<アッと言う間に過ぎちゃった>の巻

トモ子(以下T)「お今晩は。」

あき(以下A)「あら、トモ子いらっしゃ〜い。」

T 「まぁ〜、酷い雨でござんすことねぇ〜。あらよいしょ・・・っと。」

スターちゃん(以下S)「あらあら、トモ子さんも歳なんですね。よいしょだなんて。」

T 「あら、スターちゃん、当たり前よぉ〜。もう40も越したらねぇ〜。ははは・・・。」

A 「はい、トモ子、おしぼり。」

T 「あ・り・が・と。」

A 「今日は何にする?」

T 「こんな日だもの。ワインでも飲んでパ〜ッとやりましょうよぉ〜。」

S 「相変わらず気前いいですね、君は。」

T 「あら、スターちゃんだってぇ〜。で、今日は何を飲まれているのでやんすか?」

S 「僕ですね、今月初めてなんですよ。で、何時も初めての時は、今月のお勧めドリンクを頼むようにしてるんですよ。」

T 「あら、何なのかしらん、今月は。」

A 「今月は<ピエロの涙>っていうのよ。ジンがベース。」

T 「何か不思議な色ねぇ〜。」

A 「パルフェタムールっていうリキュールを使ってるからね。秋ってさ、何処となく怪しい感じがしない?で、この色。 なんか怪しく感じないかしらん。」

T 「そう言えばそうねぇ〜。」

S 「中々美味しいですよ、これ。」

T 「う〜む、そうねぇ〜。でも、パ〜ってやるにはやっぱりイマイチだわねぇ〜。ワイン、ワイン頂戴。赤ね。」

A 「アイヨッ!・・・はい、どうぞ。」

T 「ちょっとぉ〜、アキちゃんもグラス、グラス。スターちゃんも如何かしら、一杯。」

A 「そうよね、スターちゃんも頂いたら一杯。」

S 「そうですか。それじゃぁ、お言葉に甘えて頂きますかね。」

A 「それじゃ、スターちゃん、はい、グラス。」

S 「有難うございます。トモ子さん、頂きます。」

T 「はい、どうぞ。召し上がれ。」

A 「トモ子頂きます。」

T 「召し上がれ。・・・で、さ〜ぁ、アキちゃんってシャンソン聴くんだっけ?」

A 「勿論よ。大好きよ、好きか嫌いかで言えばね。」

T 「スターちゃんは?」

S 「僕は聴きますけど、時々ですよ。まあ、今は秋ですからね、合いますよね、シャンソンが。」

T 「でしょ。ちょっと聴きたくなっちゃったのよ、シャンソン。何処かでやってないかしらライヴ。」

A 「やってるやってる。シャンソニエは凄く少なくなったけど、ライヴをやってる所はまだまだ色々あるからね。 アッシもこの前、六本木にあるスウィート・ベイジル・139って所で、 長谷川きよしとクミコのライヴを聴いてきたばかりなのよ。」

S 「長谷川きよし、懐かしいですねぇ。まだやってるんだぁ〜、彼。」

T 「まあ、クミコは分かるけど、長谷川きよしってシャンソンじゃないでしょ。」

A 「ヤダ、トモ子。アンタにしては珍し〜い。長谷川きよしって、 元々はシャンソンコンクールに出場した事がきっかけで歌の世界に入ったのよ。だから、 コンサートに行っても歌の半分以上はシャンソンなのよ。アンタの好きなアズナヴールの曲も多く唄ってるわよ。」

T 「あらま、そうだったのぉ〜?それじゃ、聞こうじゃないのよ、そのライヴ。」

S 「久し振りに会ったけど、変わりませんね、君。」

T 「歳はとりましたけどねぇ〜、ははは・・・。」

S 「で、どうだったんです?そのライヴ。僕も聞きたいですね。」

A 「そりゃもう良かったわよ。何てたって久し振りに聴いたからね、長谷川きよしもクミコも。」

T 「どんな曲を唄ったのかしら?やっぱりシャンソン?」

S 「勿論、<別れのサンバ>は唄ったんですよねぇ〜。」

A 「何か初顔合わせなんだって、この二人。で、ライヴの構成は、最初にデュオ、そして長谷川きよしのソロ、 クミコのソロ、で、再び二人のデュオってな感じよ。」

S 「で、曲は?」

A 「まずは<サンバ・プレリュード>っていう二つのメドレーが一つになっていくっていう デュオ・コンサートにはピッタリの曲から始まって、昔、長谷川きよしと加藤登紀子がデュエットしてヒットした <灰色の瞳>。それから長谷川きよしのソロで<歩きつづけて><別れのサンバ><ラ・マンチャの男〜見果てぬ夢>、 マイ・ウェイというタイトルで有名な曲のオリジナル<何時ものように>、そして原詩にほぼ忠実に訳した<愛の賛歌>。 ここで一度休憩ね。」

