<なんだかな〜。>の巻

俊男さん(以下T)「こんばんは。」

あき(以下A)「あら、俊男さん、いらっしゃい。はい、オシボリ。」

T 「有難う。ビールちょうだい。」

A 「アイヨッ!・・・お待たせしました。」

T 「待ってたのよぉ〜、本当に。何処か行ってたの?また芝居なのぉ〜?」

ヨシコ(以下Y)「そうなんですよ、俊男さん。またアキさんたらお芝居で、 今日は9時オープンだったんですよ。」

T 「早い時間に来ちゃったのよぉ〜。そしたら貼り紙があるじゃないの。 もう何処行ったらいいか分からなくなっちゃったじゃないのぉ。」

A 「本当にすみませんでしたぁ。でもさ、言い訳なんだけど、ほら、見てよ、ここ。ちゃんと予告もしてるし、 トイレのカレンダーにも、ペンギンのホームページにもちゃ〜んと書いてあるのよ。 本当にみ〜んな見ないんだからねぇ〜。」

T 「あら、本当だわ、ははは・・・。でもさぁ〜。ヨシコさぁ、見ないわよねぇ〜、こんなの。」

Y 「まあ、見ませんよね、書いてあっても。アタシはチェックしてから来ますけどぉ!ははは・・・。」

T 「で、何観て来たの。」

A 「今日は<回転木馬>。」

T 「あら、あの回転木馬?」

A 「そうそう。ミュージカルのね。」

T 「懐かしいぃ〜わぁ〜。もう何年になるのかしらん。このミュージカルが出来てから。」

A 「確か終戦の年だから1945年かしら。で、映画になったのが10年後でアッシが生まれた年だから1955年よ。 日本での初演はそれからまた大分経った1969年よね。」

Y 「良く覚えてるわね、アキさんたら。何時も感心しちゃうわよ。」

A 「でもさぁ、最近物覚えが悪くなっちゃって。覚えているのと忘れちゃうのとが両極端なのよね。」

Y 「ちょっとぉ〜、それって危ないんじゃないの?」

T 「あ〜ぁ、そろそろ来たのかしらね、アキちゃんも。ははは・・・。」

A 「ま、失礼ね!俊男さんより早くは来ませんって。」

T 「オダマリ!ははは・・・。で、どうだったの?」

A 「う〜む、それがさ〜。今まで観た<回転木馬>の中では一番酷かったかもね。」

Y 「え〜???そうだったの?」

A 「まずさ〜、出てこないのよ、回転木馬が。」

T 「何よ、それ。あの最初の遊園地のシーン。回転木馬が出てこない<回転木馬>なんてねぇ。あれがなきゃ。」

A 「そうでしょ。勿論、これが回転木馬代わりなんだなって言うのはあったのよ。でもさ、 やっぱり回転木馬が出てこなきゃね。」

T 「そりゃ、そうでしょう。ねぇ〜。まあ、その何の?代わり?」

A 「そうそう。円形の物に吊られた電球がね。それが回転木馬代わりなんでしょうね。まあ、 想像させるのは大切だと思うんだけど、チラシにも回転木馬の馬が沢山写っている訳でさぁ。 それで内容が凄く良ければ問題なかったんだけどねぇ。」

Y 「さっき今まで観た中で一番酷かったって言ってましたもんね。」

T 「そうよねぇ〜。で、どんな所が酷かったのよぉ〜。」

A 「みんな無難なのよ。唄だって下手じゃないし、踊りもまあまあ。」

Y 「それなのに?」

A 「そう。それなのに。」

T 「何がぁ?」

A 「こないのよね。な〜んにもこない。ビリーを演った浦井健治もジュリーを演った笹本玲奈もスタイルはいいし、 歌も下手じゃないの。でもさぁ、こっちに伝わってこないのよね。なんか、唄ってるだけって。それに、 キャリーを演った、はいだしょうこは、アニメ声で、声を聞いているだけでウンザリしちゃって。 ジガーを演った川崎麻世も、な〜んか物足りないの。それに何と言ってもネッティーを演った安奈淳ね。 病気あがりだって事は分かっているけど、重要な役だからねぇ。ちゃんと唄えないんだったら出るべきじゃなかったって。」

