<忙し、忙し・・・>の巻

マツ子(以下M)「こんばんわぁ〜。」

あき(以下A)「いらっしゃ〜い!はい、オシボリどうぞ。」

M 「あら〜、温かいわねぇ〜。まるでアキさんの様ですわね〜。」

徳さん(以下T)「アンタもお世辞がお上手ねぇ〜。」

M 「あら〜、徳さんもいらしたのねぇ〜。こんばんはぁ〜。」

T 「どうも。早く座りなさいよ、そんな所に突っ立ってないでさ。」

A 「お好きな所に。」

M 「ま〜、何処にしようかしらねぇ。迷っちゃうわぁ〜。」

T 「アンタ!こんな狭い店なんだからさ、迷うなんて事ないでしょ。早くお座んなさい。」

M 「それじゃぁ〜、徳さんのお隣に失礼しちゃいましょ〜っと。」

T 「はい、どうぞ。で、何にするのよぉ!アキちゃんだって忙しいんだからさ、早く頼みなさいよ!」

M 「そうよねぇ〜。それじゃぁ、ワタシは〜、ビールにしようかしら〜。」

A 「はい。・・・お待たせしました。」

M 「あら、ここエビスだったのねぇ〜。それに中ビン。飲みごたえあるわねぇ〜。 やっぱりビールは中ビン以上よねぇ。徳さん、そう思いません?」

T 「ま〜、そうねぇ〜。ビールが好きな人にはね、そうでしょ、きっと。アタシはビールダメだからさ、 どっちでもいいんだけど。」

A 「所でこの前はお疲れ様でした。」

T 「そうね、お疲れ様。」

M 「ワタシね、あの駅初めてだったのよぉ〜。」

A 「アッシもそうですよ。住宅街ですよね。あ〜んな所に劇場があるなんてね。」

T 「そうよね。でもな〜んにも無いじゃない、あそこ。観終わってから食べる所もありゃしないのよぉ〜。」

M 「ホントね。徳さんと二人でコーヒー・ショップに入っちゃったわよね。でもね、 そこが9時で終わりっていうじゃないのぉ〜。だから20分だけね、コーヒー飲んで帰ったわよ〜。」

T 「アキちゃんは直ぐに帰ったんでしょ。って、仕事だったのよねぇ。」

A 「はい、そうだったんですよ。ですからお二人ともう少し話していたかったんですけどね。」

M 「そうよねぇ〜。お仕事ですもの。」

T 「で、どうだった?」

A 「適役だったわね、真ちゃん。」

M 「ピッタリだったわよねぇ、本当に。」

T 「話もちゃんとしてたし、結構良かったわよね。でもさ、始めの所、寝なかった?アタシ、 少し寝そうだったのよぉ。」

A 「あ〜、朗読で始まりましたからね。アッシは大丈夫でしたけど。」

M 「ワタシも大丈夫だったわよぉ〜。徳さん暗くなると眠くなるんじゃないのぉ〜、歳だ・か・ら!」

T 「五月蝿いわねぇ〜、アンタだってひと回りは違わないんだからね。」

A 「まあ、50も過ぎたら皆一緒ですよ。アッシも暗くなると眠気が襲ってくる事が多くなりましたもの。」

T 「それにしても、この芝居の対象年齢、小学生とかじゃないのかしらん。」

M 「まあ、そうかもねぇ〜。大人にも感動はできるけど、やっぱり対象にするのは小学生とかかしらねぇ〜。」

A 「昔良くあったじゃないですか、移動演劇みたいなやつ。 アッシも徳さんも東京だから直接劇場とかで観てましたけど、 地方の人は移動演劇で楽しんでたんじゃないですか? そんな移動劇場でやるような芝居だったと思うんですよね。」

M 「あら、そうねぇ〜。アキちゃんも徳さんも東京生まれだものねぇ〜。文化面では恵まれてるわよねぇ〜。 ワタシは田舎じゃないのぉ〜。だから劇場なんて無いのよね。 今じゃ劇場じゃないけど村でホールとかはあるのよ。でも、ワタシが子供のころはね。 劇場という存在自体が分からなかったもの。」

T 「アンタ、それはいくら何でも大袈裟でしょうよぉ。」

M 「あら、そんな事ないのよ、本当に劇場なんて無いんですもの。中学くらいからかしらね、 劇場の存在を知ったのって。」

A 「まあ、アッシも恵まれてたとは思いましたよね。だって、そこらそこらに劇場がある訳じゃない。 小さい時から親や周りの住人が芝居に興味があったりすれば、一緒に連れてってくれたりしたもの。 アッシなんか、小学校に入る前に歌舞伎や新派を観に連れて行ってもらってたわよ。」

