<引き際が肝心>の巻

敏夫さん(以下T)「こんばんは。はい、お土産。」

あき(以下A)「敏夫さん、いらっしゃ〜い。すみません、何時も。はい、オシボリどうぞ。」

コンちゃん(以下K)「何処か行ってきたんですか?」

T 「ちょっと福岡へね。」

K 「楽しみました?福岡。」

T 「まあ、それなりにね、うふふふ・・・。」

A 「厭らしいわねぇ〜、その笑い方。ははは・・・。で、今日もビールで宜しいですか?」

T 「そうねぇ〜、ビールでね。」

A 「あいよっ!・・・はい、お待たせしました。」

T 「それよりさぁ〜、アンタの事だからもう知ってると思うけど、トニー賞決まったわねぇ〜。」

A 「そうなのよね。ニューヨークの友達の話だと、 ウーピー・ゴールドバーグの司会で相当楽しめたみたいよ。」

K 「で、今年は何が獲ったんですか?」

T 「僕はあんまりミュージカルは分からないからねぇ、それはアキちゃんから聞いてもらうとして、 ストレートプレイではねぇ・・・。」

K 「何ですか?ストレートプレイって。」

T 「あら、ストレートプレイを知らないのね、コンちゃんたら。お勉強足りないんじゃございませんの?」

K 「すみませ〜ん。」

A 「ストレートプレイってね、まあ、簡単に言っちゃえば、普通のお芝居の事よ。 ミュージカルに対して普通のお芝居をストレートプレイって言うのよ。」

K 「あ〜、そうなんだ。一つ勉強になりました。で、何が・・・?」

T 「今年のピューリッツアー賞を獲った<8月:オーセージ郡で>が5部門で獲りましたわよ。 もう予想通りでしたわね。」

A 「そうね、アッシもストレイトプレイは<8月:オーセージ郡で>だと思ってたわよ。 今のアメリカ社会の問題点がギッシリ詰まった話題作だったしね。」

K 「どういう話なんです?」

T 「僕もまだちゃんとは知らないんだけどねぇ〜、家族ドラマなのよね、確か。」

A 「そうそう。トレイシー・レッツ作の家族ドラマよ。アッシもちゃんとは知らないんだけど、 聞くところによると、オクラホマの田舎町で起こる秘密だらけの家族の夫々が繰り広げる愛憎劇みたい。」

K 「なんか、面白そうですよね。」

T 「でもさ、なんか長いらしいじゃないの。」

A 「そうなのよ。でね、ちょっと長いからトニー賞獲れるかどうか、な〜んて言われてたんだけどね。 それでも飽きさせないほど良く出来てるみたいのよね。何しろ3時間半を超すらしいからね。」

K 「そんなに長いんだぁ〜。もうトイレも我慢しなくっちゃいけないよねぇ〜。」

T 「ははは・・・。バカねぇ〜、ちゃんと休憩はございますのよ、ははは・・・。」

K 「そうだよねぇ〜、ぶっ通しな訳ないよねぇ〜。」

A 「まあね。この芝居は3幕みたいだから休憩は2回あると思うんだけどね。」

K 「それだったら大丈夫だな、ははは・・・。」

A 「麻薬や、近親相姦、人種差別、自殺、セクハラ、色々あるらしいわよ。で、作品を始め、 演出、主演と助演の女優、舞台のデザインで獲得したみたいね。リヴァイヴァル賞を獲った <ボウイング・ボウイング>と話題を分けてたけど、そっちは2部門だけだったわね。」

K 「何か、ボウイング747みたいな感じだよね、そのタイトル。」

T 「そのままよぉ〜。まあ、でもねぇ、フランスのコメディーだものねぇ〜、 おもしろそうよねぇ〜、それも。」

A 「まあ、イギリスで上演して大ヒットしてからブロードウェイ入りしたんだったのよ。」

K 「それはどんな話なの?」

A 「3人のステュワーデスを相手に同時進行するプレイボーイの話。まあ、ドタバタよね。」

K 「いまどきステュワーデスって言わないよぉ〜、古いな〜アキさん。 今はフライトアテンダントだってぇ。」

A 「そうだったわよね。まあ、でもさ、使い慣れてる言葉って中々直せないのよ、ねえ、敏夫さん。」

T 「まあそうねぇ。中々直せないわよねぇ〜。」

K 「どんどん歳をとってくとねぇ〜、ははは・・・」

A 「まあ、コンちゃんたら失礼だわ、オダマリなさい!!!ははは・・・。」

T 「いいんじゃございませんか、今にコンちゃんだってそうなるんだから、ね!!!ははは・・・。」

K 「はいはい、二人に掛かっちゃ勝ち目ないよなぁ〜。で、ストレイトプレイ、だっけ、 それは分かったけど、ミュージカルの方はどうだったのかな。」

A 「ミュージカルはね、オフから上がってきた話題作、<イン・ザ・ハイツ>が作品賞を始め、 4部門を獲ったわよ。」

K 「あ〜、前にアキさんが言ってたニューヨークのラテン系の移民たちが主人公のやつでしょ。」

A 「そうなの。でもね、一番多く賞を獲ったのは、リヴァイヴァルした<南太平洋>なのよ。 何と7部門。最初は今月後半までの限定公演だったんだけど、評判が良すぎてロングランになったのよね。」

