《よけいな事はしないでね》の巻

トキヲ(以下T)「面白かったですよ、ホント、この人。」

ゆうこ(以下Y)「あら、二人で何処行ってきたのかしらん?」

あき(以下A)「綾戸よ、綾戸。六本木でやったから。久しぶりに ね。」

Y「あのオバチャンのライヴって本当に面白いらしいじゃないの。」

T「それが、本当に笑いころげちゃって。ホンマ、オモロイワって感じで すかね。」

Y「アタシも観たかったわね、そんなに面白かったんだったら。」

A「ジャ〜ン!そんなあんたの為に、これでも聴きなさ〜いって感じで買 ってきたわよ、ライヴ盤。今日売ってたからさ。本当は21日に発売なの よね。2週間も早く聴けるなんて。ゆうこ、幸せよ。ね、そうでしょ。」

Y「なんだか分らないけど、ゆうこ、幸せって感じ〜。」

T&A「気持悪〜。」

Y「冗談はさておき、で、どんな所が面白いのよ。次回の参考の為に聞か せてチョ。」

T「何がって、余計な事が結構多くてですね。それがイヤな感じじゃなく てですね、なんと言うのですかね、....。」

Y「ちょっと、じれったいわね。要は面白いのね、余計な事をしてても。」

T「は〜。まあ、そうですね。面白かったですね。」

A「あの人の場合はさ、その余計な事が、ライヴの中では余計な事になら ないのよね。それが計算なのかどうかは別にして、何しろライヴを楽しも うとしている、聴衆と言うか、観客といっしょにね。それが彼女の凄いと ころよ。」

Y「今度はあたしも誘って頂戴よ。ジャズのライヴなんて女学校以来なん だからさ、お願いね。ところでさ、余計な事って言えば、あたしね、この 前あきちゃんが言ってたじゃない、美輪さんの【毛皮のマリー】の最後の 場面が余計な物みたいな事。あれね、あの後観に行ったんだけどさ、あた しもチョット余計な場面だと思ったわね。脚本を読んでから行ったからか しらん。」

T「僕はですね、あの最後のシーン。何か物語っている様で、未だに悩ん でいるんですけど〜.....。」

A「芝居にしても、映画にしても、勿論ライヴだってさ、本人の感じ方次 第だからね。色々な見方をして良いのよ、当然。まあ、でも、やっぱ、あ の最後のシーンは余計だわね、アッシにとっては。」

Y「あきちゃん、その後はどうなのよ。余計な事感じる芝居や映画にあた ってないの?」

A「それがさ、あるのよね、そう感じちゃった事。最近、何か相性が合わ ないというか、蜷川の芝居なんだけど。」

Y「あら、【マクベス】行ったのね。」

T「僕も行きました。シェークスピアは初めてだったもんで、感激しちゃ いましたけど。あきさんは、何か違うなって感じたんですかね。」

A「だからさ、余計な事よ、余計な。今度東京でも演る三島由紀夫の【近 代能楽集】の中の【弱法師】を、去年、あの遠い彩の国さいたま芸術劇場 でやった時も思ったんだけど、今回の【マクベス】も余計な事がマイナス な印象を作っちゃってさ。」

Y「それだったら前にやった【NINAGAWAマクベス】だって、日本の 戦国時代に舞台設定を変えてやったじゃないのよ。あれは余計な事じゃな かったのかしらん。」

T「あの伝説的な舞台ですね。一度観たかったんです。またやりませんか ね。」

A「あの【NIAGAWAマクベス】の時は、さっきの綾戸のステージと同 じで、仏壇をイメージした舞台美術を初めとして、余計な事がプラスにな った素晴らしい舞台だったんだけど、今回の新生【マクベス】は、その余 計な物が全くそのまま余計な事だったと、記憶に残させてしまうのよね、 アッシには。」

T「そうでしたか。僕には本当に素晴らしい舞台だったんですがね。」

Y「でさ、ネエさんは何処が余計な部分だと思ったのよ。」

A「大竹しのぶ嬢は、若すぎるかな?とも思ったけど、とても素晴らしく 、相も変らずイッテたし、鏡を多用した舞台、蓮の葉や花を置く事によっ て想像出来る人々の精神的な物。唐沢君もそこそこ演ってたし、新宿梁山 泊の強烈な印象が懐かしい六平直政君をはじめ、その他の出演者もしっか りしていたんだけど、.....。」

