<何か行きたい>の巻

ペーちゃん(以下P)「こんばんはぁ〜。」

あき(以下A)「あら、ペーちゃん、いらっしゃい。寒くなったわね。はい、オシボリ。」

P 「有難うございます。あ〜、マサ子さんも。こんばんは。」

マサ子(以下M)「こんばんは。相変わらずねぇ〜、ぺーちゃん。ちゃんとしてるわね。あんた、 本当に育ちがいいのね。」

P 「え〜〜〜っ!そうですか?」

M 「そう思いません?アキさん。」

A 「そうね。言葉使いはちゃんとしてるし、服装もね。」

P 「え〜、なんか恥ずかしいですね、そんなに褒められると。」

M 「まあ、褒めすぎかもしれないけど。でもね、最近酷いじゃない、言葉使いにしても、 服装にしても。」

A 「まあ、常識の基準、まあ、それも可笑しな事なんだけど、常識が違っちゃってるからね。」

M 「そうかもね。」

A 「え〜と、ペーちゃん、今日は何にする?」

P 「あっ、失礼しました。今日はですね、ボトルでお願いします。」

A 「水割りでいいのかしら?」

P 「はい、水割りでお願いしま〜す。」

A 「はい、お待たせ。」

M 「ねぇ〜え、アキさん。最近何か観た?なんか、行きたいなっていう物が無いのよねぇ。 ペーちゃんは?」

P 「僕はあんまり行かないですね、お芝居とか映画とか・・・。あっ、この前行きましたね、 <おくりびと>。」

M 「あ〜、良かったわよね、あの映画。」

P 「後はぁ〜・・・。」

M 「アキさんは?」

A 「アッシも今月はあんまり無いかな。まあ、先月末に唐組の<ジャガーの眼>、 今月初めにtptの<広い世界のほとりに>を観たくらいかしら。昨日映画<ブロードウェイ♪ ブロードウェイ〜コーラスラインにかける夢>を観に行こうと思ったんだけど、混んでて。 またの機会にすることにしたのよ。」

M 「実はアタシさ、昔、劇団四季でやった<コーラスライン>のオーディション受けた事あるのよ。 だからアタシもあの映画は観たいのよね。」

P 「へ〜、マサ子さん、昔役者さんだったんですか?」

M 「まあね。でもさぁ〜、やっぱり食べて行くのって厳しいのよね。」

A 「まあ、そうでしょうね。まあ、よっぽど芝居好きじゃないとねぇ。」

M 「そうなのよぉ。まあ、厳しいのはどの世界でも一緒だろうけど、人間って欲があるじゃない。 その方向が何処を向くかなんだと思うのね。アタシは芝居よりも生活の方、つまりお金をとった、 って感じだったのよ。」

P 「へ〜。勉強になります。僕も大学院を卒業したらどうしようかなって・・・。」

A 「まあ、そうね。」

M 「ところでアキさん、その唐組の芝居とtptの芝居はどうだったの?」

A 「両方ともに良かったわよ。唐組の方は、千秋楽だった事もあって、 お客さんの方も凄いノリだったのよ。」

M 「いいわよね、テント芝居でしょ、唐組って。なんか目に浮かぶわね、お客さんのノリが。」

P 「そんなに凄いんですか?僕は全く経験ナシなんで。」

A 「まあ、そりゃ凄いのなんのって。まあ、昔に比べたらマダマダだけどね。 この芝居も昔にやった物の再演だんだけど、今回は寺山修司没後25年という事で寺山に捧げた <ジャガーの眼・2008>として甦ったって訳ね。」

M 「でも、一時は寺山修司と唐十郎は犬猿の仲だったじゃない。確か乱闘騒ぎまで起こしてたわよね。」

A 「そうそう、あった、あった。唐さんがまだ状況劇場を、寺山さんが天井桟敷をやってた時ね。 どっちかの公演中に葬儀用の花輪が贈られて、って事で乱闘になっちゃったのよね。でもさ、アッシ、 お互いに尊敬しあって、かつ、競い合っていたからこその出来事だったと思うのね。今の世の中、 こんな熱い事、中々ないじゃないの。あの頃はみんな熱かったのよね、芝居だけじゃなくて、世の中が。」

P 「で、肝心の芝居の方は?」

A 「そうだったわね。つい昔の話になっちゃうと熱くなっちゃって。で、話はね、角膜移植の話なのよ。」

P 「えぇ〜?今のレイシック手術ですか?」

A 「ちょっと違うのよね、移植だから。レイシックは角膜を削り取るんでしょ。こっちは移植。 角膜そのものを移植しちゃうの。で、 その移植した角膜が過去の持ち主の恋人を呼び寄せて平凡に暮らしていた青年を一挙に迷宮の世界へと導いていくっていう話なの。」

M 「アタシ、昔観たような記憶があるけど、ちゃんと覚えていないのよね。何か、人形とか出てきたかしら。」

A 「まあ、人形とはちょっと違うんだけどね。サラマンダーでしょ、それ。」

M 「あ〜、そんな名前だったかも。アタシも興奮して観た覚えがあるわよ。」

A 「さっきも言ったけど、お客さんが大ノリだったから役者連中も力入るわよね。唐さんを始め、鳥山さん、 久保井さん、稲荷さん、辻さん、藤井さん、それに数年前に入って、今や唐組の大スター丸山さん。 彼らに投げられる大向こうからの声。もう大喝采ね。」

