<恋は盲目>の巻

ター子(以下T)「もう〜、嫌になっちゃうわよねぇ〜。」

フジ子(以下F)「どうしたんですか?突然ター子さん。」

T 「だってぇ〜、体ついていかないんだも〜ん、この気温の変動に。」

あき(以下A)「そうよねぇ〜。アッシとかター子の歳になっちゃうと、この気温の上下は身体に応えるわよぉ。」

F 「まあ、お二人とも四捨五入したら100ですからね。」

T 「ちょっと!!変な所で四捨五入しないで頂戴よぉ〜。」

A 「本当よね、ははは・・・。」

F 「でも、今年はおかし過ぎますよね、本当に。」

A 「そうでしょ。フジ子だって体調崩しちゃうわよね、このままだと。」

F 「きっとそうなります、僕の様に若くても。」

T 「本当にアンタ、ひと言多いわよねぇ〜。」

F 「えっ?何かお気に障る様な事言いました?僕。」

A 「まあ、ひがみよね、ひ・が・み。ははは・・・。」

T 「まあ、若いうちにね、・・・ふ〜んだぁ。」

F 「お〜、怖!」

A 「年寄りを怒らせると怖いわよぉ〜、ははは・・・。」

T 「まあ、冗談だけどね、ははは・・・・。ところでさぁ〜、春になるとお芝居も多くなるんでしょ、 アキちゃん。」

A 「そうね。やっぱり暖かくなると多くなってくるわね。人も出だすし。」

F 「最近はどんなの観たんですか?」

A 「そうね、ここ2週間では、美輪さんの芝居、<葵上>と<卒塔婆小町>、桂文珍さんの独演会、 ミュージカル<サイド・ショー>、スタッグ・パーティー・ショー<好きな人>、劇団桟敷童子の <厠の兵隊>かしらん。」

T 「相変わらずねぇ〜。文珍さんの独演会って、毎日違う落語やるのよね、確か。」

F 「毎日って、そんなに何日もやるんですか?」

A 「そうなのよ。今年は国立劇場で10日間連続でね。毎日日替わりのゲストを呼んで、 毎日違う落語をやるのよ。」

F 「やる方も大変だけど、聞く側はもっと大変だよね、お金掛かっちゃうし。」

T 「何言ってるのよぉ〜。その中で選ぶのよ、好きな演目とゲストを、ね。」

A 「そうしないと出費も大変だし、時間もね。」

F 「そうかぁ〜。10日間、ず〜っと時間が有る人なんてリタイヤ組しかいないですもんね。」

A 「そうよぉ〜。」

T 「で、アキちゃんの行った日はどんな演目でゲストは?」

A 「<軒付け>と<口入屋>を文珍さんがやって、ゲストは鶴瓶。で、彼は<子は鎹(かすがい)> をやったのよ。」

F 「鎹?って何ですか?」

T 「ちょっとぉ〜。これだから今の子は嫌になっちゃうのよね。鎹も知らないんだからぁ〜。ほら、 両方の端が曲がったデッカイ釘って見た事ない?」

F 「両端が曲がったデカイ釘ですか?見た事ないですね。」

A 「まあ、仕方ないわよ、若いんだから。家を建ててる現場なんて殆ど見た事ないんじゃない? 今は何か建ててるなって思ったらマンションだもんね。ほら、フジ子、一軒家あるじゃない。まあ、 木造だと思ってよ。で、そこで柱と柱の間を繋ぎ止める釘の事よ、鎹って。」

F 「へ〜。で、子は鎹って、何で子が鎹なんです?」

T 「アンタね、そこまで言ってるのに分からないのぉ〜?もうちょっと頭を回転させてよぉ〜。」

F 「はい、すいません。で、どうしてなんです?」

T 「だからぁ〜、柱と柱を繋ぎ止めるのよぉ〜。子供が出てくるって事はぁ〜?親が居るって事でしょ。 ね、子供のいる親と親が何かの切っ掛けで離れちゃったのよ。で、子供がその間を取り持つって事よ。 ね、分かった?」

