<成長してる?>の巻

ナナちゃん(以下N)「ちょっとぉ〜、遅いじゃないのよ!」

あき(以下A)「ゴメンゴメン。でもさ、ちゃんと書いてあるでしょ、9時オープンって。」

N 「そうだけどぉ。これから準備?」

A 「大丈夫よ。もう準備は出来ているから。」

圭二(以下K)「もう大丈夫?」

A 「今開けるからね。1分待って。」

K 「は〜い。ゆっくりでいいですよ。」

A 「はい、お待たせしました。どうぞ。」

N 「も〜う。行くところないから待ちくたびれちゃったわよぉ〜。」

A 「ゴメンゴメン。結構ひつこいわよね、ナナちゃんって。ははは・・・。 はい、オシボリどうぞ。」

N 「流石ね、こ〜んなに熱くて。アチッ!」

K 「今日はどこかへ行って来たんですか?またお芝居?」

A 「今日は違うのよ。六本木のビルボード・東京って所でね、 石川セリの復活ライヴを聴いてきたのよ。」

N 「あら、懐かしいわぁ〜。あっ、アタシはビールね。」

K 「あ〜、そうだ。オイラは・・・、今月のお勧め!・・・って今月は何ですか?」

A 「今月は、ヴォッカをベースにした<ケープ・コッダー>よ。ちょっと強いけど、 美味しいと思うわよ。」

K 「じゃあ、それお願いします。」

A 「あいよっ!・・・はい、お二人さん、お待たせしました。」

N 「あら、ちょっとぉ〜、綺麗な色じゃない。コースターの赤とピッタリね。」

K 「う〜む、美味し〜い。でも、結構キツイですね。」

A 「そうね。ヴォッカベースだしね。炭酸とかで割ってないし。」

N 「それはそうと、どうだったの?石川セリは。」

K 「で、誰なんですか?その人。」

A 「あっそうか。圭二の年齢だと分からないわよね、石川セリのこと。」

K 「そうですね。全然聞いた事無いです、その人。」

N 「圭二はさぁ〜、井上陽水知ってるの?」

K 「名前くらいはぁ〜・・・。」

N 「まあ、仕方ないわよね、まだ若いから。でもさぁ〜、ねえ、アキちゃん、 アタシらの若い時っていったら凄かったわよね、陽水のアルバム売り上げ。」

A 「そうよね。<氷の世界>っていうアルバムは、日本で始めてのミリオンセラーになったのよね、 確か。」

N 「あの頃はさ、まだフォークソングって言ってたわよね。拓郎に赤い鳥、5つの赤い風船、 本田路津子に岡林信康。みんなロン毛でね。懐かし〜い。」

A 「本当よね。学園紛争やテロ。まだまだ日本が前に進もうとしてた時代よね。でもさ、 音楽も凄く良かったじゃない。」

N 「いい音楽がい〜〜っぱい有った時代よね。歌詞が時代を語ってるっていうの? ちょっと後で出てきたユーミンや中島みゆき、吉田美奈子、山下達郎。」

K 「あ〜、ユーミンや中島みゆき、山下達郎は知ってますよ。で、その石川セリってのは?」

A 「圭二は確か映画好きだったわよね。邦画も観るんだっけ?」

K 「観ますよ。結構昔のも観てます。まあ、DVDですけどね。」

A 「じゃあさ、<8月の濡れた砂>っていうのは知ってる?」

K 「知ってますよ。藤田敏八監督のですよね。」

N 「あら〜、良く知ってたわね。映画好き、認めてあげる!」

K 「はい、有難うございますぅ〜。」

A 「で、その映画の主題歌を歌ってた人よ。」

K 「え〜と、どんなんでしたかね。ちょっと気だるい雰囲気のぉ〜、だったかな〜。」

A 「そうそう。それよ。」

K 「でも相当昔ですよね。」

N 「そりゃそうよ。村野武範もブレイクする前だものぉ〜。」

K 「あ〜、どこかで見たと思ってたんですよ。グルメリポーターじゃないんですね、彼って。」

A 「何?今そんなことしてるの。」

N 「まあ、いいんだけどさ。で、ライヴはどうだったのよ。」

A 「<Love Letters>っていうスタンダード曲でオープンしたんだけど、 黒のワンピースに赤のショールっぽいコート、それにピンクのハイヒールで登場。 シンディー・ローパーみたいでね。もう付け毛の髪が凄くて。ちょっとビックリしちゃったんだけど、 声を聴いてもっとビックリしちゃったのよ。」

N 「なんか野太い声になってたとか?ははは・・・。」

A 「違うのよ。確かに大分変わってたのは変わってたんだけど。なんて言えばいいのかしらねぇ〜、 昔で言ったらシャンソンのフランソワーズ・アルディーみたいな囁き型っていうのかしらね。」

