだぁ、ね。」

A「第一の目的は開店したお店よ。第二は芝居よ、芝居。」

T「アンタ、大阪行っても芝居観てきたの?」

G「俺だったら遊んじゃうけどな。」

T「なに、何観てきたのよ。歌舞伎?文楽?それとも吉本かしら?」

A「残念でした。竹ちゃんだったら分かると思うけど、昔の梅コマの後にへップ・ファイヴっていうビルができたじゃない。」

T「ああ、観覧車が屋上にある所よね。」

A「そうそう。そこにホールがあるのよ。300人ちょっと収容の。そこでやってた芝居なの。今、こっちでもちょっと話題の演出家、 中井由梨子が脚本と演出をした<lovers〜ふたりだけのロミオとジュリエット〜仮面編>っていう芝居。」

G「それって、シェークスピアのロミオとジュリエットとは違うのかな?」

A「それを基に、彼女が脚本を書いてね、本当は4編あって、全部演出家と役者が違うのよ。脚本は同じでね。 アッシも4編全部観たかったんだけど、何しろ一泊だからさ。」

T「で、その4編って?」

A「<純情編>、<よろい編>、<アストラカン編>とアッシの観た<仮面編>の四つ。それぞれ二人の役者が演じているんだけど、 仮面編を観終わったら全部観たくなるほど良く出来てた舞台だったわね。」

G「でもさ、ロミオとジュリエットだったら2〜3時間掛かるでしょ。そしたら一泊じゃ当然足りないでしょ。」

A「それがさ、中井さんの脚本は、あのロミオとジュリエットを一時間にしちゃったのよ。」

T「出会いから死までを?それじゃ、一日でも出来るわね。」

A「そうなのよ。もっと時間があればなぁ〜。でもさ、アッシの行った日が楽日だったからね。仕方ないわね。でも残念。」

G「そう言えば、先月のウェブで書いてたよね、この芝居の事。」

A「あら、ゴン太、見てくれてるのね。そうそう、これから観る予定の紹介みたいの書いたからね。」

T「そんなに残念がる芝居だったのね。で、良かったと思ったのは?」

A「そうね、まずは時間。一時間だものね。飽きないじゃない。それから値段。¥1500だもん、文句言わないでしょ。 それにと脚色と演出ね。」

G「いいなぁ、アキさん。俺さ、この前友達の芝居に行ったんだけど、一時間ちょっとで、¥2000。でも、 全くつまらなくて、金返せぇ〜!みたいな史上最低芝居だったんだよね。ほとんど同じ時間とお金でも内容が勝負だよね、 やっぱり。」

T「そんにヒドイ芝居だったんだ。まあ、ゴン太の場合は普段の行いね。ははは・・・。」

G「ひど〜い!!!竹さ〜ん。」

T「まあ、それは良いとして、どんな舞台だったのよ。」

A「舞台はアジアに設定されっているの。まず、ロミオとジュリエットの死から舞台は始まるのよ。」

G「まあ、回想形式ってやつね。」

A「そうそう。で、いきなりバルコニーのシーンになるのね。で、出会ってからの4日間が過ぎてまた最初の墓場のシーン。 あれ?出会いの舞踏会のシーンが無いわ???って思ってたら、最後の最後にそのシーンを持ってきて終わるのよ。でもね、 それは演技。全てが二人の役者が演じた芝居だった、ていう事なのね。」

T「あんまり良くは分からないけど、ちょっと観たい気もするわね。」

A「そうね。まあ、話だけじゃ分からないだろうけど、京劇風なところや仮面劇風なところもあってね。 それに途中で入ってくるピアノと歌が結構効果的だったしね。そうそう、昔のブロードウェイであった芝居、 <Mバタフライ>をちょっと想いださせてくれたかしらね。」

T「あ〜ら、懐かしい。さっきより、ほんのちょっとだけ、もっと観たくなったわ。他の3編も気になるわね、 それじゃあ。」

A「でしょ。まあ、宣伝広告によれば、<純情編>は、 とある街角でロミオとジュリエットを演じ続ける二人の女の子の情熱の芝居らしいし、<よろい編>は、中世が舞台で、 愛なんてものに命を捧げちまった二人の喜劇で悲劇を表現しているみたいだし、<アストラカン編>は、 たった二人しか住む事の出来ない星、アストラカンでのファンタジーみたいだし。もっと時間があったらなぁ〜って。」

G「俺もちょっとだけ観たくなったかな。でさあ、この前書いてたので気になったのがあったんだけど、 それはどうだったのかな?」

A「何よぉ〜、どれ?」

G「流山児事務所の<無頼漢>っていうやつだったかなぁ〜?」

A「はい、<無頼漢>ね。これがまた素敵な舞台だったわよ。アッシが行ったのはプレビューだったから、 多少のタイミングのズレなんかはあったけど、良かったわね。」

T「<無頼漢>っていうと、アタシなんかは、篠田正浩監督がとった映画を思い出すわね。」

A「そうよ、それの舞台化よ。」

T「あら、そうなの?でもさ、あの映画アタシにはつまらない、どうしようもない映画だったけどね。」

A「でしょ、アッシも映画はそう思ってたのよ。でもさ、舞台は違ったわね。映画の数百倍良くなっていたと感じたわ、 アッシ。まあ、映画自体が36年も前だったから、映画の記憶はイマイチなんだけどぉ〜。」

