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<覚悟>の巻
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アキ(以下A)「は〜い、お待たせ。」 ヨッちゃん(以下Y)「へ〜。これが<秋の足音>ですか〜。」 スターちゃん(以下S)「レシピは?」 A 「企業秘密、な〜んちゃって。ははは・・・。 ボンベイサファイヤのジンとチンザノロッソをベースにしてレモンジュース、トニックウォーターを入れたものなのね。」 Y 「凄く飲み易いですぅ〜。」 S 「じゃ、私もそれを頂きましょうかね。」 A 「アイヨっ!」 Y 「それにしても台風が多いですよね。」 S 「岩手県や北海道の人は大変ですね。自然災害は予想できない災害を引き起こすからね。」 A 「はい、スターちゃんお待たせ。でもさ、本当よね。上陸が北海道でしょ。初めてじゃないの?」 Y 「そう言ってましたよ。」 A 「地震にしてもそうだけど、覚悟が出来ないもんね、自然災害は。」 S 「まあ、災害が起きてからですよね、覚悟するのは。」 Y 「これからが本格的な台風シーズンですよね。これ以上被害が増えなきゃいいけどなぁ〜。」 S 「本当ですよね。」 Y 「それにしても、あっという間に9月だよぉ〜。何か焦っちゃうなぁ〜。」 A 「何よ、ヨッちゃんは何かやらなきゃいけない事とかが山積みなの?」 Y 「そうじゃないんですよ。何とな〜く焦っちゃうんですよね、今年も残り4ヵ月弱だと思うと。」 S 「分かりますねぇ〜。でもヨッちゃん、折角秋なんですから何かやりましょうよ。」 A 「そうよ。秋と言ったら芸術の秋でしょ、それにスポーツの秋、行楽の秋。」 S 「読書の秋ってのもね。」 Y 「そうですね〜。アキさんはどんな秋になる予定なんですか?」 A 「アッシはもう芸術の秋よ。もう秋になるとお芝居やコンサートなんか目白押し。もうスケジュール帳いっぱいなのよ。」 S 「相変わらずですね。」 A 「スターちゃんは?」 S 「私はですねぇ〜、やっぱり行楽に行って読書の秋、って言うところですかねぇ〜。」 Y 「皆さん予定が決まってるんですね。オイラも何かしないとな。」 S 「一番良い季節ですもんね。」 Y 「そうですよね。」 S 「アキちゃんは相変わらず芸術の秋だけど、先月は何かご覧になりました?」 A 「さっき覚悟っていう話をしたんだけど、その<覚悟>があるな〜、っていう舞台を3っつほど出合えたかな〜。」 S 「3っつも。」 Y 「どんなお芝居だったんですか?」 A 「劇団桟敷童子の<夏に死す>、蜷川幸雄追悼公演の<ビニールの城>、そして石田衣良原作の<娼男>の3本。」 S 「その3っつ。どんな覚悟があったんでしょうか?」 A 「まず劇団桟敷童子の<夏に死す>なんだけどね。これは痴呆と老人介護の話なのよ。」 Y 「また随分重い話ですね。」 S 「でも誰にもある話だからね。」 A 「数年前から行方不明になっている老人が近くの養蜂場に居るらしいと言われ、その家族が養蜂場を訪ねるのね。 そこには行方不明になっていた老人がいたの。都会に行ってアルバイトをしながら好きな芝居をやっている長男、 介護していた長女、その親戚、彼らの父である老人、100歳を迎えるその母親、養蜂場で作業する人々。 彼等の人生を絡めた桟敷童子初めての現代劇なのね。」 Y 「その何処に<覚悟>が?」 A 「話の中には、其々の人が持つ覚悟が描かれてるのよね。それにも増して、 痴呆の老人を演じた山本亘さんの<覚悟>がすごいと思ったの。」 S 「どんな覚悟なんです?」 A 「台詞が一つも無いの。芝居してて台詞が一言も無いなんて。もう凄い覚悟でしょ。」 S 「それは凄いですねぇ〜。」 Y 「何か楽な感じもしますけどね。」 A 「ヨッちゃんは若いわ、やっぱ。2時間近く無言で通すのよ。でも演技はしなきゃいけないの。どんなに大変か。」 Y 「そんなもんですかねぇ〜。」 S 「例えばヨッちゃん、今から一時間無言でいられるかな?」 Y 「いや〜、それは無理かもぉ〜〜〜。」 A 「でしょ。山本亘さんは覚悟を持ってこの役を引き受けたんだなって。観終わった時に、凄い物観ちゃったって思ったわよ。」 S 「蜷川幸雄の追悼公演<ビニールの城>は?」 A 「ま〜〜〜、チケット取れない取れない。」 Y 「でもアキさん行ったんでしょ。」 A 「行きましたよ。だって、本当に今年一番観たかった芝居だったからね。宮沢りえに森田剛、 それに荒川良々でしょ、出演が。行くっきゃないじゃない。」 S 「私、何か演目に聞き覚えがあるんですえど、前にやりました?」 