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<ルールがあるのよ>の巻
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とし坊(以下T)「こんばんはぁ〜。」 あき(以下A)「いらっしゃ〜い。ま〜、とし坊、元気だった?しばらくじゃないの。はい、オシボリ。」 T 「ご無沙汰してま〜す。実は長期出張で日本に居なかったんですよ。」 フーミン(以下F)「長期出張?で、何処に行ってたのよぉ〜。もう、 とし坊が居ないからペンギンも寂しくて仕方なかったじゃないのぉ〜。」 A 「フーミン、ペンギンも、じゃなくて、あなたが、でしょ。ははは・・・。」 F 「ま〜ぁ、そうかしら・・・ね。ウフ・・フフフ・・・。」 A 「で、今日は何にしましょうか?とし坊は。」 T 「久し振りだからなぁ〜。・・・そうそう。お勧めドリンクってまだやってます?今月は何なんですか?」 A 「今月は、<アメリカーノ>。カンパリとチンザノのロッソ、それにレモンを加えてソーダで割ったものよ。」 T 「あっ、それじゃ、その<アメリカーノ>をお願いします。」 A 「あいよっ!・・・はい、お待たせしました。」 T 「ふ〜む、なるほどぉ。美味しいですね、酸っぱさと甘さが程よくて。」 F 「あら、そんなに美味しいのかしら?それじゃぁアタシも頂こうかしら、その〜・・・」 A 「<アメリカーノ>ね。」 F 「そうよぉ〜、それそれ。」 A 「ま〜、フーミンったら今まで一度もお勧めなんか飲んだこと無かったのにね。とし坊が来たのが本当に嬉しいのねぇ〜、 ははは・・・。」 F 「あら、いけないかしら!だってぇ〜、とし坊に会えたんだからねぇ。アタシも同じもの飲みたいのよ!」 A 「は〜い、お・待・た・せ。」 F 「あら、美味しいじゃな〜い。」 A 「はいはい、有難うございます。」 T 「ははは・・・。ところでアキさん、まだ芝居とかコンサートとか行ってるんですか?」 A 「行ってるわよ。でもね、最近はニュー・ヨークには行ってないの。だから本場物は観てないわね、来日公演以外は。」 T 「そうなんですか。実は僕、ロス・アンジェルスに居たんですよ。でも中々芝居とかコンサートとか観る機会がなくて、 とっても残念だったんですけどね。」 F 「あら、ロスだったら色々やってたでしょうにねぇ。ラスヴェガスも近いんだし。」 T 「そうなんですけど、仕事が忙しくて、忙しくてぇ。それに車。僕は免許 持って無いんですよ。今どき珍しいでしょ。 それもあって、行動範囲がかなり決まっちゃうんですよね。」 A 「アッシも免許もってないんだけど、特にロスみたいな所は必要よね、運転免許。車がなかったら動けないもん、 あの広さじゃね。ニュー・ヨークは地下鉄とバスで何とでもなるけどね。」 F 「でもアキちゃん、結構行動してたんじゃなかったっけ?ロスで。」 A 「それは友達が車を出してくれたからよ。そうじゃなかったらロスで行動は出来ないわね。」 T 「そうなんですよ。だから早くアキさんの話を聞きたくって。時々ホームページも見てたんですよ。でも、 やっぱり目の前で話を聞かないとね。文章だと一方的な勘違いもあるし。」 F 「それはそうよぉ〜。文章だとね、・・・。」 T 「で、最近は何か観たんですか?」 A 「観たわよ。この一週間では2本ね。」 T 「あ〜、良かったぁ〜、変わってなくて。相変わらず観まくりなんですね。で、何を?」 A 「まずは薬物中毒を扱った芝居<イコン>。」 T 「向こうでも話題になってましたよ、ノリピーに押尾学。とってもタイムリーな芝居ですね。」 A 「本当にそうね。でも企画自体は結構前に立ってるだろうから、たまたまなのかもね。」 F 「聞いた所に依るとさぁ、初めは更生映画だったみたいよ。それから芝居にっていう流れがあったんだってさ。」 A 「そうなんだぁ〜。」 T 「で、どうだったんです?」 A 「結構まとまってて良く出来てたと思うわよ。アッシ自身の感想としては、薬物中毒そのものより、 それによって起こる周りへの影響を中心に描いたものだと思うのよね。」 F 「って言う事はぁ、家族や恋人、友達の戸惑いとかって言う事ね。」 A 「その通り。友達や元恋人の憤り、家族の葛藤などなど、薬物依存そのものよりも、むしろ周りに及ぼす外的、 内的な影響、そこから来る人間とは?という提示。