<救いはどこ?>の巻

大ちゃん(以下D)「こんばんはぁ〜。」

あき(以下A)「いらっしゃ〜〜い。何か急に暑くなっちゃったわよねぇ〜。はい、大ちゃんオシボリ。」

D 「有難うございます。あれ?サムさん早いですねぇ〜。」

A 「あら、待ち合わせだったの?」

サム(以下S)「さっきスタバで会ってね、それで後でって。」

A 「あら、そうだったの。」

D 「え〜と、ドリンクいいですか?」

A 「あら、そうよね、まずはドリンク。大ちゃん、何にいたしましょうか?」

D 「それじゃ、今月のお勧めお願いします。」

S 「今月は何なの?」

A 「今月は<カンパリ・ビアー>よ。」

S 「カンパリとビール?」

A 「そうそう。結構美味しいわよ。苦味があって、ま〜大人の味っていうのぉ〜、ははは・・・。」

D 「大人の味なんだぁ〜。それじゃぁ僕にピッタリですよね。」

S 「何処が大人なのよぉ〜!ははは・・・。」

A 「はい、お待たせしました。」

S 「綺麗じゃない。アタシもお代わりいただこうかな、そのカンパリ・ビアーを。」

A 「アイヨッ!・・・はい、お待たせ。」

S 「有難う!う〜む、結構イケルじゃないの。」

D 「何てったって大人の味ですからね、サムさんにピッタリですって。」

S 「そうでしょぉ〜、ってオチョクッテルの?」

D 「そんなこと無いですよぉ〜。本当にサムさんにはピッタリだなって。そうですよね、アキさん。」

A 「まあ、それで良いんじゃないの。」

S 「何なのよぉ〜、アキちゃんまでゴマすりの真似なんかしちゃってぇ。」

A 「ははは・・・、見えた?」

S 「まあ、冗談はさて置いてさ、先週は何か観に行ったの?」

A 「行ったわよ。」

D 「で、何を?」

A 「高円寺の座・高円寺でやってた・・・。」

S 「<化粧>ね。渡辺美佐子の最後の<化粧>。で良かったの?」

D 「あれですかぁ〜。偶然にも井上ひさしさんが亡くなっちゃいましたからねぇ。」

A 「ちょっと待ってよぉ〜。観に行ったのは<化粧>じゃなくて<ウィンドミル・ベイビー>よ。」

S 「何?それ?」

D 「ウィンドミルっていうのは風車ですよね、確か。」

S 「そうなの?流石若い子は違うわねぇ。アタシなんかサッパリ分からなくて、英語。」

A 「確かに風車の事なんだけど、この公演のパンフに載ってる作者の話だと<命の源> っていう思いが込められているらしいのよ。」

D 「そう言えば、ウィンドミルには収穫の象徴っていう意味もあるんですよ。」

S 「あら、益々驚きだわぁ〜。大ちゃん、アンタ英語に強いのねぇ〜。」

A 「サム、大ちゃん、外語大出身なのよ、ね。英語はお手のもんなのよぉ。」

S 「なるほどね。じゃ、当たり前じゃない。な〜んだ、ははは・・・。」

D 「いきなりですね。もうサムさん冷た〜〜い。」

S 「まあ、置いといてぇ〜。でどんな芝居なんですか?」

A 「オーストラリアのある場所に年老いた一人の老女メイメイが50年ぶりでやって来るところから始まるのよ、 この芝居。」

S 「50年ぶりですか。じゃぁ、アキさんは生まれてますね、その頃。」

A 「残念ながら、この本が書かれたのが2003年。だからアッシが生まれる少し前の話なのよ、設定上はね。」

D 「そんな事、どうでもいいからぁ〜、早く話の内容をさぁ〜。」

A 「そうだったわね。そこで彼女が働いていた頃の事を想い出しながら語っていくのよ。」

S 「へ〜。」

A 「彼女はアボリジニなのね。」

S 「あら、それってソプラノ歌手のキリ・テ・カナワの祖先よね。」

D 「あれ?彼女ってニュージーランドのマオリ族の血を引いているんじゃなかったでしたっけ。」

A 「そうよ、彼女はマオリ族系。アボリジニとは違うわね。」

S 「あ〜ら、勘違い!」

A 「で、その当時だから当然のように差別があった訳よね。で、彼女、 牧場主の下で洗濯女をやってたんだけど、そこの羊飼い、 マルバーンを料理女のサリーと奪い合って彼と結婚するのね。」

S 「結構気の強い女よねぇ〜、メイメイって。」

D 「サムさんと似てますねぇ〜、へへへ・・・。」

S 「おだまり!」

A 「で、いいかしら、進んで。そして、赤ちゃんを身籠るんだけど、 何しろ過酷な労動をさせられてるじゃない。早産で亡くしてしまうのよね。」

S 「酷いわねぇ〜。」

A 「悲しみの中、彼女はやはりアボリジニで体が不自由な庭師、 ワンマンに彼の庭にその子を埋めてもらうように頼んでひっそりと埋葬してもらうのね。」

D 「優しいひとですね、そのワンマンっていう庭師。」

A 「そうなのよね。彼はさっき出てきたサリーに好かれているんだけど、彼自身は牧場主の奥さん、 勿論白人なんだけど、彼女に恋しているの。」

S 「でもさ、そんな時代に白人の奥さんに恋しちゃっただけでも大変よねぇ。」

D 「そうですよね。な〜んか真っ暗な先が見えてきそうだなぁ〜。」

A 「そうなんだけどね。で、牧場主は酒癖がイマイチ良くないのよね。 飲むと奥さんや使用人に辛くあたる訳よ。」

D 「それじゃ、益々優しいワンマンに奥さん救いを求めちゃいますよね。」

S 「子供でも出来ればまた違うんだろうけど。」

A 「所がさ、牧場主は子供を欲しがらないのよね。でも、彼女は妊娠しちゃうの。」

S 「あら、大変!」

A 「そして出産の時、メイメイは医者の補助を頼まれて出産に立ち会うのよ。でも、 医者は取り上げた子供をメイメイに処分しろって言うのね。そして、この事は二人だけの秘密にしようと。」

