<普段の行ないね。>の巻

エリー(以下E)「こんばんは。」

あき(以下A)「あら、エリー、久し振りぃ〜。はい、いらっしゃいませ。オシボリどうぞ。」

E 「ご無沙汰してま〜す。」

A 「本当ねぇ。もう2〜3年振りかしらね。元気そうで何よりよ。」

E 「アキさんも全然変らないですね。」

A 「そんな事ないわよぉ〜。もう歳だわね。ヤダヤダ。」

E 「え〜と、なにしようかな〜・・・。」

A 「あっ、エリーね、この7月から90分飲み放題コースっていうのを設定したのよ。はい、これがメニューね。」

E 「へ〜。こんな企画始めたんですね。でも、これ凄いですね。殆どの飲み物が有るじゃないですかぁ。」

A 「1000円未満の飲み物には殆ど対応してるのよね。3杯以上飲むんだったらお得だけど。」

E 「別のものを頼んでもいいんですか?」

A 「勿論よぉ〜。このメニューの中からならオッケイよ。」

E 「それじゃ、これにしてみましょうかね。」

A 「あいよっ!それじゃ、最初の飲み物は何にしましょうか?」

E 「それじゃ、最初はビールから。」

敏男さん(以下T)「あら、ビールもいいのぉ〜。それじゃ、アタシも今度からそれにしようかしらん。」

A 「敏男さん、次の飲み物からでも大丈夫ですよ。勿論、今までのは別会計として頂きますが。」

T 「分かってるわよぉ〜。当たり前じゃないの。でも、今日はいいわ。また次にしますわ。」

A 「はい、エリーお待たせ。」

E 「有難うございます。相変らず行ってるんですか?お芝居。」

A 「勿論よ。」

T 「まあ、この人、芝居観てるかコンサート行ってるか、映画に行ってるか、 そうそうあと病院に行ってるかで本当に時間が無いんだからね。 定休日に誘ったって時間が空くのが遅いのよぉ〜。まあ、今どきじゃ珍しいわよねぇ。」

A 「仕方ないじゃない。だから何時も言ってるじゃないですか。誘ってくれるのは嬉しいんですけど、 少なくとも3ヶ月前には言ってくださいって。」

T 「3ヶ月も前なんて、生きてるかも分からないでしょ、アタシなんか。ははは・・・・。」

E 「敏男さんは大丈夫ですよ。久し振りです。」

T 「お久さ。」

E 「全く変わりませんね。」

T 「何を言っとっとぉ〜。もう引退よ、そろそろ。ははは・・・。」

A 「まあ、そんな事は絶対にないわね。」

E 「そうですよねぇ〜。所でアキさん、最近のお芝居の話聞かせて下さいよ。」

A 「最近ね。最近はとってもいい舞台にめぐり合えているのよね。短いのと長いのと。」

T 「短いのって、もしかしたら、この前のG-コンのお芝居かしら?」

A 「そうそう。約90分。やっぱり脚本が良く出来てるからあっと言う間に終わっちゃったって感じだったわよね。」

T 「あれは良かったぁ〜。アタシなんか涙が出てきちゃったものね。それに可笑しい場面もあるじゃないの。 も〜う、二人のやり取りに笑って泣いてねぇ〜。」

A 「周りの人達も終わった時に目頭を押さえていたわよ。」

T 「アキちゃんは泣かなかったと思うけどね、ははは・・・。」

A 「ははは・・・。そうね。涙は出なかったわね。ただし、感動はしたわよ。 朗読であそこまで感動させるなんてね。このユニットでは前々回の<ゆれる>以来かな。 両方とも既製の作品に手を入れて作り直した物だけど、本が凄く良く出来ていてねぇ〜。」