上演時間を100分くらいにして最後まで飽きさせない舞台だったわね。」 F 「でもさぁ〜、薬物依存て一体何なのかしらね。犯罪なの?それとも病気なのかしら・・・。」 A 「凄いわ、フーミン。そこなのよね。とっても難しい問題でしょ。まあ、 今は法律で禁止薬物使用は犯罪っていう範囲に入ってるけど、<依存>っていう事を考えてみると病気とも考えられるわよね。」 T 「まあ、世の中にはルールがありますからねぇ。そのルールに違反したら罰はある訳ですよね。ですから、 いくら、たとえ病気だと言っても、それはやっぱり犯罪になるんじゃないんでしょうかね。」 A 「本当に難しいけど、アッシもルールは何の為に有るのかって考えると、犯罪として捉われても致し方ないとは思うのよね。 でも、家族や周りの人間にとってみれば、病気だから絶対に治せるという気持ちも強い筈、 というのも分からない訳ではないのよね。」 F 「本当に難しいわねぇ〜。」 A 「何か、凄く真面目な話になってきちゃったわね。」 T 「それじゃ、話を変えて、もう一本のお芝居の話にしませんか?」 F 「そうよ、そうよ。で、何行ったの?」 A 「もう一本は、ミュージカル<グレイ・ガーデンズ>よ。」 T 「ブロードウェイでやってたものですよね。確かトニー賞も獲ったミュージカルだと思うんですけど・・・。 まさか来日公演じゃないですよね。」 A 「まさかぁ〜!日本版よ。宮本亜門の演出、大竹しのぶ、草笛光子という大女優の共演よ。」 T 「草笛光子って?」 F 「あら、とし坊は知らなのねぇ〜。もう50年にも渡って役者としてトップクラスにある女優さんよぉ。」 T 「へ〜。」 A 「まあ、とし坊が知らないのも無理ないわよ。」 F 「そうねぇ〜。映画や芝居に興味がないとね。それに世代が違うから。」 T 「でも、今ちょっと思い出したかもしれません。母親が言ってましたよ、確か。宝塚かなんかに居た人ですよね。」 A 「宝塚じゃなくて、SKD、松竹少女歌劇団ね。もう今は無いけど、浅草のビューホテルのある場所に昔歌劇場があってね、 そこで宝塚と同じようなレヴューをやってたのよ。ターキーに淡路恵子、倍賞姉妹などなど、多くのスターを輩出したところよ。 」 T 「ターキーってボウリングで3つストライクとる事じゃないんですか?」 F 「ははは・・・・。勿論、それもターキー。でも今アキちゃんが言ったターキーは水の江滝子っていってSKDを退団した後も、 TVが始まった頃から暫くは大活躍してたのよぉ〜。今でも御殿場で生きてらっしゃるのよねぇ〜。」 A 「そうでしょ、きっと。亡くなったって話は聞かないからね。生前葬をやって、 それから静かに暮らしてるんじゃないかしら。でも、恰好良かったわよ、本当に。男装の麗人ってな感じでね。男役そのもの。 ちょっと憧れちゃったりした人も多かったと思うわね。」 T 「そうですか。で、話が逸れちゃったんで、元に戻して、その<グレー・ガーデンズ>のことですけど、どうでした?」 F 「そもそもどんな話なのよぉ〜。」 A 「日本では全く話題にも上がらないんだけど、アメリカでは部屋なんか汚くしていると、 <グレイ・ガーデンズになっちゃうわよ!>とかって言われるくらい有名らしいのよ。」 F 「あら、そんなに有名なんだぁ〜。」 T 「そう言えば、今思い出したんですけど、今年のエミー賞が確か<グレイ・ガーデンズ>だったような・・・。」 A 「あら、本当に?ジェシカ・ラングとドリュー・バリモアよね、確か。」 T 「そうだったと思いますよ。やっぱり良く知ってますね、アキさん。」 F 「でぇ〜、どんな話なのぉ〜。」 A 「あっ、そうだったわね。二幕物なんだけど、一幕は1941年の、 そして二幕が1973年のグレイ・ガーデンズが舞台になってるのよ。」 F 「30年くらいの時の流れがあるのね、一幕とニ幕の間には。」 A 「そう言う事ね。一幕は華やかし頃のグレイ・ガーデンズを、 そしてニ幕ではゴミ屋敷と化したグレイ・ガーデンズを見せているのね。」 T 「ケネディー家の話ですよね。」 A 「まあ、そうだけど、J・F・ケネディーの夫人だったオナシスの親族だったビール家のイーディス親子の物語よね。」 F 「凄く興味あるわぁ〜。で、一幕では栄華を誇ったその家の話なのよね。」 A 「そうそう。イーディス夫人と娘、リトル・イディーの若い頃が描かれているよ。 リトル・イディーはケネディー元大統領の兄、J・P・ケネディー・Jr.