<平日繁盛願います>の巻

遼ちゃん(以下R)「こんばんはぁ〜。」

あき(以下A)「いらっしゃ〜い。暑い中、有難うございます。はい、オシボリどうぞ。」

カンちゃん(以下K)「遼ちゃん、久し振りぃ〜。」

R 「あ〜、カンさん、今晩は。本当に久し振りですね。元気でしたか?」

A 「それがねぇ〜。」

R 「何かあったんですか?」

K 「うん、ちょっとね。暫く入院しててさ。もう歳だなって。今、 アキちゃんともそんな話をしてた所んだったのね。」

R 「それは大変でしたね。で、どこが悪かったんですか?凄く飲むから肝臓ですか?」

K 「まあ、笑わないで聞いて欲しいんだけどさ、足をね、骨折しちゃって。」

R 「それは大変だぁ〜。」

A 「それがさ、・・・って、その前に注文聞いていいかしら?」

R 「あっ、そうでした。今日は平日だからあれ大丈夫ですか?」

K 「何なの?あれって。」

A 「<平日限定90分飲み放題コース>よね。」

K 「あれ、そんなの有ったの?」

A 「カンちゃん、ちゃんと見てよぉ〜。あそこにも書いてあるじゃないのぉ!」

K 「あら、本当だ。」

A 「遼ちゃん、メニューはこれよ。」

R 「有難うございます。へ〜、こんなに選べるんですね。」

K 「どれどれ・・・。殆ど大丈夫じゃん。2500円だったら90分以内に3杯以上飲む人にはいいよね。」

A 「そうでしょ。最近平日めっきりお客様が少なくなってしまったからね。まあ、 キャンペーンって所かしらね。」

R 「それじゃ、始めはビールをお願いしようっと。」

A 「アイヨッ!・・・・はい、お待たせしました。」

R 「で、骨折の話なんですけど・・・。」

A 「あっ、そうだったわね。それがさ、ちょっと笑っちゃうのよね、カンちゃんには悪いんだけど。」

K 「まあ、それが歳を感じたって事なのよ。」

R 「えっ?」

A 「でも、アッシも焦ったわよぉ〜。」

R 「早く話して下さいよぉ〜。」

K 「もう何月だったかなぁ〜・・・。そうそう5月だよ。アキちゃんと劇場で合ったんだよね、 偶然。で、終わったら食事しようって事になってさ。」

A 「で、芝居が終わって劇場入り口で待ってたのよ。で、待てど暮らせど出てこないじゃな〜い。 そしたらさ、救急車が来て、ストレッチで運ばれてる人がいるのよね。良く見たらさ、 カンちゃんじゃないのぉ〜。どうなっちゃったの?って。」

R 「ビックリしますよねぇ〜。」

A 「そうでしょ。今の世の中、何があるか分からないじゃない。急に刺されたりするしさ。でもね、 誰も騒いでなかったら刺された訳じゃないな、って。で、 消防署の人に知り合いですって言ったら病院まで一緒に来てくださいって。」

R 「それじゃ、付き添ったんですね。」

A 「そうなのよぉ〜。で、話を聞いたらさ、階段で足踏み外したって言うじゃな〜い。もう呆れちゃってぇ。 病院で直ぐにレントゲン撮ってもらったら複雑骨折だって言うじゃない。それで丸2ヶ月ね。」

K 「もうアキちゃんにはご迷惑をお掛けしましたよ、本当に。」

A 「そんなのは良いのよぉ。今じゃ普段と変わりない生活を送れるんだからさ。」

R 「そうですよね。所で、芝居、観に行ってますか?」

A 「勿論よぉ〜。」

K 「まあ、アキちゃん、何時ものように毎週行ってるみたいだよ。」

R 「最近何か良かったのってありますか?」

A 「そうね。最近じゃ、劇団桟敷童子の<蟹>が良かったわよ。」

K 「桟敷童子、好きだよねアキちゃん。」

A 「そうねぇ〜。なんか昔ながらのアングラを感じさせるし、何よりも芝居そのものに勢いを感じるのよね。」

R 「アングラ・・・。まあ、僕らの世代には分からないなぁ〜。」

K 「まあ、今はアングラっていう時代じゃないしね。アンダー・グラウンドだよ、アングラ。」

R 「地下組織とか前衛的なとか・・・ですよね。」

A 「まあ、そういう意味なんだけどさ。そういう前衛的な芝居をしていた時代を感じさせるっていうのかな。 寺山とか唐とか鈴木忠とかね。そんな時代を感じさせる芝居をする劇団なのよね。」