A 「そうなのよぉ〜。劇団第七病棟が1985年の秋に浅草の常盤座っていう廃館になった映画館で上演したのよね。」 S 「アキちゃんがペンギンを開店して一年ちょっとですね。」 A 「そう、一年半くらいかな。開店時間を遅くして観に行ったの。」 S 「少し想い出してきました。アキちゃん結構興奮して話してたような・・・。」 A 「スターちゃん、良く覚えてるわね〜。」 Y 「そんなに凄かったんですか?」 A 「唐さんの作品にハマってた時期だったし、何と言っても劇団第七病棟だったしね。」 Y 「何か変な名前ですよね〜。」 A 「由来は分からないんだけど、映画、TVで活躍している石橋蓮司と緑魔子が中心となって立ち上げた劇団でしょ。」 S 「そうだぁ〜、そうでしたよね。で、今回はどうだったんです?」 A 「腹話術に使う人形が置いてある大きな棚、そして瓢箪池にバーのカウンター。シンプルなんだけど、 もう摩訶不思議な世界が広がりを見せてるのよね。今回もセットは大まかには変わってないの。でもね、大きな違いがぁ〜・・・。」 Y 「なんなんですか?」 A 「それはキャスト。」 S 「まあ、そうでしょうけど、何か問題でも?」 A 「宮沢りえも森田剛も荒川良々もいいのよ、ホント。でもね、違うのよ。」 S 「何が違うんです?」 A 「この戯曲ってさっきも言ったけど唐十郎の作品なのね。で、唐さんは第七病棟に依頼されてこの戯曲を書いたのよ。だから、 ある意味当て書きなのよ。つまり、いなくなってしまった腹話術の人形を探す朝顔は石橋蓮司に、 そしてビニ本の中の女モモは緑魔子に。だから、今回初めてこの芝居を観た人は、とっても満足だったと思うんだけど、 アッシは、宮沢りえや森田剛が発する台詞の上に緑魔子や石橋蓮司の声が重なってしまって・・・。あっ、 この台詞は緑魔子だったらこう表現したのに、この台詞は石橋蓮司だったらこう表現したのにって。勿論、 違うのは当たり前なんだけど、伝説の舞台を再現するっていうのは、本当に大変だし、難しいしね。そう言う意味では、 この芝居に参加したスタッフ、キャストには相当の<覚悟>がいったんじゃなかったかな、ってね。 それにこれを演出する予定だった蜷川幸雄が舞台が開く数か月前に急逝しちゃってるし。」 S 「はぁ〜。本当にこの芝居に参加したスタッフ、キャストの<覚悟>に拍手だね。」 A 「そう言う意味でもっと<覚悟>がいった芝居が石田衣良原作の<娼年>だわね。」 Y 「そんなに<覚悟>が?」 A 「そりゃそうよ。90%は裸で通す芝居なんだもの。コールボーイの話だからね。」 S 「裸で?そりゃ<覚悟>がいりますよね。」 Y 「出演するにも相当考えるんじゃないですか?」 A 「そうでしょうね。だからこの仕事を受けた松坂桃李君は相当な覚悟をしたと思うのよ。」 S 「彼なんですかぁ〜。良く受けましたねぇ〜、その仕事。」 Y 「もうファンが大変だったでしょ、裸90%じゃ。それもコールボーイだったら尚更ですよねぇ〜。」 A 「観客は殆どが女性。観る方も<覚悟>がいるわよね。」 Y 「セックスの場面とか多いんですか?」 S 「君はそう言う所にばっかり興味があるみたいだねぇ〜、ははは・・・。で、どうなの?」 Y 「スターちゃんさんも同じじゃないですかぁ〜。」 A 「そりゃ興味湧くわよね。で、どうだかっていうとそう言う場面ばっかり。まあ、コールボーイの話だもん、 仕方ないと言えば仕方ないわよね。でも、女優さんも相当<覚悟>がいるわよね。何しろ90%裸なんだから。」 Y 「松坂桃李よりも<覚悟>がいりますよね。」 S 「女優さんは何人も出るんですか?」 A 「まあ、コールボーイだから、色々な女性に買われる訳だからね。色々なタイプ、セックスのタイプね、 そんな9人かが登場するのよ。当然、色々な女性と松坂君はセックスをするわけよ。勿論、本当にしてるわけじゃないけど、 観客の何人かはダブらせてしまうでしょうね。」 S 「出演者も観客も<覚悟>がいる芝居で双方とも疲れ果てちゃうでしょうね。」 Y 「唾、ず〜〜〜っと呑んでなきゃいけなくて疲れそうですねぇ〜。」 S 「本当に君って〜〜〜・・・。」 一同「ははは・・・・・。」 おわり
* 登場人物は全て仮名です。 * 今回紹介したお芝居は 1)劇団桟敷童子 <夏に死す> 公演終了 2)蜷川幸雄追悼公演 <ビニールの城> 公演終了 3)石田衣良原作 <娼年> 公演終了以上です。紹介したお芝居は終わってしまいましたが、芸術の秋は公演がいっぱいあります。どうぞ足をお運び下さいね。 2016.8.18
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