Y「だからさ、じらさないでよ。」

A「まずね、戦闘服。鎧や兜はあの時代を想わせるデザインなのに、兵士 のパンツが迷彩服なのよね。チョットというか、あれには相当違和感をお ぼえたし、白けちゃったのよ。」

T「あ〜、そうですか。僕なんかは恰好良いと思いましたけど。でも、言 われてみると、あの時代設定では無理があるかもって。」

Y「そりゃそうでしょう。統一感がなくなるもんね。そりゃそうよ。現代 の戦争じゃないんだから。」

A「そうなのよ。現代じゃないのにヘリコプターが飛んでる音がするし。」

T「あれ、ヘリコプターの音だったんですか。何の音かなって思ってたん ですけど。」

A「あと、星空ね。」

T「綺麗でしたよね。拍手もあったし。」

A「トキヲ、あの拍手さ、観客が間違えてしちゃったんじゃないの?」

Y「間違えてって、どういう事なのさ、ネエさん。」

A「本を読んでない人にとっては判らなかったと思うのよ。最後近くでマ クベスが殺された後に、暗転になるのよね。それで、すぐに星が舞台一杯 に輝き出すの。その後、兵士達が、横一列になって登場するわけ。そこで 拍手が起こっちゃうのよ。」

Y「まるで芝居が終わったんじゃないかと勘違いしちゃった人が多かった のよね、それって。」

A「流石、ゆうこ。あの星空が広がらなかったら、観客も勘違いしなかっ たと思うのよね。蜷川さんは、何を表現したかったのかしらん。」

T「そういえば、今考えてみるとですね、僕もあの時、一瞬、これで終わ りなのかなと思いましたね。」

A「そうでしょ。あの星空は余計な演出だったとアッシは思うわね。それ と、これは余計な事ではないんだけど、ねえ、トキヲ覚えてる?最後のシ ーン。マルカムが兵士を前に訓示する場面。あの終わり方、ミュージカル 【王様と私】の終わり方と瓜二つ。フェード・アウトしていく所。確か本 ではそうじゃなかったと思うんだけど。チョット気になったわ。」

T「僕は素敵な終わり方だなと思いました。余韻を残して終わるって言う のですかね。」

Y「ネエさんはいろいろ観ているから気になったのよね。」

A「そうなの。だからイヤじゃなかったんだけど、イヤだったのよね。分 るかしらん。」

Y「分るわよ、その気持、あたしも。まあ、これから観に行く芝居が良か ったと思えればいいわね。」

T「これからは何に行く予定なんですか?あきさん。」

A「まず、フライングステージの【LOVE SONG】。それに【美空ひば り物語】の再演。5月に入ったら渡辺えりこが新たに作った劇団【宇宙堂 】の旗上げ公演、プロジェクトニュートラルの【dear cow girl 】、それに、何と言っても世紀のソプラノ【ジェシー・ノーマン】のリサ イタル。寺山の【観客席〜改定版】と、あ〜、時間がほしい。」

T「それじゃ、僕が変りにお店に入って、あきさんに時間をあげちゃいま しょう!」

A「あら、ほんと。うれし〜い。」

Y「ダメダメ、甘やかしたら。それが余計な事っていうんだよ、トキヲ。」

T「そうでした。余計な事は止めておこうっと。」

A「そんな〜。」

一同「ははははは.......。」


おわり

*登場人物は全て仮名です。

*今回登場したお芝居などは.....
1)毛皮のマリー    4/22まで
          PARCO劇場
2)マクベス         4/30まで
          シアターコクーン
3)美空ひばり物語 4/14~28
          新宿コマ劇場
4)プロジェクトニュートラル5/10~14
           駒場アゴラ劇場
5)宇宙堂           5/3~16
          ザ・スズナリ
6)ジェシー・ノーマン 5/9,15,25
          東京文化会館、他
7)観客席〜改定版  5/25~6/3
          紀伊国屋サザンシアター
以上です。みなさんもお時間がありましたら足を運んでみては如何ですか?


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