<真向勝負>の巻

タッチ(以下T)「こんばんは〜!」

あき(以下A)「あら〜、久し振りねぇ〜、いらしゃい。はい、オシボリどうぞぉ〜。」

T 「ふ〜む、気持ちいい〜。」

A 「今日は何にしましょうか?」

T 「う〜む、もう5月ですから桜はないんですよね」

A 「そうよぉ〜、あれは3月と4月のみ。今月は<ライク・ア・フラミンゴ> っていうヴォッカをベースにした飲み物なの。」

T 「<ライク・ア・フラミンゴ>。じゃ、それお願しや〜す。」

A 「あいよっ!・・・はい、お待たせしました。」

T 「あれ〜、色が本当にフラミンゴ色なんですね。」

A 「綺麗でしょ〜。飲んでみて。」

T 「う〜む、呑み易〜い。」

こ〜ちゃん(以下K)「そんなに呑み易いの?」

T 「こ〜さん、呑みやすいですよ、本当に。」

K 「じゃ、アキさん、お代わりでそれお願します。」

A 「あいよっ!・・・は〜い、お待たせしました。」

K 「本当だ。呑み易いねぇ〜。」

A 「でしょ。前にやった時も評判良かったのよぉ〜。」

T 「所で、これは観に行ったんですか?」

A 「美輪さんね。楽日に行ったわよ。」

K 「アキさんも最近はやっぱり自粛してあんまり観に行ってないのかな〜、芝居。」

A 「そんな事ないわよ。ちゃんと行ってます。」

T 「美輪さんの他には何観たんですか?」

A 「松尾スズキの演出する<欲望という名の電車>よ。」

K 「あれ、池内博之が出てるんだったよね。恰好いいよねぇ〜、彼。」

T 「彼はスタンレイですよね。ブランチは誰が?」

A 「秋山菜津子よ。」

T 「秋山菜津子?」

K 「そうだよねぇ〜、舞台中心の役者さんだからね、タッチじゃ分からないよね、きっと。」

A 「そうかぁ〜。あのね、2000年くらいから注目されてきたんだけど、 今演出家が最も使いたい女優の一人になってるかな。 紀伊国屋演劇賞や読売演劇大賞などの女優賞を獲ってるのね。」

T 「へ〜、結構凄いんですね。」

K 「秋山菜津子に池内博之。ステラは誰が?」

A 「ステラはね、鈴木砂羽。ミッチがオクイシュージね。」

T 「また知らない名前が出てきたぁ〜。」

A 「オクイシュージでしょ。アッシも全く知らなかったの。 やっぱり演劇畑で活躍してるみたいね。」

K 「で、デキはどうだったの?」

A 「う〜む、ひと言で言ったら無駄な笑いが嫌だったかな?」

T 「無駄な笑いですか?」

A 「そう。この作品はさ、テネシー・ウィリアムズの代表作でブロードウェイでの大ヒット作品なのよ。 だから、これまでも色々な翻訳上演があったんだけどね、中々これっていう上演はなかったのよね。」

K 「文学座の杉村春子のは?」

A 「アッシさ、杉村さんの舞台は彼女の晩年になってからなのよね、観たの。 お店を始めて2〜3年経ったころだったかしら。杉村さんがブランチを演じたのが、 確か最後か最後から2番目だったかなのよね。他にも、栗原小巻、美加理、大竹しのぶ、 篠井英介で観たんだけど、映画版には遠く及ばなくて・・・。」

T 「観ましたよ、映画は。マーロン・ブランドとビビアン・リーですよね。 マーロン・ブランドが恰好良かったなぁ〜。」

K 「そういう意味では今回の池内君って良かったんじゃない?」

A 「アッシもさぁ、キャストを見た時にちょっと期待できるかしら、って思ったんだけどねぇ〜。」

K 「そうでもなかったんだぁ。」

A 「そうなのよね。」

T 「具体的に言ってもらうとどう言う事なんです?」

A 「これは演出家によって作られてるとは思うんだけどね。まず、ブランチの秋山菜津子。 もう登場した時から少しおかしいのね。精神的にやられてるのが直ぐに分かっちゃうの。」

T 「そうなんですか。やっぱりあの役って、最初は貴婦人然としてないとですね。」

A 「そうでしょ。じゃないと段々出てくるブランチの狂気が薄れちゃうもんね。それと同じなんだけど、 スタンリーの池内博之も、最初からブランチに対して敵意丸出しなのね。」

