<自分に合うもの>の巻

ファンファン(以下F)「いや〜、分からなかったよぉ〜、あれは。」

カー君(以下K)「え〜〜〜!そうですか?」

F 「それじゃ、君は分かったんだ。」

K 「と、思いますけどぉ・・・。」

F 「なんか、自信無さげだな、それじゃ。」

あき(以下A)「何なのよ、来たばかりだっていうのに。はい、おしぼり。」

F 「僕はブランディー。君は?」

K 「それじゃ、オイラはビールで。あっ、黒、黒ビール。」

A 「あいよっ!・・・・はい、お待たせ。」

F 「ね、あきちゃん。君はご覧になりました?これ。」

A 「あ〜、このチラシのやつね。勿論行ったわよ。」

F 「で、君は分かりましたか?あれが。」

A 「アッシは好きだけどね、あの手の芝居。あっという間に2時間ちょっとが過ぎちゃったから。 まあ、無駄な所は多々有ったと思うけど。」

K 「そうだよねぇ〜。分かりましたよねぇ〜。まあちょっとダルかった所もあったし、長かったけどねぇ。 でも学生演劇であそこまで出来るのって羨ましいですよぉ。ねえ、アキさん。」

A 「そうよね。結構お金掛かってたもの。アッシの時代には考えられなかったわよ。 よっぽどパトロンでもいない限りね。」

F 「タイトルが<落月>だろ。まあ、月に係わってたのはわかったんだけどね。 狼とかかぐや姫みたいな登場人物も居たろ。でも、色々な話が出ては引っ込み出ては引っ込みで。まあ、 僕の様に正統派演劇しか観ていない者にはチト分かりかねますわね、あれは。」

K 「正統派演劇ねぇ。ファンファンさんは歌舞伎とか新派とか新劇とか、え〜〜〜と、 劇団四季とかしか観ないんだねぇ。」

F 「劇団四季は観たこと無いですわねぇ。で、良いんですか?四季は。」

A 「まあ、それも観てみなきゃ。まずは観てから判断する事よね。」

F 「まあ、それにしても分からなかったな、あれは。で、誰が主役だったんですかねぇ。」

K 「あれは主宰でしょ、やっぱり。」

F 「主宰っていうと、あの劇作家ですかぁ、頭モジャモジャの。」

A 「ははは・・・。そうね。髪の毛もモジャモジャで、頭の中もモジャモジャなのよ。」

F 「頭の中もモジャモジャねえ。」

K 「そうですよ。彼の頭の中には月を中心に自分と母親とが色んな形で現れてくるんですよね、アキさん。」

A 「そうね。狼だったり、探偵だったり、恋人だったり、月に住んでいる姫だったりね。」

F 「あっ、そうなの。でも、分からなかったわね、僕には。」

A 「まあ、合うか合わないかは誰にでもあるし、また公演があったら観に行ってあげてよ。 あの年代の子達がやってる芝居にしたら、結構良いと思うわよ、アッシはね。」

F 「まっ、そうですわね。今度また機会があったら教えて下さいよ。所で、 アキちゃんは最近僕の好きそうなお芝居には行ってらっしゃらないの?」

A 「ファンファンのいう正統派演劇ね。そうねぇ、そうそう、前進座の芝居に行ってきたわよ。」

F 「前進座っ!あら、懐かしいですわね。で、何やったの?」

A 「<毛抜>と<新門辰五郎>の二本立て。」

K 「<毛抜>って、歌舞伎のぉ〜?」

F 「おっ!君も意外に知ってるじゃない。で、どうですか?」

A 「まあ、面白かったわね。前進座の芝居では、最後の磁石がアッシらに馴染みのある形でしょ。 だからオチがちゃんと分かって良いわよね。」

K 「まあ、磁石で髪の毛を逆立てるんだらからねぇ。相当大きな磁石じゃないと。でも、笑えますね。ははは・・・。」

F 「まあな。滑稽ですわね。だけど有り得るかねぇ、あんな事って。まあ、無いですわね。大体、 あんな大きな磁石背負って屋根裏に潜んでたら、磁石の重みに絶えられないと思わないかい?ねえ、 アキちゃん、そうだよなぁ〜。」