N 「それじゃイメージ変わっちゃうわよね、歌も。」

A 「そうなのよ。だからさ、<8月の濡れた砂>も、<セクシー>も、<ダンスはうまく踊れない>も、 <ムーンライト・サーファー>も違うのよねぇ〜。」

K 「じゃあ、ガッカリしちゃったんですね、アキさんは。」

A 「そんな事はないのよ。まあ、ニュー・アルバム中心のライヴだったから、 ニュー・石川セリっていうのをアピールしたかったんじゃないかって。」

N 「まあ分かるけどさぁ〜。昔からのファンとしては、ちょっとガッカリじゃな〜い。」

A 「そうね、ちょっとだけ。でも、昔から、そんなに多くライヴをする人じゃなかったじゃない。 だから歌い続けてくれているのが嬉しいわよね。それにアンコールで歌った<ムーンライト・サーファー> では作者の頭脳警察のパンタも登場して大盛り上がり。それに、 時々出てきたコーラスの少女が次女だって分かってね。へ〜、もうこんなに成長してんだって。」

N 「まあ、娘のデビューのための復活だったのかしら。」

A 「そんな事はないと思うけど。でも、ちょっとは有るかもね。 それにしても1時間ちょっとのライヴで着替えが二回もあって、それを見るだけでも楽しいライヴだったわね。」

N 「あれ、何だっけ?NHKの少年ドラマシリーズでやってた・・・。アレの主題歌も彼女よね、確か。」

A 「<つぶやき岩の秘密>でしょ。その主題歌<遠い海の記憶>ね。アッシ、一番好きなのよ、 石川セリの歌の中で。」

N 「で、歌ったの?」

A 「残念ながら歌わなかったのよね。聴きたかったけど。」

K 「全然話は違うんですけど、最近お勧めありますか?映画で。」

A 「あら、圭二って最近観てないの?」

K 「そうなんですよ。仕事が忙しくって殆ど映画館には行ってないんですよね。DVDで観るくらい。 だからちょっと古くなっちゃうんですよ。」

N 「でもさ〜、ちょっとって言ったって半年くらいじゃない。」

A 「その半年が待てないのよね。」

K 「そうなんですよ。やっぱり公開してる時に観なきゃって。で、アキさん、最近何か観ましたか?」

A 「日本ではこれから上映するんだけど、<JUNO〜ジュノ>っていうのが面白かったわよ。」

K 「何か聞いた事あります、それ。」

N 「あれでしょ、アカデミー賞で脚本賞獲ったやつよね。」

A 「そうそう。監督が<Thank You Smoking>のジェイソン・ライトマン。 アカデミーを獲った脚本が元ストリッパーでこれが初脚本のティアブロ・コディ。 アカデミーではその脚本と監督、主演女優、作品と、低予算映画にも係わらず4部門もノミネートされた作品よ。」

N 「妊娠しちゃうやつですよね。観たいなとは思ってたんですけどぉ・・・。で、 詳しくない程度にどんな映画か教えてくださいよ。」

A 「興味本位でやっちゃったセックスで子供ができちゃうんだけど・・。」

N 「あさはかよねぇ〜、本当に。まあ、興味本位って言うのは分からなくもないけどさぁ〜あ、 まあ、あ・さ・は・か。」

A 「で、勿論最初は下ろそうって思うのよ。でもね、そう思って行った病院の前で、 同級生が言ったひと言で下ろすのを止めるのね。で、決心して両親に告白するんだけど・・。」

K 「まあ、向こうでもビックリするんですかね。」

A 「そりゃそうよ。いきなり言われるんだから。」

N 「で?」

A 「勿論ビックリよね。でも、これからの事を真剣に考え始める訳よ。で、 彼女の親友のリサに相談して里親探しを始めるのね。」

K 「つまり、子供の出来ない夫婦に出来た子供を預けるって事ですよね。」

A 「まあ、そなのかしらね。で、父親とそこの家に行って弁護士を交えて契約するんだけど、 その夫婦の関係がどこかぎこちないの。」

N 「その夫婦にも何か問題があるのよね。」

A 「そうそう。で、一度は考え直すんだけど、結局その夫婦に任せることにして、いよいよ出産。」

K 「その後、寂しくならないんですかねぇ。」

N 「そりゃなるでしょ、一般には。」

A 「そりゃね。でも、里親に預けて、彼女はまた普通の高校生活に戻るってわけよ。」

N 「その過程で成長する彼女の映画ってわけね。」

A 「そうそう。」

K 「で、俳優達は良かったですか?」

A 「そうね。ジュノを演じたエレン・ページはX-Menファイナル・エディションで 美少女ミュータントのキティ役をやって注目されたんだけど、 この映画でも妊娠しちゃう普通の女の子とはちょっと違うジュノを好演してるのよね。 この映画に出てからオファーが殺到してるらしいしね。」

