![]() |
<ふたつの三島>の巻
|
智ちゃん(以下T)「アキさん、今晩は!」 あき(以下A)「いらっしゃ〜い。はい、智ちゃんオシボリどうぞ!」 ユッキー(以下Y)「智さん、久し振りで〜す。」 T 「来てたの?ユッキーも。」 Y 「そりゃそうですよぉ〜。今日はアカデミー賞の発表の日じゃないですかぁ。 オイラ毎年結果が楽しみで聞きに来るんですよ。」 T 「そう言えばそうだよね。」 A 「智ちゃん、話の前に注文聞いていいかしら?」 T 「アッ失礼しました。え〜と、今月のお勧めは?」 A 「今月は<桜貝の恋>よ。ヴォッカに桜リキュールを混ぜてソーダで割ったのね。」 T 「それじゃ、お願します、今月のお勧め。」 A 「アイヨッ!」 T 「で、どうだったんです?今年のアカデミーは。」 Y 「さっきアキさんから聞いてんですけど、今年は<英国王のスピーチ>が主要部門を獲ったんですって。」 T 「やっぱりねぇ〜。アカデミー賞では<ソーシャル・ネットワーク>は嫌われるだろうって思ってたのよ。」 A 「はい、智ちゃんお待たせ。」 T 「綺麗なピンクですね、このドリンク。」 Y 「それに、何ですか?この花みたいなの。」 A 「これは桜の花よ。」 Y 「えっ???桜の花?こんなのあるんですね。」 T 「そう言えば毎年ですよね、桜。もう3月なんだな〜。梅を通り越して桜なんだよね、ペンギンは。」 A 「本来だったら梅なんだけどさ、何か梅じゃパ〜っとしないじゃない。で、 この季節になると三寒四温。段々暖かくなるし、桜が恋しくなるでしょ。で、 桜のドリンクを毎年3月から4月の桜が終わる辺りまで提供してるって訳なのね。」 Y 「さっすが〜。」 T 「で、アキさん、今年もやったんです?アカデミー賞予想クイズ。」 A 「勿論よ。残念ながら今年は誰も当たらなかったのよ。今年は助演賞の予想が難しかったみたいね。」 Y 「まあ、仕方ないですよね、観てないんだから。」 A 「公開してないものがほとんどだしね。でも、惜しい人は何人かいたのよ。」 T 「で、今年のクイズは作品賞のほかにどんなのを?」 A 「主演と助演の男女を当ててもらいたかったんだけどね。」 Y 「主演はわりと順当だったんですよね。」 A 「そうなのね。コリン・ファースとナタリー・ポートマン。」 T 「コリン・ファースは去年も<シングルマン>でノミネートされてたよね。今年獲ったんだぁ〜。」 Y 「助演が<ザ・ファイター>の二人、クリスチャン・ベールとメリッサ・レオだったんですよね。」 A 「そうなの。この二人を当てた人がいなかったのよ。」 T 「難しいよね、上映してないんだから。で、ショーはどうだったんの?」 A 「アッシはチョッとねぇ〜、ってな感じかな。司会の二人が若すぎたっていうか、 真面目すぎたっていうかね。」 Y 「今年の司会は?」 A 「アン・ハサウェイとジェームズ・フランコよ。」 T 「アカデミー賞も若返りを狙ってるのかな、ね。」 A 「まあ、そうでしょうね。でもさ、やぱり台本じゃない?人を若くしても台本が古臭かったらさぁ〜。」 T 「そうだよねぇ。ところで、最近何か観た?」 A 「先月は三島由紀夫の作品が続いたのね。で、それを観に行ったのよ。」 Y 「三島由紀夫?」 A 「ほら、ここに貼ってあったじゃない、東山と生田のポスター。」 Y 「あ〜、アレですか〜。」 T 「それってミシマ・ダブルって宣伝してたやつ?」 A 「そうよ、それ。でもね、アッシが観に行ったのはその一つ<サド侯爵夫人>。もう一つの三島は、 神奈川芸術劇場でやった<金閣寺>なの。」 T 「<サド公爵夫人>は台詞劇だから難しかったんじゃないかな。」 A 「その通りなのよぉ〜。やっぱり台詞劇はその名の通り台詞をちゃんと言わないとね〜。」 Y 「そんなに酷かったんですか?」 A 「酷くは無かったんだけど、東山君のサド公爵夫人ルネは台詞を覚えるので精一杯ってな感じだったのよね。 台詞は入っているんだけど、その後の台詞の租借がイマイチというか、全くダメだったというか〜・・・。」 T 「そりゃそうだよ。三島由紀夫の作品の中でも<サド侯爵夫人>は特に台詞が大きく物を言うからね。」 Y 「智さん、結構知ってますね。」 A 「そなの、ユッキー。智ちゃんは三島が卒論の題材だったのよね。」 Y 「へ〜、智さんって文学部だったんですね。」 T 「そうそう。三島は僕の永遠のテーマなんだ。」 Y 「いや〜、見直しちゃいましたよ、智さん。人は見かけによらないというかぁ〜・・・。」 A 「ははは・・・。言うわね、ユッキーも。」 T 「そうだよ。ちょっと失礼かな!ははは・・・。」 Y 「で、話を戻してくださいよ。」 A 「そうね。で、特にルネとルネの母親モントルイユ夫人、これは平幹二朗が演じたんだけど、 この二人の言い争いの場面になるとド〜ンと差が出ちゃうのよね。」 T 「さすがは平さん、ってところですかね。」 