<ベテラン頑張る!>の巻

  よし子(以下Y)「こんばんはぁ〜」

あき(以下A)「あら、よし子いらっしゃ〜い。久しぶりねぇ〜。はい、オシボリ。」

Y 「久しぶりって、そりゃそうでしょ、アキちゃん入院してたんだから。でも、御元気そうで安心したわ。」

A 「見た目はね。でも、中身はまだ3割くらいかな。週に2〜3回はリハビリに通う生活よ。」

Y 「ま〜、結構大変ね。」

A 「よし子、ボトルでいいのかしら?」

Y 「何言ってるのよ〜。この季節はお勧めに決まってるじゃないの。先ずはそれを頂戴。」

賢ちゃん(以下K)「この季節のお勧めって?」

Y 「もう賢ちゃんたら。ほら、そこのボード見てみなさいよ。書いてあるでしょ、<春霞>って。」

K 「あ〜、ホントだ。どんなドリンクなんですか?」

A 「ウィスキーがベースなのよ。そこに桜のリキュールを入れてソーダで割ったのよ。」

Y 「それからアレが入ってるのよね。」

K 「あれ?」

A 「桜の塩漬けを戻したものを入れるの。」

K 「へ〜、どんなんだろう。」

Y 「もう直ぐ出来るからみてみたら?」

A 「はい、お待たせ。」

K 「これですかぁ〜。水中花みたいですね。春ですね。」

A 「季節を感じるドリンクよね。」

Y 「所でアキちゃん、体調がイマイチだからお芝居なんか観てないんでしょ。」

A 「退院してから12月がライヴ1本、1月と2月が芝居1本ずつ。でもさ、今月はなんと7本。それも8日間で。」

K 「凄いペースですよね。」

A 「たまたま重なっちゃったのよね、その週に。」

Y 「何か良いのあったの?」

A 「結構あったわよ。」

K 「話聞かせてくださいよ。」

A 「それじゃ、先ずはアッシの好きな戯曲、清水邦夫の<楽屋>からね。」

Y 「いいじゃな〜い。アタシも大好きな戯曲なのよ〜。」

A 「いいわよね、本当に。アッシこれ最初に観た時、こんな芝居が観たかったのって思ったのよね。」

K 「知らないなぁ〜。どんな話なんですか?」

Y 「あれよね、アキちゃん。チエホフの<かもめ>を上演している舞台裏、その主人公を演じている女優の楽屋の話。」

A 「そうそう。登場人物は、主演女優とそこに住み着いてる女優の浮遊霊。」

K 「浮遊霊?」

Y 「まあ、そんなものよ。それが3人。そして其々の女優人生を話しながらいつかチエホフの<かもめ>のニーナを演じたいと思ってるの。」

K 「執念みたいなものですか?」

A 「そうね。執念があるからそこから動けない、っていうか、そこに住み着いちゃってるんじゃないかと思うんだけどね。」

K 「執念ねぇ〜。何か怖いですよ。その芝居も怖いんですじゃ?」

Y 「怖くなんかないわよぉ〜・・・。執念と言うより、主役になれなかった女優の悲哀みたいなものかしら?ねえ、アキちゃん。」

A 「そうね、悲哀かぁ〜。そこまでじゃないんじゃないの?あの芝居さ、副題が付いてるのよね。」

Y 「そんなのあったっけ?」

A 「あるのよ。」

K 「何て言うのかな、その副題。」

A 「<流れ去るものはやがてなつかしき>っていうのよね。」

Y 「あらぁ〜〜〜、正しくその副題通りじゃないの。」

K 「はぁ〜、な〜んとなく分かったような・・・。」

A 「ね、正に、副題が全てを表しているわよね。」

K 「今度どこかの劇団が上演したら観に行ってみようかな。」

Y 「そうよ、これ映画の<Wの悲劇><疑惑><吉原炎上>なんかと同じ必見の舞台よね、ハハハ・・・・。」

A 「まあ、映画と舞台は違うけどね。本当に良く出来た台本だわよ。」

