<墜落しちゃったぁ〜!>の巻

栄一(以下E)「ウィッ・・・。こんばんはぁ〜〜〜。」

あき(以下A)「いらっしゃい。ちょっとぉ、栄一、大丈夫?はい、オシボリ。」

E 「大丈夫ですよぉ〜。ふ〜ぅ。飲み過ぎだぁ〜。」

A 「まあ、12月だからね。仕方ないけど、注意してよ〜。」

E 「あ〜、ちょっとトイレ。」

A 「ちょっとぉ〜。もうしょうがないんだからぁ〜。」

E 「あ〜。我慢してたんだよねぇ〜。すっきりしちゃったよ。」

A 「なんだ栄一、気持ち悪かったんじゃなかったのね。アンタがそんな感じだから、 もう泥酔一歩手前かと思っちゃったわよ。」

E 「大丈夫ですって。ね、まあ、ちょっとは酔ってますけどね。」

A 「じゃあ、栄一は、軽い物にしておく?」

E 「いや、お勧め下さい、お勧め。」

A 「ヴォッカよ、ベースが。大丈夫なの?」

E 「大丈夫ですってばぁ。その何ですか?<プティ・パパ・ノ・・・>?」

A 「<プチ・パパ・ノエル>。ほら、小さい時にお父さんがサンタクロースの格好してプレゼントくれたじゃない。 そのお父さんサンタの事よ。」

E 「そんな事あったんだぁ、アキさんちは。」

A 「ある訳無いじゃないのよぉ。家はそんな事一度も無かったわねぇ。両親とも働いていたし、 父は起きた時にはもう会社に行ってたし、寝てから帰ってきた事が多かったからね。 休み以外には顔合わせることあんまりなかったのよ。誕生日の時もお赤飯が有るだけだったなぁ〜。」

E 「ちょっとアキさん、センチになってます。」

A 「あら、やだ。子供の時を思い出しちゃって。・・・はい、お待たせ。これが<プチ・パパ・ノエル>よ。」

E 「はぁ〜、これぇ〜。綺麗だよね。この緑色のやつは?」

A 「ライムを刻んだのよ。」

E 「沈んでいる赤は?」

A 「カシスよ。比重が重いでしょ。だから沈んじゃうのよね。カシス、ヴォッカ・ソーダ、 ライムって、下から赤、透明、グリーンと、正にクリスマスカラーよね。」

E 「本当だよねぇ。これ、アキさんのオリジナルですか?」

A 「一応ね。アッシが持っているカクテルブックには載ってなかったけどね。名前はね、 フランスで結構前から歌われているクリスマス・ソングから頂いちゃいました。」

E 「へ〜。でも、いいよね、この名前。」

A 「ありがと。で、どうよ、味は。」

E 「なんか、サッパリって感じ。何杯でもいけそう。危ないねぇ、この酒。」

A 「でしょ。結構アルコール度は高いからね。飲み易いからって飲みすぎると、ね!」

E 「ほどほどにって。」

A 「そうね。」

E 「ところで、年末だから芝居やコンサートがいっぱいで大変なんじゃないの?アキさんも。」

A 「そうね。今ってさ、週末が多いのよね、お芝居。だから何時も寝不足な体で行っちゃうでしょ。 しっかり観てるんだけど、疲れがね。」

E 「もう歳ですからね、アキさん。」

A 「まあ、こういう時に感じるわよ、歳を。」

E 「で、最近これっていうのありました?」

A 「逆の意味ではね。」

E 「って言うと?」

A 「まあ、ちょっとねぇ〜、みたいな。」

E 「で、何です?その芝居かな。」

A 「ほら、トイレに貼ってあったでしょ。<テイク・フライト>っていうミュージカルよ。」

E 「あ〜、天海祐希の〜。どんな話なんですか?ポスターには <偉業を遂げたパイロットたちの人生が云々って書いてあったけど。」v A 「そうなのよね。初の有人飛行を成功させたライト兄弟(池田成志と橋本じゅん)、 大西洋を初めて単独で横断したリンドバーグ(城田優)、女性初の大西洋横断に成功したアメリア・エアハート (天海祐希)の三組にスポットを当てて進むミュージカルなのね。」

E 「へ〜、随分スケールが大きそうだよね。」

A 「そうなのよ。だって、脚本が<太平洋序曲>や<アサシンズ>、<ビッグ>などのジョン・ワイドマンでしょ、 作詞が<エイント・ミス・ビヘイブン>や<ミス・サイゴン>、<ソング・アンド・ダンス> のリチャード・モルトビー・ジュニアでしょ、作曲が<ビッグ>や<ベイビー>、それに映画の <ノーマ・レイ>のデヴィッド・シャイヤーでしょ。それに日本版の演出が宮本亜門。 みんなトニー賞やアカデミー賞を獲得したり、ノミネートされたりしている人達ばかり。 当然期待は大きく膨らむわよね。」