T 「安奈淳がぁ?」

A 「別にさ、音程が外れている訳じゃないのよ。低い声はまだいいの。でもね、高い声に移る時なのよ問題は。 いきなり声が弱くなっちゃうんだもん。」

T 「それじゃぁ、<You'll Never Walk Alone>が台無しねぇ。」

Y 「何?それ。」

A 「ミュージカル・ナンバーなんだけど、凄く重要なナンバーなのよね。もう台無し。こけちゃったわよぉ。 演出がロバート・マックウィーンだから期待してたんだけどね。 踊りが上手いのに殆ど踊らないミセス・マリン役の風花舞や、抜群に踊りが上手かったルイーズ役の玉城晴香、 かつて劇団四季のやるミュージカルには欠かせなかった小宮健吾らが良かっただけに、 もう一度キャストを替えてやって欲しいと思ったわね。」

T 「それじゃぁねぇ。やよ、イライラをこっちにぶつけちゃぁ、ねぇ、ヨシコ。」

Y 「本当ですよねぇ、ははは・・・。」

A 「そんな事する訳ないでしょ。安心して頂戴よ。でもさ、ここん所、イマイチなのよねぇ。」

Y 「そんなにいい舞台にあたってないの?」

A 「そうなのよねぇ。」

T 「例えば?」

A 「これよぉ〜。」

T 「あ〜、ブレヒトの<三文オペラ>ね。」

Y 「え〜?結構評判いいみたいだけど?」

A 「まあ、悪くはないのよ、何処といって。でも、物足りないの、何かがね。」

T 「あら〜、何なのかしらねぇ〜、それは。」

A 「全く分からないのよね、それが。何しろ、キャストは夫々、みな悪くないのよ。 メッキーの三上博史もピーチャムのデーモン小暮閣下もピーチャム夫人の松田美由紀もポーリーの安倍なつみも、 ジェニーの秋山菜津子もストーリーテーラーの米良美一も。でも何か物足りないの。元々この<三文オペラ>って、 これ、と言った正解がない舞台だと思うのね。」

Y 「色々な解釈が出来るって事ですよね。」

A 「そうそう。だから、そう言う意味では、この色んな所から選んだキャストはある意味正解だと思うのよね。」

T 「そうねぇ〜、バラバラよねぇ〜、この人達。これがひとつの舞台になるとどうなるか、 って興味があるわねぇ〜。」

A 「そうでしょ。最初はどうなるんだろうって。でも、驚きはそんなに無かったのよ。無難と言えば無難。 期待外れと言ったらやっぱり期待外れなのかしらねぇ〜。」

Y 「でもさ〜、そんなジャンルがバラバラのキャストをひとつにしちゃう宮本亜門の手腕て、 やっぱり凄いんじゃないの?」

A 「そうとも言えるけどね。でも、良く考えたら、みんなそれなりにキャリアがある人ばかりじゃない。 最初からそこそこは出来る筈なのよね。だから、こっちはもっと上を期待しちゃうのよ。」

Y 「何か、話に聞いただけなんだけど、今度の歌詞を三上博史が担当したって。」

T 「あら、そうなのぉ。あの子、寺山修司の<草迷宮>っていう映画でデビューしてから、 ず〜っと異端児的な存在じゃない、ねぇ〜。だから三上が<三文オペラ>の詞を訳したって聞いたら、 それも期待できるわねぇ〜。」

A 「それがさ〜・・・。」

Y 「ダメだったの?」

A 「そうじゃないのよ。聴こえないの。」

T 「なに?マイクでも壊れていたのかしら?」

A 「そうじゃなくて、バンドの音が大き過ぎちゃって、肝心の歌詞が聴き取れなかったのよ。 だからどんな訳をしたのかがイマイチ分からなかったのよね。」

T 「それじゃぁ〜ねぇ〜。<三文オペラ>って、風刺劇じゃない、ねぇ〜。だから歌詞が分からないとねぇ〜。 でもさ、プログラムなんかには書いてあるでしょうねぇ。プログラムは買わなかったの?あきちゃん。」