E 「あの〜、アキさんと敏男さん二人だけで分かってるんですよね。僕は全く分かりませんよ。 いったい何をやったんですか?」

A 「あら、そうだったわね。<らっへんほっほしゅ〜れ>よ。」

E 「何ですか?それ。聞いた事ないんですけど。」

A 「あっそうかぁ〜。これね、ドイツ語なんだって。日本語で言えば、<笑いの大学>ね。」

E 「あ〜、三谷さんの。僕は映画しか観ていないんですよね。検閲官と座付き作家の話ですよね。 役所広司と稲垣吾郎。あれ、面白かったです。あれですかぁ〜。」

T 「あれよ、あれ。アタシは元の舞台しか観てないんだけど、それに勝るとも劣らないと思ったわよぉ〜。」

A 「まあ、それはちょっとオーバーじゃない?オリジナルの舞台は西村雅彦と近藤正芳だったわよね。 確か青山の円形劇場だったと思うんだけど。」

T 「え〜、パルコ劇場じゃなかった?」

A 「それは確か再演よ。初演は円形だったと思ったけどなぁ〜。」

E 「円形ですね、初演は。」

T 「あら、エリー。アンタ、映画しか観てないんじゃなかったっけ?」

E 「今はこれで直ぐに調べられるんですよぉ〜。」

A 「便利よね。ねぇ〜、円形だったでしょ。」

E 「でも本当の最初はラジオドラマだったらしいですね。」

A 「そうなのよ。アッシも知らなかったのよね、それは。」

T 「アタシも知らなかったわぁ〜。そうなのね、ラジオドラマだったのぉ〜。聴いてみたかったわぁ〜。」

A 「本当よね。耳でしか聴けないからよっぽど役者が上手くないとね。で、誰なの?ラジオの二人って。」

E 「ちょっとぉ、ちょっと待ってくださいよ。あ〜、出た出た。三宅裕二と坂東八十助ですね。」

A 「へ〜。三宅が椿?」

E 「いえ、向坂みたいですね。」

T 「それは意外ねぇ〜。でも面白いかもね。」

E 「話してたら観たくなっちゃいましたよ。再演やらないんですかね。」

A 「なんか、<ゆれる>と<らっへんほっほしゅ〜れ>は再演を検討してみようかな、って言ってたわよ。」

T 「また観に行きたいわぁ〜。」

A 「再演があるといいわよね。」

E 「長いお芝居の方は何を?」

A 「新宿梁山泊の<ベンガルの虎>とナイロン100℃の<2番目或いは3番目>の二つね。」

T 「あら〜、懐かしいわぁ〜。<ベンガルの虎>って状況劇場でやったやつよねぇ〜。あ〜〜、懐かしい。」

E 「何ですか?状況劇場って。」

A 「エリーは唐十郎って知ってるわよね。彼が昔に立ち上げてた劇団なのよ。通称<赤テント>。」

E 「あ〜、赤テントですか。今の唐組の前身ですね。」

T 「そうよぉ〜。70年代かしらね、<ベンガルの虎>をやったのって。」

A 「そうそう。アッシが高校3年のときだもの。記憶に間違いが無ければ1973年よ。」

E 「生まれるず〜〜〜っと前ですよぉ〜。」

A 「そうよねぇ〜・・・汗;」

T 「で、どうだったの?」

A 「さっきも言ったけど長かったのよ、休憩を2回はさんで3時間ちょっと。」

E 「で、どんな話なんですか?」

A 「エリーは映画の<ビルマの竪琴>って知ってる?」

E 「観ましたよ。中井貴一のですよね。」

T 「違うわよ。安井昌二と三国連太郎よぉ。」

A 「敏男さん、エリーに言ってもダメよ。彼が観たのはリメイク。 アッシと敏男さんが言っているのは最初に映画化になったやつでしょ。まあ、 内容は同じだからどっちでもいいんだけどね。で、そのビルマの竪琴の数年後の話なの。」

E 「数年後ですか?」

T 「そうよぉ〜。水島上等兵がビルマに残って遺骨収集をしていたっていうのが表向き。 実は日本に帰ってきてて収集した人骨で判子屋をやっているっていう設定なのよぉ〜。」

E 「また奇抜な設定ですね。」

A 「今回の舞台は初演時の元状況劇場、 十貫寺梅軒や田村泰二郎が出ていて未だにパワー溢れる演技で凄かったし、 流しの兄弟の役で歌手の中山ラビが出てて、その独特の唄で観客を魅了してたし、勿論、梁山泊の主宰、 金守珍が演じた産婆のお市は群を抜いての素晴らしさだったしね。今、 やっぱりアングラで勢いがあるのはこの新宿梁山泊、唐組、鹿殺し、桟敷童子くらいなのかなって。」

T 「梁山泊だったら仕掛けも大掛かりだったんじゃないの?」

A 「もう水をふんだんに使ってね。最後はクレーンが出てきてさぁ〜。」

E 「何か、アキさんの話を聞いているだけで観てみた〜いって思いますよね。」

T 「もうアタシも昔に戻って観てみた〜いわねぇ。」

A 「まだまだ大丈夫よぉ。勿論若い人達も沢山来ているけど、 やっぱり状況劇場当時からのファンも多いからね。ただ、最近特に思うんだけど、もう体育坐りはねぇ〜。 腰は痛いわ、足は痛いわでね、ははは・・・。」

T 「そうよねぇ〜。それがあるからテントは避けちゃうのよぉ〜。でも行ってみようかしらね。 何か最近テントの芝居はあるの?」

A 「丁度これからやるんだけど、<椿組>っていうユニットが花園神社で。」

E 「何やるんです?」

A 「井上ひさしの<天保十二年のシェイクスピア>よ。」

T 「でも、やっぱり体育坐りがふあんだわ〜。」

A 「唐組のテントと違って、皆が体育坐りじゃないのよ。 最近は梁山泊も指定席って言って長椅子の席を用意しているんだけど、 この椿組も限定で確か60席くらいだったと思うんだけど、指定席っていう椅子席が有る筈よ。 ちょっと確かめてみたら?」