S 「今、アキちゃんが言った<愛の賛歌>って、僕らが知っているものじゃないんですか? 越路吹雪が歌ってたのって原詩に忠実じゃなかったんですかぁ〜。」

T 「そうよぉ〜。あれは岩谷時子が作詞したのよね、コーちゃん(越路吹雪)の為に、ね〜、アキちゃん。」

A 「そうそう。流石はトモ子ね。で、後半に入ってクミコのソロになるんだけど、その最初の曲が、 その<愛の賛歌>なのよ。」

T 「中々お洒落じゃな〜い。」

A 「で、シャンソンが続くんだけど、<枯葉><我が麗しき恋物語>って。で、 その後加藤登紀子の歌でヒットした<100万本のバラ>。」

T 「バラよ、バラよ、バラよぉ〜〜〜、100万本のバラを〜〜〜。」

S 「トモ子さん、声いいんですね。上手いな〜。」

T 「あら、そうかしらん。うふふ・・・。」

A 「で、彼女の新曲<届かなかったラブレター>。」

S 「あっ、それってラジオでやってましたよ。出せなかったラブレターの話ですよね。」

A 「そうそう。その出せなかったラブレターの話を基に作った歌なのね。歌う前に、 その出せなかったラブレターを読むのよ。」

T 「な〜んか、イヤねぇ〜。アタシはイヤだわぁ〜。」

A 「まあちょっとね。アッシも投稿できないわね。で、またまたデュオに戻って、<帰りこぬ青春>、 このライヴの為に作った新曲<夜はやさしい>、 ユーミンが荒井由実時代に作って長谷川きよしが昔のアルバムに入れた<美しい日々>。」

S 「あ〜、<美しい日々>ね。いい曲ですよ、あれは。」

A 「本当よね。今の若者達に聴いてもらいたいわ。あの絵が浮かんでくるような詞、 サンバのリズムがどことなく哀愁を感じさせてね。本当に素晴らしい曲よね。で、コンサートは終わり。 それからアンコールでクミコが<東京ワルツ>・・。」

T 「あらま、そんな曲もやったの?」

A 「そうなのよ。トモ子は由紀さおりで知ってるんでしょ。」

T 「そうよぉ〜。」

A 「でね、この曲、昔長谷川きよしがアルバムに入れてたんだって。それでクミコがその話をして歌ったって訳よ。 それから長谷川きよしで<黄昏のビギン>。」

T 「あら、それはちあきなおみよね、やっぱり。」

A 「結構前から歌ってるのよ、長谷川きよしも。」

S 「これもいい曲ですよね。中村八大、永六輔のロク・ハチ・コンビ。素晴らしいですよ。」

A 「で、最後に再び<夜はやさしい>で本当に終わりになったのよ。」

T 「な〜んか、大人のライヴって感じよね。いいじゃない。」

S 「今は本当に歌の上手い人が冷遇されてますからね。」

A 「そうねぇ〜。長谷川きよしって日本でもイチ・ニを争う歌の上手い歌手だと思うのよね。でもさ、 中々TVには出ないから40代以上じゃないと知らない人が殆どでしょ。 紅白でなくてもいいから本当に上手な歌手だけでTV番組を作ってくれたらって思うんだけどね。上手い人を聴いてると、 本当に時間がアッと言う間に経っちゃうじゃない。飽きないのよね。」

S 「本当にそうですね。ところで最近お芝居のほうは?」

A 「秋でしょ。沢山あるのよねぇ〜。」

T 「まあ、あるでしょうけど、その中で、って言えば何なのさぁ〜。」

A 「そうね。カフカかな。」

S 「カフカって<変身>の?」

A 「そうそう。そのカフカの未完の3作を基に構成して作った、ナイロン100℃の<世田谷カフカ>。」

S 「世田谷カフカ?面白いタイトルですね。」

T 「な〜んか不条理な匂いがプンプンだわねぇ。」

S 「で、どんな話なんです?」

A 「さっきも言ったけど、カフカの未完の三作、<審判>、<城>、<失踪者> を基に主宰のケラリーノ・サンドロヴィッチが脚本を書いて演出したんだけど、 その3編の主人公が彷徨った末に世田谷で出くわすっていう話なの、簡単に言えばね。」

