<苦悩と太陽>の巻

ユメ吉(以下Y)「こんばんは。」

あき(以下A)「あら、ユメ吉いらっしゃ〜い。はい、おしぼり。」

Y「あ〜、気持ちいい〜〜。」

A「今日は、何にしようか?」

Y「もう、そりゃ今月のお勧めドリンクだよね。<アーリー・オータム>お願いしや〜す。」

A「あいよっ!」

こう太(以下K)「また出ましたね、<アーリー・オータム>。もう僕がいる時に3人目です。 凄い人気ですね。」

A「そうなのよ。うちのお勧めドリンクで一番の人気かもねぇ。・・・はい、ユメ吉、お待たせ。」

Y「美味しいもんね、これさ。いや〜、ホッとするよね。」

K「今日は結構遅いですよね。明日仕事ないんですか?」

Y「そんなこと無いよ。ちゃんと仕事はあるけどね。今日はマドンナのコンサートだったから。」

K「あ〜、マドンナ。今来ているんですよね。で、どうでした?」

Y「55分押しちゃってね。もう待った待った。」

A「あら、まだ良い方よ。大阪公演なんて70分押しだったって。」

K「ひぇ〜〜〜、70分もですかぁ〜。僕待てません、そんなに。でも、 みんなちゃんと待ってたんですよね。」

A「そりゃそうでしょ。高いお金払って行っているんだからさ。たしか、5万円だったっけ?」

K「えっ?!!!5万円ですかぁ〜?」

Y「いやだなぁ〜、アキちゃん。5万円は特別シートだよ。お土産付きなんだって。 普通のS席で14000円だってば。」

A「あら、そうなの、14000円なのね。なんか、皆、5万円だ、5万円だって言ってたから、 まあ随分高いのね、って。だって東京ドームでしょ。5万はねぇ、高過ぎるもんね。まあ、 14000円だったら妥当よね。」

K「でもユメ吉さん、待っている間ってどうですか?間が持ちますか?」

Y「ほら、ドームだろ。だから入場には時間が掛かるし、意外にそんなに待っている感じは無かったかな。」

K「あ〜、そうですかぁ。僕はですね、あの〜、待っているのとは違うんですけど、 この前ギリシャ悲劇っていうのを初めて観たんですね。で、その長い科白の連続に耐えられなくて、 寝ちゃったんですよ。」

Y「ギリシャ悲劇ね。って言う事は、<オレステス>かな?」

K「そうです、そうです。」

Y「オイラも行ったよ、先週。まあまあだったけどな。アキちゃんは観に行ったの?」

A「行ったわよ。アッシも、まあまあだったわね。だけど、こう太が眠くなるのも良く分かるわ。 幕開けからあの長科白。それにあの雨。中嶋朋子の声が雨の音にかき消されて、 聞き取るのに凄く集中しなきゃならなかったからね。初めてギリシャ悲劇を観た人は、 ちょっと辛かったかもね。」

K「いや〜、本当に辛かったです。というか、つまらなかったんですね、僕には。」

Y「だって、寝てたんだろ、こう太は。ははは・・・。まあ、ギリシャ悲劇だから、 ず〜っと続いているわけで、その流れを分かっていないと辛いかもな。最初に<オレステス>はね〜。 もっと分かりやすい物だったら良かったかも。」