T 「そうねぇ〜。そうしようかしらん。」

E 「あと、何でしたっけ?・・・あっそうそう、ナイロン100℃でしたよね。これは?」

A 「これも長かったのよね、終わってみたら。」

E 「って事は、そんなに長く感じなかったって事ですか?」

T 「まあ、そうでしょうねぇ〜。結構良かったって事じゃないのぉ〜。ねぇ、そうでしょ。」

A 「まあ、そういう事かしらん。何処がどうって事じゃないんだけど、観終わってみたら、 もうこんな時間なの?って。」

E 「どんな話なんですか?」

A 「舞台は廃墟。あんな事があって、ってそれが何だかは分からないんだけど、 それで廃墟になってしまった町に他の廃墟になってしまった町から5人の来訪者があるのね。で、 この町の為に何かしたいって。」

E 「つまりはボランティアですよね。」

T 「でも、ちょっとおかしくない?だってやって来た人達の町も廃墟なんでしょぉ〜。 何で自分達の町を捨ててボランティアなんかに来るのよ。」

A 「そうなのよね。来訪者の女性二人が上目線なのよ、その町に対して。」

E 「どういった?」

A 「だってね、<助けて差し上げる>みたいな事言っちゃうのよぉ。」

T 「それは偽善ね、偽善。」

A 「そうなのよ。凄く感じるのよね、それを。でも、その町の人達がまた変なのよ。 廃墟で大変そうなのに普通に暮らしてるのね。」

T 「不条理劇ねぇ〜。」

A 「そうなのよ、不条理なの、この劇って。で、その内、来訪者が元の住人達と生活を共にしだすのね。」

E 「益々不条理ですね。って言うか、寓話ですか?」

A 「そんな感じにもとらえる事が出来るかもね。」

T 「そんなんでぞ〜〜と続いちゃう訳?なんか<ゴドーを待ちながら>みたいねぇ〜。」

A 「違うのよ、それが。段々国の権力とその町の人達が戦っているのが分かってくるのね。」

E 「息詰まる展開になってくるんですね。」

A 「それがそうでもないのよね。勿論息詰まる場面も有るんだけど、 その町に住んでいる老人達が笑いを誘うのよ。犬山イヌコと松永玲子の老姉妹と大倉孝二の老人。 この3人の何とも言えない可笑しさ。それに得体の知れない地中生物。いい所で登場するから疲れないのね、 いい意味で。」

T 「それじゃぁ時間もあっと言う間に経っちゃうわよねぇ〜。 ず〜っとシリアスだったら疲れちゃうものねぇ〜。観る側も。」

E 「そうですよね。上手いんですね、演出が。」

A 「そうね。それに、役者の力量があるからじゃないのかしら。 それからこの芝居で特に感じたのは権力側の服の色ね。」

E 「何色だったんですか?」

A 「赤だったのね。赤って血の色じゃない。そこに国家の圧力みたいのを感じたのね。」

T 「それにはっきり分かるしね、誰がどっちに属しているかってねぇ。」

E 「そうですね。」

A 「エリー、もう空になってるわよ。次は何にする?」

E 「そうかぁ〜。それじゃぁ〜次はラム・コークって有りですか?」

A 「勿論よぉ。・・・・はい、お待たせ。」

T 「でもさ、いいわよね、芝居に限らずいい物にあたるってねぇ〜。」

E 「そうですよね。僕も誰かいい人に当たらないかなぁ〜。」

T 「まあ、普段の行ないね。」

E 「敏男さん、酷〜〜〜い。」

A 「まあ、タイミングよ、タイミング。」

E 「タイミングですよねぇ〜。」

T 「エリーお場合は普段の行ないね。」

E 「そんなに悪いですか?僕。」

T 「冗談よ、冗談。まぁ〜、本気にしちゃうんだから。やっぱり若いわねぇ〜。」

E 「若いのだけは負けませんよ、敏男さんには。」

A 「そんな事言ってるから<普段の行ない>って言われちゃうのよ。」

E 「すいませ〜〜ん。」

一同 「ははは・・・・・。」

おわり
*登場人物は全て仮名です。

*今回紹介したお芝居は

1) G−コン <らっへんほっほしゅ〜れ>
          公演終了
2) 新宿梁山泊  <ベンガルの虎>
          公演終了
3) ナイロン100℃  <2番目或いは3番目>
          上演中〜7/19まで  本多劇場
          全国公演あり
4) 椿組 <天保12年のシェイクスピア>
              7/16〜25  新宿花園神社
以上です。暑い日が続きますがどうぞ足をお運び下さいね。

2010.7.18


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