![]() |
<時間が足りない!>の巻
|
なみ子(以下N)「こんばんは〜。」 あき(以下A)「あら、なみ子、いらっしゃい。久し振りね〜〜。」 N 「ご無沙汰してますぅ〜。」 スターちゃん(以下S)「本当に久しぶりですね〜。元気そうで何より何より。」 A 「なみ子、今日は何にしましょうか?」 N 「久し振りに今月のお勧めドリンクなんか頂いちゃおかな?」 A 「あいよっ!」 S 「人気ありますね、<月に憑かれたピエロ>。まあ、ホント美味しいもんね〜。」 A 「でしょ。結構出るのよね。はい、お待たせ。」 N 「ホント久しぶりだなぁ〜。う〜む、やっぱり美味しい。」 S 「所でなみ子さん、今までどうしてらっしゃってたの?」 N 「急に転勤を言い渡されて、東京からパリに丸2年。」 A 「あら、あんた、パリに居たのね。」 S 「パリですかぁ〜。アキちゃんも昔いたよね。」 A 「アッシはパリじゃなくてシャルトルって所。まあ、パリの南の方だけどね。でも、スターちゃん、もう40年も前のことよ。」 N 「40年ですか?生れてない!」 S 「ははは・・・・・。」 N 「アキさんはお変わりありませんか?」 S 「あ、そうかぁ〜、2年前だと知らないですよね。」 N 「えっ?何かありました?」 A 「ちょっと死にかけちゃったのよ。」 N 「えっ!!!」 S 「大変だったんですよ。2カ月ちょっと休みましたよね。」 A 「そうね。35年振りに心臓やっちゃったから。」 N 「心臓ですか?そりゃ大変だぁ〜。で、今は大丈夫なんですか?」 A 「大丈夫じゃないけど、見た目が元気だから。これ以上悪くならない様に注意してるってとこかな。」 N 「それじゃ、前みたいに芝居やコンサートにはあんまり行ってないんですか?」 S 「それがね、・・・。」 A 「アッシさ、7月に舞台に出たんだけど、まあ、その付き合いが増えちゃってね、今年は結構有るのよね。今月は20本以上。死んじゃいそう。」 N 「無理しないで下さいよ〜。」 A 「でもさ、良い舞台に出合うと疲れも吹っ飛ぶわよね。」 S 「結構いい舞台に出合ってるんですね、それじゃ。」 A 「そうなのよ。」 S 「その中でもお勧めなのは?」 A 「もう公演終わっちゃってるんだけどね、その中でも新国立劇場の<黒いハンカチーフ>、スズナリの<少女仮面>と<山吹峠に鶯啼く>、本多劇場<伝六捕物帖>なんかが良かったわ。」 N 「終わっちゃってるっていうのが残念ですけど、感想聞きたいですね。」 S 「まあ、長い期間やってるのって少ないですからね、仕方ないと言えば仕方ないんですけど〜、話聞いて面白そうだったら悔しいですよねぇ、やっぱり。ははは・・・・・。」 N 「<黒いハンカチーフ>からお聞きしましょうよ、スターさん。」 S 「そうですね。」 A 「それじゃ、新国立劇場でやった<黒いハンカチーフ>からね。時はは赤線廃止前年の昭和32年、場所は当日赤線地帯だった新宿2丁目。」 N 「えっ!2丁目なんですか?2丁目って赤線だったんですか?」 S 「そうなんですよ。まあ、私もアキちゃんも生れて数年経った時だったから記憶にはないんだけどね。2丁目が赤線、新宿ゴールデン街が青線だったんですよ。」 N 「へ〜。赤と青の違いは何なんですか?」 A 「まあ、公安が赤鉛筆で囲ったか、青鉛筆で囲ったかの違いみたいだけどね。」 N 「そんなんで?」 S 「そんなものですって。で、話を戻しましょうよ。」 A 「昔さ、<スティング>っていう映画があったの知ってる?」 S 「懐かしいですね〜。」 N 「僕はぁ〜・・・。」 A 「まあ、そうね。なみ子はまだ若いからね。生れてないかもね。」 S 「世代ですかね、ははは・・・・。」 A 「それで、その<スティング>みたいにどんでん返しの繰り返し。」 S 「ほら、アキちゃん、<スティング>の最後の方で仲間だった筈のポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの撃ち合いがあったでしょう。」 A 「あ〜、あれね。あの時は何で?って一瞬思ったわよね。この<黒いハンカチーフ>にもそんなシーンが有るのよね。何しろ逆転に次ぐ逆転で、観終わったらスッキリ!っていう感じ。」 N 「スッキリ!っていいですよね。スッキリ!って。」 S 「<スティング>もそう言う感じでしたからね。」 A 「役者連もいいのよぉ〜。」 N 「誰が出てたんですか?」 A 「主役の医者にアッシ全く誰かも知らなかった矢崎広。バーのママにいしのようこ、敵役に鳥肌実、その他売春婦に村岡希美、チンピラに浅利陽介、詐欺師仲間におかやまはじめ、刑事に元唐組の伊藤正之など芸達者が揃ったわよ。」 S 「そのメンバーが<スティング>みたいな芝居をするんだったら面白そうですね。」 A 「そうなのよ。公演は4日間しかなかったんだけど、それが本当に残念でね。是非是非再演してもらいたい作品だったわね。」 