<キ・レ・イ〜〜!!>の巻

うっち(以下U)「アキさん、お代わりください。」

あき(以下A)「あいよっ!今日は少し早いんじゃないの?ペースが。」

ワンちゃん(以下W)「調子いいよね、うっち。」

U 「そうなんですよぉ〜。何か、あれですかね、気持ちいいと調子も良くなるんですかね。」

W 「うっち、何かいい事あったの?」

U 「いい事、って言うより、いい物を観てきたからなんですけどね。」

A 「何観に行ったの?」

U 「映画です、バルト9で。」

W 「映画、観てないな〜。アキちゃん、最近何か観た?」

A 「アッシ、この前久し振りに行ったのよ。」

U 「何観たんですか?」

A 「<シングルマン>っていう映画でさ、 今年のアカデミー賞で主演のコリン・ファースが男優賞候補になった映画よ。」

U 「アキさ〜ん、実は今日観てきた映画って、正にそれなんですよぉ〜。」

A 「な〜んだ、うっちも<シングルマン>観てきたんだ。・・・はい、うっち、 お待たせしました。良かったわよね、あの映画。」

U 「本当にいい映画でしたね。」

W 「へ〜、そんなにいい映画だったんだぁ〜。」

A 「もう映像が綺麗なんてもんじゃないのよ。全てのカットがファッション雑誌なのよね。」

U 「本当にそうですよね。」

W 「どんな内容なの?」

U 「恋人を交通事故で亡くしちゃった大学の教授の話なんですよね。」

W 「へ〜、それはショックだよねぇ〜。」

U 「そうなんですよ。彼は自殺を考えているんですよね。」

A 「そう。愛する者がいなくなった自分の意味を考えちゃうのよ。」

W 「なんか、センチメンタルというよりも、心の深いところまでを描いている映画みたいだね。」

U 「流石ぁ〜ワンちゃんさん。そうなんですよねぇ。もしオイラが同じ立場だったらどうなのかなぁ〜って。」

A 「実はアッシ、当時の彼氏じゃないんだけど、昔付き合ってた彼氏が交通事故で、って、 まあその前の原因が心臓発作だったんだけど、亡くなった経験があるのよ。」

W 「そうなのぉ〜?」

A 「もう随分前の事なんだけどさ。」

U 「その時のアキさんの気持ちってどうだったんですか?」

A 「まあ、遠くに離れていたから、まずは<えっ?>って。考えられないのよね、その事実を直ぐには。」

W 「そりゃそうだよね。」

A 「まあ、別れてから結構時間が経っていたからこの映画の主人公とはまたちょっと違う感覚だとは思うんだけどね。 でも、暫くショック状態だった事には間違いないわね。」

U 「この映画の二人は16年も一緒に暮らしてたわけですから、もう家族も同然だったんでしょうからね。」

W 「そりゃ凄いショックだよね、きっと。」

A 「想像もできないじゃない。アッシ達はそんなに長いこと暮らした事もないしさぁ。 無理に想像しようと思えば出来ない事もないけどね。」

U 「そうですよね。この映画の主人公ってどうだったんですかね、本当は。」

A 「本当も嘘もないと思うのよ。ショックで自殺を考えている事も事実だろうし、 その後で登場するスペインから来た青年や学生に対する気持ちも事実だと思うのね。」

W 「ちょっと待ってよ。って言う事は、その主人公はゲイ?」

A 「あら、言ってなかったわね、そう言えば。そうなの、主人公はゲイなのよ。」

U 「でも、彼がゲイであるかないかなんて関係ない映画ですよね。」

A 「全くその通りよね。ただ、時代設定が1962年って事もあるじゃない。」

W 「そうかぁ〜。」

U 「えっ?どういう事なんですか?」

W 「1962年って事は、まだゲイ差別が相当あった時代なんですよ。だから、 映画自体はゲイであろうとなかろうと関係ないかもしれないけど、 当時の想像も出来ないゲイの悲しさや孤独を表現しない訳にはいかないからね。」

U 「はぁ〜。なるほどぉ〜。」

A 「愛する人を亡くした人間としての悲しみは同じなんだけど、 そこにゲイという存在が加わると孤独の二文字が大きく圧し掛かってくるっていうことよね。 それがその時代だから尚更よね。」