F 「う〜む、な〜んとなくぅ〜。」

A 「まあ、簡単に言っちゃえばさ、何かの原因で別れちゃった夫婦が子供の執り成しで元のさやに戻るって事よ。 だから、子供が鎹と同じ役目をするって事よね。」

F 「あ〜、なるほどぉ〜。分かりました、やっと。」

T 「本当に手間が掛かる子よね、フジ子ったら。」

F 「一つ勉強になりました。やっぱりバーって勉強になるな〜。」

A 「まあ、ゴマ擂ちゃって、ははは・・・。」

T 「アタシさぁ〜、<サイド・ショー>って、ちょっと興味あったんだけど、もう終わっちゃったでしょ。 どうだったの?」

A 「そうねぇ〜、全体的にはまあまあ良く出来てたんじゃないかと思うけどね。」

F 「サイド・ショーって、昔のサーカスでやってた付け足しのショーの事ですよね。」

T 「あら、フジ子、アンタってそういう事は良く知ってるのね。」

A 「そうよ。簡単に言ったら今の見世物小屋でやってる様なショーよね。」

T 「主役がシャム・ソーセージなのよ。」

F 「これは大丈夫ですよ、ター子さん。決してソーセージの種類だなんて言いませんからね。」

T 「そんな事言ったら吊し上げちゃうわよ、ねえ、アキちゃん。ははは・・・。」

A 「まあ、あんまり面白くないけどぉ〜!ははは・・・。」

T 「実際にいた姉妹の話なんだって?」

F 「え〜!そうなんですか?」

A 「そうなのよね。彼女達は映画<フリークス>で見る事ができるんだけどね。 舞台で表現しようとすると大変よね。ず〜っとくっ付いてなきゃいけないじゃない。」

T 「そうよねぇ〜。で、誰だっけ?その双子を演じたの。」

A 「貴城けいと樹里咲穂。元宝塚の二人よ。」

F 「で、舞台の方は?」

A 「さっきも言ったけど、まあまあだったわ。ただ、一ヶ所を除いてはね。」

T 「何処だったの?」

A 「それはね、舞台上からブランコに乗って降りてくるシーンがあるんだけど、その時、 二人が離れて見えちゃうのね。これは演出のせいだと思うんだけど、 その辺りまでしっかりしてないと観ている方はねぇ〜。でも、その他はまあまあ。 出演者の歌もそこそこだったし、まあ、合格点があげられるんじゃないかしら。」

T 「前にアキちゃん、何だったか忘れちゃったんだけど、 貴城けいの歌が酷かったみたいな事言ってなかったっけ?」

A 「あ〜、<アプローズ>の時ね。あの時よりはぜ〜んぜんマシだったわよ。ただ、 樹里咲穂の歌が結構上手いんで、少し劣ったかな。」

F 「桟敷童子ってのは?」

A 「今、結構注目を集めている劇団よね。 主に九州の伝説や言い伝えなんかを題材にスペクタクル溢れる舞台を見せているわね。アッシ、 凄く好きなのよ、今。」

T 「前から言ってたもんね、アキちゃん。」

A 「今回は鈴木興産っていう会社の元倉庫を劇場に改造してのこけら落としだったのね。」

F 「どんな話なんですか?なんだかタイトルが臭そうですよね〜。」

T 「アンタの洒落と一緒よぉ〜、オ〜ホホホホ・・・。」

A 「一人の未亡人を巡っての話。死んだ夫の実家に来た美しい未亡人。それに忍び寄る魔の手。 そこからお母さんを守ろうとして恐ろしい事件を起こし続けてしまう息子と、彼女を愛してしまい、 やはり守ろうとしている死んだ夫の双子の兄。 最後に戦車が登場してアッと言わせる舞台作りは何時もながらに関心しちゃうわよね。」

T 「あら、ちょっと面白そうね。」

F 「舞台に戦車ですか?何か興味出ますね。」

A 「でしょ。ただちょっと場所がね〜、遠いのよぉ〜。」

T 「どの辺りなの?」

A 「そうね、何と言ったらいいかな、JRだったら錦糸町、地下鉄だったら押上か本所吾妻橋、 東武線だったら業平。それらの丁度真ん中辺りなのよね。何処からも10〜15分は掛かっちゃうのよぉ〜。」

