<裏と表>の巻

タッチ(以下T) 「こんばんは〜!」

あき(以下A) 「タッチいらっしゃ〜い。・・・はい、オシボリどうぞ。」

T 「もうひと月過ぎちゃいましたねぇ〜。」

A 「本当ね。早いわぁ〜。でも、まだまだ揺れるじゃない。ちょっと怖いわよね〜。」

T 「アキさん、今月も桜ですか?」

A 「そうよ。先月とは違うけど。」

T 「今月は?」

A 「今月はね、<春霞>っていうドリンクなのよ。ウィスキーをベースに桜ドリンクとソーダでね。 勿論桜も入っているわよ。」

T 「じゃ、俺、それ頂きます。」

A 「アイヨッ!・・・・はい、お待たせ。」

T 「レモンも入ってるんだぁ〜。」

A 「ちょっとサッパリしてるわよ。」

T 「う〜む、桜餅の味ですね。」

A 「そうね。桜のリキュールがその味を醸し出してるのね。」

T 「それはそうと、もう芝居やライヴは再開してるんですかね。」

A 「結構やってるわよ。段々通常の生活に戻りつつあるわよね。でもさ、 原発がこれからどうなるか分からないじゃない。それに夏。都区内も計画停電必至らしいしね。」

T 「去年みたいに猛暑だったら大変ですよね〜、本当に。」

A 「そうね。でもさ、皆が停電も受け入れなきゃいけないしね。 前は23区が一部を除いて特別視されてた感じになったじゃない。 やっぱりあれじゃ文句を付ける人も多かったのは当たり前だと思うのよね。たださぁ〜、 通勤時間とかにやられると社会が動かなくなるし、時間帯には配慮が欲しいわよね。」

T 「そうですよね。勿論、被災している人達からしたら贅沢なんでしょうけど、 東京電力にはその辺りをちゃんと考えてほしいですよね。」

A 「そうよね〜、あれだけ安全安全って言ってきたんだからね。」

T 「で、何か行きました?芝居。」

A 「うん、行って来たわよ。」

T 「何に行ったんですか?」

A 「先週は<トップ・ガールズ>に行って来たの。」

T 「あ〜、これですね。・・・ふ〜ん、凄いキャストじゃないですか。」

A 「でしょ。麻実れいに寺島しのぶ、キョンキョン(小泉今日子)に渡辺えり、それに鈴木杏に神野美鈴、 池谷のぶえ。キャストを見てるだけでもワクワクしちゃうわよね。」

T 「で、どうだったんですか?」

A 「それがさ、一幕が始まってほんの少し経ったところ、 キョンキョンが二条の役で登場してから直ぐなんだけど、台詞が飛んじゃったのよぉ〜。」

T 「あらま!で?」

A 「寺島しのぶと麻実れいがさ、『あら、どうしたのかしらね〜。』 な〜んちゃってね。」

T 「フォローしなかったんだぁ〜。」

A 「まあ、難しいのよね、フォローって。流れを変えちゃったりするしさ。」

T 「あっそうかぁ〜。で、どうしたんですか?」

A 「麻実れいが次の台詞を言って何とか凌いだんだけど、観客には完全に分かってしまったわね。」

T 「何か、凄いところに出会っちゃったって感じですね。その後は?」

A 「その後は嘘のように流れていったけどね。」

T 「で、どんな話だったんでしたっけ?」

A 「寺島しのぶ演じるキャリア・ウーマンのマリーンが主人公なのね。 一幕の前半はそのマリーンの昇進祝いに集まった過去の時代のトップ・ガールズたち。」

T 「例えば?」

A 「19世紀の旅行家イザベラ、鎌倉時代の帝に仕えた二条、16世紀の絵の中に描かれた悪女フリート、 9世紀に男装してローマ法王になったとされるヨハンナ、ボッカチオの小説に出てくる貞淑な妻グリゼルダね。」