A 「まあ、お堅い事は言わないで、単純に楽しめれば良いんじゃないの?」

F 「それは言えてます。そうだな。単純にね。そうだよな。で、もう一つの方は?」

K 「何でしたっけ?新・・なんとかって。」

A 「<新門辰五郎>ね。」

F 「そもそも何なの?その<新門辰五郎>ってのは。」

A 「江戸の火消しよ。今でも三社祭の宮出しの号令は、何代目か忘れたけど、この新門辰五郎がやってんのよ。」

F  「へ〜、そうなの。」

K 「オイラも知らなかったですね、それは。」

F 「まあ、いいんだけど、で、どんな話なんですかね、その新門辰五郎って。」

A 「幕末の京都が舞台なのね。」

F 「その人って、江戸の火消じゃなかった?三社祭に出てくるんでしょ。」

A 「そうよ。14代将軍の徳川家茂のお供人足として京都に上洛してたのね。で、その時代でしょ。 攘夷と開国で喧々諤々の時じゃない。辰五郎は、お世話になった水戸藩の攘夷派を馴染みの芸者の家にかくまっているのね。 その事は置いといて、その頃、京都の町の治安は、会津藩の元で見廻り組によってなされていたんだけど、 その中には、会津藩を笠に着せた愚か者がいるわけよ。」

F 「良くいますわね、そういう奴らって。」

A 「で、丁度新門の数人と寄席で出くわしちゃって喧嘩が始まるのよ。そこに現れたのが会津の小鉄。」

K 「その人、聞いた事あるなぁ〜。歌にも出てくるよねぇ。」

A 「そうよ、その小鉄。彼がその喧嘩の仲裁に入るんだけど、そのやり方が見事だったわけね。丁度、 そこに新門の辰五郎も来て、小鉄と見知り合うわけ。」

F 「任侠の兄弟の契りっていうやつだよな。」

A 「まあ、それは最後の最後になるんだけどね。その前に、辰五郎の息子が何者かに誘拐されちゃうのよ。」

K 「何か、この芝居も複雑になってるねぇ。」

A 「それが更に複雑になってくるんだけど、そんな時に京都の町に火事が起きちゃうのね。で、悩んだ末、 辰五郎は、京都を守るために江戸の火消しの心意気とばかり、火事場に組の者達を引き連れて向って、 見事火事を治めるのよ。慰労の会を開いていると、会津部屋の子頭が用心棒をつれて、 かくまっている水戸藩の者と辰五郎の息子を交換しようと迫ってくるのね。」

F 「面白くなってきましたね。」

A 「でも辰五郎はきっぱりと断るのよ。自分が全ての罪を着ればいいと考えた辰五郎は、 奉行所にその全てを申し出る為に書状を書くことにするのね。で、書いていると、息子が何者かに連れてこられるのよ。 その正体は、何と会津の小鉄。」

K 「なんか、テレビで見ている時代劇の様じゃないですかぁ。」

F 「あなた、何を仰っているの?この話がテレビの時代劇に使われているんじゃありませんか。 もっとちゃんとした判断をしなくちゃねっ、ははは・・・。」

A 「で、頭を剃ってきた小鉄は、今までの事は水に流してほしいと頼み、 浪士の問題は町方に任せるのが本筋だって辰五郎に言うわけよ。その言葉に打たれた辰五郎は、 小鉄と兄弟の契りを結ぶってわけ。」

F 「まあ、上手く出来てますよ、その話。僕は一度も観た事は無いんですが、面白そうだね。で、役者陣は?」

A 「もう中村梅雀が最高ね。テレビでは、その風貌からか、ちょっとホンワカ系の役が多いけど、 科白の明瞭さや、強弱の付け方がもう群を抜いて素晴らしかったし、お父さんの梅之助も流石の貫禄。 TVの<遠山の金さん>以来、久々に見た、会津の小鉄を演った藤川矢之輔はじめ、他の面々も達者という一言ね。」

