<闇>の巻

ミーコ(以下M)「おこんばんは!」

あき(以下A)「あらミーコ、いらっしゃ〜い。はい、オシボリ。」

チカ(以下C)「ミーコさん、こんばんは!」

M 「チカちゃん、久し振りじゃな〜〜い。お元気だったかしら?」

C 「はい、いたって元気です。ミーコさんもお元気そうですね。」

M 「あたりまえよぉ〜。」

A 「ま、この人はよっぽどじゃなきゃね、・・・。」

M 「あら、お言葉ですけど、ア・ン・タもね、ははは・・・。」

A 「まあね、ははは・・・。ところで、何にしましょ。」

M 「あら、そうだったわ。ちょっと、チカちゃん、あんた何飲んでるの?」

C 「今月のお勧めドリンクです。」

M 「何?今月のお勧めは。」

A 「今月は、ヴォッカをベースにした<ブルーマンデイー・ポップ>よ。」

M 「じゃ、それにしましょ。」

A 「あいよっ!・・・・・は〜い、お待たせ。」

M 「あら、綺麗じゃないの。夏よねぇ〜。」

C 「それにしても、漸く落ち着いてきましたね、暑さも。」

A 「チカちゃん、何言ってんのよぉ〜。何時もだったら漸く梅雨が明ける頃でしょ。 これからだってば、本当の暑さは。」

C 「あっ、そうですよねぇ〜。でも、今週は樂でした。」

A 「そうよね〜。何たって梅雨明けが早かったからし、直ぐに猛暑になっちゃったじゃない。 アッシなんか体が追いつかなくて。」

M 「そりゃ齢よ、齢。ははは・・・。」

A 「そのままお返しいたしますわ!ははは・・・。」

M 「まあ、冗談としてもさ、アタシたち辛いわよね、やっぱり。でも、ここは天国。涼しいしさ〜、 ゆっくりできるしね。」

C 「本当ですよね。」

A 「こんな暑い時にお店に来て頂いて、本当に有難うございますぅ。」

M 「な〜んか、引っかかるのよね、アンタの言い方ってさ。」

A 「あら、そう。本当にそう思ってるのよ。だって、一度家に帰ったら出たくないじゃない。 こんな暑い時は特にね。でも、二人とも着替えてるじゃない。って事はさ、 一度部屋に帰ってから出て来たって事でしょ。本当に感謝、感謝。」

M 「ねぇ〜〜〜、引っかかるわぁ〜。ははは・・・、冗談よ!」

C 「もうドキドキしちゃうじゃないですかぁ〜!でも、本当ですよね。 こんな暑い時は冷房の効いた部屋でゆっくりしたいってのが本音ですからね。」

M 「で、今日は平日じゃない。アタシは半休だったから私服だけど、チカちゃんは?」

C 「偶然ですけど、僕も今日は半休もらってたんですよ、お芝居にいくんで。」

M 「あら、優雅じゃないの、お芝居に行くんで半休だなんて。で、何観てきたの?」

C 「ナイロン100°Cの<わが闇>です。」

M 「アタシもう5〜6年前に観たわ、これ。

A 「あら、ミーコ観てるんだ。」

M 「いや〜、感動したの覚えてるわよ。アキちゃんも観てるでしょ。」

A 「アッシも初演と今回の再演観てる。長いんだけど、長さを全く感じないでしょ。5年ぶりに観て、 やっぱり良く出来た作品だと思ったわね。」

C 「本当ですよね。初演と役者が一緒みたいなんですけど。」

M 「って言うとぉ〜・・・。長女が犬山イヌコで、次女がリエちゃんで、三女がぁ〜・・・。」

C 「坂井真紀です。」

M 「あ〜、そうそう。その3人姉妹を中心に物語が進んで行くんだったわよね、確か。」

A 「まあ、その父親と使用人、映画関係者などが色々な糸で絡みながら進んで行くのよね。」

M 「ナイロンとしては、ちょっと真面目な物語だったわよねぇ〜。」

A 「そう言えばミーコってナイロン100°C好きだったわよね。」

M 「そうよ。アタシ劇団健康の時からだもの。最近は中々行けないんだけどねぇ。 で、今回はどうだったの?」

C 「本当に良かったんですよ。」

A 「其々に其々の物語があって、その都度、それがクローズアップされるでしょ。で、 それが何処かで繋がってるのよね。」

C 「一幕で三姉妹の母親が自殺しちゃう所なんか、これからどうなるのかなって。でも、 そこから時がアッと言う間に経っちゃって。」

M 「あ〜、思い出してきた。長女が天才小説家になって、三女が女優だっけ?で、次女は・・・。」

A 「次女は、平凡。ただ唯一結婚するのよね。でもさ、彼女、結婚するって事で長女や三女と違うっていうか、 同等になったって思ったんじゃないかな、って。まあ、結局は失敗しちゃうんだけどさぁ〜。」

C 「へ〜、そういう見方なんですかぁ〜。」

M 「でも、分かるわぁ〜。だって、長女が天才小説家になっちゃって、三女が女優でしょ。 次女の存在価値よね。長女も三女も結婚しないわけだし、 結婚することでその存在価値を示そうっていう深層心理があったのかもね。」

C 「アキさんもミーコさんも凄いですね。オイラ、全く考えもしませんでした。」

A 「アッシ、あの舞台で素晴らしいなって思ったのは、其々の闇を表していた所だと思うのよ。 一件平凡な家庭の中にある闇。みんなが其々に抱えている闇を良く表してたなって。」