T 「ご両親やご近所にお好きな人がいたのね、アキちゃんは。」

A 「そうなんですよ。隣の小母さんですね、アッシの場合は。そこの家、子供が居なかったもんだから、 共稼ぎで両親が昼間居ないアッシを結構色々連れてってくれたんですよね。ホント、ラッキーでした。」

M 「だからね。アキちゃん演劇好きになったのってその頃に起因するのねぇ。」

T 「でもさ、やっぱり本人が好きにならなきゃ。やっぱり子供じゃ飽きちゃうじゃない。 あ〜んな長い芝居を観るのよ。ちょっと普通じゃ飽きちゃうわよね。やっぱり好きなのよ、小さい頃から、 アキちゃんは。」

A 「きっとそうだったと思いますね。そんな事もあったり、小学生の時には劇団四季が <子供のためのミュージカル劇場>とかやってて、そこで初めてミュージカルにも接する事ができたし、 中学の時は歌舞伎教室に文楽教室、高校では能教室にテーブルマナーの教室があったし。」

M 「ま〜、羨ましいわね、都会の子って。」

T 「アタシもそうだけど、別に好きで都会に生まれた訳じゃないからさ、仕方ないわよね、それは。」

M 「小さいときから沢山観てるんでしょ、お芝居。」

A 「そんな事はないですよ。経済的なものもあるじゃないですか。やっぱり社会人になってからですね、 毎週のように観る様になったのって。」

T 「あの芝居の後は何か観たの?」

A 「ええ、次の日曜日に。」

M 「何観たのかしら?」

A 「<ちはやぶる神の国〜異聞・本能寺の変>っていう時代劇ですね。」

T 「あら、時代劇。良さそうじゃない。アタシ好きなのよ、時代劇。」

M 「本能寺っていうと有名よね。あの家臣の明智光秀に謀反を起こされて討たれたのよね、織田信長が。」

T 「その話の異聞なんでしょ。」

M 「ねえねえ、ちょっと。異聞って言うのは違った話っていう事なのよねぇ。」

A 「そうですね。通常で言われている事とは違う話です。」

T 「どんな違いがあったのかしらん。」

A 「織田信長って本能寺の後で、その遺体が発見されてない事から様々な憶測が流れているじゃないですか。 まあ、今回の芝居は、その憶測の一つといったらいいのかしらね。 信長の死にまつわる新しい説とでもいうのかしら・・・。」

M 「新しい説ねぇ〜。な〜んか面白そうねぇ〜。」

T 「で、どういう説なのよ、それは。」

A 「一般の伝わり方だと織田信長は本能寺の変で明智光秀に攻撃されて自刃した事になってるじゃない。」

M 「そうじゃないのかしら〜?」

A 「この芝居では、それはそうなんですけど、それまでの過程の問題なんですよ。」

T 「過程?」

A 「そうなんです。一般的には明智光秀が謀反を起こして、ってなってるじゃないですか。今回の芝居では、 それは謀反じゃなくて、織田信長が計画したものっていう前提で作っているんですよ。」

M 「あら、じゃ、わざと本能寺の変を起こしたって事なのかしらぁ〜。」

A 「まあ、早く言っちゃえばそう言う事ですね。」

T 「でもさ、何でわざと起こさなきゃならないのよ。」

A 「この脚本によると、信長が病を患ってて、自分が成し遂げようとした天下統一が出来ない事を悟って、 それを成し遂げるには徳川家康に希を託すしかないと思っているんですね。で、その為に、 信頼している家臣の光秀に謀反を起こしたかのように見せかけて時代を動かそうとした、 っていう訳なんですよ。」

M 「へ〜、まあ、面白いって言えば面白いけどねぇ〜。」

T 「まあ、そうね。一つの説としては成り立つわよね。」

A 「そうなんですよ。そういったアプローチはとても良かったと思うんですけどね。」

M 「というと、アキちゃんには何か不満があったのね。」

A 「不満と言うか、なんと言うか・・・。長いんですよ、芝居が。」

T 「飽きちゃうのかしら。」

A 「飽きちゃうと言うか、無駄な場面が結構あって・・・。この場面も無くてもいい、これも、 これも・・・って。」

T 「カット出来る所が沢山有ったってことかぁ〜。あるあるそういう芝居。」

M 「結構あるわよねぇ〜。」

A 「そうなんですよ。もっとシンプルに作れたんじゃないかなって。」

T 「いいのよね、長くたって。それに無駄がなきゃさぁ〜。でも、そうじゃなかったって事ね。」

A 「ま、そういう事ですね。でも、まあまあ面白かったです。」

M 「そう言えば、今週からなんかTVでブロードウェイの芝居中継とか多いけど、 アキちゃん何でか知ってる?」

T 「マツ子、何言ってるのよぉ〜。もう直ぐトニー賞じゃないの。だからでしょ、そういう中継、 って言うか、録画よね、録画。そんなのが沢山あるのは。ねえ、アキちゃん、そうじゃないの?」

