<やるじゃん!>の巻

あき(以下A)「はい、お待たせ。」

タッチ(以下T)「わぁ〜、綺麗!これなんですね、今月のお勧めって。」

シモちゃん(以下S)「本当ね、綺麗じゃない。で、何て言うの?これ。」

A 「<夢見心地>って言うんですよ。」

S 「ま〜、素敵ね、夢見心地って。どうしてなの?」

A 「これジン・ベースなんですけど、飲み心地がいい割には強いんですよ。ダブル近く入ってるんです、ジンが。 まあ、簡単に言っちゃうと、早く酔うってことでしょうか、ははは・・・。」

S 「あ〜ら、全くロマンチックじゃないのねぇ〜、ははは・・・。」

T 「そんなに強いんですか?じゃ、ゆっくり飲まないとね。」

A 「そうそう。ゆっくりね。」

S 「そう言えばアキちゃん、この芝居はどうかしら?」

A 「玉三郎の<ふるあめりかに袖はぬらさじ>ですか?」

T 「それって、誰か京都まで観に行ったんじゃなかったでしたっけ?」

A 「タッチ、良く覚えてるわね。お客様がわざわざ行ったのよね、京都まで。でもさ、 その時は東京公演やるかどうか発表になって無かったのよ。でも、チケット取った後に東京公演の発表があって、 そのお客様も悔しがってたわね。」

S 「それだけ良いって事よねっぇ〜。」

A 「アッシも話は好きなんですよ。でもね〜・・・。」

S 「何?なんか良くないことあるのかしら?」

A 「いいんですけど、玉三郎がね〜。」

S 「悪いのかしら?」

A 「そうじゃないんですよ。綺麗すぎちゃって。この役には違うかな、って。」

T 「綺麗って良いじゃないですか。」

A 「でもさ、この話って、横浜に落ちてきた遊女のお園が、その遊郭で身請けを断って自害した花魁、 亀遊の自害について逸話を語り、それが評判になって幕末の維新派と佐幕派の対立も相まって進んでいく話なんだけど。」

S 「で、何処がマズイのよ。」

A 「だって〜、横浜まで落ちてきた女ですよ、お園って。玉三郎みたいに綺麗な遊女が落ちると思いますか?」

S 「ま〜〜、ねぇ〜。」

A 「でしょ。だから観てても真実味がないのよね。これ、有吉佐和子が文学座の杉村春子に当てて書いた物なんですよ。 だからさ、杉村さんだったら分かるの、ちょっと失礼かもしれないけどね。でも、玉三郎だと綺麗過ぎて綺麗過ぎて。」

S 「まあ、アキちゃんの言ってる事は分かるわねぇ〜。でも、やっぱり観たくない?玉三郎。」

A 「そりゃ、今回も観たいですとも。もう2〜3回観てるけどね、玉三郎で。今回ちょっと躊躇してるのは、 会場の問題もあるんですよ。」

T 「何処でやるんですか?」

A 「赤坂のACTシアターなのよ。ここって1300席以上あるんですよ。ちょっと大き過ぎません?この芝居には。 な〜んか、ピッタリこないのよね、話と劇場が。」

S 「アキちゃん、それを日本で言っちゃ〜オシマイよぉ〜。」

T 「シモちゃんさん、寅さんみたいですね、ははは・・・。」

A 「そりゃいいわ、ははは・・・。でも、やっぱり行きたいわね、<ふるあめりか・・・>。」

S 「それじゃ、行くことにしましょ。ところで、アキちゃん、9月に入って何か観たの?」

A 「勿論、行ってるわよ。」

T 「そんな中で何かお勧めってありますか?」

A 「色々あったけど・・・。」

S 「って事は、もう終わちゃってるってことよねぇ〜。」

A 「そうね。ま、今もやってると言えば、野田地図の<エッグ>だけかしらねぇ〜。」

T 「行きたかった〜、<エッグ>。でも取れなかったんですよ、チケット。」

S 「あら、今どき取れないチケットがあるのねぇ〜。」

A 「シモちゃん、あるのよね、この不景気の中取れないチケットが。」

T 「で、どうだったんですか?」

A 「そうね〜。アッシ、イマイチ分からなかったのよ、一度観ただけじゃ。で、 また10月に入ってから観に行くんだけどね。」

S 「何?そんなに難しいの?」

A 「そうじゃなくて・・・。ちょっと分からない所があって。悩んじゃったのよね。」

T 「何なんですか?その〜悩んじゃったってのは。」

A 「詳しい内容はまだ上演中だから言えないけど、寺山修司という名前が最初と最後に出てくるんだけど、 彼とこの物語との関係性が分からなかったのよね。」

S 「寺山と野田ねぇ〜。何か有るんじゃない?」

A 「そりゃ有ると思いますよ。じゃなかったらわざわざ出さないじゃないですか、名前を。」

T 「まあ、その分からなかった、って所は除いて、簡単に説明してもらえますか?」

A 「そうね。今回は、エッグというスポーツとそのスポーツ選手二人の間で揺れ動くシンガーソングライター、 一般大衆、文化、歴史の渦。そんなのがゴチャゴチャと入り交じって、って感じね。」

S 「う〜む、やっぱり観に行くしかないわね、それじゃ。ははは・・・・。」

A 「まあ、来月もう一度観て詳しいことは話すわよ。」

S 「他には?」

A 「来日公演の<CHICAGO>と劇団桟敷童子の番外公演が良かったわね。」

S 「<CHICAGO>って米倉涼子が出たやつね。英語なの?」

T 「ブロードウェイに出たんですよね、米倉涼子。よかったんですかね。」

A 「評判はまあまあだったけど、お世辞って事もあるじゃない。だからさ、確かめなきゃって。」

S 「行ったのね。」

A 「そうそう。」

T 「で、どうだったんですか?」

A 「正直言って、歌はちょっと弱かったのよ。と言っても下手じゃないの。迫力不足かなって。でもね、 英語も遜色なかったし、ダンスは及第点。しっかり主役の一人として演じきってたわよ。やるじゃん!って感じよ。」