E 「さっき日本版っていってたけど、それじゃ、他の国でもやってるんだ。」

A 「日本公演の限定公演だったんだけど、少し前にロンドンでソンドハイムの<ジョージの恋人> の新演出で評判をとったサム・バントロックの演出でやってたのよ。」

E 「そうなんだぁ〜。で、その時の評判はどうだったの?」

A 「アッシは勿論観ていないから、情報だけなんだけど、批評家は一致して絶賛してたらしいわよ。」

E 「それじゃ、本当に期待が胸を膨らませちゃうね。」

A 「そうなのよ。もう凄く期待しちゃってさ。」

E 「でも、さっきの口ぶりだとイマイチだった?」

A 「観終わって感じたのはね。グライダーを発明したオットー・リリエンタール(ラサール石井) が進行役になって夫々の話が進んでいくんだけどね。」

E 「ラサール石井なんだぁ〜。」

A 「ちょっとクサかったけど、進行役としてはまあまあだったんじゃないかしらん。 飛行機の格納庫っぽい白い物体に色々な映像を写す事で場面転換をした演出はとても良かったのね。 ライト兄弟の二人もちょっとオドケ過ぎな所はあるものの無難にこなしてたし、宮本亜門の演出も、 他のミュージカルを真似したかな?って所はちょっとあるもののまあ及第点かしらね。」

E 「じゃあ、残る出演者とか、歌とかが?」

A 「リンドバーグ役の城田優は若いけど、歌もしっかりとしているし、日本人離れした風貌も相まって、 これからのミュージカル界を背負っていくんじゃないかなって感じる逸材だったし、 アメリアと後に結婚する出版社の社長ジョージ・パットナム役の宮川浩が抜群の歌唱力で存在感をアピールして、 このミュージカルの主役を食ってたし、とっても良かったわよ。でもね、歌が。」

E 「ダメだったんだぁ〜。」

A 「ダメっていうよりも、残る曲が無いのよね。終わってから口ずさんで帰るような曲が。それに、 何と言っても天海祐希が歌えないのよ。別に音程が外れているとかじゃないんだけど、聴いていて苦しくなっちゃうのよね、 こっちが。」

E 「ミュージカルで歌えない人が出ているほど厳しいものはないからなぁ〜。」

A 「そうなのよ。高い声が特にね。だから、感情が伝わってこないのよね。彼女って、宝塚時代から、歌えない、 踊れない、芝居できないってので有名だったじゃない。」

E 「え〜、そうなんだ、ははは・・・。」

A 「まあ、その後の彼女の努力もあって、演技は宝塚時代からすれば相当進歩していると思うのよ。でも、 やっぱり歌がねぇ〜。立ち姿は本当に素敵なんだけどねぇ〜。今回の日本版<テイク・フライト> の最大の失敗は彼女を主役にもって来た事じゃないかと思うのよね。残念なんだけど。 宝塚で言ったら姿は天海で歌が今月退団公演をしている春野寿美礼だったら数段良かったのになぁ〜なんて思っちゃったわ。 まあ、これから地方公演するみたいだから、その間に歌が上達してればねって願うばかりよ。」

E 「そうかぁ〜。それはそれは。で、これはどうだったの?アキさんの事だから、もう観て来たでしょ。」

A 「<キル>ね。」

E 「あっ、いけねぇ〜。もう終電間に合わなくなっちゃうよ。ゴメン、アキさん。今度聞かせてよ、その話。」

A 「分かったわ。また今度ね。それじゃ、栄一は1400円です。」

E 「これもゴメン。一万円札しか無いんだけど、いい?」

A 「勿論よ。おつりは沢山用意しているから大丈夫よ。・・・はい、有難うございます。8600円のお返しです。」

E 「それじゃ、またね。ご馳走さま〜。」

A 「ありがとう!気を付けてよ、ちょっと酔っ払ってるんだからね。」

E 「大丈夫だよぉ〜。それじゃ、お休みなさ〜い。」

A 「おやすみぃ〜。ありがとう!」

おわり


 *今回紹介したお芝居は、
 
 1)ミュージカル<テイク・フライト>東京公演終了
   北九州芸術劇場    上演中〜12/16まで
   名古屋中日劇場    12/19〜21
   梅田芸術劇場      2008年1/3〜5
 2)野田地図<キル> シアター・コクーン
   上演中〜2008年1月31日まで

以上です。年末の忙しい時期ですが、どうぞ足をお運び下さいね。
2007.12.16


Back Number!