T「でも、あれはつまらなかったわよ。アタシだって記憶は定かじゃないけど、 つまらなかったっていう記憶はちゃ〜んと残っているんだからぁ〜。でもさ、面白かったんでしょ。」

A「そうなのよ。元々の話は、歌舞伎の<天衣紛上野初花〜くもにまごううえののはつはな〜>じゃない。」

G「歌舞伎なんだぁ〜。」

A「そうなのよ、元々はね。それを寺山修司が映画シナリオにして、それを今回名古屋で活躍してて、 去年<ぬけがら>っていう戯曲で岸田国士戯曲賞を受賞した劇作家の佃典彦が本当に大胆に脚色したのよね。」

G「歌舞伎が元ネタだとすると時代は江戸時代?」

T「あたりまえじゃないよぉ〜。歌舞伎と言えば、当時の世相を庶民の立場から見て批判してたのよ。だからさ、 庶民からはヤンヤ、ヤンヤの喝采を浴びてた訳よ。」

A「そうよね。時代は天保の改革たりよ。」

G「ていう事は、水野忠邦や河内山宗俊なんかが出てくるんだ。」

T「あら、ゴン太ったら歴史詳しいんじゃないの?」

G「まあ、日本史は、ですけどね。でもおもしろそうだなぁ〜、それだったら。」

A「まあ、フィクションだからね。実際の人物かどうかは別にして、面白かったわよ。 寺山は天保の改革を70年に重ねて映画シナリオを書いたと思うんだけど、佃は、それを「今」に置き換えた事で、 若い人にも分かり易い舞台になったわね。」

T「役者はどうなのよ。」

A「もう役者が素敵ね。流山児は今回演出だけじゃなくて役者としても観世栄夫とWキャストで出るし、塩野谷正幸、 下総源太朗、沖田乱、悪源太義平、青木砂織、横須賀智美といった流山児事務所のスター達に加えて、劇団桟敷童子から、 そこの看板役者、池下重大、スタジオ・ライフから深山洋貴といった素晴らしい面々なのよね。」

T「だったら悪くなろうがない、ってな訳だんでしょ。」

A「っま、そういう事よ。質素倹約を庶民に押し付け国民に教育基本法改正案を歌わせて、娯楽は禁止。唯一の公認されている娯楽は、 はまぐり慶太座長率いる<劇団志気>っていう、どこかの国の今みたいな、ちょっと噴出しちゃう皮肉もあってね。」

G「へ〜、それって、劇団フォー・シーズンズってことね。ははは・・・面白い。」

A「もう終わっちゃったから、観てとは言えないけど、最初から最後までパロディと歌におふざけ、 それにチャンバラという本当に楽しい舞台だったから、もし、再演したら観に行ってよ。」

T「しかし、本当に良く観るわよね。まだまだ有るんでしょ、良かったって思った芝居が。」

A「まあね。」

G「なに、何?」

A「元、弘前劇場の劇作家、畑澤聖梧が書いて青年座の黒岩亮が演出した<猫の恋、 スバルは天にのぼりつめ>っていう芝居よ。」

T「それは?どんな?」

A「単純でよくある話なんだけど、な〜んか良い意味で後に残っちゃったのよ。」

G「簡単に説明してほしいなぁ〜。」

A「まあ、簡単にいうと、蒸発しちゃった父親が造った家を守り続けている、一人暮らしの中年女性と、 彼女をず〜っと見守っている父親の化身のような老猫との話なのね。」

T「あら、ちょっと興味があるじゃな〜い。」

A「舞台は東京柴又。」

G「寅さんの町だぁ〜!」

A「そうそう。そこにある広いちょっと変わった造りの家の応接間で話は進んでいくのよ。さっきも言ったけど、 主人公の女性は一人暮らしなのね。で、当然、親戚とか周りは心配するじゃない、もういい加減に結婚しろとかさぁ。」

T「アタシも未だに言われるものね。そろそろって。あ〜あ、嫌になっちゃうわぁ〜。」

G「え〜〜〜っ???竹さん、未だに言われるんですかぁ〜?もう見れば一発で分かっちゃうのにね。ははは・・・。」

T「お黙り!!!まったく口の減らない子ね。ははは・・・。」

A「まあまあ。で、ある時、彼女に結婚話が持ち上がって、とうとう結納の日を迎えるのよ。で、 相手の人が猫アレルギーって事もあって、親戚はその老猫を捨てようとするんだけど、 彼女にとっては蒸発した父親だと思い続けてきた猫だから、捨てるなんてもってのほか。」