A 「アッシもそうかなって思って買ったわよ、プログラム。」

Y 「で、歌詞はあったのかしら?」

A 「あったわよ、ドイツ語の歌詞が。」

T 「あらまぁ。それじゃ、意味無いわねぇ〜。」

A 「そうでしょ。結局分からないままなのよね。ちょっとフラストレーション感じちゃうわよ。」

T 「まあ、そうねぇ〜。それじゃいい所無かった訳ねぇ〜。」

A 「そじゃないのよ。亜門演出は設定を現在の日本の様に変えていて、それはそれで良かったって思ったし、 米良さんの実力を改めて知らされたし。」

Y 「そんなに凄いの?米良さんて。」

A 「そうね。やっぱり凄かったわね。<もののけ姫>以降クラシックの世界から少し抜け出して違う世界に行ってたけど、 安心しちゃったわよ。地声からカウンター・テナーまで本当に素晴らしかったわね。 ストーリーテーラーとモリタート歌手と女王役を演ってたんだけど、ストーリーテーラーの所では、 ちょっとオネエさん全開だったけどね。ははは・・・。」

T 「ははは・・・。それはいいわねぇ〜、ははは・・・。」

A 「それと、最近とっても良い舞台で良い演技をし続けてる秋山菜津子がまた素晴らしい芝居をしてたのが印象に残ったわね。 でもねぇ〜・・・。」

Y 「欲求不満なんですよねぇ〜。」

A 「そうなの。なんだかな〜、ってねぇ。」

T 「まあ、あれよねぇ〜。この芝居自体、死刑犯が恩赦で自由の身になっちゃうんだから、それこそ、なんだかな〜、 って感じよねぇ。」

A 「そうでしょ。あっ、そうそう。その場面でメッキーが呆然と立ち尽くす姿も印象的と言えば印象的だったかな。」

T 「あら、呆然と立ち尽くす?それって今までと違うわよねぇ。」

Y 「何時もはどうなんですか?」

T 「何時もは皆と一緒に喜んでチャンチャン、よねぇ、たしか。」

A 「そうそう。だから強いて言えば、最後が一番だったかもね。」

Y 「なるほどねぇ〜。話は変わるんですけど、これはどうだったんですか?アキさんは当然、 観に行ったんですよね。」

A 「<毛皮のマリー>ね。勿論よ。」

T 「あら〜、いいわねぇ〜。僕も行きたいわねぇ〜。」

Y 「実はアタシ、今度の日曜日に行くんですよ。」

T 「あら、いいわねぇ〜。良く取れたじゃないの、チケット。」

Y 「ほら、今って優先予約が結構あるじゃないですか。それを片っ端からやって。」

A 「なるほどね。特に土日は取りにくいからねぇ。で、感想を言えばいいのかしら?」

Y 「まあ、ちゃんとは教えなくても良いんですよ。何しろこれから行くもんですからね。」

T 「じゃあ、何が聞きたいのよ、ヨシコは。」

Y 「飽きなかったのかとか、上演時間は何時間だったのとか、劇場の周りに美味しい所はあるのか、 とか〜・・・。」

A 「あ〜んた、それってどうなの?」

Y 「まあ、感想はアタシが観終わってからって事で。それより、飽きないで観られますか?」

A 「それだったら、ヨシコが観てからアッシがアンタに聞くわよ。飽きなかった?って。ははは・・・」

T 「いいわねぇ。ははは・・・。」

Y 「なんだかなぁ〜、って感じぃ〜。」

A 「何言ってんの。こっちが言いたいわよ、なんだかなぁ〜、って。ははは・・・。」

T 「本当よねぇ〜、ははは・・・。」

Y 「もう飲まなきゃやってられないですぅ〜。アキさん、今月のお勧め、<C.C.サクラ>宜しく!」

A 「アイヨッ!」

一同 「ははは・・・・・。」

おわり


*今回紹介したお芝居は、

1)ミュージカル<回転木馬>
   上演中〜4/19   銀河劇場
2)音楽劇<三文オペラ>
   上演中〜4/29   シアター・コクーン
   5/4〜9   大阪厚生年金会館芸術ホール
3)<毛皮のマリー>
   上演中〜5/10   ル・テアトル銀座
    他、全国巡演
以上です。どうぞ足をお運びくださいね。
2009.4.18


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