<色よ、イロ>の巻

洋治(以下Y)「こんばんは。寒いですね。」

あき(以下A)「あら洋治、いらっしゃ〜い。本当にねぇ〜。寒くて皆出て来ないのよね。寒い中、有難う。はい、オシボリ。」

Y 「あ〜、暖か〜い。」

A 「洋治は、何にしようか。」

Y 「え〜とですね、今日は暖かい物でいきたいですね〜。何か暖かなドリンクお願いしますよぉ。」

A 「そうね〜。う〜む、<ホット・ラム・アンド・バター>なんてどうかしら?」 Y 「それはラムですよね。」

A 「そうよ。ラムのお湯割りにバターを浮かべるの。好みに応じて砂糖を入れるんだけどね。」

Y 「あ〜、何時だったかお勧めドリンクになってたやつだぁ。」

A 「そうそう。一昨年の冬だったかしらね〜。」

Y 「じゃあ、その<ホット・ラム・アンド・バター>お願いします。」

A 「あいよっ!」

Y 「流石だなぁ〜。こういう日にはお湯をちゃんと用意してるんですね。」

A 「そうよ、冬はね。はい、お待たせ。」

研さん(以下K)「アキちゃんはその辺ぬかり無いからね、ははは・・・。」

A 「ちょっと、研さんおちょくらないでよね。」

K 「おちょくってなんていませんよ。褒めているんでしょ〜。ねえ、洋治。そうよね〜。」

Y 「まあ、そうだと思いますけど、研さんが言うと、何かイヤミっぽく聞こえますよね、ははは・・・。」

A 「でしょ〜。」

K 「どうでもいいからビール頂戴。」

A 「は〜い。」

K 「注文の時は笑顔で返事もいいのねぇ〜。ははは・・・。」

A 「はい、研さん、お待たせしました。」

K 「はい、ありがと。」

Y 「アキさんも研さんも聞いてくださいよ〜。今日、さっき映画観ようとしてそこのバルト9に行ったんですけど、もうチケット売り場が混んでて。やっと順番が来たなって思ったら、前売りチケットがここでは使えないって。おまけにもう時間が間に合わなくって。踏んだり蹴ったりでしたよ。」

A 「そうそう。開映時間ギリギリに行っちゃうと座席指定のチケットと交換出来なくなっちゃうのよね。それに全国共通前売り券が使えない物もあるのよ。」

Y 「そういう時が多いんですよね、バルト9は。」

A 「そういう時の為に、KINEZO(キネゾウ)っていうシステムがあるのよね。」

Y 「って、どんなシステムなんですか?」

A 「まあ、バルト9で観たいんだったらっていう事なんだけど、パソコンか携帯でまず登録するのね。で、予約サイトにアクセスして観たい日と時間、枚数を予約するのよ。クレジットカードでの決済も出来るし、当日を含めてその二日後まで予約できるから便利よ。」

K 「それは、例えば火曜日だったら木曜日まで予約できるって事なのかしら?」

A 「そういう事ね。でも、バルト9で使える前売り券を持っている場合は、9階のチケット売り場で座席指定券と交換しないといけないのよね。だから、平日の昼間に割引があるから、その時か、もしくは急に観たくなった時なんかが便利かもね。」

Y 「オイラは無理だな。仕事あるもん。昼間はね〜。今度はちゃんと何処で観る事が出来るか確認してから前売り買おうっと。」

A 「そうね。」

K 「で、洋治は何観ようとしたのよぉ。」

Y 「<スウィーニー・トッド>ですよ。」

K 「あら、アタシも観たいのよねぇ〜。ティム・バートンとジョニー・デップのコンビでしょう。もう気持ち悪〜いわよねぇ〜、あの二人。この前もTVで<チャーリーとチョコレート工場>ってやってたんだけど、ま〜ぁ、気持ち悪いわ〜。」