A「そうね。まあ、これも経験よ。アッシは面白いと思うんだけどね、ギリシャ悲劇。」

Y「面白いよ。親殺し、子殺し。なんか、今の日本みたいだよね。」

A「本当よね。でもさ、中嶋朋子は可愛そうだったわね。彼女って良いんだけど、あの状況だとさ、 やっぱりちょっと弱いでしょ。」

Y「そうだよね。オイラもそう思ったよ。まあ、でも合格点だよね。藤原竜也もそこそこやってたし。 最初のティンパニーの轟が、物語の行く末を示していて良かったし。」

A「そうね。あのティンパニーで始まる所は良かったわね。まあ、無難な舞台だったわよ。」

K「な〜んか損しちゃったみたいだなぁ〜、二人の話を聞いていると。」

A「あんた、寝てたんだから仕方ないわよ。まだやってるからもう一度観に行って来たら? ははは・・・・。」

K「え〜!!!アキさんって本当に意地悪ですよね。」

Y「おいおい、アキちゃんの意地悪は今に始まった事じゃないよ。ははは・・・。でも、 可愛い子にしかしないんだから。ね、アキちゃん。」

A「馬ッ鹿じゃないの、ユメ吉ったら。ははは・・・・。」

K「ところでアキさん、このチラシ、これどんな芝居です?」

A「え〜、どれどれ。あ〜これね。<YEBI大王>ね。新宿梁山泊の新作だわね。新宿のほら、 コパボウリング場の上の新宿 FACEって所でやってるわよ。」

Y「あ〜、FACEね。よく女子プロやってる所でしょ。」

A「そうみたいね。リングのポールがそのままだったもん。」

K「って、アキさん観に行ったんですか?」

Y「行ってるでしょ、アキちゃんは。梁山泊好きだもんね。」

K「で、どうですか?一度新宿梁山泊は観てみたいと思っているんですけどね。」

A「う〜ん、良かったんじゃないかな?韓国の作家、 洪元基(ホン・ウォンギ)が書いた芝居なんだけどね。」

Y「それにしても変なタイトルだよな、<YEBI大王>ねぇ。何なの?<YEBI大王>ってさ。」

A「まあ、簡単に言っちゃうと日本で言う所の閻魔大王みたいなものかな?ほら、 悪いことすると閻魔さまに舌抜かれるよ、みたいに言われたじゃない、子供の頃。 あれみたいなものらしいわよ、韓国では。」

K「何ですか?閻魔さまに舌抜かれるって。」

Y「えっ???こう太は言われた事ない?閻魔さまに舌抜かれるって。」

K「ありませんよ。初めて聞きました。」

A「あらら、時代よね、時代。今の子って、閻魔大王が怖いなんて言わないでしょ。 存在自体を否定しちゃうしね。」

Y「そうだよなぁ〜。昔は親とか先生とかは怖いものだったけど、 いまじゃ平気で殺したりしちゃっているからね。」

A「まあ、平気じゃないんだろうけどね、勿論。でも、怖いって感情がちょっと変わってきたっていうか、 何て言うかね。」

K「そうなんですか?あんまり良く分からないですけどね。まあ、それはいいとして、 どんなお芝居だったんですか?」

A「えっ?あ〜、<YEBI大王>ね。まあ、さっきも言ったように、怖い代名詞の<YEBI大王>なんだけど、 何故か子供は女ばかりなのね。で、もう女の子はいらないって、7番目に生まれた女の子を川に流してしまうのよ。 暫くすると、死神が大王の所にやって来て、そろそろ天界に召される時だって告げるんだけど、 後継者がいない大王としては、まだ行くわけにはいかない、後継ぎを探すまではって命乞いをするのね。」

K「なんか、ちょっと前の日本と似てますよね、後継者がいない所なんて。」

A「で、言われるの。男の子を授けてくれる女性は、自分が捨ててしまったあの子だって。 それから捨ててしまった子を探す旅が始まるのね。」

K「まるで大河ドラマですね。」

Y「本当だよ。それで争いが色々あって、って言う事だよね、きっと。」

A「まあ、そんな所かな。家族、というより、血族の繋がりと裏切り。全く大河ドラマだわよ。 それを2時間半位にしたって感じね。」

K「ちょっと面白そうですね。行ってみようかなぁ〜。いくらですか?」

A「え〜とね、指定席で\3800だったかな。」

K「マドンナよりず〜〜っと安いですね。」

Y「こう太さ、考えなよ、もっと。マドンナと比べるかぁ〜?普通。」

K「でも、時間的には殆ど同じじゃないですか。自分が時間を使うんですから、 マドンナでも新宿梁山泊でも同じなんですよ、自分の中では。」

A「あら、一本取られたって感じね。確かに、自分にとっての時間だものね。まあ、 価値観の問題って所よね。」

K「そうです。価値観ですよ。アキさんだって、今日はマドンナじゃなくてミル・・ 何とかっていう人のコンサートに行って来たんですよね。」

A「ミルヴァね。」

K「そうそう、その人。それも、アキさんの価値観で行くわけですから。」

Y「まあ、そりゃそうだ。こう太のおっしゃる通り。価値観は個人個人で違うからな。ところで、 アキちゃん、ミルヴァ行ってきたんだ。」

K「その人はどんな人なんですか?」

A「イタリアの歌手よ。1960年代から活躍していて、特にヨーロッパと日本で人気が高いのよね。 他のイタリアの歌手は、その存在自体が不確かなんだけど、ミルヴァは、カンツォーネに留まらずに、 世界の色々なアーチストと競演したりしているから、常にその存在を示しているのよ。」