S 「へ〜。日本人もそこまで来たのね、とうとう。」

T 「ブロードウェイで主役をやったのって過去にいるんですか?」

S 「タッチの歳じゃ分からないだろうけど、ミヨシ梅木っていうジャズ歌手がいたのよ。 彼女が主演したのが<フラワー・ドラム・ソング>っていうミュージカル。」

A 「ちょっと補足すると、ミヨシ梅木はナンシー梅木っていう名前でクレジットされてるんだけどね。」

S 「それに、松本幸四郎が染五郎の時に<ラ・マンチャの男>でやってたわよ、確か。ね、アキちゃん。」

A 「そうですね。その時は、<ラ・マンチャの男>週間みたいな期間で、 世界中のラ・マンチャの男が結集して上演したんですよ、確か。」

T 「へ〜。でも凄いじゃないですか、見劣りしなかったって事ですよね。」

A 「そうね。アッシらは、彼女を知ってるからちょっと違う目で見ちゃうけど、 知らない人から見れば一人の女優じゃない。」

S 「そりゃそうよねぇ〜。」

T 「これからもどんどんそういった日本人が出てくるといいんですけどね。」

S 「そうね。出てくるんじゃないの?」

A 「これからは半世紀振りにブロードウェイで主演、な〜んて事じゃなくて、何年ぶりとか、 もしかしたらブロードウェイの何処かで日本人が主演している時代がくるかもしれないわよ。」

S 「ま〜〜、難しいとは思う・け・ど、ね。なったらいいわよねっぇ〜。」

T 「もう一つの桟敷童子ですけど。」

S 「アキちゃん、好きよね、ここ。」

A 「そうなのよ。エネルギーもらえるのよね〜、ここの劇団の芝居観てると。」

S 「で、どんな?」

A 「この所、毎年アトリエ公演をやってて、今回は、若手主体での公演だったんだけど、 <ぱぴよん〜四畳半からの脱出>と<ぬらりひょん〜向日葵のまぼろし>の二本立てなの。で、中でも、 <ぬらりひょん〜向日葵のまぼろし>の方に凄く感動したのよ。もう何回目の上演かしら。今回が一番感激したかも。」

T 「どんな話なんですか?」

A 「親友同士の進吾と惣一、そして早苗。その三人を廻る話。ひまわり畑は見ていた! って何か火サスみたいな説明になっちゃうんだけどね。今回はその3人を若手が演じてるのよ。 その3人がまた良いの何のって。正に熱演。こちらも、やるじゃん!って感じよ。もう観終わってから西新宿の駅まで、 言葉に表せないほどの感動が波の様に次から次へと押し寄せてきちゃって、歩いててもドキドキ感が止まらなくってね。」

S 「あ〜ら、そこなのね、アキちゃんがこの劇団を好きな理由。」

A 「そうなんですよね、きっと。」

S 「ちょっとタッチ、あんたさっきから何やってるのよぉ。」

T 「すいません。ちょっとイケメンゲットできそうなんです。」

S 「何なの?それって。」

A 「出会い系アプリでしょ。」

S 「最近み〜んなやってるじゃない、その出会い系っていうやつさぁ〜。どうなのよ、それって。」

A 「まあ、時代が変わっちゃってるからね。今やバーは出会いの場所じゃないのよね。勿論、 全くそうじゃないとは言えないんだけど。出会うのにはバーは必要不可欠じゃなくなってるから。」

S 「アタシは嫌ね、そんな出会いって。」

T 「あっ、来た来た〜!」

S 「何が来たのよ、鬼でも来たかしらん、ってね、ははは・・・。」

T 「イケメンからメールですよ、メール。」

S 「あら、そんな感じで出会うのね。」

T 「もしかしたらペンギンに来るかも。知ってるって言ってますよ。あれ?あと10分くらいで来るって。」

A 「あら、タッチ、やるじゃないのよ、アンタ。ははは・・・。」

S 「何か面白そうね、そんなのも。で、何て言うんだっけ?その携帯。」

A 「携帯じゃなくて、スマート・フォンですって、スマホ。」

S 「SMAPみたいな名前なのね。で、何処で買えるの?」

A 「えっ?もしかしてシモちゃん、買おうとしてる?」

S 「そうじゃないけど、ちょっとどうなのかな、って・・・。」

A 「あ〜あ、やっぱりアッシらの歳になると出会いも少ないですからね。チャンスは大分増えるみたいですよ。」

S 「いいわよ、面倒だし。」

A 「そんな痩せ我慢しないで、ね。ははは・・・。」

T 「って、シモちゃんさん、痩せてないですよね。」

S 「ちょっと何だって〜〜〜!」

A 「まあ、どっちもどっちね、ははは・・・・。」

S 「本当にねぇ〜。ははは・・・・。」

一同 「ははは・・・・。」

おわり


 * 登場人物は全て仮名です。

 * 今回紹介したお芝居は、

   1) <ふるあめりかに袖はぬらさじ>
        9/28〜10/21   赤坂ACTシアター

   2) 野田地図<エッグ>
        上演中〜10/28  東京芸術劇場プレイハウス

   3) 来日公演<CHICAGO>
        公演終了

   4) 劇団桟敷童子番外公演<むらりひょん〜向日葵のまぼろし>
        公演終了
 以上です。やっと秋の気配を感じてきました。いい季節。どうぞ足をお運び下さいね。

2012.9.23


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