A 「そうですね、多分。今年はNHKも力を入れてるっていうか、何と、ハイ・ヴィジョンで生放送なんですよ。」

T 「え〜っ!そうなの。ま〜、大変。」

M 「NHKも随分力入れてるのね、トニー賞に。」

A 「ほら、アカデミー賞がWOWOWで生放送じゃないですか。だから、それに対抗したんじゃないんですかね。 でも、アッシにとっては、とっても嬉しいんですけどね。」

T 「でもさ、アタシなんかは英語が分からないからダメね、多分。 観てても楽しめない様な気がするのよぉ〜。」

A 「でも、徳さん、放送の途中でやる舞台の一部なんかを観てると、言葉が分からなくても楽しいですよ。 アッシも殆ど分かりませんけど、毎年楽しんでますって。」

M 「そうよぉ〜。言葉が分からなくても楽しめるってありますわよねぇ〜。ワタシは観よう〜っと。」

T 「で、時間は何時。向こうだからこっちは何時になるのかしら?」

M 「大体12時間遅らせればいいのよね、確か。そうじゃなかったかしらねぇ、アキちゃん。」

A 「そうですね。およそ12時間遅らせれば大丈夫です。で、生放送の時間なんですけど・・・あっ、 これこれ。朝の8時45分からみたいですよ。」

T 「あら、ちょっと。それじゃ、あと8時間ちょっとじゃないの。早く帰りましょ。アキちゃん、チェックして。」

M 「え〜〜〜、もうお帰りになるの。さっきまで楽しめないかもな〜んて言ってたのにぃ〜。」

T 「朝、ちゃんと起きて観る事にしたのよ、たった今ね。」

A 「はい、それじゃ、徳さん、有難うございます。今日は3100円です。」

T 「はい、3100円ね。それじゃ、これで。」

M 「それじゃ徳さん、またお会いいたしましょうね。」

T 「そうね、機会があったら。」

M 「まあ、冷たい言い方だことねぇ〜。」

T 「そりゃそうよ。どうなるか分からない世の中でしょ、今は。ここ出て刺されるかもしれないのよぉ〜。 もう怖い世の中なんですからね。機会があったらでいいんじゃないの。ねえ、アキちゃん。」

A 「本当にそうですよ。怖い世の中ですもの。徳さん、刺されない様に気を付けてお帰り下さいね。」

T 「そうね。明日のTVを楽しみにしなきゃ。それじゃね。」

M 「それじゃ徳さん、お休みなさい。気を付けて。」

A 「有難うございま〜す。おやすみなさ〜〜い。」

M 「忙しい方よね、徳さんも。ワタシも帰ろうかしら。生中継観たくなっちゃったし。 それにサッカーのワールドカップもあるしねぇ。アキちゃん、帰りますぅ〜。今度またゆっくり来ますわね。 おいくら?」

A 「はい、今日は1500円ですね。」

M 「あら、それでいいの?・・・はい、それじゃこれで。」

A 「有難うございます。丁度頂きます。」

M 「それじゃ、アキちゃんも頑張って下さいませよぉ〜。」

A 「はい、有難うございま〜〜〜す。寝不足にならないようにして下さいね。」

M 「そうだわね。でも寝不足ね、きっと。これからサッカー、そしてトニー賞でしょ。早く帰りましょ。 あ〜忙し、忙し。お休みねぇ〜。」

A 「お休みなさ〜〜い。」

おわり
*登場人物は全て仮名です。

*今回紹介したお芝居は、

1) ファンタスティック・デリバー <ぼっこ> 
      公演終了
2) <ちはやぶる神の国〜異聞・本能寺の変〜>
      公演終了
3) トニー賞 2010
      BShi    6/14 8:45a.m.〜12:00noon  生中継
      BS2    6/20  1:00p.m.〜3:30p.m.    字幕付き録画放送
以上です。どうぞお楽しみ下さいね。

2010.6.14


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