<魔界へようこそ!>の巻

トクちゃん(以下T)「こんばんは〜!」

あき(以下A)「あら、トクちゃん、いらっしゃ〜い。はい、オシボリどうぞ。」

T 「寒くなりましたね〜。風邪ひいてないですか?」

A 「それがさ、鬼のかく乱っていうの?先月下旬にちょっと体調崩しちゃったのよね。まあ、 お店を休む程じゃなかったんだけどね。」

キンちゃん(以下K)「ビックリしちゃったわっよ。だってアキさんたら、 いきなりお店終わるから帰って!って。」

A 「あら、キンちゃん、それじゃアッシが強制的に上から帰って!って言ってるみたいじゃないのよ! ははは・・・。」

T 「そんなに?」

A 「そうなのよぉ〜。何しろ急に具合が悪くなってきちゃってね。自分でも驚いちゃってさ。」

K 「正に<鬼のかく乱>よね、ははは・・・。」

T 「季節の変わり目ですからね、気を付けないと。」

A 「そうねぇ〜、気を付けなきゃ。で、トクちゃん、何にする?」

T 「そうそう、注文しなきゃ。え〜とぉ〜、今月のお勧めは〜・・・<アキのライラ>?何ですか?これ。」

A 「ヴォッカベースで、コアントローとブルー・キュラソーを入れてレモンを搾ってソーダで割ったのよ。」

T 「美味しそうですね。それお願いします。」

A 「あいよっ!・・・・はい、お待たせ!」

K 「あら〜、綺麗じゃないのぉ〜。」

T 「本当ですね。でも、秋というより夏のイメージですね、この色。」

A 「そうなのよね。まあ、<ライラ>っていうドリンクをアキがアレンジして季節も秋だから、 って言うんでこの名前にしたんだけどね。」

T 「確かに秋ですよね〜。かかってるアズナヴールも秋にピッタリ!」

K 「やっぱり秋はシャンソンよね。ジャズもいいけど、アタシはシャンソンが大好き!アズナヴール、 バルバラ、ベコーにモンタン。コラ・ヴォケールもいいわよねぇ〜。」

T 「忘れてませんか?大切な人を。」

K 「えっ?誰だっけ?」

A 「ピアフでしょ、トクちゃんが言いたいのは。」

T 「そう。流石はアキさん。ピアフ、エディット・ピアフですよ。」

K 「この前やってたわよね、大竹しのぶで。アキさん観て来たって言ってたわよね。」

A 「だってさ、評判が凄くいいんだもん。行かなきゃ!って。」

T 「僕も行ってきましたよ。そうそう、アキさん、ピアフはないんですか?」

A 「勿論ありますとも。」

T 「聴きたいんですけど・・・、いいですか?」

A 「勿論よ。あと2曲でアズナヴールが終わるから、それからかけるわね。」

K 「で、どうだったの?お芝居は。」

T 「もう大竹しのぶが抜群でしたよ。凄いな〜、あの人って。ねぇ、そうじゃなかったですか?アキさん。」

A 「まあ、演技は凄いわよ、いつも彼女は。でもねぇ〜・・・。」

K 「きました!アキさんの辛口批評。ははは・・・・・。」

A 「ちょっとぉ〜。辛口じゃなくて感じるままを言ってるだけよ。 だってちゃんとチケット代払って行ってるんだもの。感じたままを言ってもいいんじゃないの?」

T 「それはそうですよね。で、あんまり気に入らなかったんですか?」

A 「気に入らないっていうよりさ、・・・。まず演技。これは本当に気迫があって素晴らしかったわね。 今までこの芝居何人かで観たけど、一番ピアフに近かったんじゃないかなって。でもさぁ〜・・・。」

K 「でも?」

A 「歌が・・・・。」

K 「歌が?」

A 「下手じゃないんだけど、上手くもないのよ。上手くなくてもいいんだけど、 何かを感じる歌唱じゃなくちゃね。だってピアフよ、ピアフ。」

T 「僕なんか演技に圧倒されちゃって歌も凄いな〜って。」

K 「確かに大竹しのぶってCDも出してるし、下手じゃないんだろうね。 アタシも前にミュージカル<スウィーニー・トッド>を観たけど、お世辞にも上手い!とは言えなかったかもね。 まあ、聞けないほど下手じゃなかったけど。」

A 「ピアフって決して声は綺麗じゃなかったと思うのね。でもさ、感じたんじゃないかな、当時の人たち。 彼女の歌の中にある物語を。そして、そこから風景が見えたんじゃないかしらねぇ〜。」