K 「で、今度の<蟹>ってどんな芝居なの?」

A 「戦後の九州のある炭鉱町だった所が舞台なのよね。 戦争中に閉鎖された炭鉱の坑道の奥に軍部が残した宝が有るっていう噂から、 戦後そこに住みついた人々とヤクザとの抗争を描いたものなのよ。」

R 「それが何で<蟹>なんです?」

A 「蟹ってさ、色々食べるらしいのよ。でね。」

K 「まあ、ちょっとキモイね。」

R 「そういう意味なんですか。」

A 「まあ、それはさて置き、やっぱり役者達が本当に上手いのね。皆が実力ある、って感じなのよぉ。 特に炭鉱の坑道に住んでいるっていう設定のボウボウを演じた板垣桃子。彼女、 この劇団の看板女優なんだけど、本当に素晴らしいわ。それに池下重大、外山博美、原口健太郎、 もりちえ、鈴木めぐみ、松田賢二などなど、夫々が本当に素晴らしいのね。」

R 「へ〜、そんなに凄いんですね。」

K 「もうアキちゃん超お気に入りなんだからね。」

A 「だってぇ〜、本当に素晴らしいんだものぉ。役者達もそうなんだけど、舞台装置なんかもね。 小劇場であそこまでやるか、ってぇ。」

K 「確かに凄いよね。水はふんだんに使うし、屋体は崩れるしでね・・・。」

R 「へ〜、屋体崩しまで。」

A 「そうなのよね。40年前は唐組、まあ、当時は状況劇場だったけど、 話が終わる頃にテントの後がパ〜っと開いた事だけでも感動したのにね。だって、そんなの初めて見たしね。 それがさ、今じゃ屋体崩しを小劇場でやっちゃうんだからね。 昔は屋体崩しって言ったら歌舞伎くらいだったじゃない。」

K 「まあ、確かにそうだよね。」

R 「あの〜、ビールもう一本お願いします。」

A 「あ〜、遼ちゃん、ごめんね。飲み放題コースのビールは一本までなのよ。ね、 ちゃんとここに書いてあるでしょ。申し訳ないんだけど、他のから選んでもらえるかしら。」

