<ディスカバー・ジャパン>の巻

タッキイー(以下T)「こんばんはぁ〜!」

あき(以下A)「いらっしゃ〜い!あら、タッキー、久し振りねぇ〜。はい、オシボリどうぞ。」

T 「ホントにご無沙汰しちゃいまして・・・。実は長期の海外出張だったんですよ。」

A 「あら、そうだったの。で、どちらへ?」

T 「ボストンです。」

A 「いい町よね、ボストンって。」

T 「アキさんも行った事あるんですか?」

A 「勿論あるわよ。もう20年以上前までね。何回も行ったわね。」

T 「あっ、そうそう。注文しなきゃ。え〜と〜・・・、今月のお勧めドリンク、 <リモンチェッロ・クーラー>ってどんなのです?」

A 「今月のお勧めは、リモンチェッロっていうレモンのリキュールがあるんだけど、 それとヴォッカを混ぜてソーダとジンジャーエールを同量加えた物なのよ。とっても飲み易いドリンクよ。 飲んでみる?」

T 「そうですね。折角ですから。じゃ、それお願します。」

A 「アイよっ!・・・・はい、お待たせ。」

T 「う〜む、本当に飲みやすいですね。ちゃんとお酒も感じるし。」

A 「ね、美味しいでしょ。でも、結構アルコール度があるから一気にいかないようにね。ははは・・・。」

T 「話を戻しますけど、20年以上前なんですね、ボストンに行ってたの。 そう言えば僕が聞いてたのは殆どニュー・ヨークでしたよね。」

A 「そうね。20数年前にボストンに住んでた友達が殆ど亡くなっちゃったからね。 ちょっと想い出が多すぎちゃって。」

T 「あれですか?」

A 「そうね。その頃ってまだ薬が無くてね。哀しかったなぁ〜。」

メグ(以下M)「アキさんでも哀しくなる事ってあるんですね。」

A 「あら、失礼ねぇ〜。当たり前じゃないのよ!」

M 「冗談ですよぉ。」

A 「さっきも言ったけど、本当にいい町だったわね。イザべラ・ガードナー美術館。あの中庭。 もう本当に素敵なのよ。それに車で大分行ったところなんだけど、プロヴィンス・タウン。静かで美しくて。 それからボストン美術館ね。あそこにはアッシなんか全く知らない浮世絵が沢山展示してあってね。 日本再発見って感じだったわね。」

M 「そう言えばさ、この前何か言ってましたよね、日本再発見みたいな話。何でしたっけ?」

A 「え〜〜?そんな話したっけ?」

T 「暫く来ない間にアキさんもとうとう来ましたかぁ〜、ははは・・・。」

A 「何タッキーまで言ってるのよぉ〜。ちゃ〜んと覚えてますとも。あれよね、あれ。三好十郎でしょ。 <浮標・ぶい>の事よね。」

M 「そうそう、それですよ。4時間くらいあったんですよね、その芝居。」

T 「そんなに?疲れませんか?そんなに長いと。」

A 「それがさ、アッシもそう思ってたんだけど、結構あっと言う間に終わったのよね。」

M 「それって、その芝居が良くできてたってことでしょ。」

A 「う〜む、そうじゃない、多分。何しろ台詞劇じゃない。飽きるかなってちょっと思ったんだけど、 そうでもなかったのよ。」

T 「会場は何処だったんですか?コクーンかなぁ〜。」

A 「そうじゃないのよ。横浜に新しく出来た劇場、神奈川芸術劇場の大スタジオってところ。」

T 「日本はまだまだ出来てるんですね、新しい劇場が。」

A 「そうなのよね。でも、遠いのよ、そこ。さっきも言った様に横浜じゃない。それも赤レンガ倉庫のそば。 この時開演が6時半だったから東京で仕事している人は中々間に合わないわよね。」

M 「それもそうだけど、帰りが大変じゃんねぇ〜。」

A 「そうよね。終演が10時半過ぎじゃない。だから帰りを急ぐ人も多かったわ。 その辺がこの劇場のこれからの課題じゃない?」

T 「で、芝居の話に戻しましょうよ。」

A 「そうね。舞台は客先の前方に四角い囲い。その中に砂。囲いの両脇に椅子。」

M 「へ〜。じゃぁ観客が想像するって事だよね、シーン、シーンを。」

A 「そうそう。で、その砂の敷き詰められた中で動き始めるんだけどね。中心になるのは、 天才肌の画家と余命幾ばくかの妻の話なの。死を覚悟しているけど生きようとしている妻、妻を愛し、 貧しいながらも看病し続ける夫。第二次世界大戦に突入する前、まだ日本が中国と戦争をしていた時代の話なの。」

M 「なんか、オイラだったら飽きちゃうかも。」

T 「そうですよねぇ〜、4時間はちょっと長すぎるかも。それに何故今純日本文学なのか、 っていう所にも引っかかりますねぇ。」

A 「まあ、そうでしょうね。アッシも最初はちょっとそう思ったんだけどね。観終わって考えてみたら、 だから今こそ純日本文学なんじゃないか、って。」

M 「どう言う事?」

A 「今の時代、不景気で大変な時代なんだけど、 それでももっと大変な時代を生きてきた人々がいたっていう事を自覚すると共に今が何て幸せな世の中なんだと改めて思うことの必要性を感じなきゃいけないんじゃないかと・・・。」

T 「なるほどねぇ〜。確かに今は不景気で大変だけど、物は溢れていますもんね。それが当たり前じゃなくて、 ここまで来るには色々と先達の苦労があったんだよ、って自覚しながら生きていかなきゃいけないって事ですよね。」