T 「なるほどねぇ〜。僕にはそこまで分かりませんでしたよ〜。」

K 「アタシはあきさんの言っている事、ちょっと分かるわね。」

A 「それと、これは美輪さんがピアフを演じた<愛の讃歌>の時にも言ったんだけど、 時代と歌とが合わないのよね。勿論、全部じゃないんだけどね。この芝居の中でも、 例えばシャルル・アズナヴールが歌う<忘れじのおもかげ>って曲ね。 これなんかピアフが亡くなってから10年以上経ってから発表された曲でしょ。 それをアズナブールと出会った1950年代のシーンで歌わせちゃうのは・・・。」

T 「そう言えば言ってましたよね、アキさん。美輪さんの舞台で歌と時代が全く違うって。」

A 「そうなのね。この芝居は、美輪さんの<愛の讃歌>ほどじゃないんだけど、やっぱり気になっちゃったのよ。」

K 「大竹しのぶ以外の役者達はどうだったのかな?」

A 「歌で言えば、イヴ・モンタンを演じた田代万里生が流石に上手かったけど、 マレーネ・ディートリッヒを演じた彩輝なおも、下手じゃない程度だし、 アズナヴールを演じたKENTAROも今回はイマイチだったわね。」

K 「そうなんだ。でも、やっぱり演技は凄かったみたいだし、お客さんは満足だったんじゃない?」

A 「確かにそうかもね。」

T 「大竹しのぶさんのワン・ウーマン・ショーってところですか。」

K 「何しろ、彼女はオバケだからなぁ〜。」

A 「まあ、いい意味でね。魔界から来た様な人だからね。な〜んて言っちゃったらご本人に怒られちゃうけど、 ははは・・・。」

K 「魔界と言ったらさ、今やってる<天守物語>はどうなの?アキさん、もう行ったの?」

A 「この前ね。」

T 「これも興味あるんですよぉ〜。白井晃の演出なんですよね。」

A 「そうそう。篠井英介さんが天守に住む妖怪、富姫、 富姫が恋に落ちてしまう鷹匠の図書之助には若者に人気の平岡祐太。魔界の世界では富姫の妹、亀姫に奥村佳恵、 亀姫の御付きには舌長姥の田根楽子と朱の盤坊の坂元健児、富姫側は、薄(すすき)に江波杏子、 桔梗に村岡希美。現実世界では城主播磨守の家来、小田原修理に関戸將志、山隅九平に関秀人、 富姫と図書之助の二人を救う彫刻師近江之丞桃六に小林勝也っていう布陣。」

K 「キャストだけ聞いても行ってみたくなるわよね。でもさ、アタシ玉様で観てるじゃない。 だからちょっと不安もあるのよねぇ〜。」

T 「玉様って?」

A 「やさ、玉様よ、玉様。坂東玉三郎よ、歌舞伎の。玉様がやった<天守物語>、<夜叉ヶ池>、 <海神別荘>は、彼の美しさが何とも言えずにポ〜っとしちゃったわよね。」

K 「あれは本当に美しかったよねぇ〜。」

A 「本当にね。」

T 「で、今回は?」

A 「勿論女形をず〜っとやっている篠井さんだから綺麗は綺麗。だけど、 玉三郎と比較しちゃうのはちょっと可哀想だな〜って。」

T 「じゃ、イマイチだったんですか?」

A 「そんな事はないわよ。ちょっと不思議な舞台だったわね。」

K 「どんな風に?」

A 「始めに舞台が明るくなると、洋服を着た二人が立っていて、一人が倒れているの。えっ!って。 これから何かが始まるんじゃないかって期待を持たせるのよ。」

T 「じゃ、時代劇じゃなくて現代劇になってたと・かぁ〜・・・。」

A 「アッシもさ、どうなるのかなって思ってたんだけど、やっぱり時代劇でした。ははは・・・。今回、 舞台美術と音楽がとても素敵で、魔界と現実の世界をとても良く表していたと思うのね。」

K 「不思議な世界だから舞台美術と音楽は大切だよね。」

A 「そうなのよ。音楽、美術、照明の三つがバランス良くて魔界を楽しめたっていうのかな、良かったわよ。」

T 「それじゃ観に行っちゃおうっと。」

K 「魔界ってさ、こっちの世界も魔界だよね。」

T 「何言ってるんですか、キンさんたら、ははは・・・・。」

A 「魔界の世界のペンギンへようこそ!ってぇ〜。ははは・・・・。」

K 「何か、笑っちゃうぅ〜〜〜〜。」

一同 「ははは・・・・・・。」

おわり


 * 登場人物は全て仮名です。

 * 今回紹介したお芝居は、

  1) <ピアフ>   東京公演は終了しました。
      この後、金沢、大阪、名古屋で公演あり。

  2) <天守物語>  新国立劇場中劇場
      上演中〜20日まで
  以上です。寒くなってきましたが、どうぞ劇場に足をお運び下さいね。

2011.11.13


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