と婚約するんだけど、 彼を招いたグレイ・ガーデンズでイーディス夫人がリトル・イディーの過去を話した事から縁談が破談になっちゃって グレイ・ガーデンズを離れるまでが描かれるのよね。」 T 「で、二幕では?」 A 「それから約30年後、今はゴミ屋敷となってかつての栄華を見る影も無くなったグレイ・ガーデンズに住む イーディス夫人と一旦は出て行ったものの、イーディス夫人のたっての願いで20年前に戻ってきたリトル・イディーの話ね。」 F 「リトル・エディーは結婚しなかったのかしら?」 A 「そうなのね。恋に破れたリトル・エディーはず〜っと独身だったのよね。で、 ゴミ屋敷の中で数十匹の猫と暮らしている二人がケネディー元大統領夫人のオナシス と血縁関係に有ると言う事でマスコミに取り上げられるのよ。でも二人の生活は何時も通り。 ゴミ屋敷の中で言い合いをしながら歌って踊ってと栄華を誇ったかつてのままなのね。」 F 「な〜んかその親子って凄くな〜い?世間とは全く別な生活をしてるんでしょ、自分達のやりたいように。」 T 「そうですよね。ゴミ屋敷だったら周りの家からも苦情がくるだろうにね。」 A 「そうね。実際には二幕の舞台になる1973年より前にグレイ・ガーデンズは清掃されて綺麗にはなっているんだけどね。」 T 「そうなんですか。」 F 「へ〜。アタシさ、聞いてたら何かその親子、憎めなくなっちゃたわよぉ〜。言い合いをしながら、 でもそこには親子愛っていうか、お互いの愛情を感じるのよね。まあ、観て無いから何とも言えないんだけどさぁ〜。」 A 「そうなのよね。この舞台って、親子愛の他に世間のルールとはまるで関係の無い様に過ごしている二人が マスコミに登場することで一種の<イコン>として存在していくっていうのも表現していると思うのよ。勿論、 舞台ではそれは所々の台詞でしか出てこないんだけど。」 T 「なるほどね。で、役者さん達はどうだったんですか?」 A 「大竹しのぶが一幕では若かりし頃のイーディス夫人を、二幕ではリトル・イディーを演じてるのね。 これが歌を除いたら凄く良くてね。」 F 「歌は下手だったのねぇ〜。」 A 「下手じゃないんだけどね。彼女って地声がちょっと不安定なのよ、何時も。ファルセットはいいんだけど。 何しろ結構歌うからね。」 T 「あ〜、何か分かりますよ。不安定な声を聞くと気持ち悪くなっちゃいますよね。分かる、分かる。」 A 「でしょ。正にそれ。でも、流石に大竹しのぶね。ストレート・プレイだったらどんなに良かっただろうな、って。」 F 「草笛さんは?」 A 「もう草笛さんは素晴らしかったわよ。イーディス夫人になりきってたわね。役を自分の中にしっかり取り入れてたわ。 日本の役者さんたちって、往々にして外国劇をやる場合、その上辺だけをなぞっている人って多いじゃない。 やっぱり言葉や文化、勿論、宗教も違う訳だからね。その中まで入って役作りをしないと本物が見えてこないと思うのよね。 草笛さんは本当に凄い女優さんだと思ったわ。」 T 「その女優さん、僕は知らないから観に行きたくなりましたね。」 F 「アタシもよぉ〜。ちょっと〜、とし坊、一緒に行かない?もちろんアタシの招待で。 食事も付けちゃおうかなぁ〜。」 A 「ちょっと、ちょっとぉ〜。」 F 「何よ、そのタッチみたいな言い方。」 A 「ははは・・・。そうじゃなくて、ちゃんとアッシを通して誘ってよ、とし坊の事は。 それがペンギンのルールなんだからね!」 F 「えっ???そ〜んなルール有ったかしら?」 A 「有るのよ。今決めたの。」 T 「今ですかぁ〜?」 A 「そう、今。ちゃんとルールに則って話は進めてね、フーミン。」 F 「酷〜〜〜い。アキちゃん、嫉妬ね。」 A 「ははは・・・。冗談よぉ〜。本当にいいミュージカルだから観に行ってよ。チケットはまだ若干有るみたいだからね。」 T 「それじゃ、行きましょうか、フーミンさん。勿論割り勘で。」 A 「あら、釘刺されたわね、フーミン。ははは・・・。」 F 「先にやられた〜って感じよ。ははは・・・。」 一同 「ははは・・・・・。」 おわり *今回紹介したお芝居は、 1)<イコン> 公演終了 2)ミュージカル<グレイ・ガーデンズ> 上演中〜12/6 シアター・クリエ 終了後、大阪、名古屋公演あり以上です。どうぞ足をお運び下さいね。 2009.11.15
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