Y 「研さん、それって、気持ち悪いんですか?それとも褒めてるの?」

K 「まあ、気持ち悪いってのはねぇ、気持ち悪いのよぉ〜。でも面白いわよねぇ〜。ねえ、アキちゃん、面白いけど、気持ち悪いわよねぇ〜。」

A 「ははは・・・。まあ、分かるけどね、研さんの気持ち。ははは・・・。」

Y 「オイラも分かるなぁ〜、その感じ。早く観たいですよね。」

K 「アキちゃんは観ないの?」

A 「ゴメンねぇ〜。もう観ちゃったのよ、公開初日にね。」

Y 「で、どうだったんですか?」

A 「でも、まだ観てないんだし、言えないじゃない。」

Y 「ちょっと教えてくださいよ。ねえ、研さんも大丈夫ですよね、ちょっとなら。」 K 「アタシは聞いても全く構いませんよ。ぜ〜んぜん気にしないからね。」

Y 「それじゃ、良いじゃないですか。これから観る参考にもなるし。お願いしますよ。」

A 「そうね。アッシ、このミュージカルは去年日本で公開された映画<ドリームガールズ>とともに、好きなミュージカルのベスト3から落ちた事がないくらい好きなのよね。だから、去年の<ドリームガールズ>の時もそうだったんだけど、観終わるまでドキドキなのよ。」

K 「まあ、そうよねぇ〜。舞台と映画じゃ全然違うからねぇ〜。」

Y 「特に好きな物だとそうですよね。逆に最初映画やTVだったのが舞台になる時も同じだと思うんだけどな。で、今回はどうだったんです?」

A 「まあまあかな。わりと舞台に忠実っていうかね。勿論、省かれちゃった曲も何曲かあるんだけど、それは仕方ないかな。」

K 「あら、それって作曲者にとってみたら嫌な事ねぇ〜。」

A 「そうでもないみたいですけどね。やっぱりオリジナルの舞台じゃ3時間近くもあるわけでしょ。でも映画で3時間はちょっとキツイしね。カットする物があっても仕方ないわよね。」

Y 「舞台はそんなに長いんですか。」

A 「そうなのよ。でも全く飽きないのね。日本でも帝国劇場でブロードウェイ初演から1〜2年後にやっているのよね、確か。」

K 「あれよねぇ、染五郎と鳳蘭だったわよねぇ。」

Y 「染五郎?って幾つでやったんですぅ〜?」

A 「やだ、洋治。先代よ。今の幸四郎がまだ染五郎のときね。トッドが染五郎、ラベット婦人が鳳蘭。ルーシーが市原悦子、演出が早稲田小劇場の鈴木忠志だったわよね。」

Y 「へ〜。去年もやったよね、確か。」

A 「そうね。去年はトッドが市村正親、ラベット婦人が大竹しのぶ、演出が宮本亜門。大竹しのぶの新しい代表作品となったわね。」

Y 「ブロードウェイの方は?」

A 「<ジェシカおばさんの事件簿>っていうTVドラマがあったんだけど、その主役のアンジェラ・ランズベリーがラベット婦人、トッドがレン・カリュー、演出があのハロルド・プリンス。トニー賞を8部門も獲ったのよね。それから時々再演しているのよ。」

Y 「凄いですよね。それじゃ今年のアカデミー賞は間違いないかな?」

A 「それはどうかな?凄く良かったんだけど、アカデミー賞の作品賞を獲得するほどの作品ではなかったってアッシは思ったけどね。」

K 「あら、どういう事なのよ、ねぇ。」

A 「ジョニー・デップも良かったから、もしかしてノミネートされれば主演男優賞にはなるかもしれないけどね。でも作品としたら平凡かな。同じミュージカルの映画化でも<シカゴ>や<ドリームガールズ>に比べたらね〜。まあ、<オペラ座の怪人>ほど酷くはなかったけどね。」

K 「あれは最悪だったわよねぇ〜。舞台観てから映画観たら、何?って感じだったっわよねぇ。」

Y 「オイラは良かったけどなぁ〜。」

A 「まあ、舞台を映像にするって、良い所もあれば悪くなってしまう所もあるのよね。」

Y 「今回の映画化は良い所よりもマイナスの所が多かったって事ですか?」

A 「というか、短くした分だけ、焦点を絞ったから、周りの人物像がちょっとぼやけちゃったかなって。でもね、いい所も沢山あったのよ。」

K 「例えば?」

A  「色ね。」

Y 「色ですか?まあ、ティム・バートンだから明るくはないなって。」

A 「そう。ロンドンが舞台じゃない。ロンドンって何時も曇ってて、暗〜いのよね。そこにトッドとラベット婦人の青白い顔の色、イタリアの理容師ピレリの服の青、美しい女性陣の金髪、炎のオレンジ。それになんと言っても血の赤(というより朱に近い赤)。モノトーンに近い映像にそれらが映えて・・・。それから映画なのに舞台っぽいところもあるのよね。まあ、それは観てのお楽しみね。」