A 「そう思うんだけどねぇ〜。」

M 「所でさ、そんな長い時間の芝居じゃ役者さん達も大変だよね。」

T 「そうですよねぇ〜。どうだったんですか?」

A 「天才画家の五郎を演じたのが田中哲司なんだけど、殆ど喋りっぱなし。本当に良くやったとは思うのよ。」

M 「出ました!アキさんのダメ出しが。ははは・・・。」

A 「ダメ出しなんかできる立場じゃないんだけど、 アッシには台詞を話すのにいっぱいいっぱいに見えちゃったのよね。まあ、 プレビュー初日だから仕方ないと言えば仕方ないんだけどさ。」

T 「4時間ですよね。もう僕なんかだったら絶対に覚えられませんよ〜。」

M 「あったり前じゃん、ははは・・・。」

A 「その妻を演じた藤谷美紀が良かったわね。ず〜っと寝ているんだけどね、こっちに気持ちが伝わってくるのよ。 彼女の芝居の名かでも出色の出来じゃないかしらね。」

T 「でも不思議なんだけど、ちょっと観たくなりました。もう終わっちゃいましたか?」

A 「東京公演が上演中よ、吉祥寺で。」

T 「それじゃ、行ってみようかな。」

A 「そうね。観てきて感想聞かせてよ、タッキーの世代の感想を。」

M 「重責だよぉ〜・・・、ははは・・・。」

A 「メグったら。アンタも観てきなさいよ!」

M 「いや〜、オイラには難しそうで。止めときますよ。その他に何かお勧めありますか?」

A 「そうね〜、あっ、そうそう。これなんかどう?」

M 「また長いんじゃないのぉ〜。」

A 「まあ、そこそこ。2時間半弱かな。」

M 「結構長いなぁ〜。あれ?古田新太が出てるじゃん。」

T 「好きなんだ、彼。」

M 「まあ、まあですけどね。」

T 「え〜、何これ?<真心一座身も心も〜流れ姉妹たつことかつこ〜ザ・ファイナル>かぁ〜。題名長〜〜〜い。 ははは・・・。」

A 「<真心一座身も心も>って言うのが劇団名。<流れ姉妹たつことかつこ>がタイトルよ。で、 これシリーズになってて今回が最後だから<ザ・ファイナル>ってな訳。」

T 「なるほどぉ〜。」

M 「そんな感心するほどの事じゃないんじゃない、ねえ、アキさん。」

A 「まあね。で、この芝居、映画の様っていうか、大衆演劇っていうか、何しろ面白い要素が沢山あるのよね。 それに今回はゲイネタだったんだけど、その描き方も不快感がなくて良かったのよ。」

M 「へ〜。この古田新太の横にゲストレイパー、池田成志の横にゲストラヴァーってあるけど、これは?」

A 「あ〜、これね。このシリーズお決まりがあるのよね。姉のたつこが毎回恋に落ちるのがゲストラヴァー、 妹のかつこを毎回陵辱するのがゲストレイパーといって、毎回登場するのよ。で、今回のファイナルが彼らなのね。」

T 「面白そうじゃないですか。」

M 「ねぇ、面白そうだよねぇ。」

A 「性格が全く対照的な姉妹が安住の地を求めて全国を駆け巡り、 各地で出会う彼女達を取り巻く男達との関係を描いていくこの芝居、本当に笑えるし泣けるし、 ってあんまり泣くはないかもね、ははは・・・。でもさ、本当に面白いから2時間半があっと言う間。 <浮標>は休憩が2回入るけど、こちらはぶっ通し。」

T 「ある意味、どちらも<ディスカバー・ジャパン>って感じですよね。」

A 「あら、本当だわ。<浮標>は日本文学を再発見って感じだし、<流れ姉妹>の方は日本を駆け巡るしね。 正に<ディスカバー・ジャパン>よね。」

M 「あ〜、オイラも日本全国巡ってみたいな〜。」

A 「まずはこの芝居で巡ってきたら?」

M 「まあ、財布の中身と相談しても、芝居を観るのが精一杯かなぁ〜。」

T 「気持ちが大切だよ、メグちゃん。芝居で<ディスカバー・ジャパン>しましょうよ、ね。」

M 「そうしようかなぁ〜、仕方ない。ははは・・・。」

T 「それじゃ、<ディスカバー・ジャパン>に乾杯しませんか?僕お代わり下さい。 それからメグちゃんとアキさんにも何か。」

M 「いいのぉ〜。それじゃ、オイラはラフロイグを頂きましょうっと。」

A 「アンタ、最初は遠慮するものよ、嘘でもいいからさ。」

T 「本当にどうぞ、何か。」

A 「それじゃ、遠慮無しに頂きますね。・・・はい、お待たせしました。」

T 「それじゃ、改めて、<ディスカバー・ジャパン>に乾杯!」

一同 「かんぱ〜〜〜い!」

おわり
*登場人物は全て仮名です。

*今回紹介したお芝居は

 1) <浮標> 
     上演中〜2/13   吉祥寺シアター

 2) <真心一座・身も心も〜流れ姉妹たつことかつこ〜ザ・ファイナル>
     上演中〜2/6  本多劇場
     2/17〜22    凱旋公演  吉祥寺・前進座劇場
      その他、大阪、新潟で公演あり
 以上です。寒さはまだまだ続きますが、どうぞ足をお運び下さいね。

2011.2.6


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