T「でも、その婚約者って、猫アレルギーなんでしょ。まあ、 猫がいたらクシャミばっかりしてて大変な事になっちゃうわよね。」

A「でしょ。で、親戚は何とかしてその老猫を捨てようとするのよ。でも、 その猫は自分の身の危険を感じ取ってか逃げまわるのよね。」

G「まあ、当然だよな。」

A「で、結納の当日が来るんだけど、そこに思ってもいなかった人が現れるのよね。」

T「分かった!お父さんでしょ、彼女の。」

A「その通り。で、婚約者家族の陰謀を次々に明らかにしていく訳。」

T「陰謀?なに、それ。」

A「ほら、大きな家に一人暮らしじゃない。どうもその婚約者家族には莫大な借金があるらしくて、息子が結婚してくれれば、 その借金の返済に目途が立つって思ったのね。」

G「嫌な家族だねぇ〜。」

A「で、結局婚約は破棄されちゃうのよ。もう親戚はガッカリだし、突然現れた父親には怒りが爆発しちゃうしね。でも、 彼女は父親が帰ってきてくれただけで幸せを感じるのね。」

T「あら、ちょっといい話じゃないの。」

G「あれ?竹さん、目が・・・。」

T「ゴミ、・・かな?ちょっとゴミが入ったみたい。」

A「でも、少し経つと、父親は消えてしまって、また老猫が応接間のソファーに寝転んでいるっていう所で幕となるのね。」

G「なんか、ほのぼのする話だよね。単純なんだけど、良かったっていうのが分かるよ。」

T「アタシも結構お芝居観るけど、同じ単純でもさあ、今の若い子がやってる芝居って、見えちゃうだけじゃない。 その後が何も残らない物が多いのよ。この話って、アキちゃんの話を聞いているだけで、いい芝居だったんだろうな、 って想像できちゃうわよね。」

G「俺も、何か観たくなってきちゃったな。何かありません?お勧め。」

A「そりゃ沢山あるけど、今月でいいのかしら?」

G「うん、今月で。夏休みは沢山あるんだけど、な〜んにも予定がないしね。」

T「あら、そりゃ可愛そうなことねぇ。ははは・・・・。」

G「どうせ、竹さんだってな〜んにも無いくせに。」

T「お黙り!!!ってば。」

A「もう、竹ちゃんもゴン太もいい加減にしなさいって。え〜と、今月でしょ。まずは文学的に、 ロルカの<血の婚礼>なんかどう?」

T「あら、ロルカ。素敵じゃない。スペインの誇る詩人で劇作家、ロルカ。<イエルマ>や<ベルナルダ・アルバの家>、 それに<血の婚礼>。読んだわぁ〜。本当、素敵。」

G「へ〜、意外に竹さん文学派なんだ。」

A「それと、今、映画<太陽>で話題のイッセイ尾形の一人芝居と二人芝居。こまつ座の<紙屋町さくらホテル>、 宇宙堂の新作、来日公演も沢山あって、永遠の名作<ウエスト・サイド・ストーリー>、マシュー・ボーンの<シザー・ハンズ>、 ビリー・ジョエルの歌とダンスで綴る<ムービン・アウト>。この所、八月は三部制になった歌舞伎もいいかもよ。」

G「でも、そんなにいっぱい行ってられないしなぁ〜。アキさんはいいですね、何時も沢山行けて。」

A「何言ってんのぉ〜!アッシだってお財布と相談しなきゃ行・け・ま・せ・ん。」

T「そりゃそうだわねえ。いくらアキちゃんが芝居ばかだっていったって、破産しちゃうものねえ、全部行ってたら。」

A「当たり前です。」

T「え〜と、アタシもお財布の中身と相談しなやな、っと。・・・・あら、まだ大丈夫だわ。それじゃ、もう一本同じの頂戴。」

A「黒ね、ヱビス。」

G「じゃあ、俺も。今度はボウモアをロックで。」

T「ちょっと、景気いいんじゃないの?ボウモアなんて。」

G「ちゃ〜んとお財布の中身と相談してますからご心配なく。っていうか、今日給料日なんですよ。」

T「あら、それじゃ、心配ないわね。」

A「ちゃんと帰りのタクシー分だけは残しておいてよ。はい、二人ともお・ま・た・せ。」

おわり


*今回紹介したお芝居は、
1)<lovers〜ふたりだけのロミオとジュリエット〜仮面編>         上演終了
2)<無頼漢>       上演終了
3)<猫の恋、スバル天にのぼりつめ>上演終了
4)<血の婚礼> 上演中〜8/30 ベニサン・ピット
5)<太陽>    銀座シネパトスで上映中
6)イッセイ尾形一人芝居 8/17〜22
    イッセイ尾形二人芝居 8/23〜27
     いずれも原宿クエストホール
7)こまつ座<紙屋町さくらホテル> 8/6〜20
     紀伊国屋ホール
8)宇宙堂<夢ノかたち〜第一部・私の船>
     8/16〜27  白萩ホール
9)<ウエスト・サイド・ストーリー>8/16〜9/3
     オーチャードホール
10)<シザー・ハンズ> 8/16〜9/3
     五反田ゆうぽーと簡易保険ホール
11)<ムービン・アウト> 上演中〜9/2まで
     東京厚生年金会館
12)<八月納涼歌舞伎> 8/8〜26 歌舞伎座
以上です。どうぞ足をお運び下さいね。
2006.8.7


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