<消化不良解消の特効薬>の巻

あき(以下A)「いらっしゃ〜〜い。今日は早いのね、エイコったら。はい、オシボリ。」

E 「そうなんですよぉ〜。ちょっと早く終わっちゃったものだからさぁ。」

ロクちゃん(以下R)「早く終わっちゃった、って仕事が?」

E 「違うんですよ、ロクさん。今日ね、玉三郎の舞踊公演に行ってきたんですけどね、 2時間で終わっちゃったんですよ。」

A 「意外に早かったわよね。」

R 「それじゃ、アキちゃんも観てきたんだっぁ。」

A 「う〜ん、二日目だったかしらね。それはそうと、エイコは何にします?」

E 「あっとぉ〜、いけない、いけない、っと。え〜とぉ、今月のお勧めは?」

A 「今月は、<ブルドッグ>よ。」

E 「こりゃまたスタンダードなねぇ〜。」

A 「でしょ。でもね、意外に注文が少ないのよね。だからぁ、今月のお勧めにしたって訳よ。」

R 「な〜るほどね。」

E 「それじゃ、お勧めで!」

A 「あいよっ!・・・はい、お待たせしました。」

E 「久し振りだなぁ〜、ブルドッグなんて。飲み易くて美味し〜い。」

R 「ところで、話の途中だったけど、どうだったの?玉三郎の舞踏会は。」

A 「やっぱ、綺麗よね。」

E 「歌舞伎で観るのとはやっぱり違った美しさって言うんですかね、これって。」

R 「演目は?」

A 「傾城(けいせい)と鷺娘、それに楊貴妃。」

R 「16〜7年前は・・・・。」

E 「オイラ、初めてだったんですけど、あの靱(しなやか)さ、美しさ。もう目を奪われっぱなしでした。」

A 「アッシはね、その靱な度合いが、ちょっとだけど衰えて感じたの。 これはもう仕方ない事かもしれないけど、昔はもっと靱だったなぁ〜って。 それからちょっと心配だったんだけど、お客様の年齢層ね。」

R 「年齢層?」

E 「あ〜、そうですね。オイラくらいでした、若いのは。」

A 「でしょ。エイコで若いのよ。ね、これから何年彼が演じ、踊り続けられるか分からないけど、 やっぱりもう少し若い子達がいないとキツイわよね。これ、歌舞伎でも言えると思うんだけど、 まだ歌舞伎は他の若手が居るし、いいんだけどね。」

R 「そういう事かぁ〜。まあ、若い子達がどんどん興味を持たなくなってきているからなぁ〜。 数か月前、歌舞伎に行ったんだけど空席があったもんね。話題になったあの子の復帰公演だよ。」

A 「あら、あれって満席だったんじゃないの?」

R 「どうも初日だけだったらしいんだよ。」

E 「そう言ってましたよ。今回も空席ありましたよ。」

A 「そうなのね。チケットも意外にすぐ取れちゃったしね。アッシが行った日は、 中二階のグランド・サークルが1/3ほど空いてたもの。嘗ての玉三郎の公演じゃ、考えられないわよ。」