R 「あっ、そうなんですね。そうですよね、アキさんところはエビスですからね、それも500ml。 それじゃ〜ぁ、ラム・ソーダでお願します。」

A 「レモンかライムは?」

R 「ライムがいいな〜。」

A 「アイヨッ!・・・はい、お待たせ。」

R 「うん、美味しいです。話は戻りますけど、何か観たくなりましたね、その桟敷童子でしたっけ?」

A 「そうね、是非一度観てよ。でもさ、今回はもう終わっちゃってるのよね。で、 次回は何と来年の6月なんだって。」

R 「アキさん、それだったら、その時声掛けて下さい。」

K 「俺も行ってみようかなぁ〜、久し振りに。」

A 「そうよ、行ってみてぇ〜。」

R 「まずは観てからですよね。他に何かありました?」

A 「芝居じゃないんだけど、<やもり>のコンサートに行ってきたのよ。凄く良かったのよね、これが。」

K 「やもり?なんじゃそれ。」

R 「僕も知りませんね、そんなアーチスト。」

A 「そんな事ないわよ。特にカンちゃんは絶対に知ってるって。」

K 「えっ?俺、知ってるの?」

A 「そうよ〜。有名人だもの、二人とも。」

K 「二人?ぜ〜んぜん分かりませ〜〜〜ん。」

R 「気になりますね。教えて下さいよ。」

A 「矢野顕子と森山良子よぉ〜。」

K 「あ〜、あの二人かぁ〜。」

R 「それで<やもり>なんですね。」

K 「何で分かるの?俺は、その<やもり>とあの二人が結びつかないんだけどなぁ〜。」

A 「若さの違いよね、ははは・・・・。」

R 「アキさん、もう一杯お願します。」

K 「もう飲んじゃったの?」

R 「はい、美味しかったです。」

A 「はい、お待たせ。」

K 「で、何で<やもり>なんだよぉ〜。」

A 「矢野顕子の<や>、森山良子の<もり>。それを合わせて<やもり>っていう訳よ。」

K 「な〜んだ、そんなに単純なのかぁ〜。」

R 「で、どうだったんですか?」

A 「もうアッシらの世代にはたまらないコンサートだったわね。」

K 「どんな曲やったのかな?」

A 「彼女達のオリジナルを含めて全部で19曲。」

K 「勿論、夫々の曲もやったんだよね。」

A 「勿論ね。まだそのユニットでアルバム1枚しか作ってないし、 それだけでコンサートするには曲が少なすぎるからね。」

K 「例えばどんな曲?」

A 「<へびの泣く夜>とか<さとうきび畑>とかぁ〜・・・。」

R 「その<さとうきび畑>は知ってますよ。ザワワ、っていいうヤツですよね。」

A 「そうそう。それと昔から唄われている歌で<死んだ男の残したものは>とかね。」

K 「アキちゃんの世代にはたまらないね。」

A 「それから、このコンサートで改めて思ったんだけど、矢野顕子のピアノの上手さと森山良子の歌の上手さ。 特に矢野顕子のピアノは抜群でさ、アッシもこの人のピアノで唄ってみた〜いって。」

R 「へ〜、そんなに上手なんですね、矢野顕子って。僕はあんまり知らないんですけどね、彼女。」

K 「坂本龍一の前の奥さんで坂本美雨のママだよ。」

R 「あ〜、そうなんですね。それで聞いたことあったんだぁ〜。」

A 「もう嫌になっちゃうわよね、この年齢の差。ははは・・・・・。」

K 「昔のフォーク・ブームを思い出したんじゃないの?」

A 「そうね。最後はお客さんも一緒になって武満メモリアル・ホールが歌声喫茶になったしね。 もう楽しかったわよ。」

R 「歌声喫茶?何ですか、それ。」

K 「皆で歌うんだよ、その喫茶店に来ている人、皆でね。」

R 「へ〜。カラオケの唄回しみたいなものですかね。」

A 「ま〜、違うけど、そんなものよ。」

K 「俺は来週から夏休みなんで何か観に行こうかなって思ってるんだけど、お勧めあるかな?」

A 「そうねぇ〜。渡辺えりの一人芝居なんかどう?旧盆の時、スズナリでやるんだけど。」

K 「渡辺えりかぁ〜。」

R 「一人芝居なんですね。ちょっと観たいかも。」

A 「帝劇ではミュージカル<エリザベート>も始まるしね。 それから上野の不忍池にある水上音楽堂でtptがやるチェーホフの<かもめ>もあるし。」

R 「色々ありますよね。僕も10日間休みだから何か行こうっと。」

K 「10日も休みなんだぁ〜。いいなぁ〜。」

A 「本当よね。アッシも休みた〜い。まあ、そんな贅沢は言ってられませんけどね、この状況じゃ。」

R 「でも、休養も必要ですよ。」

A 「そうね。思い切って休んじゃおうかしらん。」

K 「休んじゃえ、休んじゃえ〜〜。」

A 「そんな簡単に言わないでよぉ、本当に。」

R 「それじゃ、今度は・・・ワイルド・ターキーのソーダ割りで。」

A 「アイヨッ!」

K 「まだ飲むの?」

A 「まだまだ時間は有りますよ。沢山飲んでね。」

K 「アキちゃんも大変だぁ〜、ホントに。」

A 「まあ、笑うしかないわね、ははは・・・・。」

R 「ちょっと遠慮しなきゃいけませんかねぇ〜。」

A 「いいのよ、気にしなくて。沢山飲んで下さいよ〜。」

R 「それじゃ、遠慮せずに頂きま〜〜す。」

K 「まあ、人が居ないよりはいいかぁ〜。」

A 「そうそう。カンちゃんも平日是非来てね。」

K 「なるべく来ますよ、平日も。」

A 「宜しくね。」

K 「それじゃ、俺ももう一杯。ラフロイグのロックで。アキちゃんも何か飲んで。」

A 「有難うございます。それじゃ、アッシはブランディーを頂きますね。」

K 「平日の繁盛を願って、乾杯といきますかぁ。」

R 「それじゃ、かんぱ〜い!」

一同 「かんぱ〜〜〜い!」

おわり
*登場人物は全て仮名です。

*今回紹介したお芝居などは、

1) 劇団桟敷童子 <蟹>
    公演終了
2) <やもり> コンサートツアー
    公演終了
3) 渡辺えり一人芝居<乙女の祈り>
    8/15〜16   下北沢 ザ・スズナリ
4) ミュージカル<エリザベート>
    8/9〜10/30  帝国劇場
5) tpt<かもめ>
    8/13〜19    上野不忍池水上音楽堂
以上です。暑い日が続きますが、どうぞ足をお運び下さいね。

2010.8.8


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