N 「4日間って、そんなに短かったら評判聞いてからじゃ遅いですよね。」 S 「でもですよ、評判高くて観ようかな、って所で終わっちゃう方が印象は強いかもしれませんよ。」 A 「そうよね。」 S 「さっき唐組って言ってましたけど、<少女仮面>て唐さんの作品じゃなかったでしたっけ?」 A 「そうよ。状況劇場で40年以上前に初演された作品。その時と同じ春日野八千代の役を李麗仙(当時は李礼仙)が演じるので話題になったのよね。」 S 「あの宝塚の春日野八千代ですね。数年前に亡くなりましたよね。」 N 「僕には李麗仙も春日野八千代も全く分からないんですけどぉ〜・・・。」 S 「李さんは大鶴義丹さんのお母さん、春日野八千代は宝塚の往年の大スターですよ。」 N 「へ〜。そんな実際の人物を当時は生きてた訳ですから芝居に登場させちゃって大丈夫なんですか?」 A 「まあ、本人じゃなくて、正確には春日野八千代だと思っている春日野八千代なのよね。」 N 「何か、もっと複雑。」 S 「で、どうだったんですか?」 A 「それがさ、李が登場した瞬間に嘗ての状況劇場を彷彿させる拍手の嵐。でも、その後、彼女の衰えた足の運び、元々良くなかった滑舌の悪さにちょっとガッカリさせられるのね。でも、段々彼女に引き込まれて行く自分に気が付くのよ。凄いオーラなのね。勿論、脚本がしっかりしてるっていうのもあるんだろうけど、本当に凄いオーラ。」 S 「気がつけば彼女の独壇場って感じだった訳ですね。」 A 「それが、そうとも言えないのよ。」 N 「どういう事なんですか?」 A 「今回の舞台では、もう一人のヒロインが誕生したのよね。」 S 「もう一人のヒロイン?」 A 「そう。春日野に憧れる少女がいるんだけど、その少女、貝を演じた文学座の松山愛佳がその人。文学座という固い劇団に居ながらアングラの雰囲気が満載されてるのよ。アッシ、この作品が大好きなんで何回も観ているんだけど、こんな貝を観たのは初めて。文学座辞めてアングラに来ちゃえば、って。」 S 「アキちゃんがそう言うんだから、相当なんでしょうねぇ〜。」 A 「まあ、他人事なんだけど、嬉しくなっちゃって。」 N 「アキさん、大分興奮していますよ。」 A 「そうでしょ。思い出しただけで興奮してきちゃう。」 S 「これも簡単には再び観られないでしょうね。」 A 「難しいかもね。」 N 「あ〜、残念。折角東京に戻って来たのに。」 S 「なみ子ちゃんはまだ先があるから、いくらでもチャンスはありますって。ははは・・・。私たちはねぇ〜、アキちゃん。」 A 「まあね。」 N 「そうですよね〜。」 S 「他の作品は?」 A 「どちらも時代劇なの。」 N 「時代劇?チャンバラですか?」 S 「なみ子さんたら、そんな発想なんですか?ははは・・・・。」 A 「まあ、チャンバラはでてくるわよね、どうしても。時代劇だもん。」 N 「で、どんな話なんです?」 A 「まず劇団鳥獣戯画の40周年記念公演<山吹峠に鶯啼く>なんだけど、これは所謂お家騒動の話なの。」 S 「知ってますか?なみ子さん。お家騒動ですよ。」 N 「知ってますよ、僕だって。水戸黄門見てましたから。」 A 「やっぱり高視聴番組って凄いわね。で、話を戻すとね。山吹峠にある寂れた茶屋を舞台に、そこに訪れる人達の人間模様なのよ。そこに迷い込んだ記憶喪失の美人の女。彼女が来た事で寂れていた茶屋が活気を取り戻すんだけど、そこに追手がやって来て・・・。みたいなね。」 S 「TVと同じですね。」 A 「まあ、そうなんだけど、そこは舞台。上手く笑いや人情を取り入れて楽しい舞台になってたの。<伝六捕物帖>もそこは同じ。こちらは捕物帖だから人情じゃダメ。でもね、主人公の伝六親分が霊が見える能力がある設定なのよ。それで難事件を次々に解決していくの。」 S 「なんか、それだけ聞いても面白そうですね。」 A 「そうなのよ。なんかさ、ただ真面目にやるのも良いんだけど、やっぱり笑いあり涙ありがいいじゃない。」 N 「僕、そういうの結構好きなんですよぉ。」 S 「へ〜、珍しいですねぇ。何か話が合いそうだなぁ〜。」 A 「ははは・・・・。」 S 「アキちゃん、これからまだまだ舞台観にいくんでしょ?」 A 「そうね。まだ数本残ってるのよ。」 N 「疲れすぎて体調壊さない様にして下さいね。折角帰ってきたんですから。」 S 「そうですよ。まあ、景気付けにアキちゃんも一杯どうぞ。」 A 「あら、そう。それじゃ、いただいちゃうわ。」 S 「じゃ、みんなの健康を祈って、乾杯!」 一同 「ははは・・・・・。」 おわり
* 登場人物は全て仮名です。 * 今回紹介したお芝居は、 1)<黒いハンカチーフ> ザ・スズナリ 公演終了 2)<少女仮面> ザ・スズナリ 公演終了 3)<山吹峠に鶯啼く> ザ・スズナリ 公演終了 4)<伝六捕物帖> 本多劇場 公演終了以上です。まだまだ芸術の秋。色々な公演があります。どうぞ足をお運び下さい。 2015.10.26
|