U 「今じゃ考えられないくらいなんでしょうね、その頃は。」

W 「そりゃそうだよ。ケネディー大統領が暗殺される前だよ。」

U 「って言われても〜〜・・・。」

A 「まあ、そうよね。うっちはまだ生まれてないもんね。その時代は分からなくても仕方ないわよ。」

W 「そんな時代設定の映画じゃ、センスが良さそうだよね。」

A 「そうなのよ。さっき本当に綺麗で、全編がファッション雑誌って言ったけど、 何しろ本当に凄いのよ。」

U 「主人公も主人公の元彼女も本当に綺麗でしたよね。」

A 「特に、主人公のコリン・ファース演じるジョージが死ぬための準備をするシーン。」

U 「あ、あれですね。」

A 「そうそう。ボタンダウンのシャツ、スーツ、ネクタイ、靴、万年筆。 そしてネクタイの結び方を指示するメモ。もう本当にオシャレ!」

W 「へ〜。本当に観たくなってきたなぁ〜。」

A 「それに加えてジョージの元彼女でジュリアン・ムーア演じるチャーリーの服、髪型、化粧。 もうたまらないわよ。」

U 「流石に元ファッションデザイナーのトム・フォードらしいですよね。」

W 「あのトム・フォードなんだ。そりゃ凄いけど、あの人映画に進出してたんだね。」

A 「そうなの。この映画が初監督みたいね。」

W 「それじゃ絶対観に行かなきゃな。」

U 「ホント、綺麗ですから。」

A 「綺麗と言えばさ、この前これ観に行ったのよね。」

U 「<カーディガン>ですね。」

W 「でたでた、アキちゃんも本当に好きだねぇ〜。」

U 「で、どうだったんですか?って、その前に、え〜と、タンカレーのテンをロックで。」

W 「俺は今月のお勧めでももらおうかな。」

A 「あいよっ!・・・はい、お待たせしました。」

U 「何だ、この色。な〜んか妖しいですね。」

A 「でしょ。今月のお勧めドリンクは<月に憑かれたピエロ>っていうのよ。」

W 「あ〜、それで三日月型のレモンが入っているんだ。」

A 「そうなの。秋の夜の妖しい感じが出てると思わない?」

U 「出てますよ、これ。で、どうだったんです?」

A 「あっ、そうだったわね。話はね、 事故で大量出血したサラリーマンと誰かに刺されたヤクザが大量輸血をしたことからお互いの人格が変っていくっていうコメディーなのかな。」

W 「でもどうなの?市原隼人って。」

A 「アッシも心配だったのよぉ。TVや映画じゃ通用するかもしれないけど、舞台は生じゃない。 それにあの声。ちょっと籠もってるしさ、客席の後の方まで聞こえるかしらとかね。」

U 「で、聴こえたんですか?」

A 「アッシには分からないのよ、最前列だったから、ははは・・・。」

W 「きたきた。」

A 「でもね、後の方にペンギンのお客様がいらしてたんだけど、 良く聞こえたって言ってたから届いてたのよね、後まで。」

W 「もうず〜〜っと見てた、っていうか顔見しちゃったんじゃないのぉ〜?」

A 「お客様にも言われちゃったわよ、中井貴一の方、全く見てなかったって。」

U 「そんなに良いですかね、彼。」

A 「も〜〜う、綺麗だもの。でもね、だからこの舞台が良かったって言ってる訳じゃないのよ。 このテーマね。人間は生まれ変れるか?ってところ。」

W 「う〜む、中々奥が深いテーマだよね。で、変れたの?舞台では。」

A 「それはね〜。まだ始まったばかりだから内緒。ふふふ・・・。ワンオアエイト(ONEOR8) の田村孝裕のオリジナルだから、どうなるのかしらとは思っていたんだけど、良く出来てたわよ。 今はそれしか言えないわね。物語は回りまわってって・・・ってな感じかな。」

U 「アキさん、本当に好きなんですね、市原隼人。ず〜っとニコニコしちゃってますよ。」

A 「あら、そう?でもさ、本当に綺麗だったわぁ〜。あんなに綺麗な子、久し振りに見たわね。」

W 「確かに綺麗って大切だよね。さっきの映画もそうだったんでしょ。俺さ、 最近の若い子であんまり見ないんだよね、綺麗な子を。」

A 「それは言えてるかもね。みんな同じ恰好してるもんね。そう言う時代なのかもね。 だからイッチが綺麗に見えちゃうのかも。昔だったらもっと居たかもしれないわよね。」

U 「掃き溜めに鶴、ですかね。」

W 「そこまでは言ってないでしょ、アキちゃんも。」

A 「そうよぉ、そこまでは・・・。ははは・・・・・。」

一同 「ははは・・・・・・。」

おわり
* 登場人物は全て仮名です。

* 今回紹介した映画、お芝居は、

 1) <シングルマン>
      新宿バルト9ほかで上映中

 2) <カーディガン>
      上演中〜11/23まで   PARCO劇場
      11/26〜28        大阪・森ノ宮ピロティホール
      12/3〜5          福岡・キャンルシティー劇場
 以上です。どうぞ足をお運び下さいね。

2010.11.8


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