T 「なんか、カフカって聞くと難解なイメージがあるけど、コメディーっぽいじゃないのさ、それじゃ。」

A 「コメディーではないんだけどね。まあ、なんて言うのかなぁ〜、意外に分かり易かったのよ、流れ自体は。 ただ、最初の15分を我慢出来ればって事なんだけど。」

S 「最初の15分を我慢する?」

A 「まあ、それも段々芝居の内容と関係してくるのが分かってくるんだけど、初めは、何?って。」

T 「どんな事なのさ、その最初の15分って。」

A 「舞台が始まると廣川三憲、村岡希美、水野顕子が夫々本人として出てきて夫々のカフカ的な不条理体験を語っていくのね。 これが結構辛いのよ、ははは・・・・。」

T 「なんだか分からないでしょうからね、カフカ的だとさ。」

A 「分からないと言うよりも、何が関係あるの?時間稼ぎ?みたいなね。」

S 「でも、それを我慢出来ればあとは分かり易いんですよね。」

A 「そうなのよ。」

T 「で、その後はどうなのさ?」

A 「で、話が終わると、そこは病院。看護婦が名前を呼びに来るのね。でも、 ず〜〜っと待ってる村岡と水野の名前は呼ばれないのよ。」

S 「本当に不条理の始まりって感じがしますね。」

T 「本当にねぇ〜。面白そうじゃないのさ。」

A 「今回の舞台では、特に映像と照明の使い方が凄く印象的で良かったのよ。とにかく面白かったわ。」

T 「でもさ、タイトルは<世田谷カフカ>でしょ。世田谷とカフカってどんな関係があるって訳?」

S 「そうですよね。世田谷とカフカ。う〜む、中々難しいですね〜。」

A 「そうなの。難しいのよ。さっき言った<城>っていう未完の作品があるじゃない。」

S 「僕は読みましたよ。お城から呼ばれた測量士がお城に行こうと思うんだけど、 何時まで経ってもお城は見えるのに辿り着かないっていうやつですよね。」

A 「そうそう。世田谷もそうなんだって。 この道を行けばそこに着くはずなのに全く違うところに出てしまうのが世田谷らしいのよ、どうやら。」

T 「あら、それだったら色々な所にあるわよねぇ〜。例えばアタシが福岡に行った時よ。 ここ行けばこのバーに行き当たる筈だったのにさ、全く着きゃしないのよぉ〜。」

S 「日本て道路が複雑ですからね。京都みたいに縦横が碁盤の目の様になっていれば簡単なんですけど、 殆どがそうなってないじゃないですか。特に都会は。」

A 「そうなのよね。タクシーでさ、ちょっと道間違えちゃうと一方通行の所も結構あったりして、 辿り着くまで一苦労な〜んて事、みんな経験してるわよね。」

S 「正に不条理ですよね。ははは・・・。」

T 「アタシ、今ふっと思い出したんだけど、カフカのその未完の三作、主人公が皆<K>じゃない?」

A 「え〜と、そうだっけ?」

S 「<城>が測量士K、<審判>は銀行の職員でたしかヨーゼフ・K、で<失踪者>の少年がカール・ロスマン。 ・・・・本当ですね。ぜ〜んぶ<K>じゃないですか。トモ子さん凄いところに気が付きましたね。」

T 「それにカフカも<K>じゃないの。」

A 「あら、本当ね。そう言えばこの劇団の主宰でこの芝居を書いたのも<K>よ。」

S 「ケラリーノ・サンドロビッチ。本当ですね。」

T 「何か面白いじゃないのさ。」

A 「本当にね。草案とした3つの作品が未完だって事で、その結末がどこに行くのか分からない訳じゃない。 それにまあ世田谷じゃなくても良かったのかもしれないけど、どこに行くか分からない世田谷の道を重ねて作った、 これぞ不条理の世界。3時間を越える長い芝居だけど、アッシは全く時間を感じなかったのよね。 それは途中途中に入ってくるダンスや出演者が生で演奏したりするのもあったけど、 辿り着けない道を自分でも探していたから、アッと言う間に時間が過ぎちゃったって事だったのかもね。」

S 「それは言えてるかもしれませんね。」

T 「ちょっと、観に行きましょうよ。」

A 「あら、トモ子、早くしないと。この連休で終わっちゃうのよ。」

T 「あら、そうなの?」

S 「それじゃ明日の朝イチで電話しなきゃいけませんね。」

T 「そうよね。明日早く起きなきゃ。こんな所でゆっくりしてられないわ。アキちゃん、チェック、チェック。」

A 「はいはい。トモ子、こんな所で悪かったわね。ははは・・・・。」

T 「あら、失礼したわ。そんな意味じゃ無いのよぉ〜。」

A 「分かってるわよ、ははは・・・。じゃあ、トモ子はワインだったから2200円頂きます。」

T 「はい、じゃ、これで。」

A 「丁度頂きます。有難うございました。」

T 「それじゃ、みなさん、お先に失礼。」

S 「トモ子さん、ご馳走様でしたね、ワイン。」

T 「と〜んでもございません。スターちゃん、身体に気を付けて下さいよ、季節の変わり目だからさ。」

S 「君って本当に優しい人だよね。」

T 「あら、ま。それじゃ。」

A 「気を付けてね。お休みぃ〜〜〜!」

T 「あいよっ!」

おわり


  *今回紹介したライヴ、お芝居は・・・

  1) 長谷川きよし&クミコ ジョイントライヴ
     STB136   公演終了
  2) ナイロン100℃ <世田谷カフカ>
     本多劇場  上演中〜10/12
以上です。芸術の秋。お芝居、コンサート、美術館、どうぞ足をお運び下さいね。
2009.9.20


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