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《解りあえるって難しい》の巻 |
ポンちゃん(以下P)「凄い台詞劇でしたよ、本当に。」 みっちゃん(以下M)「イヤ〜、参ったよね、あの二人にはさ。」 あき(以下A)「どうしたのよ、二人で入ってくるなりぃ。」 M「あきちゃんね、今日、三軒茶屋にあるシアター・トラムって知ってる ?そこで観てきた芝居の事なんだけどね。」 A「あ〜、白石加代子と渡辺えり子の?」 P「行ったんですか、もう。」 A「とっくに行ったわよ。」 M「でね、あの二人なんだけどね、凄いよね、やっぱりさぁ。」 P「100分喋りっぱなしですからね。」 A「だって、アンタ、二人芝居でしょ。喋りっぱなしじゃなかったらどう すんのよ。」 P「そうじゃぁなくてぇ。よくもまあ、あんなに台詞が頭の中に入るよね って。」 M「本当にそうだね。素晴らしいよね。」 P「あきちゃんはそんなに感激しなかったんですかぁ?」 A「そんな事ないわよ。アッシ、この芝居、実は2回目なのよ。」 M「それは2度行ったって事なのかな?」 A「そうじゃないのよね。もうお店をやっていたから13〜4年前になる かと思うんだけど、北林谷栄と三田和代だったかな?」 P「そのコンビで?」 A「そうなのよね。確かあの二人だったと思うんだけど、記憶が間違って いたらゴメンなさい。」 M「でも、面白そうだね、その二人も、ねぇ。」 A「それで、今回も思ったんだけど、理解し合うって難しいんだな、って 事よね。」 P「結局、解っていたと思っていた人や物事がよくは解っていなかった、 て事でしょぅ。」 M「そうそう。よくあるじゃない、そういう事ってねぇ。」 A「そうよね。それにしても良く書けている戯曲よね、恐れ入りました、 って感じかな?」 P「あれだけ台詞が詰まっていると、観ている側も緊張のしっぱなしじゃ ないですかぁ。」 M「でも、テンポが良いから時間の経過も早いんだよねぇ。」 A「丁度、舞台の後の壁に掛け時計があったじゃない?」 P「それ、俺途中で気が付いたんですよォ。」 M「開演が7時で、舞台上の時計が8時。丁度1時間舞台の方が早いって 事になるんだよねぇ。」 A「そうなのよね、みっちゃん気が付いてた?アッシはね、脚本にそうな っているんじゃないかと思ったんだけど、アッシが演出するんだったら、 あの時計を7時にしておくと思うのよ。」 P「それは何でなの?かなぁ。」 M「それは、観客が芝居の進行と一緒に時を感じる事が出来る様にだよね ぇ。」 A「そうなのよ、流石みっちゃんね。アッシ今回、鈴木裕美の演出で、そ こだけが残念でならなかったのよ。」 P「でも、設定がそうだと分っていれば問題ないじゃないですかぁ。」 A「そうよ。だから大した問題じゃないんだけどね、全体を通して素晴ら しかったから残念なのよ。」 M「あきちゃんさぁ、あの芝居はブロードウェイでも上演されたのかな?」 A「みっちゃん、良く気が付いてくれたわね。そうなの。ロングランの記 録は残っていないので、何とも言えないんだけど、1982〜3年度のド ラマ部門でピューリッツア賞を取っているので、おそらく上演されている と思うんだけど、そうだとしたら、分るでしょ、時計の事。」 M「あ〜、そうだね、なるほど。」 P「何なんですかぁ、二人で解り合っちゃって。」 M「いやね、ポンちゃんさぁ、ブロドウェイの芝居ってね、夜8時からな んだよね、それでだよね、8時って。」 P「あ〜、やっと解りました。そういう事だったんですかぁ。」 A「そういう事よ。だから、書き手の頭の中にはその事もあったはずだと 思うのね。だから、今回に限っては7時にしてほしかったわけ。」 P「それにしてもあの二人。凄いですよね、本当に。」 