N 「まあ、それだけ素晴らしかったんでしょうね、この映画での演技が。」

A 「まあ、そういう事よね。」

K 「さっきのアキさんの話では出てきませんでしたけど、妊娠させちゃった男の方はどうなんです?」

A 「そうね。まあ、映画の中でも、ちょっと無視ぎみなんだけど、要所要所にはちゃんと出てくるのよね。 で、この恋人をやったのが<童貞ウォーズ>に出て大ブレイクしたマイケル・セラ。 な〜んか情けないけどしっかりしなきゃみたいな高校生の心の動きをちゃんと演じてたわよ。 それから里親をやった<デアデビル>のジェニファー・ガーナーと、その夫役のジェイソン・ベイトマン。 この二人がまたいいのよね。ギクシャクした夫婦の関係をとても上手く表現してたわよ。」

N 「両親は?」

A 「母親役が<アメリカン・ビューティー>に出てたアリソン・ジャネイ。ちょっとしか出てこないんだけど、 存在感がとてもあってね。それに、父親役のJ.K.シモンズがまたいいのよ。」

K 「その人って<スパイダーマン>に出てませんでした?」

A 「そうそう。あの編集長をやってた人ね。で、 彼が妊娠しちゃった子供を持つ親の心情を本当に良く表現してたわよ。まあ、 出演者みんな芸達者って感じよね。」

K 「暗くなっちゃう様な話なのに、アキさんの話を聞いてると、コメディーみたいにも聞こえるんですけど。」

A 「まあ、シリアスな内容だけど、前向きにした所がこの映画の成功した秘密だったかもね。」

N 「それはそうとさぁ〜、今年はトニー賞の放送はあるのかしらねぇ〜。」

K 「トニー賞?」

A 「ほら映画はアカデミー賞、TVはエミー賞でしょ、で、演劇がトニー賞よ。」

K 「あ〜、そうなんだぁ〜。」

A 「あるわよ。今年はね、ニューヨークのラジオシティーで授賞式があるんだけど、 司会がウーピー・ゴールドバーグなのよ。」

N 「それは面白くなりそうよね。今年のアカデミー賞は司会が全く詰まらなかったじゃな〜い。 でも、ウーピーだったらねぇ。」

A 「でしょ。アッシも楽しみにしているのよ。」

K 「で、何時なんですか?」

A 「6月の15日に授賞式があって、当然向うでは生放送されるんだけど、日本では29日にBSで放送されるのよね。 NHKには下手にカットしないでそのまま放送してほしいわよね。」

N 「あら、ちょっとぉ〜、もうこんな時間じゃない。ほら、アキちゃんが遅く開けるからぁ〜。 もう一杯飲みたかったのに、もう帰らなくっちゃ。」

K 「もう帰るんですか?」

N 「アタシ朝が早いのよね。だから何時も一番早く来てパ〜ッと飲んでス〜ッと帰るって訳よぉ。」

K 「オイラは早起きが不得意だから無理だなぁ〜、そんな生活。」

A 「まあ、圭二の場合は、早起きが不得意なんじゃなくて、気力が無いだけでしょ、気力が。 何時まで経っても成長してないのね、アンタって。ははは・・・。」

K 「う〜む、そうなんですよぉ〜。何時まで経っても成長しないんですぅ。ははは・・・。」

N 「じゃ、本当にアキちゃんお会計して。」

A 「はい、ありがとうございました。1300円です。」

N 「はい。じゃ、皆様お先に。お休みなさ〜い。」

A 「ありがとう!気を付けてね。おやすみなさ〜い。」

K 「で、さっきの映画ですけど、何時からなんですか?」

A 「え〜とね、確か今月中旬だったと思ったわよ。ぴあでも見て。」

K 「そうですね。オイラもそろそろ行こうかな?起きられない事が成長しない事みたいに言われるの嫌ですからね。」

A 「あら、そんな風に考えるなんて、圭二も少しは成長したんじゃないの?でも、 本当に気力らしいわよ。よくさ、血圧が低いと起きられないっていうけど、そんな事ないらしいわよ。」

K 「そうみたいですよね。ん〜じゃ、帰ります。お会計してください。」

A 「あいよっ!じゃあ明日しっかり起きられるように祈ってるわね。え〜と、圭二は<ケープ・コッダー> だったわよね。1500円です。」

K 「はい。それじゃ、2000円でお願いします。」

A 「はい、ありがとうございました。500円のお返しです。」

K 「それじゃ、お休みなさ〜い。」

A 「ありがとう!おやすみぃ〜。ちゃんと起きるのよぉ〜!」

K 「はい、成長してみます、ははは・・・。」

A 「ホントね。ははは・・・。ありがとう!」

おわり

*登場人物は全て仮名です。

*今回紹介したライヴ、映画は、

1) 石川セリ・復活ライヴ    公演終了
2) JUNO〜ジュノ  
    6月14日より日比谷シャンテ・シネ他全国100館以上で公開予定。
3) トニー賞  6月15日NY、ラディオ・シティで発表
    日本ではBS2で29日に放送予定 
2008.6.9


Back Number!