C 「映像も闇を上手く表現してましたよね。」

M 「あれ、最初ビックリしたのよ。映画観てるみたいだったのね。TVじゃなくて。」

A 「TVじゃない、っていうの良く分かる。確かに映画を観ているかの様だったわね。」

C 「父親は長女に対する嫉妬、長女は段々見えなくなる目。」

A 「次女は酷い性格の夫に対する気持ち、三女は姉たちに対する憧れ。その中に各々が闇を抱えてるのよね。」

M 「あ〜、完全に思い出してきたわぁ〜。映画監督はさ、 そのプロデューサーとの関係と映画を完成させることとの狭間で闇が見えるし、 長女に自分の気持ちを伝えられない闇を雑誌編集者は抱えてるしね。」

C 「そんな中で、最後は幸せな気持ちにさせてくれるじゃないですか。」

A 「そうね。アルバムを見ながら微笑んで死んでいった父親が見ていたそのアルバムをみて、 三人姉妹とその家にず〜っと使えてきた使用人の笑顔。」

M 「最後の場面良かったぁ〜〜〜。再演も観に行こうかしら。」

A 「東京公演は終わっちゃってるけど、来週横浜でもあるらしいし、大阪や北九州へも行くみたいよ。」

C 「地方公演もあるんですね。」

M 「調べて行くしかないわね。」

C 「あの最後のシーンは今でも目に焼きついてます。本当に幸せそうだった。」

A 「そうよね。あの先に其々の人生がまだ続くんだって事が見えるしね。」

M 「そうかぁ〜。アタシ、幸せそうな場面で終わる芝居も好きなんだけど、逆も好き。 そんな芝居最近はないの?」

A 「それだったら、これよ、これ。」

C 「<ドレッサー>ですか?」

A 「そう。これは最後が本当に寂しく終わるのよ。」

M 「その前に同じのもう一杯お願い。」

C 「あっ、オイラもお願いします。」

A 「あいよっ!・・・・・はい、おまたぁ〜〜〜。」

M 「それじゃ、聞きましょ。で?」

A 「話は第二次世界大戦中のイギリスにある劇場でのこと。 シェークスピアの戯曲を上演する劇団の座長と座長の衣装係兼付き人のノーマンを中心に、というより、 殆どこの二人の話なのね。」

C 「二人芝居なんですか?」

A 「じゃないの。ほかに女優の妻、舞台監督、男優、若い女優がでるんだけど、まあ、 中心は座長とノーマンの話。」

M 「昔もやったわよね、この芝居。」

A 「そうそう。初演が三津田健と平幹二朗、再演が三國連太郎と加藤健一、 次が加藤健一の代わりに柄本明だったかな。ミーコ観たの?」

M 「行きたかったんだけどさぁ〜、行けなかったのよぉ〜。で?」

A 「話を続けるわね。座長は年老いて体も心も弱ってる。妻や舞台監督は公演中止を主張するのよ。でも、 なんとかして芝居<リア王>を開演させようとしているノーマン。やっとの事で開演にこぎつけるんだけど、 台詞が出てこなかったり裏方が足りなかったりでトラブル続き。それにこの老座長、若い女性に目がなく、 入りたての若い女優にチョッカイをだしたり、心身が衰弱している割には油断ならないのよね。でも、 ドレッサーのノーマンはそれも座長がやる気を出してくれればと思ってる。でも、当の座長は、 ノーマンの気持ちとは裏腹に自身が神と崇めるシェークスピアに奉仕しなければと思うことで舞台に立つのよ。」

C 「ちょっと切ないですよね。」

A 「そう。それが分かるのが舞台の後半。 座長にとってはどうでもよかったドレッサーの存在をノーマン自身が知った時の哀しみ。 もう涙無くしては観る事のできない舞台よね。」

M 「哀しいわね、本当に。で、舞台の出来は?」

A 「勿論、ノーマンを演じた大泉洋は大袈裟な所もちょっと気にはなるけどまあまあ良かったわよ。 座長の橋爪功は確かに上手いんだけど、アッシには若く見えて仕方なかったのよ。 そこがちょっと不満と言えば不満かな。でも、戯曲が本当にいいからね。」

C 「観てみたいですね。」

M 「何か、ナイロンもドレッサーも人間の闇の部分を浮き上がらせた舞台のようねぇ〜。アタシ好きよ、 こういう舞台。その点、アキちゃんはいいわよね、何時もニコニコでさ。」

C 「それがホッとするんですよね。」

A 「あら、チカちゃん、何にも出ないわよ!ははは・・・・。でも、アッシにも有るのよ、 心の中に閉じ込めている闇がね。」

M 「え〜〜〜!何なに?」

A 「それは、ヒ・ミ・ツ。」

M 「まあ、有るわよね、誰にでも。ちょっとアキちゃんも何か飲みましょうよ。」

A 「あら、有難うございます。それじゃ、お言葉に甘えてアッシも頂いちゃおう <ブルーマンデイ・ポップ>。」

M 「どうぞどうぞ。」

A 「それじゃ、頂きま〜す。」

M 「乾杯!」

一同 「かんぱ〜〜〜い!」

おわり


  * 登場人物は全て仮名です。

  * 今回紹介したお芝居は、

     1) ナイロン100°C <わが闇>
         東京・大阪公演終了
         7/23より神奈川公演、北九州公演、名古屋公演あり。

     2) <ドレッサー>
         上演中〜7/28まで 世田谷パブリックシアター
  以上です。暑い最中ですが、どうぞ足をお運び下さいね。
2013.7.21


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