M「台詞の量も並じゃないだろうしねぇ。その上にいろいろ感情を乗せて いく分けだし。」 A「相当の実力者じゃないと出来ない芝居だわよ。」 M「僕はね、あの役、逆にしても面白かったんじゃないかなって思ったん だけどさぁ、あきちゃんはどう思うかな?」 A「それは面白ろいかもね、あの二人だったら出来るんじゃない?前回の キャストだと、見ただけで親子の配役が判っちゃうけど、今回はどちらが どっちの役を演っても構わないんじゃないかって気がするわよね、確かに 。」 P「アンケートに書けば良かったかな?」 A「あら、ポンちゃんもそう思ってたの?」 P「そうじゃなくってぇ、今二人の話し聞いてて思っただけなんですけど ぉ。」 A「じゃあ、書けないじゃないのよ、ったく。」 P「失礼しました。」 M「まあまあ。それにしても母親と子供の関係って特別だよね。」 A「そうね、子供にしても母親って特別なんじゃないのかしらん。」 P「この芝居を観ていて特に感じましたね、それは。」 M「お互いにお互いを優しく見守るっていうかねぇ。」 A「でも、結局娘の方は、自分の思い通りに自殺する分けでしょ。これは 娘だから思い描く母親との対立なのかな?とも思ったんだけど。」 M「ぼくら男の子と母親との関係とはチョット違うかもしれないねぇ。」 P「結構深い所に来てますね。俺にはそこまで考えられなかったんですけ ど。」 A「お互いの〃甘え〃の構造がとても良く描かれていたわよね。」 P「母親の方の甘えの構造はなんとなく理解できたんですけどぉ...... 。」 M「あきちゃんが感じた娘の方の甘えってどんな事なんだろうねぇ。」 A「アッシね、娘が予告して自殺するじゃない。」 P「それって凄くありません?予告してから、それも2時間以内っていう 制限まで自分で付けて。凄いプレッシャーじゃないですかぁ。そこに甘え なんて見当たらない様な気がするんですけどぉ。」 A「アッシもね、最初はそう思ったのよ。でも、一方通行の筈なわきゃな いじゃない。それじゃただの芝居になっちゃうし、何が娘の甘えなのかな ?って考えたときね、彼女が自分の部屋で自殺するでしょ、その行為が彼 女にとって、母親に対する甘えだったんじゃないかと思ってきたわけ。」 M「なるほど。そうだねぇ、究極の甘えかもしれないねぇ。」 P「よく観てますよね、二人とも。俺なんかただ単に普通の会話の進行に しか思えなかったし、自殺行為が母親に対する甘えだなんて、とても考え られませんでしたよ。でも一つだけ解ったのは、あの親子はずっとすれ違 っていたんだな、って事位ですかね。」 A「あんた、凄いじゃない。それよそれ。すれ違っているのよね、人間は 。本当に解りあえるなんて難しいのよ。それがたとえ親と子であってもね 。」 M「そうだよねぇ、それがこの芝居の一番言いたかった事かも知れないよ ねぇ。よく分った分ったって言うけど、それは自分だけで解っているのか もしれないな。相手の本当の気持を解っているのかどうか、難しいよね。」 P「俺、少しは芝居観てたんだな、ってチョット安心しちゃった。」 A「ところで、お二人さん。アッシの今の気持、解るかしらん。」 P「え〜っ、何ですかぁ?」 A「う〜む、ヤダぁ、まだ注文してないんだけど。」 M「あっ、そうだったよね。ゴメンね、あきちゃん。じゃあ、僕はジント ニック。ポンちゃんも同じでいいよね。それにあきちゃんも何か飲んでね 。」 A「はい、遠慮なく甘えて頂きます。」 一同「それじゃ、乾杯! ハハハハ......。」 おわり *登場人物は全て仮名です。 *今回紹介した芝居、マーシャ・ノーマン作《おやすみ、母さん》は10 月21日まで三軒茶屋のシアター・トラムで上演された後、都内では亀有 、多摩、江東で、その後つくば、名古屋、大阪、など全国を回りますので 、ぜひご覧下さいね。 |