F 「よっぽど良かったんだろうね、アキちゃんには。まあ、合ってたんだよな、前進座の芝居が。」

K 「他に何か観ました?」

A 「もう今月は本当に多くてね。今週だけで、この他に、稲垣吾郎主演の<魔法の万年筆> と宇宙堂の番外公演<川を渡る夏>の二本を観たわよ。」

F 「そんなに?!まあ、お好きですわね、本当に。で、その芝居は良かったの?」

A 「<魔法の万年筆>は、その万年筆を手にすると、どんどん素晴らしい文章が書けるっていう話なんだけど、 結局は、素晴らしい文章が書けるのは万年筆のせいじゃない、って話なのね。」

K 「いいなぁ〜。観に行けたんだぁ。鈴木聡だよねぇ、確か。オイラ好きなんですよ、彼の書く芝居。」

F 「で?」

A 「まあまあね。登場人物が万年筆のメーカー名になっているのは良いアイディアだと思ったわ。でも、 アメリカの話にしては違和感があるのよね。みんな外国人に見えないだもの。まあ、 日本で翻訳劇をやる時の難しさに似ているわよね。役者の中では、河原雅彦と西牟田恵が良かったわ。 最後ピンスポで万年筆がクルクル回るところは、安っぽくて頂けなかったけどね。まあ、女の子は、 特に稲垣吾郎ファンの女の子には喜ばれたとは思うけど。」

F 「もう一つの方は?何だっけ?あれだろ?宇宙堂。渡辺えり子の所だよなぁ。」

K 「あれ?正統派演劇しか観ないファンファンにしては良く知っているじゃないですか。」

F 「まあな。観た事はないですけど。ははは・・・。」

A 「こっちの芝居は、渡辺えり子の20年くらい前の作品なんだけど、若かった彼女の才能が溢れている作品だったわね。」

K 「話はどういったものだったのかなぁ。」

A 「舞台は昭和61年。」

F 「という事は、1986年だな。」

K 「オイラは、まだ1歳だね。」

A 「あら、嫌味かしら?ははは・・・・。で、東京の戦後すぐの昔の風景が残っているある街が舞台なのね。 そこに、10年間の記憶を失って、今でも自分が高校生だと思い込んでいる男の話なの。」

F 「また分からない芝居だな、きっと。」

A 「まあ、ファンファンには合わない芝居でしょうね、きっと。ははは・・・・。で、その男が、 自分の無くした記憶を求めて、自分にとっては未来の少年と幻のオズの国へと旅立つっていうものなのね。」

K 「へ〜。オイラは楽しめそうな芝居だなぁ。」

A 「アッシも楽しめたわね。当時の世相も色々出てきて、自分もオズの国に旅立ちたくなっちゃったわよ。 それにしても、渡辺えり子の才能は並じゃなかったって。本当に認識しちゃったわね。」

F 「よっぽど合ってるんだよ、アキちゃんには。ま、僕には合ってないかもしれないけどね、ははは・・・・・。 ブランディー、お代わりっ。僕にはやっぱりブランディーだな。これが一番合ってます。」

K 「それじゃ、オイラも一番合ってるか分からないけど、黒ビールお代わり下さい。」

A 「あいよっ!まあ、人夫々、合う合わないはあるからね。・・・・・はい、二人ともお待たせ。」

F 「まあ、そして僕に合っている店がペンギンって事ですかね。ははは・・・・。」

A 「ま、ファンファンたら。お世辞でも嬉しいわ。ははは・・・・。」

K 「オイラも、かな?ははは・・・・。」

一同 「ははは・・・・・・・。」

おわり


*今回紹介したお芝居は、
1) <落月>    公演終了
2) 前進座<毛抜/新門辰五郎>  公演終了
3) <魔法の万年筆>  PARCO劇場
    上演中〜6/12まで(その後大阪公演あり)
4) 宇宙堂<川を渡る夏>  公演終了
    次回公演は12月吉祥寺シアターの予定

以上です。上演中のお芝居もあります。どうぞ足をお運び下さいね。
2007.5.27


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