K 「他には良かったものって?」

Y 「ねえねえ、あれはどうだったの?ほらオフのミュージカル。」

A 「あ〜、ジュンちゃんのやったやつね。」

K 「だけど彼って本当によくやってますよね。ミュージカルに芝居にコーラスでしょ。」

A 「本当にね。それに良く見付けてくるわよ、このミュージカルとかさ。」

Y 「有名なの?」

A 「そりゃオフだからねぇ〜。<フュージティヴ・ソングス>って言うんだけど、知らない人の方が断然多いわよね。」

Y 「そうでしょ。アタシも相当ブロードウェイの情報はチェックしてるけど、全く知らなかったもの〜。」

A 「そうよね。これさ、12〜3年ほど前のオフ・ブロードウェイのミュージカルなんだけど、アッシも観てないから何とも言えないけど、今回の舞台はコンサート形式で行われたのね。っていうか、ここのユニット<Gotta2>はコンサート形式で公演を行なってる事が多いのよ。」

K 「どんな話ですか?」

A 「住んでいる場所も職業も違う人たちの物語なの。全く別の物語が共通のテーマ、<逃亡者>をモチーフに其々が必ず目の前に立ちはだかる壁と向き合わなくてはならない、要するに<現実>との葛藤を描いているのよね。」

Y 「中々難しいテーマよねぇ。」

K 「現実との葛藤ですかぁ〜。僕なんか葛藤だらけで・・・。」

Y 「で、肝心の中身は?」

A 「作品自体について言えば、アッシはそんなに面白い作品だとは思わなかったのよ。曲もアッシにとってはそんなに印象深くなかったしね。ただ、出演者の実力が高くて満足いく結果となったんじゃないかな、って。」

Y 「ミュージカルってさ、本当に出演者の実力が大きなポイントとなるじゃない。その実力が高いなんて、そりゃ満足するわよねぇ。」

A 「そうなのよ。特に華花っていう子。表現力も抜群だったし、今回初出演の田村良太君もちょっと線は細いんだけど、スター性を感じたわね。」

K 「アキさんが言うんだからこれからはチェックですね、その人達。」

A 「それにしてもジュンちゃんの多岐にわたる活躍は本当に脱帽ものよぉ〜。この作品だって、版権取るのから訳詞、それから演出。勿論出演もしてる訳だからさ。」

K 「そんなに!」

Y 「そりゃ、大変だわね。拍手を送りたいわよね、ジュンちゃんには。」

A 「本当ね。」

K 「重い作品じゃなくて皆が楽しめるような、気楽なものって無かったんですか?」

A 「あった、あった。」

Y 「あら、気になるじゃない。」

A 「ほら、近ちゃんとシャンソンの土田りかこさんが中心になってやってるプチ・コンサート、<3月通りのカフェで>なんだけどね。」

Y 「シャンソンねぇ〜。アタシさぁ〜、シャンソンって何か分からないんだけど、苦手なのよぉ〜。」

K 「分かります。僕もイマイチ分からないんですよね。何て言うんですかね、気取ってるっていうかぁ〜・・・。」

Y 「分かるぅ〜〜〜!で、アタシ達でも楽しめるの?アキちゃんは色々な音楽を楽しめるタイプだからいいけど。」

A 「絶対楽しめると思うわよ。今回は、ゲストにジャズ・コーラス・グループ<Breeze>の磯貝さんを迎えてのライヴだったんだけど、この人、ホントお上手でさ。」

Y 「ほらほら、お上手よ、お上手。」

K 「な〜んかねぇ〜・・・。」

A 「そんなに気取ってないってばぁ〜。寸劇を挟んで歌が唄われるんだけど、クダラナイって言っちゃえばそれまでなんだけどね。とっても楽しいのよぉ〜。シャンソンもお決まりの歌じゃなくて、あんまり知られてない曲にスポット当ててね。こんなの観たかった!って。」