K「へ〜、で、カンツォーネって何ですか?」

Y「こう太さ、まあ、しょうがないか。こう太の世代じゃカンツォーネ知らなくても。カンツォーネっていうのは、 イタリアの歌の事。フランスの歌はシャンソン、ね、分かった?」

K「そうなんだぁ。シャンソンって聞いた事あるんですけど、カンツォーネは初めて聞きました。」

A「仕方ないわよね。今、有名って言ったら、アンドレア・ボッチェリくらいだからね。」

K「あ〜、知ってます、その人。<Time to say goodbye>を歌った人ですよね、目の不自由な。」

A「そうそう。あれは大ヒットしたものね。今回も歌ったのよ。」

Y「へ〜、ミルヴァが〜?聴いてみたかったな。」

A「あら、違うわよ。ミルヴァじゃなくて、ジョイントしたジョン・健・ヌッツォが歌ったの。」

K「その人知ってます。紅白出た人ですよね。」

Y「そう言えば2年連続で出てたかな?で、どうだったの?コンサート。」

A「やっぱり凄い!のひと言ね。とても67歳には思えないわね。」

Y「マドンナと20歳位違うんだ。」

A「そうよね。でもまだまだ歌えるって感じよ。その声量、表現力。マドンナとは違ったアプローチだからね、 歌に対して。」

K「どういう人なんですか?」

A「プログラムあるから見て。はい。」

K「へ〜。なんか凄いですね。普通の歌の他にも、ミュージカルや演劇、オペラにまで出てるんだぁ。 映画も出てるし。へ〜〜。」

Y「ちょっと見せて。何歌ったんだ?<ウナ・セラ・ディ・東京>、やっぱり歌ったんだ。」

A「そうよ。ちゃんと亡くなった宮川泰に捧げてたわよ。ザ・ピーナッツとは違った魅力があるわよね。」

Y「この歌詞がいいんだよ。」

K「どんな歌詞なんですか?」

A「アッシも凄い歌詞だなって思ったのよね。あそこでしょ、 <街はいつでも 後姿の 幸せばかり>って所よね。」

Y「そうそう。もう傑作だよ。岩谷時子の最高傑作かもな。」

A「そうかもね。本当に素敵よ。今の人には書けないわよね、こんな詩。」

K「ちょっと前にBSで見ましたよ、ザ・ピーナッツ。その時に聴いたかもしれないなぁ〜。 今有ります?その曲。」

A「今はないわね。今度持ってきておくわよ。」

Y「他にはぁ〜・・・・。な〜んだピアソラは歌わなかったんだな。」

A「そうなのよ。アッシもさ、それが残念でね。でも、このプログラムでピアソラはね。 やっぱりピアソラはピアソラだけのプログラムで聴きたいわよ。」

K「ピアソラですか?知らないなぁ〜。ちょっと勉強しておきますね。・・・あっ、この人ですよ、 紅白出てたの。知ってる知ってる。」

Y「ジョン・健。ヌッツォは何歌ったんだ?・・・もう有名な曲ばかりだな。流行に遅れる事なく、 <誰も寝てはならぬ>を入れてるな。」

K「何ですか?その曲って。」

A「ほら、荒川静香がオリンピックで使った曲よ。」

K「あれって、ケルティック・ウーマンの曲ですよね。」

A「それは、エキシビションの時でしょ。」

K「あ〜そうかぁ。優勝した時のですね。分かりました。」

Y「で、どうよ、ミルヴァとの共演は。」

A「まあ、共演の時は、女性をたてているっていう感じでね。でも、まだ一人で歌っている時は、 リハーサル不足って感じで、指揮者に合わせてる風だったわね。声は艶があって良かったんじゃない。」

K「今度、ユメ吉さんの行ったマドンナとアキさんの行ったミルヴァと一緒のステージで対決してみたら面白いですよね。両方とも凄そうだし。」

A「実現は不可能だろうけど、面白そうね。」

Y「実現は不可能だよ。でも面白いよ、きっと。」

K「タイトルは<M・M対決>。どうですか?この企画。」

A「いいじゃない。」

Y「いいじゃん。ってな事あり得な〜〜い!ははは・・・・。」

全員「ははは・・・・・。」

おわり


*今回紹介したコンサート、お芝居は、
1)マドンナ ワールドツアー    公演終了
2)新宿梁山泊<YEBI大王>
     東京公演は終了
     大阪公演 9/29〜10/1 ウルトラマーケット
3)ミルヴァ   公演終了

以上です。芸術の秋。みなさんも何か芸術に触れてみては如何ですか?
2006.9.25


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