F 「それじゃ東京スカイツリーの側じゃないですか。」

A 「そうそう。アッシも初めて建設途中のスカイツリーを見たわよぉ〜。」

T 「だったらスカイツリーを見に行くついでにでもいいわよねぇ〜。」

A 「ター子、芝居を観に行くついでにスカイツリーもでしょ。」

T 「あら、そうだったわ。アタシとしたことがぁ〜。」

F 「弘法も筆の誤りってとこですかね、へへへ・・・。」

T 「ちょっとぉ〜!本当に吊るし上げちゃうわよ!」

F 「止めて下さ〜〜〜い!」

T 「それじゃ止めてあげる替わりにこれ連れて来なさいよ。」

A 「あ〜、スタッグ・パーティー・ショーね。」

F 「これ満席ですよ。」

T 「確か最終日よね、フジ子が行くのって。丁度アタシもその日を予約しているのよ。で、 奢りでいいわよね、奢りで。」

F 「え〜、1500円ですよ。この世知辛い中でチョイ厳しいですぅ〜。」

T 「それじゃ、吊るし上げね。」

A 「ちょっとぉ〜、ター子、それじゃ恐喝よ、恐喝、ははは・・・・。」

F 「分かりましたよぉ〜。」

T 「それじゃ決まりね。ねえ、アキちゃん、フジ子に一杯何かあげて。」

A 「あ〜ら、お優しい事ね、ター子さん。ははは・・・。それじゃ、何にする?フジ子。」

F 「え〜、良いんですかぁ〜。それじゃぁ〜、ラフロイグを頂きま〜す。」

A 「結局は一緒に行きたいんでしょ、フジ子と。」

T 「ま〜ぁ、そうとも言えるかな、ははは・・・。」

F 「お伴くらいだったら何時でもOKですよ。」

T 「で、どうだったのよ、アキちゃん観たんでしょ、もう。」

A 「初日にね。・・・はい、お待たせフジ子、優しいター子さんからよ、ははは・・・。」

T 「でぇ〜。」

A 「アッシ、あの形態好きなのよね。何か既製の劇場じゃない所でやるってさ、いいじゃない。 ワクワクしちゃうのよ。それに役者達も素人なんだけど、毎回上達してるしね。話はゲイの姉妹? がやっている相談所。ここは夜になるとバーに変るんだけどね。 そこに来た盲目の画家やカップルと彼らの心の中にあるわだかまりを解こうとしていく姉妹の活躍を音楽の生演奏とともに送るのよね。」

F 「良さそうですよね。恋人と観たらキュンとしちゃいそうですよ。」

T 「いいわよ、替わりになってあげるから、その日、恋人の。」

F 「いや〜、それはぁ〜・・・。」

T 「ちょっとぉ〜・・・。」

A 「ははは・・・・。まあ、仕方ないわよ、趣味があるんだからぁ〜。」

T 「まあ、そうねぇ〜。アタシ、何でもしてあげるわよ、フジ子ぉ〜。」

A 「恋は盲目ってね。」

F 「ところでアキさん、美輪さんの芝居はどうだったんですか?」

T 「あら、話変えたわね!」

A 「ははは・・・。一本取られたって所ね、ター子。う〜む、美輪さんね。まあ、今回心配してたんだけど、 相手役が木村彰吾でしょぉ〜。まあ、心配してた事がぁ〜〜〜〜・・・、って事かな。」

T 「それじゃ、相変わらず上手くなってないのね、彼。」

F 「そんなにですか?聞く人、聞く人、皆に言われるもんですから、そんなに?って思ってたんですけど。」

A 「アッシ、今回発見したのよ。彼の動きって4パターンなのよね。これと、これ、これにこれよ。」

T 「ははは・・・・、よ〜く観察したわね、ははは・・・。」

F 「これも恋は盲目ってことでしょうかぁ〜。」

A 「そんな事言えないわよぉ〜、怖くて。」

T 「本当よね、祟られちゃうわぁ〜〜〜〜!」

F 「怖いですよ、本当に、ははは・・・。」

一同「ははは・・・・・。」

おわり
 *登場人物は全て仮名です。

 *今回紹介したお芝居などは、

 1)美輪明宏 近代能楽集より<葵上><卒塔婆小町>
    上演中〜5/6    ル・テアトル銀座
 2)劇団桟敷童子 <厠の兵隊>
    上演中〜26日まで   すみだパークスタジオ○倉
 3)スタッグ・パーティー・ショー <好きな人>
    4/25と29日に上演  新宿2丁目スナック九州男
 4)桂文珍独演会
    公演終了
 5)ミュージカル<サイド・ショー>
    公演終了
 以上です。どうぞ足をお運び下さいね。
2010.4.25


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