Y 「そうかぁ〜。」

A 「それにしても、役者は達者だったわよ。ジョニー・デップは本当に素晴らしかったけど、他にも仇役のターピン判事を演じたアラン・リックマンの心の中に潜む残忍さの表現、役人バムフォードを演じたティモシー・スポールの厭らしさ。舞台では頭の弱い青年なんだけど、映画では不幸な少年として登場するトビー役のエド・サンダース。ちょっと若いかなって思ったけど、そのトビーに対する感情表現が抜群だったラベット婦人役のヘレナ・ボナム=カーター。みんな良かったわね。」

K 「それじゃ、やっぱり良かったんじゃない?」

A 「う〜む、素直に良かったって喜べないのよ。」

Y 「なんで?」

A 「やっぱり舞台が素晴らし過ぎちゃって。例えば、ラベット婦人。やっぱりもうちょっと老けてた方がね。実年齢じゃなくて、業突く婆みたいなさ。そんな感じがもう少し欲しかったし、トビーはさっきも言った様に少年として登場するんだけど、オリジナルの舞台は、これもさっきも言った様に頭の弱い少年なのね。だから、トビーがラベット婦人に向って唄う後半の<Not While I'm Aroound〜僕がついている限り>がとっても生きてくるのよね。でも、この映画の中では、逆にラベットとトビーの擬似親子みたいな雰囲気が増大してそれはそれで良かったんだけどね。」  

Y 「何か、血が凄く飛び散るらしいじゃないですか。」  

A 「まあ、そうでもなかったかな、想像してたよりね。」  

K 「ティム・バートンぽい所は結構あったのかしらねぇ〜。」  

A 「それは有ったわよ。まず、スプラッターじゃない。ははは・・・。それに、さっきも言った様に、色よね、色。今回の映画版は色がキーワード。みんなもそれを中心に観てみると<色>の重要性が分かると思うわよ。」  

Y 「今年もやるんですよね、アカデミー賞の予想クイズ。」  

K 「何よ、それ。」  

A 「毎年ね、ウェブ上でやっているのよ、アカデミー賞の予想を。」  

K 「あらぁ〜、残念だわねぇ〜。僕は持ってないから、コンピューター。参加できないわぁ〜。」  

A 「ここで投票してくれてもいいわよ。そうね、今年はお店でも投票してもらおうかしらね。良いアイディアよね。」  

Y 「その方が投票数も多くなるしね。いいんじゃないですか。」  

A 「そうしましょ。」  

サトシ(以下S)「こんばんは。」  

A 「さとし、いらっしゃい。はい、オシボリ。」  

S 「ありがとうございます。選ばれませんでしたね、スウィーニー・トッド。ジョニー・デップは候補になったけど。」  

A 「それってノミネート?アカデミー賞の。」  

S 「はい、さっき有ったんですよ。」  

A 「ほらね、やっぱり。作品賞は無理だなって思ったのよ。サトシは何にしようか?」  

S 「今月のお勧めで。」  

A 「あいよっ!<プレリュード・フィズ>ね。・・・はい、お待たせ。」  

Y 「色がきれいですね、これ。」  

K 「やっぱり今日は<色>が主役だわねぇ〜。僕は他のイロもほしいけど・・・。」  

Y 「まだまだ元気ですね、研さん。」  

A 「本当ね、ははは・・・・。」  

S 「何だか分からないけど、色なんですか?今日は。」  

A 「そうなのよ。」  

K 「そうよねぇ、イロよね、色。は〜、ははは・・・。」

Y 「色だよ、色。ははは・・・。それじゃ、オイラも今月のお勧めで。」

A 「あいよっ!」

おわり


*今回紹介した映画は、

1)スウィーニー・トッド〜フリート街の悪魔の理髪師   タイムワーナー系で上映中以上です。

外は寒いですが、やっぱり映画は映画館で。どうぞ足をお運び下さいね。
2008.1.27


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