Y 「アキちゃんがそこまで言うと、何だか観たくなってきたわぁ〜。」

A 「さっき賢ちゃんが<気取ってる>って感じだって言ってたけど、アッシも日本のシャンソンにはそれと同じような感じを持っているのね。おシャンソンなのよ、日本のシャンソン歌いって。原詩を上手く日本語で表現できないのもその理由の一つなんだけどね。確かにあの内容豊富な詞を訳すとどれだけ早口で言わなきゃならないんだろうって思っちゃうけどさ、ははは・・・。」

Y 「ほら、この前亡くなった岩谷時子さんが越路吹雪に書いてた訳詞なんか、訳じゃなくて作詞でしょ。」

A 「まあ、そうね。よし子ちゃんの言ったのって<愛の讃歌>の事でしょ。あれは本当に作詞ね。でも、あれはあれで成功よ。あんなに流行ったんだもの。別物と思えば何てことないわよね。今回は、なかにし礼さんや音羽たかしさんなど、割と本文に忠実な訳詞を書く人の歌を中心に、りかこさんが替え歌にしたりして寸劇とのコラボで本当に楽しいコンサートが誕生したのよ。それで、アンコールは<しりとり昭和メドレー>。もう観客もノリノリ。アッシね、本当にこんなの観たかったのよぉ〜。」

Y 「本当にあ気に入りなのね、アキちゃん。」

K 「気取ってない感じだったら僕も一度くらい聴きにいこうかな。」

A 「そうそう。一度聴きに行ってよ。・・・って言っても次は何時になるのか分からないんだけどね。何しろ近ちゃんパリと東京行ったり来たりで忙しいし。最近さ、こんなの観たいって思うことって中々無いのよね。だから、そんな舞台やライヴに当たると本当に嬉しくて嬉しくて。」

Y 「そういうのってとっても分かるわよ。」

K 「アキさん、さっき言ってた芝居って確か清水邦夫さんの<楽屋>ですよね。」

A 「そうよ、よし子ちゃんも大好きな芝居よね。」

Y 「で、どうしたの?」

K 「それが、ネット・ニュースなんですけどね、その<楽屋>に出た女優の松本典子さんが亡くなったって。」

A 「うっそ〜〜〜!」

Y 「確か清水邦夫の奥様よね、彼女って。」

A 「悲しいわねぇ〜。アッシが衝撃を受けた舞台、<楽屋><タンゴ冬の終わりに>の初演に出てた主役女優だったのよ。こんな舞台を観たかったって思わせてくれた舞台を幾つかやっててね。あ〜、本当に悲しい。」

Y 「でもさ、アキちゃんはその舞台を観てるんでしょ、しかも初演で。」

K 「いいですよね、それって。観たかったって思った物を観る事が出来たんですから。」

Y 「<楽屋>の副題ね。」

A 「<流れ去るものはやがてなつかしき>ね。そうね。悲しいけど懐かしい想い出にしなきゃね。」

Y 「さ、飲み直しよ、飲み直し。」

K 「そうですよ。僕そのお勧めでお願いします。」

Y 「アタシも。それにアキちゃんもソフトドリンクを!」

A 「お気を使わせまして・・・。」

Y 「早く、早く。乾杯しましょ。」

A 「それじゃ、いい想い出に・・・。」

Y 「か・ん・ぱ・い。」

K 「かんぱ〜い!」

おわり


 * 登場人物は全て仮名です。

 * 今回紹介したお芝居、ライブは

   1) 劇団チョコレートケーキ番外公演<楽屋>〜流れ去るものはやがてなつかしき〜
        下北沢・「劇」小劇場  公演終了

   2) オフ・ブロードウェイ・ミュージカル <フュージティヴ・ソングス>
        江古田・LiveBuddy   公演終了

   3) <3月通りのカフェで>
        大塚・音楽堂anoano
 以上です。春ですね。演劇やコンサートも多くなります。どうぞ色々足をお運び下さいね。
2014.3.31


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