D 「何があったんですか?赤ちゃんが居ればまた違っただろうって、さっきも言ってたですよね、 サムさんが。」

S 「そうよぉ〜。何でぇ〜?」

A 「その赤ちゃん、肌が白くなかったの。」

D 「アボリジニの肌だったんですね。」

S 「と言う事は・・・ワンマンの子?」

A 「そう言う事になるわよね。」

D 「で、処分しちゃったんですか?」

A 「メイメイはワンマンにその事を話すのよ。で、 自分がどうにかしてこの子を生きさせるから一緒にここを出ようって言うのよ、ワンマンに。でも、次の朝、 庭に動かないワンマンの姿を見た彼女は、 河の向こうの教会にその子を何とかして連れて行って保護してもらおうと考えるのね。 雨季も近付いて雨が降って河が荒れ狂う前に行かなきゃって、早速牧場を後にするんだけど、 河に着いてみると、既に河の水は増水して荒れ狂っているの。でも、 神様がこの子を守ってくれると信じて河を渡り始めるのよね。」

S 「イヤだぁ〜、ドキドキしてきちゃったわぁ〜。」

D 「で、結局ぅ〜〜〜・・・。」

A 「彼女の手から嵐にさらわれちゃうのよ。」

S [な〜んて哀しいのかしらねぇ〜。救いはないのぉ〜?」

A 「まあ、救いは彼女が生き残って、そして50年ぶりにその地に帰ってこられたって事かしらね。そして、 彼女の早産してワンマンに埋めてもらったその跡地に伏せて置いてあった桶を開けてみると、 そこには可愛くて綺麗な花が咲いてたって事かな。 舞台はその花を見つめて何かを想っている彼女の姿にピンスポットが当たってフェードアウトで終わるのよ。」

D 「凄く余韻が残りそうな舞台ですよね。」

S 「出演者も凄かったんでしょうね。いったいどんな人が出てたのかしら。」

A 「この舞台ね、大方斐紗子の一人舞台なのよね。」

D 「え〜、登場人物全てを彼女が演じ分けたんですか?」

A 「まあ、演じ分けるっていうより、 彼女の想い出の中に出てくる人物を彼女の想い出で表現したっていう方が正しいかもね。それと、ウクレレ、 ギター、歌、打楽器で参加したバロンなかざわが、 彼女の演技の邪魔をする事無くとってもいい味を出していていたのが印象的だったわね。」

S 「な〜んか観たくなってきたわぁ〜。」

A 「もう終わっちゃったのよね、残念ながら。」

D 「そうなんですかぁ〜。」

A 「でもね、来月福島のいわきと仙台で公演があるのよ。もし時間が許したら行ってみたら?」

S 「福島と仙台?まあ、ちょっと無理だわねぇ〜。」

D 「それより、これからので何か良い物ありませんか?」

A 「これからって言ったら、もう<ドリームガールズ>の来日公演がイチオシよぉ。」

S 「アタシもさ期待してるのよね。何たってそのまま来るんでしょ、オリジナルで。」

D 「えっ!そうなんですか?でも随分歳もとったでしょうね、30年近く経ってますよね、初演から。」

A 「ははは・・・・。何言ってんのよぉ、大ちゃん。 オリジナルって言っても去年アポロ・シアターでやった再演のオリジナルメンバーのほとんどが来るのよね。 でも、相当評判がいいから必見よ。」

S 「アキちゃんは何時行くの?勿論行くんでしょ。」

A 「アッシは初日に行ってきます。本当は楽日も行きたかったんだけど、 開演が土曜日の正午なもんだから行けないのよねぇ〜。」

D 「そりゃ残念ですね。」

A 「そうなのよぉ〜。でも、観てきたら直ぐに感想言うからね。」

S 「チケットまだ取れるかしらぁ〜。」

A 「平日だったらまだ有るかもね。」

S 「それじゃ、明日まっ先にインターネット見てみなきゃ。」

D 「僕もそうしようっと。」

S 「それじゃ、そんな事もあるし、アタシ今日はこれで帰るわ。大ちゃんは?」

D 「それじゃ、僕も帰えろうっと。」

A 「あら、二人とも帰っちゃうの?まあ、早く手を打つに越した事ないからね。それじゃ、 お会計させて頂きます。え〜と、サムが3100円で大ちゃんが1500円です。有難うございます。」

S 「じゃ、アタシは5000円でお願いします。」

D 「僕は丁度で。」

A 「はい、有難うございます。サムは1900円のお返しです。」

S 「じゃぁね、アキちゃんまた。」

D 「おやすみなさ〜い。」

S 「そうそう。来週感想聞かせてよ。」

D 「宜しくお願いしま〜〜す。」

A 「分かったわよぉ〜。水曜日だからね、アッシが行くのは。」

S 「それじゃね!」

D 「また来ま〜す。」

A 「有難う!おやすみぃ〜。」

おわり
*登場人物は全て仮名です。

*今回紹介したお芝居は、

  1) ウィンドミル・ベイビー    東京公演終了
       6/3 いわき芸術文化交流館アリオス、6/5,6 仙台白鳥ホール
  2) ドリーム・ガールズ 来日公演
       5/19〜6/5  渋谷文化村オーチャードホール
以上です。どうぞ足をお運び下さいね。

2010.5.16


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