T 「あら〜、南太平洋ねぇ。懐かしいわぁ〜。ミッツィー・ゲイナーとロッサノ・ブラッツィ。 それにバリハイ。もう歌っちゃおうかしらん。」

A 「止めてよね、敏夫さ〜ん。もう歌が好きなのは分かるけど、敏夫さんの歌は凄いんだからさぁ〜。」

K 「凄いって?」

A 「音程よ、音程。」

T 「あら、そうかしらねぇ〜。これでも僕は町一番の天才歌手って言われてたのよぉ〜。」

K 「それって何時ごろなのぉ〜?」

T 「まあ、小学校上がるまでかしらねぇ〜。」

A 「それだったら分かるけど。とにかく歌わないでよ、お願いだから。ははは・・・。」

T 「分かったわよぉ〜。歌うの止めますわ、歌いたいけどぉ〜!ははは・・・。」

A 「あ〜、安心しちゃったぁ〜。」

K 「で、続き続き。」

A 「そうね。このロジャース&ハーマスタインのコンビが書いたミュージカル<南太平洋>には原作があって、 それは1950年のピューリッツァー賞を獲ったんだっけど、ミュージカルはその前年、 1949年にオープンしているのよね。主役のド・べックにエツィオ・ピッツァ、 ネリーにメリー・マーティンが抜擢され、不思議な行商人ブラディー・メリーにはファニタ・ホール が当たり大ヒットを記録して、その年のトニー賞を8部門で獲得してクロースまで1925回を数えたのよ。」

T 「そんなにやってたのねぇ〜。って言う事は?・・・あら、5年位ねぇ〜。ま〜大変だわねぇ〜。 僕は舞台は観ていないんだけど、映画はちゃ〜んと観たわよ。アキちゃんも観たわよねぇ。」

A 「勿論よ。」

K 「話はどんな?」

T 「まあ、これが日本人にとってはそんなに好きな内容じゃあないわよねぇ。」

K 「えっ???」

A 「第二次世界大戦時の話だからね。舞台が日本の艦隊を攻撃するための作戦に重要なある島なのよ。 で、そこで出会ったその島に住むフランス人の農園主と看護士との恋愛を絡めた物語なのよね。」

K 「へ〜。でも、そんなに大した事なさそうな話ですよね。」

T 「まあ、コンちゃんは観てないからねぇ。戦争だけではなくて人種問題も描かれてるのよぉ。 当時としてはもう画期的な事だったのよねぇ。」

A 「そうでしょうね。未だにその問題は解決してないし、もし、解決してたとしたら、 世の中の争いの原因の一つは無くなっているって事だからね。」

K 「なるほどね。観たいな〜。DVDあるよね、きっと。」

A 「あるある。是非観て。」

K 「あとミュージカルでトニー賞の話題は?」

A 「今年は何と言っても<ジプシー>のパティー・ル・ポンよね。」

T 「獲ったわよねぇ。まあ、当たり前よねぇ。<エヴィータ>、つい最近の<スウィーニー・トッド>。 みんな凄かったわよ、ねえ、アキちゃん。」

A 「そうね。アッシは<スウィーニー・トッド>しか観てないけど、<エヴィータ> のレコードを聴いただけでもズ〜ンとくるわよね。このパティー・ル・ポンとジプシーを演じた ローラ・ベナンティが受賞したのよね。」

K 「早く観たいですぅ〜。」

T 「今月末よねぇ、確か。」

A  [テレビ?え〜と、今月の29日かな、確か。NHKのBS-2で放送予定よ。」

K 「何でも良いから観たくなっちゃった。何かお勧めの舞台ある?アキさ〜ん。」

A 「そうね。これなんかどう?」

T 「あら、吉行和子ラストステージ?止めちゃうの、彼女。」

A 「舞台はね。映像とかはまだ続けるみたいだけど。」

K 「どんな話なのかな?」

A 「夫と離婚して仕事も辞めちゃって一人ぼっちになった主人公が突如、一過性の記憶喪失になっちゃうのね。 混乱している意識の中で、過去に係わった人々が次から次に出てきて思い出が甦っていって ・・・っていう話ね。」

K 「一過性の記憶喪失かぁ。面白そうだよね、テーマが。もうやってる?」

A 「始まったばっかりよ。」

T 「どこ?」

A 「俳優座劇場よ、六本木の。」

T 「ま〜ぁ、引き際を考えたのねぇ〜、あの人。」

K 「えっ?どういう事?敏夫さん。」

T 「アキちゃんもまだ知らないわよねぇ〜。彼女ね、僕の記憶が間違ってなければなんだけど、 確かデビューも俳優座だったと思うのよねぇ。大体50年前じゃないかしら。」

A 「<アンネの日記>でしょ、デビュー。」

T 「流石、アキちゃん。あ〜、そおうかぁ、アンタ彼女知り合いだったっけ。」

A 「まあね、ほんの少しなんだけど。」

T 「じゃあ、分かるわよねぇ。僕もそんな引き際を見つけたいわぁ〜。」

A 「何言ってんの?敏夫さんはまだまだじゃない。これからですよ、これから。」

T 「でもね、引き際って肝心でしょ。僕ももうこの辺りでって時々考えるのよねぇ。」

K 「何か結構深刻じゃない、ねえ。」

A 「まあ、引き際が肝心なのは良く分かるわよ。でも、アッシは何時も思ってるんだけど、 引いた後がもっと大切じゃないかって。」

T 「ま〜、そうよねぇ〜。引けば良いってものでもないしねぇ。違う自分をそこで見つけて新たな スタートを切れれば良いんだけどね。」

K 「素敵じゃない、敏夫さん。なんか見直しちゃったぁ〜。で、 オイラは引き際が悪いんでもう一杯もらっちゃおうっと。アキさん、お勧めで!」

A 「あいよっ!」

おわり

*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居などは、
1) トニー賞授賞式
   6月29日(日)19:30〜 NHK BS-2にて放送予定
2) 吉行和子ラストステージ<アプサンス>
   上演中〜6/29まで 六本木俳優座劇場
    7/2 亀戸カメリアホール

以上です。どうぞ足をお運び下さい。またトニー賞の楽しさをTVで味わって下さいね。
2008.6.21


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