K 「じゃ、いい所ないじゃない。」

A 「でもね、ステラを演じた鈴木砂羽がまあまあ良かったのよね。」

K 「ステラってさ、得な役だよね。」

A 「そうね。今までも映画のキム・ハンター、文学座の松下紗稚子、その他にも寺島しのぶ、 小島聖と良かったものね。」

T 「さっきアキさんが無駄な笑いが嫌だって言ってましたけど・・・。」

A 「そうね。例えば冒頭。大家のハベルが街灯の虫を叩いて落とそうとしているシーン。 これが大袈裟過ぎてね。それからミッチなんだけど、彼の頭を河童の禿にしたのね。それは良いんだけど、 それで笑いをとるシーンとかある訳よ。アッシ、芝居でもオペラでも思うのよ。 最近変わった演出をするのが流行みたいな感じがするんだけど、 良い物をわざわざ変える必要性は無いと思うのね。奇をてらった演出は悪い意味で滑稽なだけ。 良く出来た作品には真っ向勝負を期待したいのね。」

K 「何か分かるぅ〜。それと比べたら美輪さんの舞台ってコテコテじゃない?」

A 「まあ、彼の芝居は大芝居だからね。それでいいと思うんだけど。」

T 「今回は<愛の賛歌>ですよね。エディット・ピアフの物語なんですよね。」

A 「そうそう。」

K 「前に映画あったよね、アカデミーの主演女優賞獲ったやつ。」

T 「マリアン・コティアールですね。あれも良かったですよね。」

K 「ピアフの生涯みたいなお芝居なの?」

A 「一応そうなんだけどね。でもさ、所々違うところがあるから、 ピアフの生涯を美輪さんが脚色したっていう舞台かな。」

K 「例えばどんな所が違ってるの?」

A 「例えば、彼女の最愛の子供マルセルが死んでしまうんだけど、舞台上では赤ちゃんなのよ。でもね、 実際は2歳。演出上これは仕方ないとは思うんだけどね。2歳の子供は出演させられないもの。でも、 ピアフが路上で歌っている時の歌が、その時には存在していない歌なのよね。まあ、 これは美輪さんの歌を聴きたいという観客へのサーヴィスなんだとは思うんだけど、やっぱりねぇ〜。」

T 「それを知らない人は、路上でその歌を歌っていたと思っちゃいますからね。」

A 「そうでしょ。まあ、観客は喜ぶけどさ。」

K 「あの芝居だと、最後の恋人の何だっけ?」

A 「テオ・サラポね。」

K 「そうそう。その役に新人の子を使うじゃない。今度は新しい人なの?」

A 「そうよ。ある意味ホッとしたけどね、ははは・・・。」

K 「どうだったの?」

A 「佐藤雄一っていう若者なんだけどね、まあ、初心者っていうのは否めないけど、まあまあだったかな。 それにカーテンコールで前々回の公演では棺桶からピアフとテオが出てくる演出だったんだけど、 それも無かったしね、ははは・・・・。」

T 「凄い演出ですね、その時。」

K 「笑っちゃうよね、なんだかさぁ〜。」

T 「今日も楽しい話、有難うございました。そろそろ電車がなくなっちゃうから帰りま〜す。 今度はあまり間を空けないように来ますね。」

A 「本当にネ。宜しくお願しますよ、ははは・・・。それじゃ、タッチは¥1600です。」

K 「じゃ、俺も行こうかな。」

A 「こ〜ちゃんも行く?」

K 「うん、明日も仕事だしね。」

A 「アンタ、休みが決まってないから大変よね。頑張ってよ。え〜と、こ〜ちゃんは、¥2400ね。 有難うございます。」

K 「はい、これで。」

T 「僕も丁度で。」

A 「二人とも有難うね。気を付けて。お休み〜。」

T&K 「おやすみなさ〜〜い。」

おわり

 * 登場人物は全て仮名です。

 * 今回紹介したお芝居は、

   1) 松尾スズキ版 <欲望という名の電車>
          東京公演終了
          大阪公演 5/7&8 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティー
          名古屋公演 5/10 名鉄ホール

   2) 愛の賛歌 
          東京公演終了
          6月に全国巡演
  以上です。気持ち良い季節です。どうぞ足をお運びくださいね。
2011.5.7


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