P 「歌舞伎みたいなんですね。」

A 「そうね。江戸時代の歌舞伎ってこうだったんじゃないかって。 今の歌舞伎は古典として保護され過ぎちゃって・・・、なんかねぇ。」

P 「今度連れてって下さいよ。アキさんでもマサ子さんでもいいですから。」

M 「あら、アンタどっちにするのよ!ちゃんと決めなさ〜い、ははは・・・。」

P 「お〜、怖。ははは・・・。で、もう一つの方、何でしたっけ?あっ、tptの<広い何たらかんたら> って言う方は?」    

A 「<広い世界のほとりで>ね。サイモン・スティーブンスの数年前の戯曲で ローレンス・オリビエ賞を獲ったものなのよ。」

P 「ローレンス・オリビエ賞?」

M 「まあ、アメリカでいうところのトニー賞よね。イギリスでは演劇に対する最大の賞よね。」

A 「そうそう。2005年度の最優秀新作演劇賞を獲った戯曲なのね。」

M 「それじゃ、相当良かったんじゃないの?」

A 「そうね。全体的には時間の割りに長く感じなかったからね。」

P 「どんな物語なんでしょう?」

A 「簡単に言っちゃうと、ある3世代の家族夫々の崩壊と再生ね。」

M 「崩壊と再生ねぇ〜。まあ他人事じゃないわ、内の家族もね。」

A 「何処の家でも少なからずある事よね。まあ、それが大きくなるかどうかなんだろうけど。」

P 「じゃあ、アキさんにとっては結構理解出来るっていうか、そういう感じだったんですね。」

A 「う〜む、その変ははっきりとは言えないわよね。実際に同じ経験をしている訳じゃないから。 でもこれだけは言えると思うのね。この物語は凡そ9ヶ月に渡る物語なんだけど、もし、 内の家族で同じ事があったとしたら、芝居の最後の様にはならないだろうな、って。」

M 「どうなの?まあ、再生っていうんだからハッピー・エンドなんだろうけど。」

A 「そうね。でも、9ヶ月の間に夫々色々な事があって、それがその時間内に解決できるかしら、 って思うとね。これは原作の問題だと思うんだけど、アッシだったら何かを残した形で終わりにしたかしらね。 勿論、何も無かった様な終わり方じゃなかったけどね。まあ、良い芝居だったけど、終わり方が・・・。」

M 「アタシは観て無いから何も言えないけど、それぞれに問題が有るとすれば、 そんなに早くは解決しないわよね。やっぱり心にシコリが残るっていうのかしら・・・。」

P 「そうかもしれませんね。まあ、 オイラは弱い人間なんで何時まで経っても整理は付かないと思いますけどね。」

M 「所でさ、これから年末にかけて、いい芝居あるかしら?」

A 「結構あるわよ。こまつ座の<太鼓たたいて笛ふいて>、新宿コマ劇場最後の公演の<愛と青春の宝塚>、 藤山直美が大奮闘する<年忘れ喜劇まつり>、市村正親が最後のザザを演じるミュージカル <ラ・カージュ・オ・フォール>、新鋭演出家の栗原崇が幸せを運んで来る<ミュージカル・ギフト>、 豪華な出演人で話題の<舞台は夢〜イリュージョン・コミック>、流山児祥が渾身の演出で送る <ドブネズミたちの眠り>、劇団桟敷童子がベニサンピットを水没させる<黄金の猿>、 もう色々有りすぎるわね。」

P 「オイラも一本くらい行ってみようかな。」

M 「一緒に行く?」

P 「何にですか?」

M 「アンタ、それはこれから決めるんじゃないの。ねえ、アキさ〜ん。」

A 「まあ決めるのに時間掛かりそうね。ほら、これ見てゆっくり決めたら?」

P 「あ〜、演劇専門誌ですね。」

M 「それじゃ、アタシはもう一杯頂こうかな?え〜と、今月のお勧め、<アメリカーノ>。」

P 「じゃあ、オイラももう一杯作って下さい。」

A 「あいよっ!」

おわり


  *今回紹介したお芝居などは・・・

  1)<おくりびと>   全国で絶賛上映中
  2)<ジャガーの眼2008> 公演終了
  3)<広い世界のほとりに> 公演終了
  4)<太鼓たたいて笛ふいて>
     11/21〜12/20  紀伊国屋サザンシアター
  5)<愛と青春の宝塚>
     12/2〜22   新宿コマ劇場
  6)<年忘れ喜劇祭り>
     12/3〜25   新橋演舞場
  7)<ラ・カージュ・オ・フォール>
     12/6〜28   日生劇場
  8)<ミュージカル・ギフト>
     12/25〜31   天王洲・銀河劇場
  9)<舞台は夢/イリュージョン・コミック>
     12/3〜23    新国立劇場中劇場
 10)<ドブネズミたちの眠り>
     11/29〜12/14  Space 早稲田
 11)<黄金の猿>
     11/21〜12/7  ベニサン・ピット
 以上です。どうぞ足をお運び下さいね。
2008.11.15


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