A 「全くその通りなの。だから、ミスキャストといえばそうなのかなって。」 T 「そうだよね。同じくらいのレベルで揃えないとキツイよね、この作品。」 A 「そうねぇ〜。東山君には良い勉強になったかもしれないけど、 観客からするともっと台詞に磨きを掛けてもう一度チャレンジして欲しいわね。」 Y 「もう一つの方はどうだったんですか?」 T 「やっぱりジャニーズでしょ。期待外れじゃなかったのかな?って期待してないかぁ〜。」 A 「ははは・・・・。まあ、辛口ねぇ〜、観てもいないのに。」 T 「って言う事は、結構良かったの?」 A 「こっちっはね。予想を遥かに超えた出来だったと思うわね、アッシは。」 Y 「誰だったんでしたっけ?」 A 「<金閣寺>の方は、やっぱりジャニーズの森田剛君。それに高岡蒼甫、大東俊介と若手が大活躍だったのよ。 宮本亜門の演出も<アイ・ゴット・マーマン>、<太平洋序曲>に次いで代表作の一つになったんじゃないかしらね。」 T 「アキさんにとっては本当に良かったんだね。」 Y 「金閣寺って京都にあるお寺の金閣寺ですよね。」 T 「そうだよ。その金閣寺が燃えたんだよ、放火で。それを題材にして三島が書いた小説が<金閣寺>なんだよね。」 A 「そうなの。それを去年暮れにオープンした神奈川芸術劇場のオープニング作品として宮本亜門が臨んだ作品なのよね。」 Y 「神奈川芸術劇場って、県民ホールとは違うんですよね。」 T 「ユッキー、何聞いてんの?去年オープンしたって言ってたじゃん。県民ホールはもう相当経ってるよ、できてから。」 Y 「すいませ〜〜〜ん。」 A 「まあ、まあ。今回の舞台は若手の3人が本当に活躍したっていうか、その3人を中心に物語を構成してたのね。」 Y 「その3人ってどんな人達なんですか?」 T 「まず主役、と言うか金閣寺を燃やした溝口っていう男なんだけど、 京都北部の貧しい寺に生れた彼は吃音が原因で子供の頃から周りとあまりコミュニケーションをとれないでいるんだよ。 その彼が父親からきっと金閣寺がお前を導いてくれるって言われて金閣の美しさを想像するんだよね。 でも、実際訪れた金閣は美しくはなかったんだよ。」 Y 「でも、金綺羅ですよね、金閣寺。」 A 「それは再建されてからよ。その後30年近く前にも金箔の張替えをしてるから、 今は本当に金綺羅なんだけどさ。でもね、金閣の美しさって時間によると思うのよ。 その美しい時間に居合わせなかったのね、最初は。」 T 「そう。僕もそう思うな。」 Y 「は〜。で、も一つ。吃音って、今やってる映画、<英国王のスピーチ>にも出てくるあれですよね。 彼もそうだったんだぁ〜。」 A 「そうなのよ。で、さっきも言ったけど、その事が彼の性格を語る上でも重要なのよね。」 T 「そうなんだよね。彼が修行僧として入った寺で出会う鶴川は、全く溝口とは逆で、明るい美青年。でも、 彼は人には見せない内面的な悩みを持っている。もう一人の柏木は、内翻足(内反足とも)で、 普通だったらそれを僻み内向的になっていく人が多い中、彼はそれを逆手にとって悪の道を突き進むんだよ。」 A 「そして、そんな柏木に溝口は惹かれて行くのよ。でも、もう一人の鶴川は、 溝口に柏木との関わりを止める様に進言するのね。そして鶴川との別れが訪れるの。 次第に柏木ともその生き方の違いを感じ離れていくのね。」 T 「そしてその後、自分が掛けていた内と外との間の鍵を開け放とうと金閣寺に火をつける事を決めるんだな。」 Y 「聞いてるだけでゾクゾクしてきました。」 T 「でしょ。僕はね、三島由紀夫の作品の中でもこの<金閣寺>が一番好きなんだ。」 A 「キャストも良かったし、ボリス・クドゥルチカの担当した舞台美術もシンプルで良かったし、 沢田祐二の照明がまた良かったしね。」 Y 「それじゃアキさん大感激ですね。」 A 「まあ、でも最後にちょっと不満があったんだけどね。」 T 「何だったの?」 A 「金閣寺、もっと燃えてほしかったのよぉ〜。」 Y 「何ですか、それって。」 A 「燃え方がね。アッシだったらぼうボウボウに燃やしちゃうんだけどなぁ〜。」 T 「でも、観たかったな〜。もうやってないでしょ。」 A 「それが今週末から4日間大阪であるのよ。」 Y 「行っちゃおうかな〜。」 T 「いいね。ユッキー、一緒に行く?」 Y 「いいですね〜。でも、ホテルは別ですよ!」 T 「何勘違いしてるんだよ、当たり前じゃんか、ははは・・・・。」 A 「ホントよ、ユッキーったら。ははは・・・・。」 一同 「ははは・・・・・。」 おわり
* 登場人物は全て仮名です。 * 今回紹介したお芝居は 1) ミシマダブルの内 <サド侯爵夫人> 上演終了 2) <金閣寺> 東京公演は終了 3/10〜13 大阪・梅田芸術劇場以上です。段々春がやってきます。どうぞ足をお運び下さい。 2011.3.7
|