T 「全く時代が違いますね。」

A 「そう。このパートはマリーンの頭の中。 夫々の時代のトップ・ガールズがレストランで食事をとりながら自分の人生をどんどん喋っていく。 辛かった事、男の話などなど、何しろ自分勝手にどんどん喋くりまくるっていう感じなのよ。」

T 「ちょっと怖い感じもしますけどね、ははは・・・。」

A 「そうよね。夫々の時代の先端を行く女性たちが喋くりまくるのよ。 もう想像しただけでもゾ〜ッとするわよね。ははは・・・。」

T 「ちょっと覗いてみたいですけどね。」

A 「一幕のラストからニ幕の前半は、マリーンのオフィスとマリーンのお姉さんの家。」

T 「現代に戻ってきたんだ。」

A 「そう。厳しい現実の社会にね。」

T 「確かに厳しいですよね。何だかんだと言っても、そんなに変っていませんからね。男女平等、 偏見も無くなって、な〜んて言いますいんざけど、実際にはね〜。」

A 「そうなのよね。この戯曲が書かれてからもう30年近くたっているんだけど、 社会の様式は変ったようで変っていないんじゃないかな、って。 だからこの戯曲が今書かれたような錯覚を覚えるのよね。」

T 「マリーンのオフィスって、どんな会社なんですか?」

A 「人材派遣会社。」

T 「じゃ、そこへ色々な人達がやってくるんですね。」

A 「そうそう。人材派遣会社っていう設定だから、仕事を求めてくるのよね、当然。 その仕事を求めてくる人、それにマリーンの同僚たちも夫々に心の奥に何かあるのよね。 相手に対する嫉妬とか、表向きだけの微笑みとか、よく見ると現実を見てないとかね。」

T 「それは俺達にも有りますよね。表面的には笑顔を見せてるけど、影では、って。」

A 「そうでしょ。その逆に本音の戦いとでも言うのがマリーンとマリーンの姉ジョイスの会話。 この舞台のハイライトとでもいうのかな。」

T 「マリーンのお姉さんは?」

A 「麻実れい。ま〜ぁ、この人、本当に達者ね。こちらにビンビン伝わってくるのよ。 一見憎みあっているかのようだけど、そこには愛があると感じたのよね、アッシ。」

T 「へ〜。どんな舌戦だったか分からないけど、観てみたいですね、そのシーンだけでも。」

A 「でしょ。まあ、まだ上演してるから内容は言わないけどさ。凄いわよ。」

T 「他の役者達は?」

A 「さっきも言ったけど、キョンキョンは始めでコケタじゃない。でも、 オフィスのシーンでは安定感があったわね。凄くいいとは思わないけど、皆、 そこそこみれる芝居をしていたと思うわね。渡辺えりと池谷のぶえが演じる子供、 アンジーとキットも一見キモイけど見応えあるわよ。この芝居のタイトル<トップ・ガールズ>でしょ。 でもさ、そのトップの人にも裏と表が有るっていう事。そんな事を凄く考えさせられた舞台だったわね。」

T 「まだまだやってますかね。」

A 「まだやってるわよ。あと一週間くらいはあるんじゃなかったっけ。」

T 「え〜と、24日までやってますね。当日券頑張ってみようかな。」

A 「そうよぉ〜。一見の価値はあると思うわよ。」

T 「百聞は一見に如かず、ってことですね。」

A 「何事もね。」

T 「それじゃ、アキさん、もう一杯。アキさんも良かったら乾杯しましょうよ。」

A 「遠慮なくいただきますね。・・・はい、お待たせ。」

T 「じゃ、アキさん、早く元の生活に戻れる事を願って、乾杯!」

A 「かんぱ〜い!」

おわり


* 登場人物は全て仮名です。

* 今回紹介したお芝居は、

   1) <トップ・ガールズ> 
         上演中〜24日  シアター・コクーン
 以上です。このトップ・ガールズですが、 会場で発売されていますプログラムの売り上げが全て東日本大震災への義援金として寄付されます。 どうぞ足をお運び下さいね。

2011.4.18


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