R 「ちょっと哀しいねぇ〜。16〜7年前は連続3ヵ月公演でチケットも即完売。 観るのも難しかったのにねぇ〜。」

A 「時代なのかしらね、これも。」

R 「まあ、そうじゃないかな。」

E 「とは言っても、あの美しさは他の歌舞伎役者には負けてませんよね。」

A 「ま〜あ、それは言えてるかもね。美しいって良いわよね。」

R 「まあ、アキちゃんも十分美しいですよ!ははは・・・。」

A 「ロクちゃん、笑ったら嘘になるでしょ、ははは・・・。」

E 「美しいと言えば、アキさん<ロミオとジュリエット>のミュージカルは行ったんですか?」

A 「勿論よぉ〜。美しい城田優君を観にね。」

R 「あ〜ぁ、彼ね。確かに美しいよね。ハーフなんだっけ?」

E 「そうですよ、確か。スペインと日本でしたっけ?」

A 「そうそう。お父さんが日本人でお母さんがスペイン人。」

R 「彼は本当に綺麗だよね。で、出来の方は?」

A 「それがさ、全てが中途半端な印象なのよね。」

E 「中途半端?」

A 「そうなのよ。音楽も、演技も、演出も・・・。」

R 「それじゃ、消化不良だよね、アキちゃん。」

A 「そうなのよね。何かもったいない、っていうかさぁ〜。」

R 「例えばどんな所だった?」

A 「まあ、話はロミオとジュリエットよね。」

E 「モンタギュー家とキャピュレット家の対立で生まれる悲劇ですよね。 ウエスト・サイド物語の基にもなっていますよね。」

A 「そうそう。」

R 「で?」

A 「でね、話は変わらないのに携帯電話やパソコンが出てくるのよ。」

E 「あの時代にですか?」

R 「それはそうとも限らないじゃない。現代に時代変換してるのかもしれないし。」

A 「そうそう。それだったら解るんだけどぉ〜・・・。全くそうじゃないのよね。だって、 そんな時代だったらあんな対立からくる悲劇が起こると思う?」

E 「確かにぃ〜・・・。」

A 「それから音楽。これからサビかしら?って思ったときに終わっちゃうの。 凄くイライラしちゃったのよね。」

R 「最近多いよね、時代設定を変えてるやつが。」

A 「そうね。それはそれで良いと思うんだけど、 それだったら全部脚本の見直しをちゃんとやって欲しいと思うのよぉ〜。」

R 「そうだよなぁ〜。」

A 「それから、この前の<エリザベート>もそうだったんだけど、 城田優君をもっとちゃんと使ってもらいたいわね。もったいないわよぉ〜。」

R 「まあ、アキちゃん彼の相当なファンだからね。」

A 「ちょっと贔屓があるかもね。でもさ、歌もそこそこ歌えるし、何と言ったってあの容姿でしょ。 彼に合う役がもっと他にあると思うんだけどね。」

E 「誰かいい人いなかったんですか?」

A 「未来優希が歌も上手くて存在感もあって良かったわね。」

R 「他に何か観たの?」

E 「9月から10月に掛けてはアキさん凄く観るっていってましたよね。」

A 「そうなのよ。10月は17本入っているの。」

R 「え〜!17本も?タフだね、相変わらず。」

A 「そうでもないのよ。もう歳ね。前だったら全然平気だったんだけど、最近は疲れちゃって。 寝不足が更に寝不足になっちゃってるからね。眠い眠い。」

R 「まあ、無理しない事ですよ、歳なんだから、ははは・・・。」

A 「まあ、そうね。」

E 「あれ?意外にも謙虚じゃないですか、ははは・・・。」

A 「本当に感じてるっていうのかしらね、歳を。気持ちの上では何とも思ってないんだけど、 実際は歳を感じざるをえないのよね。」

R 「まあ、無理しなさんな、ってことだよね。」

A 「そうね。でも、やっぱりアッシ、芝居馬鹿じゃない。 観たい芝居があると何が何でも行きたくなっちゃうのよぉ。まあ、 自業自得ってとこよね。ははは・・・。」

E 「自分で言っちゃぁ〜・・・。」

R 「で、最近は何を?」

A 「最近はね、朗読劇を2本、翻訳劇を1本、翻訳ミュージカルを1本、不条理劇を1本、 あと好きな劇団のアトリエ公演を3本みたかな。」

R 「すごいね、精力的だよ。で、その中で印象的だったのは?」

A 「久しぶりに劇団四季の<オペラ座の怪人>を観に行ったんだけどね・・・。」

E 「酷かったんですか?」

R 「まあ、アキちゃん、四季嫌いだもんね。」

A 「今の四季はね。でも、何回も言ってると思うけど、アッシのミュージカルの原点は劇団四季なのよ。 小学生の時に小学生を対象にしたミュージカルを観なかったら、 きっとそんなにミュージカルが好きになったかどうおかぁ・・・。」

E 「で、どうだったんです?」

A 「やっぱり良く出来ていると思うわね、脚本と音楽。でもねぇ〜・・・。」

E 「出ました!アキさんのダメ出し!」

A 「茶化さないでよね、エイコ。」

R 「で、何処がダメだったの?」

A 「怪人がさぁ〜・・・。」

R 「酷かった?」

A 「まあね。歌がねぇ〜・・・。」

E 「歌えなかった。」

A 「違うの。上手いのよ、歌は。」

R 「それじゃ、芝居が下手って事?」

A 「って言うか、歌は上手いんだけど、そこに芝居がないのね。ただ歌ってるって感じなのよ。 怪人のその場面場面での気持ちが入ってないの。ぜ〜んぶ歌い上げちゃうのよね。」

R 「あるある。歌が上手い人に良くあるよね。」

A 「そうなの。とっても中途半端でしょ、これもさ。」

E 「アキさん、消化不良が続いていますね。」

A 「そうでもないのよ。今週観た劇団桟敷童子のアトリエ公演、 <杏仁豆腐のココロ>は二人芝居なんだけど、ちょっとキュンとくる芝居だったわね。」

E 「どんな芝居なんですか?」

A 「クリスマスイヴの話なの。離婚する夫婦が別々に暮らすために引越しの準備をしてるのよ。 荷物の散乱した部屋で炬燵を挟んで語り合う二人。過去を話しているうちに浮かび上がるすれ違い、 それから愛情。脚本が本当に良く書けていて涙もろい人は泣いちゃうかもっていう芝居よ。」

R 「脚本は?」

A 「鄭義信。」

E 「彼の作品いいですよね。オイラ、<焼肉ドラゴン>観てグっと来ちゃいましたよ。 これも観たいなぁ〜。」

A 「で、この作品、夫役は桑原勝行君が演じてるんだけど、妻役はトリプルキャストなのね。だから、 妻によって結構変わるのよ、印象が。」

R 「へ〜。面白そうじゃん。」

A 「ね、面白いでしょ、そういうのも。で、全面に流れているテーマが<愛>なのね。」

E 「<愛>ですかぁ〜。」

A 「そう、<愛>よ。恋人への愛、妻への愛、他人への愛、勿論自分への愛もね。」

R 「な〜んか本当に良さそうだね。」

A 「うん。今までの消化不良が解消されちゃったって。愛って消化不良解消の特効薬ね。」

R 「いいね、それ。」

E 「本当ですね。良かったですよ、本当に。」

R 「それじゃ、消化不良解消に乾杯でもしようか!俺はお代わり、で、アキちゃんも何かどうぞ。」

E 「オイラもお代わり頂きま〜す。」

A 「あいよっ!・・・・はい、お待たせ。」

R 「それじゃ、消化不良解消に乾杯!」

一同 「かんぱ〜い!はははは・・・・・。」

おわり


*登場人物は全て仮名です。

*今回紹介したお芝居は、

 1) 坂東玉三郎特別舞踊公演
     上演中〜26日まで   日生劇場

 2) ミュージカル<ロミオとジュリエット>
     公演終了

 3) 劇団四季・ミュージカル<オペラ座の怪人>
     上演中〜ロングラン

 4) 劇団桟敷童子・自主企画公演<杏仁豆腐のココロ>
     上演終了
 以上です。芸術の秋。催し物が目白押しです。何かに足を運んでみては如何でしょうか?

2011.10.16


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